【ルーズに愛して】指輪を外したら、さようなら

深冬 芽以

文字の大きさ
75 / 147
10.妻の愛人

しおりを挟む



「では、これで調査終了となります」

 俺は越野さんから報告書を受け取り、受取書にサインをして、クレジットカードで支払いを済ませた。かかった費用は、二十万五千六百円。

「また、何かありましたら、ぜひ我が社をご利用ください」

「はい。ありがとうございました」

 越野さんはレコーダーのスイッチを切り、俺に消去ボタンを押すように言った。俺は、言われた通り、ボタンを押す。

 ピーッ、という電子音の後に『消去しました』という機械的な女性の声がした。

 俺は報告書の封筒を鞄に入れた。

「有川さん」

「はい」

「これは調査とは別に、個人的にお知らせするのですが――」

 立ち上がろうと浮かせた腰を椅子に戻した。

「はい?」

 越野さんがコーヒーを口に含み、俺もまたそうした。

 今日は、最初から越野さんがコーヒーを持って来てくれた。

「奥様のお相手、東山修ひがしやまおさむさんの奥様、しのぶさんも不倫しているようです」

「――えっ!?」

「これは、調査中に知り得た情報ではないので報告書には載せませんでしたが、間違いありません」

「どういうことですか?」

「別の調査中に、忍さんが男性とラブホテルに入って行くのを見ました。平日の昼に、です。東山さんの家族構成を調べて忍さんの顔を知っていたので、間違いありません」

 越野さんが言うには、調査初日の夜には美幸が東山と会っているのを確認でき、翌日には東山の住まいや家族構成を確認できたらしい。で、三日目の昼に別件でラブホテルを張り込んでいたところ、忍が現れたと言う。それも、同じ男と、二日続けて。

「忍さんの相手は、彼女よりだいぶ若く見えました。身なりからするに、夜の仕事をしているようでした」

「……ホスト、とか?」

「恐らく」



 どうなっているんだ。

 夫婦そろって不倫しているなら、それこそどうして離婚しない!?



 東山が離婚すれば、美幸も離婚に応じるだろう。

 俺は、希望の光が見えた気がした。

 翌日から二泊の出張で、報告書も持っていった。一人寝の夜の寂しさを紛らそうと、俺は報告書を何度も読み返し、どうやって美幸に離婚を承諾させようかと考えを巡らせた。

 美幸と東山は、駅前のホテルを常用しているようだった。四日間の調査中に二度、そのホテルを利用したらしい。

 二人が食事している様子、並んでホテルに入って行く様子、並んでホテルから出てくる様子、別の日の二人がホテルの部屋に入って行く様子。

 浮気の証拠には十分だ。

 美幸の相手、東山修は、美幸の四歳年上の三十八歳で、会計事務所を経営している。妻の忍は美幸と同じ三十四歳。二人の間には八歳と五歳の娘がいて、家族四人でT区のマンションで暮らしている。



 娘……か。



 東山夫婦が互いに不倫しながらも離婚しないのは、娘のためかもしれない。

 俺は、娘たちの両親に離婚して欲しいと願っている。



 恨まれるな……。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ボクとセンセイの秘密

七町 優
恋愛
高校2年のボクと24歳のセンセイの秘密を描いたストーリーです。 タイトルで分かるとは思うのですが、恋愛ストーリーです。 一応登場人物たちのいる学校は関西という設定です。 なので関西弁での会話が多くなります。 ボクとセンセイの濃いような淡いような恋愛ストーリーをお楽しみください。

夫婦交錯

山田森湖
恋愛
同じマンションの隣の部屋の同い年の夫婦。思いの交錯、運命かそれとも・・・・。 少しアダルトなラブコメ

甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・

希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!? 『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』 小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。 ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。 しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。 彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!? 過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。 *導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。 <表紙イラスト> 男女:わかめサロンパス様 背景:アート宇都宮様

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

小野寺社長のお気に入り

茜色
恋愛
朝岡渚(あさおかなぎさ)、28歳。小さなイベント企画会社に転職して以来、社長のアシスタント兼お守り役として振り回される毎日。34歳の社長・小野寺貢(おのでらみつぐ)は、ルックスは良いが生活態度はいい加減、デリカシーに欠ける困った男。 悪天候の夜、残業で家に帰れなくなった渚は小野寺と応接室で仮眠をとることに。思いがけず緊張する渚に、「おまえ、あんまり男を知らないだろう」と小野寺が突然迫ってきて・・・。 ☆全19話です。「オフィスラブ」と謳っていますが、あまりオフィスっぽくありません。 ☆「ムーンライトノベルズ」様にも掲載しています。

処理中です...