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第6章 二人の愛と少年の嘆き

86・5時間目 知らない間に

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花園さんは指輪をさすりながら、照れた様子で、
「これはね、楓がくれたの。結婚しようって言ってね」
「「「えええええ!?!?!?」」」
三島さんがプロポーズしたことに俺たち三人は、驚きの声を重ねる。
マジで!? 楓さん男見せたんだなぁ。
いや、いつかこの二人は結婚するんだろうなとは思っていたから、プロポーズはすると思っていたんだけど、そっか……。
山内も敦志も驚いた様子だったが、山内が我にかえって、
「おめでとうございます。花園さん」
そう言った。
それに続けて敦志もお祝いの言葉をいい、俺も言った。
花園さんは、それらに照れながらも、
「えへへ……。ありがとう! 勉強、頑張ってね! 約束通り、美味しいもの作っちゃうからねー!」
嬉しそうに鼻歌を歌いながら、厨房へと向かった。
「……そっか。結婚か……」
「敦志、ご祝儀はいくら包めばいいかな?」
「気が早いわ」
敦志は、これからの事を考えてか、頬が緩んでいた。
まぁ、敦志たちビックリするくらい仲良いからこのまま結婚っていうのもあるよね。
確かに、気が早いけど。
「そういや、この前南の誕生日プレゼントを買ってよ」
敦志が唐突にそんな話題を切り出した。
「南ちゃんって……あぁ。敦志の従妹いとこの子だね。その子の誕生日プレゼントがどうかしたの?」
久しぶりに聞いた名前だった。
敦志の従妹の南ちゃんはたしか1年の頃の文化祭でメイドカフェをやった時に森山さんと来た子だったような。
「それで、もとは小春と遊ぶ約束だったから、小春と一緒に探しに行ったんだ」
なんだ、のろけか?
「それで、多機能シャーペンとクマのぬいぐるみ買った」
「へぇ……。多機能シャーペンか。文房具買うところが敦志らしいね。オシャレな文房具結構持ってるし」
敦志は中々センスがいい。
誰かに贈るものなんて、物持ちがよいものを選ぶし、山内も言った通り、文房具はオシャレなものが多い。
「それにしても、敦志、夏休みの予定はどうする? 三人で出掛けるのって最近減ったでしょ? 皆で集まるのも楽しいけど、三人でどっか行かない?」
俺は話題を変えて提案してみる。
「別に俺は大丈夫だけど。裕太はどうだ?」
「僕も大丈夫だよ。どこに行くんだい?」
「去年さ、敦志の家で集まって、遊んだ時に、来年は海行こうって話してたじゃない?」
「あったな」
「だから、夏休みの終盤、海行こう!」
「いいけど」
「いいね。日にちはまた調整しよう」
ひとまず、三人で遊ぶ予定が決まった。
この三人だけで遊ぶのは、1年の頃の以来だから、結構楽しみだ。
皆で集まるのも、もちろん、楽しい。
だけど、本当に信頼している人たちと遊ぶのは、もっと楽しい。
親友が知らない間にリア充でモテまくりだから、非リアな俺は慣れている三人での思い出を作っていきたいんだ。
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