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13.再会の意味
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しおりを挟む自分も彼女と同じ、『愛人』という人種に分類されると思うと、ゾッとした。
それ以降、私は口を開かなかった。
比呂が今後の打ち合わせの流れや、規模に応じた価格を提示し、私は黙って頷いていた。
打ち合わせ開始から二十分ほどで、亘の婚約者が登場した。
二十代半ばくらいの可愛らしい、いかにもお嬢様。
薄いピンクのワンピース、ゆるく巻いた腰まである栗色の髪、大粒のピンクダイヤの婚約指輪と、お揃いのネックレスにピアス。
彼女は満面の笑みで私たちに挨拶をした。
「吉瀬川瑠莉です」
彼女の父親がどこぞのお偉いさんであることを亘が自慢気に話したが、私の耳には入らなかった。
とにかく、このお嬢様が気の毒で仕方がなかった。
亘は、ムカつくことにイケメンと呼ばれる容姿をしている。背が高く、足が長く、身体は引き締まっていて、顔は彫が深くて鼻が高い。
年上のイケメンで、ホテルチェーンの副社長で次期社長。
このお嬢様が本気で惚れるには十分な条件が揃っている。
このお嬢様のように、この男の見てくれに、自ら制服のボタンを外して寄って行く女たちを見てきた。
気に入られたら、イベントごとに高校生らしからぬ高価なアクセサリーやブランドバッグなんかを買ってもらえる。
女たちは、亘のヤリたい時に足を開くだけでいい。
そうやって、父親の立場と金に物を言わせて好き勝手をしてきたお坊ちゃまと私が同じクラスになったのは、高校二年の時。
最初は、お坊ちゃまに全く興味を示さない私を珍獣扱いしてきた。それから、ムキになって私を言いなりにしようとするまで、さほど時間はかからなかった。
取り巻きの女たちによる嫌がらせは日常茶飯事で、私はクラスから孤立した。
それでも、私は負けなかった。
もともと女友達とつるむのが苦手だった私は、お坊ちゃまが予想していたほどダメージを受けていなかった。それが余計に、お坊ちゃまを苛立たせた。
そして、三年の夏。
あの事件が起きた。
「へぇ。亘くんの同級生なんですか。じゃあ、私もぜひ相川さんに担当してもらいたいです」
口を噤んで物思いに耽っている間に、話は良からぬ方向へと進んでいた。
「インテリアに関しては、女性同士の方が話も合いそうだし」
「その件に関しましては、社に持ち帰って検討いたします」
同席するだけ、とは確認したけれど、ここまで私に口を開かせないところを見ると、比呂は私と亘が只の同級生じゃないことを察しているだろう。
なんて説明したら――。
「大丈夫だ、瑠莉。次の打ち合わせにも相川さんが来てくれるさ。昔から気の優しい女だからな。クライアントの希望は叶えてくれる。そうだろ? 千尋」
わざとらしい亘の物言いを無視して、私は瑠莉さんに笑顔を送った。
「お式の日取りは決まっているんですか?」
「ええ! 春の連休を予定しているんです。ホテル業界は忙しい時期なんですけど、私のパパ――父の都合で。亘くんやご家族には無理を言ってしまったんですけど」
だろうな、と思った。
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