103 / 147
13.再会の意味
6
しおりを挟む
「それから、お前の代わりに有川がバカ息子を殺さないよう、手綱を離すな」
バンッと掌で机を叩くと、比呂が立ち上がった。
「大丈夫ですよ。その証拠に、課長は無傷でしょう?」
え――――?
「過去はどうでもいい。この先は、誰にも千尋に触れさせない。それだけです」
どういう……。
「左手に指輪をはめたまんまじゃ、格好つかないぞ」
ギロッと課長を睨みつけ、比呂はドアに向かった。
「千尋、帰るぞ」
そう言って、さっさと出て行ってしまった。
「おー、こわ。ちびるかと思った」
「ふざけないでください」
「愛されてんじゃないか。喜べ」
「そんなこと――」
「いつからか、あいつの俺を見る目が変わって、俺とお前のことに気づいてんだろうなとは思ってたけど、やっぱりな」
いつから気づいて――。
心臓の音が頭に響く。
うるさい。
同時に、背中に汗が滲み、インナーが湿っていくのがわかった。
掌にも。
なのに、寒い。
「お前でも、そんな泣きそうな顔すんだな」
「……え?」
「有川の前では、悪女じゃないのな」
「……」
「有川も言ってたろ? 過去はどうでもいいんだ。これからのお前が誰と一緒に居たいのか、よく考えろ」
「課長……」
「いや、違うな。相川は考えるな。感じろ。幸せを感じるのは、どんな時か」
幸せなんて――。
「恐怖を感じる時は?」
そんなこと――。
「過去を知られて青ざめているのはどうしてだ?」
うまく呼吸が出来ない。
今日は色んなことがあり過ぎて、頭の中がぐちゃぐちゃで。
亘との再会、仕事、長谷部課長との過去。
比呂に、知られたくなかった。
比呂にだけは――――!
「大河内との再会は、お前が過去と向き合って、未来に進むための試練かもな」
「――あの男との再会に意味なんてないっ!」
そう言い放つと同時に、比呂が飛び込んで来た。
「千尋に何をした!!」
比呂が鬼のような形相で課長に詰め寄る。
咄嗟に課長は両手を頭の横に上げた。
「何もしてねーよ」
「じゃあ、なんで千尋が泣いてるんだ!」
え……?
言われてようやく、二人の姿が滲んで見えることに気づいた。
慌てて涙を拭う。
「やめて、比呂。課長は何もしてない」
震える声で、それを悟られないようにゆっくりと言った。
「帰ろう、比呂」
早く、比呂に抱き締めてもらいたかった。
バンッと掌で机を叩くと、比呂が立ち上がった。
「大丈夫ですよ。その証拠に、課長は無傷でしょう?」
え――――?
「過去はどうでもいい。この先は、誰にも千尋に触れさせない。それだけです」
どういう……。
「左手に指輪をはめたまんまじゃ、格好つかないぞ」
ギロッと課長を睨みつけ、比呂はドアに向かった。
「千尋、帰るぞ」
そう言って、さっさと出て行ってしまった。
「おー、こわ。ちびるかと思った」
「ふざけないでください」
「愛されてんじゃないか。喜べ」
「そんなこと――」
「いつからか、あいつの俺を見る目が変わって、俺とお前のことに気づいてんだろうなとは思ってたけど、やっぱりな」
いつから気づいて――。
心臓の音が頭に響く。
うるさい。
同時に、背中に汗が滲み、インナーが湿っていくのがわかった。
掌にも。
なのに、寒い。
「お前でも、そんな泣きそうな顔すんだな」
「……え?」
「有川の前では、悪女じゃないのな」
「……」
「有川も言ってたろ? 過去はどうでもいいんだ。これからのお前が誰と一緒に居たいのか、よく考えろ」
「課長……」
「いや、違うな。相川は考えるな。感じろ。幸せを感じるのは、どんな時か」
幸せなんて――。
「恐怖を感じる時は?」
そんなこと――。
「過去を知られて青ざめているのはどうしてだ?」
うまく呼吸が出来ない。
今日は色んなことがあり過ぎて、頭の中がぐちゃぐちゃで。
亘との再会、仕事、長谷部課長との過去。
比呂に、知られたくなかった。
比呂にだけは――――!
「大河内との再会は、お前が過去と向き合って、未来に進むための試練かもな」
「――あの男との再会に意味なんてないっ!」
そう言い放つと同時に、比呂が飛び込んで来た。
「千尋に何をした!!」
比呂が鬼のような形相で課長に詰め寄る。
咄嗟に課長は両手を頭の横に上げた。
「何もしてねーよ」
「じゃあ、なんで千尋が泣いてるんだ!」
え……?
言われてようやく、二人の姿が滲んで見えることに気づいた。
慌てて涙を拭う。
「やめて、比呂。課長は何もしてない」
震える声で、それを悟られないようにゆっくりと言った。
「帰ろう、比呂」
早く、比呂に抱き締めてもらいたかった。
0
あなたにおすすめの小説
ボクとセンセイの秘密
七町 優
恋愛
高校2年のボクと24歳のセンセイの秘密を描いたストーリーです。
タイトルで分かるとは思うのですが、恋愛ストーリーです。
一応登場人物たちのいる学校は関西という設定です。
なので関西弁での会話が多くなります。
ボクとセンセイの濃いような淡いような恋愛ストーリーをお楽しみください。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・
希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!?
『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』
小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。
ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。
しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。
彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!?
過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。
*導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。
<表紙イラスト>
男女:わかめサロンパス様
背景:アート宇都宮様
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる