82 / 147
11.波乱の忘年会
3
しおりを挟む「この前、レスだって泣いてたくせに、なんだよその急展開」と、陸。
「はぁ? 泣いてねーし!」と、大和。
「けど、またレスか。久し振りに張り切ったらデキちゃったって、高校生じゃあるまいし」
陸の言葉に、大和は苦笑い。
「それは、まぁ、痛いとこだけど、うっかりってわけじゃないからいーんだよ」
「まぁまぁ、めでたいことなんすから」
大和と陸をなだめながらも、龍也が横目であきらの様子を伺っているのを見逃さなかった。
あきらは麻衣と、いつ頃生まれるのだろうと話している。
「私たちが一肌脱いだ甲斐があったわけだ」と、私は大和に言った。
「ね? あきら、麻衣」
「そうそう! 感謝してよね、大和」
「は? なんで――」
「パーカー」
あきらの一言に、大和が口をポカンと開けた。
「ナニしちゃったんだ?」
「してねーよ!」
「は? パーカー、って何の話だよ?」と、陸が興味津々で身を乗り出す。
「なんでもねーよ!」
「違うよね? 久し振りにお洒落したさなえを見て、ソノ気になっちゃったんだもんね?」
「そう! そうだよ! そういう意味では、きっかけ作ってくれて感謝してるよ」
麻衣の助け舟に飛び乗って、大和が話を逸らす。
「先週からつわり酷くて、実家に帰ってるんだよ。その方がゆっくりできると思って。だいぶ落ち着いたから今日も来たがったんだけど、さっき迎えに行ったら、また寝込んでてさ」
「大斗くんの時も、キツそうだったもんね?」
「ああ」
「大斗くんは? さなえと一緒?」
「大斗が一緒じゃさなえが休めないから残したんだけど、二日が限界だった……」
「大斗くん、さなえにべったりだって言ってたもんね?」
「そうなんだよ。早くも赤ちゃん返りなのか、ますますさなえから離れなくなっちまって」
なんだかんだと言いながらも、大和は幸せそうで、嬉しくなった。
きっと、あきらも同じ気持ちだと思う。
龍也はかなり心配しているようだけど。
「今日はその報告もしたくて、来たんだよ」
「マジかぁ。じゃ、タイミング悪かったかな」と、陸。
「何が?」
「いや。俺からも報告があってさ」
全員が陸に注目する。
陸もいよいよ待望の赤ちゃんが!? と、誰もが思ったはずだ。
デキ婚したのに流産で、それから二年が過ぎた。
言葉にはしなくても、みんな気にかけていたはずだ。
「離婚、した」
「――――っ!?」
あっけらかんとした陸の告白に、耳を疑った。
「で、イギリスに行く」
「……はぁ!?」
「イギリス!?」
「その前に、離婚て!」
慌てるみんなをよそに、陸は頬杖をついてビールを飲む。
「ずっと、家庭内別居状態だったんだよ。離婚するにも、仕事が忙しくてろくに話し合う時間もなかったってだけで二年もずるずるしちまったけど、俺のイギリス行きが決まって、記入済みの離婚届をテーブルに置いておいたら、いつの間にか記入してあった」
「そんな……」
「そんなもんだった、ってことだ」
「……」
0
あなたにおすすめの小説
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
網代さんを怒らせたい
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「なあ。僕たち、付き合わないか?」
彼がなにを言っているのかわからなかった。
たったいま、私たちは恋愛できない体質かもしれないと告白しあったばかりなのに。
しかし彼曰く、これは練習なのらしい。
それっぽいことをしてみれば、恋がわかるかもしれない。
それでもダメなら、本当にそういう体質だったのだと諦めがつく。
それはそうかもしれないと、私は彼と付き合いはじめたのだけれど……。
和倉千代子(わくらちよこ) 23
建築デザイン会社『SkyEnd』勤務
デザイナー
黒髪パッツン前髪、おかっぱ頭であだ名は〝市松〟
ただし、そう呼ぶのは網代のみ
なんでもすぐに信じてしまい、いつも網代に騙されている
仕事も頑張る努力家
×
網代立生(あじろたつき) 28
建築デザイン会社『SkyEnd』勤務
営業兼事務
背が高く、一見優しげ
しかしけっこう慇懃無礼に毒を吐く
人の好き嫌いが激しい
常識の通じないヤツが大嫌い
恋愛のできないふたりの関係は恋に発展するのか……!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる