99 / 147
13.再会の意味
2
しおりを挟む自分も彼女と同じ、『愛人』という人種に分類されると思うと、ゾッとした。
それ以降、私は口を開かなかった。
比呂が今後の打ち合わせの流れや、規模に応じた価格を提示し、私は黙って頷いていた。
打ち合わせ開始から二十分ほどで、亘の婚約者が登場した。
二十代半ばくらいの可愛らしい、いかにもお嬢様。
薄いピンクのワンピース、ゆるく巻いた腰まである栗色の髪、大粒のピンクダイヤの婚約指輪と、お揃いのネックレスにピアス。
彼女は満面の笑みで私たちに挨拶をした。
「吉瀬川瑠莉です」
彼女の父親がどこぞのお偉いさんであることを亘が自慢気に話したが、私の耳には入らなかった。
とにかく、このお嬢様が気の毒で仕方がなかった。
亘は、ムカつくことにイケメンと呼ばれる容姿をしている。背が高く、足が長く、身体は引き締まっていて、顔は彫が深くて鼻が高い。
年上のイケメンで、ホテルチェーンの副社長で次期社長。
このお嬢様が本気で惚れるには十分な条件が揃っている。
このお嬢様のように、この男の見てくれに、自ら制服のボタンを外して寄って行く女たちを見てきた。
気に入られたら、イベントごとに高校生らしからぬ高価なアクセサリーやブランドバッグなんかを買ってもらえる。
女たちは、亘のヤリたい時に足を開くだけでいい。
そうやって、父親の立場と金に物を言わせて好き勝手をしてきたお坊ちゃまと私が同じクラスになったのは、高校二年の時。
最初は、お坊ちゃまに全く興味を示さない私を珍獣扱いしてきた。それから、ムキになって私を言いなりにしようとするまで、さほど時間はかからなかった。
取り巻きの女たちによる嫌がらせは日常茶飯事で、私はクラスから孤立した。
それでも、私は負けなかった。
もともと女友達とつるむのが苦手だった私は、お坊ちゃまが予想していたほどダメージを受けていなかった。それが余計に、お坊ちゃまを苛立たせた。
そして、三年の夏。
あの事件が起きた。
「へぇ。亘くんの同級生なんですか。じゃあ、私もぜひ相川さんに担当してもらいたいです」
口を噤んで物思いに耽っている間に、話は良からぬ方向へと進んでいた。
「インテリアに関しては、女性同士の方が話も合いそうだし」
「その件に関しましては、社に持ち帰って検討いたします」
同席するだけ、とは確認したけれど、ここまで私に口を開かせないところを見ると、比呂は私と亘が只の同級生じゃないことを察しているだろう。
なんて説明したら――。
「大丈夫だ、瑠莉。次の打ち合わせにも相川さんが来てくれるさ。昔から気の優しい女だからな。クライアントの希望は叶えてくれる。そうだろ? 千尋」
わざとらしい亘の物言いを無視して、私は瑠莉さんに笑顔を送った。
「お式の日取りは決まっているんですか?」
「ええ! 春の連休を予定しているんです。ホテル業界は忙しい時期なんですけど、私のパパ――父の都合で。亘くんやご家族には無理を言ってしまったんですけど」
だろうな、と思った。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ボクとセンセイの秘密
七町 優
恋愛
高校2年のボクと24歳のセンセイの秘密を描いたストーリーです。
タイトルで分かるとは思うのですが、恋愛ストーリーです。
一応登場人物たちのいる学校は関西という設定です。
なので関西弁での会話が多くなります。
ボクとセンセイの濃いような淡いような恋愛ストーリーをお楽しみください。
小野寺社長のお気に入り
茜色
恋愛
朝岡渚(あさおかなぎさ)、28歳。小さなイベント企画会社に転職して以来、社長のアシスタント兼お守り役として振り回される毎日。34歳の社長・小野寺貢(おのでらみつぐ)は、ルックスは良いが生活態度はいい加減、デリカシーに欠ける困った男。
悪天候の夜、残業で家に帰れなくなった渚は小野寺と応接室で仮眠をとることに。思いがけず緊張する渚に、「おまえ、あんまり男を知らないだろう」と小野寺が突然迫ってきて・・・。
☆全19話です。「オフィスラブ」と謳っていますが、あまりオフィスっぽくありません。
☆「ムーンライトノベルズ」様にも掲載しています。
甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・
希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!?
『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』
小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。
ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。
しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。
彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!?
過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。
*導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。
<表紙イラスト>
男女:わかめサロンパス様
背景:アート宇都宮様
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる