男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社

文字の大きさ
189 / 207
10章 理不尽との戦い

10-3 男装の令嬢として帝国へ向かうことにする

しおりを挟む
「ところで、本当にオルレア・バーレイとして帝国に入国する?本当にそれでいいのか?」

「俺はいいが、やはりソイファ王太子殿下にとっては何か不都合があるのか」

 意志の確認をするということはそういうことだろう。
 婚約者に扮する者が好き勝手に動かれては困るのはソイファ王太子殿下だ。

「いや、俺にとっては好都合だが、イーティ・ランサスにとっては婚約者とイチャイチャできない状況になるのではないか。俺にとってはざまあみろっていう展開だが、オルトはそれでいいのか」

「まだ婚約者の段階でイチャイチャもないと思うが」

「うちやウィト王国では結婚するまでは婚約者でも手を出すことはない。が、帝国は別だ。あの国では女性は戦勝品であった時代もあるくらいだ。結婚しなくとも手を出すし、結婚するならなおさらだ」

 帝国でも皇帝や皇太子以外がそういった職業以外の女性に手を出した場合、結婚しなければかなりの示談金をふんだくられることになるが。
 どこの国でもそういう行為は結婚が前提である。
 反対にカラダを許した女性側が結婚を拒否した場合、結婚詐欺で訴えられることもある。ただ、そういう生業の女性に結婚詐欺だといくら言っても司法も国も相手にはしない。いくらお金を貢いでいたところで。

「つまり?」

「俺とオルレアは婚約者という立場だから同室ではないが、お前がオルレアとして振舞う限り俺と隣室の上、イーティ・ランサスと二人きりで会うのは難しくなるぞ」

 オルレアはソイファ王太子殿下の婚約者だから、そうなる。
 そのことは俺も普通に理解しているが。

「それはソイファ王太子殿下にとっての悪いことではないのでは」

「だから、俺にとっては好都合だと言ったんだ」

「では、良いということで?」

「お前が良いのなら、特にこれ以上は言わないぞー」

 笑顔ーん。
 これ以上ないほどの笑顔をいただきました。
 忠告はしたぞー、本人に言質は取ったぞーというお顔です。
 ソイファ王太子殿下の言いたいことがわからないでもないが。

 俺は今から戦いの場に行くようなものだ。
 イチャつく時間なんてあるのか?
 行くのはあの国なのだから。

 最強の盾を歓迎していない帝国だ。
 歓迎どころか喧嘩を売ってくる国である。
 取り込めないなら殺してしまえと考える輩ばかりだ。
 腹をくくって行かなければならない。

 味方が多い方がありがたいと思ってしまうのは、恥ずべきことだろうか。
 ソイファ王太子殿下は俺がオルトと知った上で協力してくれているのだから。

「そういやソイファ王太子殿下、ウィト王国への交渉は進んでいるのか」

「うーん、一進一退だね。アレをすぐにどうこうできるとは思ってないよ」

 アレ、と言葉を濁すのは、事情を知らないスレイもいるからであろう。
 スレイなら誰にも言わないだろうが、ソイファ王太子殿下がスレイのことをすぐに信頼できるかどうかは話が別だ。

「一応伝えておくけど、俺と、最強クラスのS級冒険者かS級魔導士が十人くらいいたならアレも何とかできるかもしれないよ。兄上がいなくとも」

「、、、それは国家予算が数年分吹き飛ぶ依頼料になるな。どこからその予算を捻出するかも頭の痛い問題だし、それだけの人数をソイ王国に呼ぶのも至難の業だな」

 確実にソイファ王太子殿下の頭の中では兄だけを動かした方が楽なのではという計算を弾き出している模様だ。
 最強クラスのS級というのはほとんどがどこかの国のお抱えである。ちょっとやそっとの交渉で貸し出してくれるほど甘いものではない。ないのだが。

「他国に恨まれても良いのなら、他にも手があることはあるけど」

「、、、他国に恨まれても、ってところが危険な案だな。今は聞かないでおく」

 聞いてしまえば、甘い誘惑に負けてしまうことがある。
 一国の責任ある立場にある人間が簡単に決断できることでもあるまい。

 それはソイ王国がどうにもならなかったときに聞く、最後の手段、最期の望みとも言えるのか。

「それはそうとして、ソイファ王太子殿下は婚約者が男装の令嬢でいいのか?」

 俺は男装のままのオルレアで行く。
 オルレアは普通にドレスも着るのだが、俺は着ない。

「それは別に良いよ。美し過ぎて他の男の目にとまるのが嫌だからと惚気ておく」

「それはありがとうございます」

「今回は国交がない国同士で非公式なものだからドレスコードはないし、男性の衣装としては満点なのだから皇帝に会うのにも問題はあるまい」

 その件に関して帝国に何も言わせないという強い意志を感じる。
 うんうん、外交というのは強気の姿勢が大切だよね。勉強になるなあ。

 他国の者の民族衣装でも貶したら他国の文化に喧嘩を売っているようなものだ。戦争になりかねない。
 ソイ王国と戦争したいのなら、帝国がやりかねないが。

「、、、ソイファ王太子殿下にはオルが婚約者のオルレアに扮することに何の利益もないようですが?」

 スレイが普段の表情で尋ねたが、その目は何を企んで許しているのか、という考えが含まれてそうだ。

「帝国なんて出会わなければ一番良いのだが、ルイジィが我が国に来てしまったのだからそうも言ってられなさそうだ。まあ、今回の訪問は嫌がらせの一環として、と、それとだな」

 一回ソイファ王太子殿下は言葉を切った。
 スレイも、話に参加しないグジもギルもごくんと唾を飲む。

「この可愛い緑の魔法の盾の御礼だよーーーーっっっ」

 はい、台無し。
 残念な王太子が爆誕。

 緑の魔法の盾も可哀想な子を見る目でソイファ王太子殿下を見ている。目はないけど。
 美味しいお菓子ですでに餌付けされているから文句は言わないが。文句を言う口もないけど。

「それに今回、オルはウィト王国の後ろ盾を得られない。帝国との話し合いはどうしても国が絡む。ならば、ソイ王国が我が義弟となるオルト・バーレイの後ろ盾として動く。それだけのことだ」

 ソファから立ち上がって真面目に言ったソイファ王太子殿下を、尊敬のまなざしで見るソイ王国国民グジとギル。
 さすがは我が国の王太子っ、という視線を送っている。

 スレイの表面上は変わらないが、反応としては少々呆けているというところか。
 、、、ウィト王国の上層部にはいないタイプだからな。

 帝国の皇帝とは別の人心掌握だ。
 彼は貴族にも庶民にも人当たりが良い。それは誰にでもできることではない。そして、それは身分差の大きいソイ王国では至難の業だ。

「オルト、夢幻回廊の一室は後日渡す。帝国に入る前日にでもまた打ち合わせをしよう。ではまた」

 ソイファ王太子殿下が消えると、部屋が馬車の内部に変わった。
 いい義兄だ。血がつながっていないのにも関わらず、いや、血がつながっていないからいい関係なのか?

「ソイファ王太子殿下はオルの味方という見方でいいのか?」

「敵にはならないだろうね。アレに対処できる者が減るのはソイファ王太子殿下にとっても得策ではない」

「俺は戦力にはならないのか?」

 スレイは俺を見た。
 アレが何かも知らずに。

「今は無理かなあ」

 と正直に言うと、スレイはガックリと肩を落とす。

「、、、二、三年後なら可能性はあると思うが、、、兄上が結婚して二人の息子が産まれてしまったら、俺の力も減衰していくはずだ。となると、ソイファ王太子殿下も交渉をそんなに長引かせるのは避けたいところだ」

 実はこの辺りが堂々巡りになりかねない問題点だ。
 兄上が結婚して子供を儲けたら、ウィト王国も国外に出すのも吝かではないだろうが、それでは兄上も最強の剣の力が衰えていくことを示している。
 双子ではない限り、俺より兄上の方が先に力は衰えてしまう。
 そうなってしまったら、力が足りない。
 子供が成長すればするほど、圧倒的に力が足りなくなる。ウィト王国は子供まで国外に出そうとはしないから。


 ソイ王国にとって時間制限のある交渉だ。
 次代の子供たちが成長するまで待つのもリスクが伴う。
 ウィト王国との交渉は、ソイファ王太子殿下の腕の見せどころだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜

陽七 葵
BL
 主人公オリヴァーの妹ノエルは五歳の時に前世の記憶を思い出す。  この世界はノエルの知り得る世界ではなかったが、ピンク髪で光魔法が使えるオリヴァーのことを、きっとこの世界の『主人公』だ。『勇者』になるべきだと主張した。  そして一番の問題はノエルがBL好きだということ。ノエルはオリヴァーと幼馴染(男)の関係を恋愛関係だと勘違い。勘違いは勘違いを生みノエルの頭の中はどんどんバラの世界に……。ノエルの餌食になった幼馴染や訳あり王子達をも巻き込みながらいざ、冒険の旅へと出発!     ノエルの絵は周囲に誤解を生むし、転生者ならではの知識……はあまり活かされないが、何故かノエルの言うことは全て現実に……。  友情から始まった恋。終始BLの危機が待ち受けているオリヴァー。はたしてその貞操は守られるのか!?  オリヴァーの冒険、そして逆ハーレムの行く末はいかに……異世界転生に巻き込まれた、コメディ&BL満載成り上がりファンタジーどうぞ宜しくお願いします。 ※初めの方は冒険メインなところが多いですが、第5章辺りからBL一気にきます。最後はBLてんこ盛りです※

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています

八神紫音
BL
 魔道士はひ弱そうだからいらない。  そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。  そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、  ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

処理中です...