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1章 説明が欲しい
1-3 クロとシロ様
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砦のベビーベッドで、俺は寝返りをゴロゴローゴロゴローと頑張っている。
俺も母ちゃんみたいになるのだーーーっ、と思い訓練を。。。
うん、赤ちゃんだからね。できることなんて限られている。
すぐに疲れてスヨスヨと眠ってしまう。
今日は様子が違った。
いつもなら一人寂しくベッドで時間を潰す。
柵の上から覗いているクリっとした二つの目があった。
興味津々の目だ。
そして、この目は危ない。
その対象に興味を持たなくなると、途端に熱が冷めてしまう目でもある。
入社してきた社員でこういう目をしている者がいると要注意だった。彼らは仕事に興味を失うと、次の日ならばまだしも、昼食のために外へと出て行って連絡もなくそのまま帰って来ないことも多かった。仕事だからと仕方なしに続けていたり、お金や家族のために働いていた者は、そいつらにムカつきながらも、少々羨ましく思っていた者がいたのも事実だ。
うちはブラック企業だったから、さっさと逃げて良かったのかもしれないけど。。。
もちろん、過酷な勤務実態や職場環境の悪さに感づき、さっさと逃げるのも多かった。。。
でも、この子は可愛いから何でも許すー。
すぐにいなくなったら悲しいけど、いくらでも俺に会いに来てー。
オコジョみたいー。
ちょっと、オコジョとは違うのは耳の部分がない。頭は丸い。
で、オコジョのようにそこまでシュッとしていない。下半身がデプっとしている。オコジョをデフォルメして丸く潰して潰して可愛らしく描きました、って感じかなー?ぬいぐるみみたい。
全体的に黒い毛で覆われているけどお腹の部分だけが白い。
「うーん、なんかちょっとディスられている気がするんだけど、何でかなー」
話せるのっ。この動物っ。驚きっ。
動物だよね?魔物だったら冒険者が騒いでいるよね?
魔物や冒険者がいるのだから、この世界にはテイマーもいるのかもしれないなー。
柵を乗り越えて、オコジョもどきは俺のそばにやって来た。
「ぶ」
俺もこの子と意志疎通をしてみたかったけど、赤ん坊だった。。。
話せない。
あー残念。俺が成長するまで待っていてくれればなー。ずっとこの砦にいてくれるのかな?この動物、珍しいの?それとも、けっこうな数いるの?聞きたいのになー。
小さい爪がついている手を伸ばしてきてくれたので、俺も小さいぷよぷよ手で握る。
にぎにぎにぎにぎ。
あー、可愛い。
ペットって飼ってみたかったんだよね。社畜な俺にはそんな暇なかったけどさー。
「僕のこと超可愛いって思ってる?」
にぎ。
「僕のこと超賢いって思ってる?」
にぎにぎ。
「、、、僕のこと超絶カッコイイと思ってるーー?」
にぎにぎ。
「、、、おい」
にぎ一回が、はい。
にぎ二回が、いいえ。
だって、賢いところもカッコイイところもまだ見てないしー。
あ、動物で話せることは賢いのか?人間レベルで考えると話すだけじゃねー、と思ってしまったが。訂正するにも言葉が話せないと訂正できないなー。
しかも、この子、すぐに俺の意図を理解してくれたよ。やっぱり賢いんじゃね??
「やっぱり僕のこと超賢いと思っている?」
にぎにぎにぎ。
にぎ三回は、保留ってことにしよう。超、までつくほど賢いかは、やはり判断がつきかねる。賢いか、ならにぎっとしてあげたのに。
俺は正直者なんだ。
オコジョもどきは視線を一度上にやってから俺に戻した。
「じゃあ、僕は誰でしょう?」
知るかい。
にぎにぎにぎ。
保留&わからないときは三回にしよう。
「ふーん、そっかー」
ちっちゃい手が俺の頭を撫でた。
そういや俺、母ちゃん以外に撫でられたことなかったな。父親や兄二人もいたはずなのに。
「僕はクロだよー。クロって呼んでねー」
ほほー。黒の毛並みが艶々綺麗だからクロなのかな。
にぎ。ついでに笑っておいた。
「これからよろしくねー」
興味アリアリの目が俺を見ている。
クロはきっと気分屋だ。
気分が乗ったときだけでもいいから、俺に会いに来てくれるかなー。
話せない、何もできない赤ん坊だとすぐに飽きられてしまうかなー?
少し気長に俺と付き合ってもらいたい。
だって、母ちゃん以外は誰も俺にかまってくれないから。クロが現れて、はじめてそのことに気づいた。
「あらー、リアム。今日はクロ様に面倒見てもらったの?良かったわねー」
母ちゃんがベビーベッドにいる俺たちを見て言った。
クロ様?様?様づけ??
まだクロの手を握っていたので。
にぎにぎ。
面倒は見てもらってません。
「ぶふっ」
クロが吹き出した。
「ねえ、リーメル、この子、大きくなったら、僕のお嫁にもらえない?」
おおう、笑顔で何を言っているんだ、クロ。俺は男だぞ。
あ、お嫁にほしいくらい俺も可愛い?
他の冒険者が素通りするから、赤ちゃんってどんな子でも可愛いと思っていたけど、ベビーフェイスの笑顔でも俺だけは違うのかと自信を無くしていたところだったんだよ。鏡で自分の姿を見たこともないし。
「この子が成人して承諾すればもちろん良いですけど。メルクイーン男爵家とはいえ、この子は三男ですから夫も反対はしないでしょうし」
母ちゃん的には良いんだ。。。まあ、俺が承諾すれば、って話だし。
クロは雌って感じがしないんだが、、、雄だよね?嫁って言ってたし。
あ、母ちゃんが今、三男って言ったよー、ちゃんと聞いてたー?俺、男だよー。
「リアムー、大きくなるのを楽しみにしてるよー」
えっとー、ちゃんと聞いてましたー?
クロは嫁が男でも良いのかー?
ああ、話せないことが超もどかしい。
あーうーぶーしか言えん。
‥…━━━ΣΣΣ≡((((((*-ω-)ノ ハヨハナシタイ
母ちゃんに抱っこされて、家路につく。
その道すがら、母ちゃんは説明してくれた。
まあ、話が通じているとは思っていないだろうけど。
「リアム、ここの冒険者が守る砦には守護獣が一対いるの。それがシロ様とクロ様。さっきは小さかったけど、S級やSS級の魔物が砦の近くに現れると、砦の高さより大きくなって魔物と戦ってくれるの」
ほー、怪獣大決戦ですか。それはすごい。
「この砦には今、冒険者はA級までしかいないの。S級やSS級の魔物が来てしまったら、砦もこの街も、この男爵領さえも焦土と化してしまうくらいで、ここにいる人間では対処できない。そんな魔物を退治してくれるのがこの砦のすごい守護獣なの」
おー、クロはすごい守護獣だったんですなー。クロ様と呼んでいる母ちゃんの気持ちもわかる。
クロはかなりの頻度でベビーベッドまで俺に会いに来てくれた。
お腹が空いても母ちゃんが戻って来ないので、ミルクプリーズ、と俺がジタバタしても、クロは微笑んで見ているだけだ。
あ、コイツ、確信犯だ。
今までの俺の状況、知っていやがった。
それでいながら見て見ぬふりをしてやがったな。
魔法で取ってやるけど。
ぐびぐびぐび。
お前のところなんて嫁に行ってやらん。
スヨスヨスヨ。
心地良い眠りに、胡乱な視線。
はっ、と目が覚めた。
ベビーベッドの柵に白いオコジョもどきが。。。
その姿はクロそっくりなのだが、本当なら白い方が膨張色のはずなのに、白の方がシュッとしている感じがする。目つきがツリ目だからかな?
ツリ目でも口がへの字でも可愛い。
これがシロ?
「シロ様だ」
俺の考えを読んだかのように、様を強調された。
クロはフレンドリーな感じを装っているが、シロ様はツンツンだ。シロ様の態度は人間を守ってやってる、お前らと馴れ合ってたまるかって感じだろうか。
なーんか扱い辛さはクロの方が圧勝の気がするんだが、気のせいだろうか。気のせいであってほしい。
手を一回にぎ、ってしておく。
気づくかなー、と思ったけど、シロ様はほんの微かに微笑んだ。
ささやか過ぎるほどささやかな笑顔だが、これはこれで。
たぶん嫁に行くのなら、シロ様の方が安全安心、堅実な気がする。
クロの方は面白い人生は歩めるだろうが、安全は確保されていない茨の道だ。クロは人を振り回すような気がする。
まあ、俺はどちらの嫁にも行かないけどね。
俺も母ちゃんみたいになるのだーーーっ、と思い訓練を。。。
うん、赤ちゃんだからね。できることなんて限られている。
すぐに疲れてスヨスヨと眠ってしまう。
今日は様子が違った。
いつもなら一人寂しくベッドで時間を潰す。
柵の上から覗いているクリっとした二つの目があった。
興味津々の目だ。
そして、この目は危ない。
その対象に興味を持たなくなると、途端に熱が冷めてしまう目でもある。
入社してきた社員でこういう目をしている者がいると要注意だった。彼らは仕事に興味を失うと、次の日ならばまだしも、昼食のために外へと出て行って連絡もなくそのまま帰って来ないことも多かった。仕事だからと仕方なしに続けていたり、お金や家族のために働いていた者は、そいつらにムカつきながらも、少々羨ましく思っていた者がいたのも事実だ。
うちはブラック企業だったから、さっさと逃げて良かったのかもしれないけど。。。
もちろん、過酷な勤務実態や職場環境の悪さに感づき、さっさと逃げるのも多かった。。。
でも、この子は可愛いから何でも許すー。
すぐにいなくなったら悲しいけど、いくらでも俺に会いに来てー。
オコジョみたいー。
ちょっと、オコジョとは違うのは耳の部分がない。頭は丸い。
で、オコジョのようにそこまでシュッとしていない。下半身がデプっとしている。オコジョをデフォルメして丸く潰して潰して可愛らしく描きました、って感じかなー?ぬいぐるみみたい。
全体的に黒い毛で覆われているけどお腹の部分だけが白い。
「うーん、なんかちょっとディスられている気がするんだけど、何でかなー」
話せるのっ。この動物っ。驚きっ。
動物だよね?魔物だったら冒険者が騒いでいるよね?
魔物や冒険者がいるのだから、この世界にはテイマーもいるのかもしれないなー。
柵を乗り越えて、オコジョもどきは俺のそばにやって来た。
「ぶ」
俺もこの子と意志疎通をしてみたかったけど、赤ん坊だった。。。
話せない。
あー残念。俺が成長するまで待っていてくれればなー。ずっとこの砦にいてくれるのかな?この動物、珍しいの?それとも、けっこうな数いるの?聞きたいのになー。
小さい爪がついている手を伸ばしてきてくれたので、俺も小さいぷよぷよ手で握る。
にぎにぎにぎにぎ。
あー、可愛い。
ペットって飼ってみたかったんだよね。社畜な俺にはそんな暇なかったけどさー。
「僕のこと超可愛いって思ってる?」
にぎ。
「僕のこと超賢いって思ってる?」
にぎにぎ。
「、、、僕のこと超絶カッコイイと思ってるーー?」
にぎにぎ。
「、、、おい」
にぎ一回が、はい。
にぎ二回が、いいえ。
だって、賢いところもカッコイイところもまだ見てないしー。
あ、動物で話せることは賢いのか?人間レベルで考えると話すだけじゃねー、と思ってしまったが。訂正するにも言葉が話せないと訂正できないなー。
しかも、この子、すぐに俺の意図を理解してくれたよ。やっぱり賢いんじゃね??
「やっぱり僕のこと超賢いと思っている?」
にぎにぎにぎ。
にぎ三回は、保留ってことにしよう。超、までつくほど賢いかは、やはり判断がつきかねる。賢いか、ならにぎっとしてあげたのに。
俺は正直者なんだ。
オコジョもどきは視線を一度上にやってから俺に戻した。
「じゃあ、僕は誰でしょう?」
知るかい。
にぎにぎにぎ。
保留&わからないときは三回にしよう。
「ふーん、そっかー」
ちっちゃい手が俺の頭を撫でた。
そういや俺、母ちゃん以外に撫でられたことなかったな。父親や兄二人もいたはずなのに。
「僕はクロだよー。クロって呼んでねー」
ほほー。黒の毛並みが艶々綺麗だからクロなのかな。
にぎ。ついでに笑っておいた。
「これからよろしくねー」
興味アリアリの目が俺を見ている。
クロはきっと気分屋だ。
気分が乗ったときだけでもいいから、俺に会いに来てくれるかなー。
話せない、何もできない赤ん坊だとすぐに飽きられてしまうかなー?
少し気長に俺と付き合ってもらいたい。
だって、母ちゃん以外は誰も俺にかまってくれないから。クロが現れて、はじめてそのことに気づいた。
「あらー、リアム。今日はクロ様に面倒見てもらったの?良かったわねー」
母ちゃんがベビーベッドにいる俺たちを見て言った。
クロ様?様?様づけ??
まだクロの手を握っていたので。
にぎにぎ。
面倒は見てもらってません。
「ぶふっ」
クロが吹き出した。
「ねえ、リーメル、この子、大きくなったら、僕のお嫁にもらえない?」
おおう、笑顔で何を言っているんだ、クロ。俺は男だぞ。
あ、お嫁にほしいくらい俺も可愛い?
他の冒険者が素通りするから、赤ちゃんってどんな子でも可愛いと思っていたけど、ベビーフェイスの笑顔でも俺だけは違うのかと自信を無くしていたところだったんだよ。鏡で自分の姿を見たこともないし。
「この子が成人して承諾すればもちろん良いですけど。メルクイーン男爵家とはいえ、この子は三男ですから夫も反対はしないでしょうし」
母ちゃん的には良いんだ。。。まあ、俺が承諾すれば、って話だし。
クロは雌って感じがしないんだが、、、雄だよね?嫁って言ってたし。
あ、母ちゃんが今、三男って言ったよー、ちゃんと聞いてたー?俺、男だよー。
「リアムー、大きくなるのを楽しみにしてるよー」
えっとー、ちゃんと聞いてましたー?
クロは嫁が男でも良いのかー?
ああ、話せないことが超もどかしい。
あーうーぶーしか言えん。
‥…━━━ΣΣΣ≡((((((*-ω-)ノ ハヨハナシタイ
母ちゃんに抱っこされて、家路につく。
その道すがら、母ちゃんは説明してくれた。
まあ、話が通じているとは思っていないだろうけど。
「リアム、ここの冒険者が守る砦には守護獣が一対いるの。それがシロ様とクロ様。さっきは小さかったけど、S級やSS級の魔物が砦の近くに現れると、砦の高さより大きくなって魔物と戦ってくれるの」
ほー、怪獣大決戦ですか。それはすごい。
「この砦には今、冒険者はA級までしかいないの。S級やSS級の魔物が来てしまったら、砦もこの街も、この男爵領さえも焦土と化してしまうくらいで、ここにいる人間では対処できない。そんな魔物を退治してくれるのがこの砦のすごい守護獣なの」
おー、クロはすごい守護獣だったんですなー。クロ様と呼んでいる母ちゃんの気持ちもわかる。
クロはかなりの頻度でベビーベッドまで俺に会いに来てくれた。
お腹が空いても母ちゃんが戻って来ないので、ミルクプリーズ、と俺がジタバタしても、クロは微笑んで見ているだけだ。
あ、コイツ、確信犯だ。
今までの俺の状況、知っていやがった。
それでいながら見て見ぬふりをしてやがったな。
魔法で取ってやるけど。
ぐびぐびぐび。
お前のところなんて嫁に行ってやらん。
スヨスヨスヨ。
心地良い眠りに、胡乱な視線。
はっ、と目が覚めた。
ベビーベッドの柵に白いオコジョもどきが。。。
その姿はクロそっくりなのだが、本当なら白い方が膨張色のはずなのに、白の方がシュッとしている感じがする。目つきがツリ目だからかな?
ツリ目でも口がへの字でも可愛い。
これがシロ?
「シロ様だ」
俺の考えを読んだかのように、様を強調された。
クロはフレンドリーな感じを装っているが、シロ様はツンツンだ。シロ様の態度は人間を守ってやってる、お前らと馴れ合ってたまるかって感じだろうか。
なーんか扱い辛さはクロの方が圧勝の気がするんだが、気のせいだろうか。気のせいであってほしい。
手を一回にぎ、ってしておく。
気づくかなー、と思ったけど、シロ様はほんの微かに微笑んだ。
ささやか過ぎるほどささやかな笑顔だが、これはこれで。
たぶん嫁に行くのなら、シロ様の方が安全安心、堅実な気がする。
クロの方は面白い人生は歩めるだろうが、安全は確保されていない茨の道だ。クロは人を振り回すような気がする。
まあ、俺はどちらの嫁にも行かないけどね。
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