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14.指輪を外していなくても
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「そうなると、だ。かなり厄介だぞ」
「クビ……ですか」
「損害賠償もあるな」
「はぁ……」
あの調子なら、比呂は何を聞かれても『ムカついた』くらいしか言わないだろう。それでは、部長たちは比呂を庇えない。
「今のところ、上層部の判断待ちで自宅謹慎だろうな。有川をクビにするとしても、大河内亘に対する謝罪や賠償問題があるから、明日明後日に結論を出すのは不可能だ」
「……」
「金城。有川が抜けた穴を埋めるのはお前だろ? 気合入れろよ」
「えっ!? 俺ですか? 無理ですよ!」と、金城くんが運転席と助手席の間から顔を出す。
「チャンスだぞ? 有川の後任の主任のポスト、欲しくないか?」
「いりません! 俺、有川さんと働くの好きなんです。つーか、俺、まだ一級取れてないんですよ」
「そうだっけ? 残念」
長谷部課長が金城くんを和ませている間、私は考えていた。
比呂はクビを覚悟している。
私はそれを許すつもりはない。
ならば、私に出来ることは――?
結論の出ないまま、会社に到着した。
金城くんは、先に着いていた比呂の後を追って、走って行った。
「長谷部課長」
「ん?」
「前に、私に救われたって言ってましたよね」
「……ああ」
「今度は、私を救ってください」
「……」
シートベルトを外し、私は身を乗り出して課長の顔をじっと見た。
「時が来たら、私を助けてください」
「……お前らしいな」と、課長が笑った。
「え?」
「『私の為に比呂を助けて!』とか言わないあたり」
「言いましょうか?」
「やめてくれ」
課長もシートベルトを外した。
「相川」
「はい」
「俺、再婚を考えてる」
課長が若い女性と歩いていたと、女子社員が話しているのを聞いたことがある。
「……おめでとうございます?」
「だから、仕事を失くすわけにいかない」
「……」
尤もだ。
課長に協力を求めてはいけない、と思った。
「だから、一度だけだ」
「…………」
「きっちり、借りは返す」
「ありがとうございます」
実際に協力を求めるかはわからないけれど、借りれる手をキープしておくに越したことはない。
「ありがとうございます!」
私が比呂を守る――!
私は顔を上げ、エレベーターに乗り込んだ。
「クビ……ですか」
「損害賠償もあるな」
「はぁ……」
あの調子なら、比呂は何を聞かれても『ムカついた』くらいしか言わないだろう。それでは、部長たちは比呂を庇えない。
「今のところ、上層部の判断待ちで自宅謹慎だろうな。有川をクビにするとしても、大河内亘に対する謝罪や賠償問題があるから、明日明後日に結論を出すのは不可能だ」
「……」
「金城。有川が抜けた穴を埋めるのはお前だろ? 気合入れろよ」
「えっ!? 俺ですか? 無理ですよ!」と、金城くんが運転席と助手席の間から顔を出す。
「チャンスだぞ? 有川の後任の主任のポスト、欲しくないか?」
「いりません! 俺、有川さんと働くの好きなんです。つーか、俺、まだ一級取れてないんですよ」
「そうだっけ? 残念」
長谷部課長が金城くんを和ませている間、私は考えていた。
比呂はクビを覚悟している。
私はそれを許すつもりはない。
ならば、私に出来ることは――?
結論の出ないまま、会社に到着した。
金城くんは、先に着いていた比呂の後を追って、走って行った。
「長谷部課長」
「ん?」
「前に、私に救われたって言ってましたよね」
「……ああ」
「今度は、私を救ってください」
「……」
シートベルトを外し、私は身を乗り出して課長の顔をじっと見た。
「時が来たら、私を助けてください」
「……お前らしいな」と、課長が笑った。
「え?」
「『私の為に比呂を助けて!』とか言わないあたり」
「言いましょうか?」
「やめてくれ」
課長もシートベルトを外した。
「相川」
「はい」
「俺、再婚を考えてる」
課長が若い女性と歩いていたと、女子社員が話しているのを聞いたことがある。
「……おめでとうございます?」
「だから、仕事を失くすわけにいかない」
「……」
尤もだ。
課長に協力を求めてはいけない、と思った。
「だから、一度だけだ」
「…………」
「きっちり、借りは返す」
「ありがとうございます」
実際に協力を求めるかはわからないけれど、借りれる手をキープしておくに越したことはない。
「ありがとうございます!」
私が比呂を守る――!
私は顔を上げ、エレベーターに乗り込んだ。
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