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7.彼の本気
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考えている間に、比呂に手際よく服を脱がされ、その上、身体中を愛撫されて濡らされてもいた。ただ、人間とは不思議な生き物で、そうして着実に気持ち良くさせられていても、頭の中では全く違うことを考えていたりする。
全身を撫でられ、揉まれ、舐められ、快感に甘い息を吐いても、嬌声を漏らしても、私は比呂の真意がどこにあるのかを考えていた。
離婚も復縁もしないなら、奥さんは何しに来ていたの?
奥さんも離婚しないことで納得したの?
別居中とはいえ、夫の浮気を黙認するの?
どうして、慰謝料をふんだくって離婚しようと思わないの?
「随分、器用だな」
耳元で囁かれ、ハッとした。
既に挿入直前で、私はされるがままに足を大きく開き、その間にゴムを装着済みの比呂が膝をついていた。
身体は火照り、汗に濡れ、心拍数が上がっている。
「セックスしながら考え事か?」
「考え事をしているのに始めたのはそっちでしょ」
「ま、いいや。お前の疑問にはゆっくり答えてやるよ」
そう言いながら、比呂は私の膣内《なか》に押し入ってきた。
さすがに、もう、何も考えられない。
身震いし、胸を突き出すように仰け反り、短く息を吐く。
私を見下ろす比呂の表情は険しく、けれど、吐く息は私と同じで短く跳ねるよう。
「んっ――!」
気持ちいい。
何を考えていても、身体は正直。私は快感に身を捩り、シーツを握り締めた。
「千尋――」
私を呼ぶ比呂の甘い声に、お腹の奥が疼く。
「お前は、おれの女だ」
何度も抱かれて、身体の奥が比呂の形やリズムをすっかり覚えてしまった。
真っ直ぐ突き上げられ、時々最奥を撫でるようにグリッと腰を押し付けて捻る。
「ああ――っ!」
「千尋……」
夢中で腰を振りながら、時々余裕をなくしたかすれた声で私の名前を呼ぶ。とても愛おしそうに唇に触れる。フッと冷静さを取り戻し、私の反応を窺う。
そういう、比呂が好き。
だけど、奥さんと別居した頃の苦しむ比呂を知っているから、どうしても素直になれない。
どんな事情があるにしろ、別居して、行き場のない感情を仕事にぶつけ、それでも持て余した熱を私に向けた。
それだけ。
それほど、比呂は奥さんを愛していた。
もしかしたら、現在進行形かもしれない。
奥さんと再会し、離婚の意思が揺らいだのかもしれない。
だから、書類の上での夫婦関係を継続させることにしたのかもしれない。
でも、もしかしたら……。
「お前が考えてること、全部間違ってる」
比呂が動きを止めて、言った。
彼は私の頬に触れ、それから眉間に人差し指を当てた。
「ぐっちょぐちょに濡らしながら、こんなおっかねー顔してるとか、ホント、器用だな」
比呂の顔がゆっくりと下りてきて、一瞬前まで指を置いていた場所にキスをした。比呂の顎から雫が落ちて、私の唇を濡らした。
比呂は全身汗だくで、息も熱い。
手を伸ばして彼の髪に触れると、汗で湿っていた。
全身を撫でられ、揉まれ、舐められ、快感に甘い息を吐いても、嬌声を漏らしても、私は比呂の真意がどこにあるのかを考えていた。
離婚も復縁もしないなら、奥さんは何しに来ていたの?
奥さんも離婚しないことで納得したの?
別居中とはいえ、夫の浮気を黙認するの?
どうして、慰謝料をふんだくって離婚しようと思わないの?
「随分、器用だな」
耳元で囁かれ、ハッとした。
既に挿入直前で、私はされるがままに足を大きく開き、その間にゴムを装着済みの比呂が膝をついていた。
身体は火照り、汗に濡れ、心拍数が上がっている。
「セックスしながら考え事か?」
「考え事をしているのに始めたのはそっちでしょ」
「ま、いいや。お前の疑問にはゆっくり答えてやるよ」
そう言いながら、比呂は私の膣内《なか》に押し入ってきた。
さすがに、もう、何も考えられない。
身震いし、胸を突き出すように仰け反り、短く息を吐く。
私を見下ろす比呂の表情は険しく、けれど、吐く息は私と同じで短く跳ねるよう。
「んっ――!」
気持ちいい。
何を考えていても、身体は正直。私は快感に身を捩り、シーツを握り締めた。
「千尋――」
私を呼ぶ比呂の甘い声に、お腹の奥が疼く。
「お前は、おれの女だ」
何度も抱かれて、身体の奥が比呂の形やリズムをすっかり覚えてしまった。
真っ直ぐ突き上げられ、時々最奥を撫でるようにグリッと腰を押し付けて捻る。
「ああ――っ!」
「千尋……」
夢中で腰を振りながら、時々余裕をなくしたかすれた声で私の名前を呼ぶ。とても愛おしそうに唇に触れる。フッと冷静さを取り戻し、私の反応を窺う。
そういう、比呂が好き。
だけど、奥さんと別居した頃の苦しむ比呂を知っているから、どうしても素直になれない。
どんな事情があるにしろ、別居して、行き場のない感情を仕事にぶつけ、それでも持て余した熱を私に向けた。
それだけ。
それほど、比呂は奥さんを愛していた。
もしかしたら、現在進行形かもしれない。
奥さんと再会し、離婚の意思が揺らいだのかもしれない。
だから、書類の上での夫婦関係を継続させることにしたのかもしれない。
でも、もしかしたら……。
「お前が考えてること、全部間違ってる」
比呂が動きを止めて、言った。
彼は私の頬に触れ、それから眉間に人差し指を当てた。
「ぐっちょぐちょに濡らしながら、こんなおっかねー顔してるとか、ホント、器用だな」
比呂の顔がゆっくりと下りてきて、一瞬前まで指を置いていた場所にキスをした。比呂の顎から雫が落ちて、私の唇を濡らした。
比呂は全身汗だくで、息も熱い。
手を伸ばして彼の髪に触れると、汗で湿っていた。
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