【ルーズに愛して】指輪を外したら、さようなら

深冬 芽以

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12.嫉妬

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「しんっじらんない!」

 酒が抜けた千尋は、予想通り激怒した。

 真っ裸で首元に手を当てて、仁王立ち。

「どうすんのよ、これ!」

「明日には消えんだろ」と、俺は何の根拠もなく言った。

「つーか、ハイネックの服なら見えないだろ」

「そういう問題じゃないでしょ!?」

 彼女の鎖骨から膝まで、無数の花が咲いている。小さくて真っ赤な花。いつもは嫌がって付けさせてくれないが、昨夜は酔っているのをいいことに、吸い疲れるほど吸い付いてやった。

 やり過ぎた自覚はあるが、昨夜は嫉妬やら興奮やらで歯止めがきかなかった。

 酔った千尋は、とにかく素直で可愛かった。

 俺を愛していると泣き、もっと愛されたいと啼いた。

『千尋、酔うとすげーイイですよね』

 あの男の言葉通りだったのはムカつくが、確かに良かった。

「お前、昨日いた男とも寝てたのか?」

 その答えを千尋の口から聞かされるのは嫌だが、確認しておけば今後の飲み会に行くなと言える。もしくは、帰りは必ず迎えに行く。

 とにかく、焼け木杭になんとやら、という事態は避けられる。

 ところが、千尋は顔をものすごく不細工に歪めた。

「はぁ?」

「あの中に大学時代の男、いたか?」

「いないわよ」

「……マジで?」

「仲間と面倒な関係になんかなりたくないもの」

「……」

 嘘を言っているようにも、誤魔化しているようにも見えない。

「あの、好青年っぽい男」

「好青年?」

 千尋の感度を知っているあの男を『好青年』と表現することには抵抗があったが、三人いた男をわかりやすく表すには他に思い浮かばなかった。

「陽気で軽そうな男と、インテリっぽい男と、ムカつくけど爽やかな好青年って感じの男がいたろ?」

「……っく! くくくっ――。……っくしゅん!」

 少し考えて、笑い出して、くしゃみをした。

 忙しい奴だ。

「そんな恰好で突っ立てるからだろ」

 俺もまた真っ裸でベッドを出ると、軽く身震いして、千尋を抱き寄せた。そのままベッドに潜り込む。

「で? あいつらとは寝たのか?」

「――寝てない」

 身体を丸めてすり寄る彼女の肩を抱き締める。

 シャワーを浴びるとベッドを出て、キスマークに気づき、戻って来て、今に至る。

 暖房を下げたままにしているから、裸でいるには寒い。

「っていうか、どうしてそんな話になってんのよ」

「それは――」

 俺は、千尋を迎えに行ったところから話した。彼女を腕に抱き、足を絡め、ぴったりと身体を寄せ合って。

 話し終えると、千尋が特大のため息をついた。

 息がかかってくすぐったい。

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