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10.妻の愛人
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しおりを挟む「では、これで調査終了となります」
俺は越野さんから報告書を受け取り、受取書にサインをして、クレジットカードで支払いを済ませた。かかった費用は、二十万五千六百円。
「また、何かありましたら、ぜひ我が社をご利用ください」
「はい。ありがとうございました」
越野さんはレコーダーのスイッチを切り、俺に消去ボタンを押すように言った。俺は、言われた通り、ボタンを押す。
ピーッ、という電子音の後に『消去しました』という機械的な女性の声がした。
俺は報告書の封筒を鞄に入れた。
「有川さん」
「はい」
「これは調査とは別に、個人的にお知らせするのですが――」
立ち上がろうと浮かせた腰を椅子に戻した。
「はい?」
越野さんがコーヒーを口に含み、俺もまたそうした。
今日は、最初から越野さんがコーヒーを持って来てくれた。
「奥様のお相手、東山修さんの奥様、忍さんも不倫しているようです」
「――えっ!?」
「これは、調査中に知り得た情報ではないので報告書には載せませんでしたが、間違いありません」
「どういうことですか?」
「別の調査中に、忍さんが男性とラブホテルに入って行くのを見ました。平日の昼に、です。東山さんの家族構成を調べて忍さんの顔を知っていたので、間違いありません」
越野さんが言うには、調査初日の夜には美幸が東山と会っているのを確認でき、翌日には東山の住まいや家族構成を確認できたらしい。で、三日目の昼に別件でラブホテルを張り込んでいたところ、忍が現れたと言う。それも、同じ男と、二日続けて。
「忍さんの相手は、彼女よりだいぶ若く見えました。身なりからするに、夜の仕事をしているようでした」
「……ホスト、とか?」
「恐らく」
どうなっているんだ。
夫婦そろって不倫しているなら、それこそどうして離婚しない!?
東山が離婚すれば、美幸も離婚に応じるだろう。
俺は、希望の光が見えた気がした。
翌日から二泊の出張で、報告書も持っていった。一人寝の夜の寂しさを紛らそうと、俺は報告書を何度も読み返し、どうやって美幸に離婚を承諾させようかと考えを巡らせた。
美幸と東山は、駅前のホテルを常用しているようだった。四日間の調査中に二度、そのホテルを利用したらしい。
二人が食事している様子、並んでホテルに入って行く様子、並んでホテルから出てくる様子、別の日の二人がホテルの部屋に入って行く様子。
浮気の証拠には十分だ。
美幸の相手、東山修は、美幸の四歳年上の三十八歳で、会計事務所を経営している。妻の忍は美幸と同じ三十四歳。二人の間には八歳と五歳の娘がいて、家族四人でT区のマンションで暮らしている。
娘……か。
東山夫婦が互いに不倫しながらも離婚しないのは、娘のためかもしれない。
俺は、娘たちの両親に離婚して欲しいと願っている。
恨まれるな……。
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