テンプルム・ベルルム(聖域戦争)

ちょちょいのよったろー/羽絶 与鎮果

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第五章 【第8神話】

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 【ミステール】の話によると【第8神話】はいくつか別の名称があるとされている。
 【13方位神話】、
 【ハーレム神話】、
 【12女神1男神神話】、
 【修羅場神話】、
 【子作り神話】、
 【不妊神話】、
 ――等だ。
 【13方位神話】とは、
 (01)【中央(ちゅうおう)】を司る【男神】が、
 それ以外に、
 (02)【陸東(りくとう)】、
 (03)【陸西(りくざい)】、
 (04)【陸南(りくなん)】、
 (05)【陸北(りくぼく)】、
 (06)【海東(かいとう)】、
 (07)【海西(かいざい)】、
 (08)【海南(かいなん)】、
 (09)【海北(かいぼく)】、
 (10)【空東(くうとう)】、
 (11)【空西(くうざい)】、
 (12)【空南(くうなん)】、
 (13)【空北(くうぼく)】、
 の各方位に【女神】が居るとされているためつけられている。
 【ハーレム神話】とは、【男神】にとってはよりどりみどりの【ハーレム状態】である事からつけられていて、
 【12女神1男神神話】はそのまんまの意味、
 【修羅場神話】とは唯一の【男神】を巡って12【女神】が争う事が【神話】として描かれている事からつけられている。
 【子作り神話】とは【女神】達が様々な色仕掛けで【男神】を誘惑する事からつけられていて、
 【不妊神話】とは数多くの性行為が描かれていても【女神】が妊娠したという【エピソード】が存在しないことから、【男神】には【子種】が無く、どの【女神】も【子供】を授かる事が無かったとされていることから【不妊神話】と言う不名誉な呼び方もされている神話である。
 大まかな内容は以下の様になっている。
 ――【第8神話/13方位神話/ハーレム神話/12女神1男神神話/修羅場神話/子作り神話/不妊神話】――
 【中央(ちゅうおう)】を司る【男神】/【ツェーントル】が、誕生し、その廻りを固める【女神】として、
 【陸東(りくとう)】を司る【女神】/【マチリーク・ヴォストーク】、
 【陸西(りくざい)】を司る【女神】/【マチリーク・ザーパト】、
 【陸南(りくなん)】を司る【女神】/【マチリーク・ユーク】、
 【陸北(りくぼく)】を司る【女神】/【マチリーク・セーヴェル】、
 【海東(かいとう)】を司る【女神】/【モーリ・ヴォストーク】、
 【海西(かいざい)】を司る【女神】/【モーリ・ザーパト】、
 【海南(かいなん)】を司る【女神】/【モーリ・ユーク】、
 【海北(かいぼく)】を司る【女神】/【モーリ・セーヴェル】、
 【空東(くうとう)】を司る【女神】/【ネーバ・ヴォストーク】、
 【空西(くうざい)】を司る【女神】/【ネーバ・ザーパト】、
 【空南(くうなん)】を司る【女神】/【ネーバ・ユーク】、
 【空北(くうぼく)】を司る【女神】/【ネーバ・セーヴェル】、
 も同時に誕生した。
 この【神話】において、【男神】は【ツェーントル】1柱のみだったので、他の【女神】達はこの【ツェーントル】との間に【子供】を授かろうと様々なアプローチを仕掛けてくる。
 好色だった【ツェーントル】は、ほとんどその全てのアプローチを受け、【子作り】に励むが、他の【女神】の邪魔なども入り、【子作り】は一向に成功しない。
 そんな中、いくつか、どの【女神】に邪魔をされる事なく、行為が出来た【エピソード】もあるが、ついには最後まで【ツェーントル】との間の【子供】は誕生しなかった。
 とされる【神話】となっている。
 性行為に対する表現が生々しい【神話】であり、そう言う意味では、【ガラティア】の【11女神】が穢れてはいけない【偶像/アイドル】をモチーフとした【処女神】の【神話】と対極にある【神話】と言っても良かった。
 人間の間では【子供に聞かせられない神話】の筆頭になっている【神話】でもある。
 それを聞いた【一郎太】は、何だか恥ずかしくなったのだった。
 【ミステール】は、
「どうしました?
 顔が赤いですよ?」
 と聞いた。
 【一郎太】は、
「いや……
 これは、その……」
 とつぶやいた。
 【ミステール】は、
「ピュア……なんですね、あなた……」
 と言った。
 【一郎太】は、
「ぴゅ、ピュアって言われても……
 その……」
 と言った。
 何と言ったら良いのかわからずパニクっている。
 【ミステール】は、
「良いんですよ。
 照れなくても。
 下手にすれて無くて良いじゃないですか。
 僕は好きですよ。
 あなた、みたいな人……」
 と言った。
「お、男の人に好きって言われても……」
「そうですね。
 男に好かれても、仕方ないですかね?
 では、【フェスタア】さん。
 あなたはどうなんですか?
 こういう男性は好きですか?
 それとも苦手ですか?」
「旦那様をからかうのはやめてください。
 それ以上、この話題を続けるのは認めません」
「はいはい。
 そうでございますか?
 わかりました。
 やめておきましょう。
 ですが、大丈夫ですか?
 これから向かうのはその【第8ファーブラ(神話)】ですよ。
 祀られている【女神像】も当然、その【神話】をモチーフにしていますので、その……
 なんて言いますか……
 ホントに大丈夫ですか?」
「え、えぇ。
 大丈夫です。
 気にしないでください」
「良いんですね?」
「はい。
 かまいません」
「わかりました。
 では、【第8ファーブラ(神話)】へとご案内します」
 と言った。
 【ミステール】の案内の元、【一郎太】と【ガラティア】は、【第8ファーブラ(神話)】を訪れた。
 【一郎太】は、
「こ、ここが【第8ファーブラ(神話)】……」
 とつぶやいた。
 【ミステール】は、
「そうです。
 ここが【聖域】の1つ、【第8ファーブラ(神話)】になります。
 先ほどお話しした【第8神話】にまつわる【石像柱】が祀られている【聖域】です。
 見たところによると手つかずの場所みたいですね。
 ……いや……
 そうでも無いか……
 中央に居るべき【男神】の【石像柱】が無い。
 どうやら、【ツェーントル】のみが【肉体】を得て、出て行った様ですね。
 後の【12女神】はそのままになっていますね」
 と言った。
 彼が言うとおり、【12女神】の【石像柱】は男を惑わす様な【色っぽい】仕草をして、そのまま、立っている。
 この【聖域】では、中央に【男神】/【ツェーントル】の【石像柱】が立つ台座がおいてあり、
 東側に、上段、
 中段、
 下段、
 となっており、
 上段には【空東(くうとう)】を司る【女神】/【ネーバ・ヴォストーク】、
 中段には【陸東(りくとう)】を司る【女神】/【マチリーク・ヴォストーク】、
 下段には【海東(かいとう)】を司る【女神】/【モーリ・ヴォストーク】、
 ――の【女神像】が立っている。
 これは、上段は【空】、
 中段は【陸】、
 下段は【海】、
 を意味している。
 同じように、西側の――
 上段には【空西(くうざい)】を司る【女神】/【ネーバ・ザーパト】、
 中段には【陸西(りくざい)】を司る【女神】/【マチリーク・ザーパト】、
 下段には【海西(かいざい)】を司る【女神】/【モーリ・ザーパト】、
 南側の――
 上段には【空南(くうなん)】を司る【女神】/【ネーバ・ユーク】、
 中段には【陸南(りくなん)】を司る【女神】/【マチリーク・ユーク】、
 下段には【海南(かいなん)】を司る【女神】/【モーリ・ユーク】、
 北側の――
 上段には【空北(くうぼく)】を司る【女神】/【ネーバ・セーヴェル】、
 中段には【陸北(りくぼく)】を司る【女神】/【マチリーク・セーヴェル】、
 下段には【海北(かいぼく)】を司る【女神】/【モーリ・セーヴェル】、
 が祀られている。
 方位の【女神】なので、【中央】の【ツェーントル神像】を中心に、きっちり東西南北の方向に合わせて【女神像】が立てられているのだ。
 もちろん、【ガラティア】の時と一緒で、
 【ツェーントル】
 【マチリーク・ヴォストーク】、
 【マチリーク・ザーパト】、
 【マチリーク・ユーク】、
 【マチリーク・セーヴェル】、
 【モーリ・ヴォストーク】、
 【モーリ・ザーパト】、
 【モーリ・ユーク】、
 【モーリ・セーヴェル】、
 【ネーバ・ヴォストーク】、
 【ネーバ・ザーパト】、
 【ネーバ・ユーク】、
 【ネーバ・セーヴェル】、
 と言う【名前】は全てかりそめの【名称】である。
 これらとは別の【本名】を言い当てる事で、【ガラティア】の様に、【人化】して【パートナー】となる事が出来るのだ。
 【ガラティア】は、
「旦那様。
 何か名前を思いつかれましたか?」
 と聞いた。
 【一郎太】は、
「名前かぁ……
 ……名前ねぇ……
 う~ん……
 何も……
 何も思いつかないなぁ……
 君の時の様に、【本名】が頭に浮かばないよ」
 と言った。
 【ミステール】は、
「……やはり……【フェスタア】と言うのは【本名】では無いのですね?」
 と言った。
 【ガラティア】は、
「それは、その……」
 とつぶやく。
 【ミステール】は、
「【本名】を名乗らないという事に意味はありませんよ。
 意味があるのは、【一郎太】さんが死亡して、【聖戦】が終わり、あなたが再び【石像柱】に戻った時です。
 その時、【本名】を知っていたら、契約するのに必要となるでしょう。
 ですが、それは、100年後の話でしょ?
 その時にはさすがに僕は死んでいますよ。
 他の参加者も死んでますよ。
 だから、知られても問題ないと思いますけどね」
 と言った。
 【一郎太】は、
「それは……そうですね。
 実は彼女の名前は……」
 と言うと、【ガラティア】は、
「旦那様……
 それは……」
 と言って首を振った。
 名前を伝えないで欲しいと目で訴えていたのだった。
 それを察した【一郎太】は、
「……済まないが、【本名】は教えられないな。
 悪いけど、僕は彼女の事を人前では、【フェスタア】ちゃんと呼ばせてもらうよ」
 と答えた。
 【ガラティア】は、
「旦那様。
 ありがとうございます」
 と言って頭を下げた。
 【一郎太】は、
「それに、別に【本名】でなくても、呼び方さえ決まっていれば問題ないと思うけどね。
 違うかい?」
 と言った。
 【ミステール】は一瞬、まるで苦虫をかみつぶした様な表情になるが、すぐに平静さを取り戻し、
「そうですか……
 そうですね。
 わかりました。
 僕としては同行させていただければ結構ですので……」
 と言った。
 この男は何かを隠している。
 そんな気持ちになった【ガラティア】は【ミステール】に心を許さない様にしようと思うのだった。
 そんな訳で、【ガラティア】は【ミステール】に【本名】をさらさずにすんだのだった。
 【ミステール】は、
「では、この12柱の【女神】の【本名】を言い当ててくださいよ。
 僕は見学させていただきますので」
 と言った。
 【一郎太】が、
「あぁ、そうだね。
 じゃあ……」
 と言うと【ガラティア】は、
「旦那様……」
 と言って、首を横に振った。
 その仕草を見て、【一郎太】は、
「……あぁ。
 そうか。
 そう言う事か。
 あの……【ミステール】さん。
 同じ理由で、僕がこの【女神像】の【本名】を言い当てる時は遠慮してもらいたいんだけど……
 【女神像】の【本名】を知られるのはちょっと……」
 と言った。
 【ミステール】は、
(……ちっ……)
 とこっそり舌打ちをして、
「……そうですね。
 そうですよね。
 パートナーを決める、大事な儀式ですものね。
 わかりました。
 では、僕は席を外しましょう」
 と言った。
 【ガラティア】は、
「旦那様。
 私はこの方と一緒に席を外しますので、終わりましたらお声を掛けていただけますでしょうか?」
 と言った。
 【一郎太】は、
「え?
 あ……そうだね。
 そうしてくれる……かな?」
 と言った。
 【ミステール】は、
(……お見通しか……)
 と思った。
 席を外すと見せかけて、こっそり聞き耳を立ててみようと思った思惑が外れたのだ。
 そして、
「そうですね。
 あっち行って少し、お話しましょうか、【フェスタア】さん」
 と言った。
 【ガラティア】は、
「耳が良いとおっしゃられていましたよね?
 申し訳ありませんが、かなり離れていただきますよ。
 よろしいですね?」
 と言った。
 【ミステール】は、
「疑り深いなぁ……
 わかりましたよ。
 あなたの気が済む距離まで離れましょう。
 どこまで行けばよろしいですか?」
 と言いつつ、
(まぁ、良い……
 チャンスはまだあるだろう。
 今回は引いておくか……)
 と思っていたのだった。
 【ガラティア】は、
「では着いてきてください。
 離れますので……
 旦那様。
 申し訳ありませんが、5分ほどしてから契約をなさってください。
 急ぎ、離れますので」
 と言った。
 【一郎太】は、
「あ、あぁ。
 わかった。
 5分だね。
 了解です」
 と返事した。
「では、【ミステール】さん。
 着いてきてください」
 と言って【ガラティア】は【ミステール】を遠くに連れて行った。
 もちろん、【ミステール】の行動をチェックして盗聴器が無いことを確認しておくのも忘れていなかった。
 【ガラティア】と【ミステール】がその場を離れてから約5分後、【一郎太】は【12女神】の【本名】を言い当てる事に挑戦する事にした。
 【一郎太】は、
「さ・て・と……
 じゃあ、【本名】を当てさせてもらおうかな?
 ……と言ってもなぁ……
 これと言って思いつかないんだよなぁ~。
 名前……
 挑戦出来るのは【1女神】に対して1回のみ。
 そう言われるとプレッシャーが……
 ハズレたら、二度とパートナーには出来ないって言うし……
 どうしたものか……」
 と言った。
 そして、少し考える。
 どんな【本名】なのか?
 それについて色々と想像してみる。
 【カレン】、
 【クレア】、
 【ソフィア】、
 【エリー】、
 【エリザベス】、
 【マリア】、
 【リンダ】、
 【ユリナ】、
 【エッダ】、
 ~……色々女性名を考えて見る。
 だが、どの【名前】もしっくり来ない。
 どれも合っている様な気もするし、間違っている様な気もする。
 この名前にしようかな?と思うが、
 いやいやいや、違う。
 絶対に違う名前だと否定してしまう。
 そんな感じで、あーでもない、こーでもないと繰り返していった。
 しかし、いつまでも【ガラティア】達を待たせる訳にもいかない。
 【一郎太】は意を決して、【本名】を言い当てる事にした。
 【一郎太】は、
「で、では……【陸東(りくとう)】を司る【女神】から……
 行かせていただきます。
 【陸東(りくとう)】を司る【女神】の【マチリーク・ヴォストーク】――
 【本名】は……
 【ダリア】……
 どうだ……?」
 と言った。
 しばらく待つ。
 シーンと言う音が響く様だ。
 もう少し待つ。
 だが、やはりシーンと言う音が響きそうだった。
 【一郎太】は、
「……駄目か……
 ……ふぅ……
 じゃあ、次は【陸西(りくざい)】を司る【女神】を行きます。
 【陸西(りくざい)】を司る【女神】の【マチリーク・ザーパト】――
 【本名】は……
 【ケイト】……
 どうだ……?」
 と言った。
 しばらく待つ。
 やはり、何も反応が無い。
 これもハズレの様だ。
 続けて、
「じゃあ、次は【陸南(りくなん)】を司る【女神】だね。
 【陸南(りくなん)】を司る【女神】の【マチリーク・ユーク】――
 【本名】は……
 【アニー】……
 今度こそどうだ?」
 とつぶやいた。
 だが、やはりハズレだ。
 その後、
 【陸北(りくぼく)】を司る【女神】の【マチリーク・セーヴェル】の【本名】として【メリー】→【ハズレ】、
 【海東(かいとう)】を司る【女神】の【モーリ・ヴォストーク】の【本名】として【シンシア】→【ハズレ】、
 【海西(かいざい)】を司る【女神】の【モーリ・ザーパト】の【本名】として【マリー】→【ハズレ】、
 【海南(かいなん)】を司る【女神】の【モーリ・ユーク】の【本名】として【リサ】→【ハズレ】、
 【海北(かいぼく)】を司る【女神】の【モーリ・セーヴェル】の【本名】として【エリナ】→【ハズレ】、
 【空東(くうとう)】を司る【女神】の【ネーバ・ヴォストーク】の【本名】として【ローザ】→【ハズレ】、
 【空西(くうざい)】を司る【女神】の【ネーバ・ザーパト】の【本名】として【マリン】→【ハズレ】、
 【空南(くうなん)】を司る【女神】の【ネーバ・ユーク】の【本名】として【サリナ】→【ハズレ】、
 【空北(くうぼく)】を司る【女神】の【ネーバ・セーヴェル】の【本名】として【フレア】→【ハズレ】
 ――と12連続【ハズレ】だった。
 終わって見れば、言い当てられた【女神】の数は【0】だった。
 【一郎太】は、
「……そりゃ、そうか……
 そうだよな……
 簡単に【本名】が言い当てられる訳、ないよな……
 なぁんだ。
 そっか……
 そうだな……
 ……なんか、ホッとしたっていうか残念って言うか……
 がっくり来たかな……
 力が抜けたって言うか……
 複雑な気持ちだな……」
 とつぶやいた。
 そして、
「あ、そうだ。
 おーい、終わったよ~。
 全部、終わったよぉ~」
 と大声とジェスチャーで【ガラティア】達を呼んだ。
 それに気付いた【ガラティア】と【ミステール】は戻ってきた。
 【ガラティア】は、
「旦那様。
 いかがでしたか?」
 と尋ねた。
 【一郎太】は、
「いやぁ~……
 駄目だったよ。
 やっぱり簡単には上手く行かないものだね。
 ひょっとしたら1柱くらい……と思っていたけど、全然駄目だった。
 試しに12回、別の【名前】で呼んでみたけど、全然、反応が無かったよ。
 どうやら、この【聖域】とは縁が無かったようだね。
 残念だけど、ここでする事は終わってしまったよ。
 結果が残せなくて済まない」
 と詫びた。
 【ガラティア】は、
「そう……ですか……
 それは残念でしたね。
 私こそ、力になれず申し訳ありません」
 と言った。
 【一郎太】は、
「いやいやいや……
 君に謝られるとかえって心苦しいよ。
 僕が不甲斐ないのがいけないんだ。
 どうか、頭を上げて欲しい」
 と言い合っていると、
「ちょっと、良いですか?」
 と言う声が。
 【ミステール】だった。
 【一郎太】が、
「あ、済みません。
 何でしょうか?」
 と聞いた。
 【ミステール】は、
「本当に全部、駄目だったんですか?」
 と聞き返す。
 【一郎太】は、
「えぇ。
 駄目でした。
 12回試しましたが、全部、何の反応も無くて……」
 と言った。
 【ミステール】は、
「そう……ですか……
 どうやら、僕の見立て違いだった様ですね。
 すみません。
 悪いんですけど、僕はこれで失礼します。
 どうも、お世話になりました」
 と言った。
 【一郎太】は突然の申し出にポカンとして、
「え?
 あの……
 それはどういう……?」
 と聞くと、【ミステール】は、
「どうやら、人違いだった見たいですね。
 済みません。
 勘違いでした。
 なので、気になさらないでください」
 と言う。
「いや……
 気になさらないでと言われても、気になる言い方と言いますか……」
「いやね……
 僕はあなたに期待していたんですよ。
 あなたなら複数の【神】を【人化】出来るってね。
 でも、12【柱】もいた【女神】全ての【本名】を言い当てられなかった。
 だったら、あなたにはこれ以上の【女神】の【本名】を言い当てる事は不可能。
 僕はそう、判断しました。
 だから、これ以上、あなたに付き合っていても僕には何のメリットも無さそうなので、おいとまさせていただこうかな?
 ――と、まぁ、そう思った次第なんですよ……」
「はぁ……
 そうなんですか?
 それは、また、急な話で……」
「そうですね。
 急な話ですよね?
 お詫びと言ってはなんですが、後、1つくらいなら【神話】をお話しても良いですよ。
 どうします?」
「あ、いえ……
 あなたの方にメリットが無いのに、それをお聞きする訳にはいきません。
 ありがとうございます。
 お気持ちだけいただきますよ。
 【第8神話】だけでもわかって助かりました」
「そうですか?
 では失礼しますね」
「えぇ。
 お元気で」
「えぇ。
 さようなら。
 【フェスタア】さんもお元気で」
「【ミステール】さんも……」
「はい……」
 と言った。
 こうして、【ミステール】は立ち去った。
 彼が立ち去ってからしばらくすると、【一郎太】と【ガラティア】が通りかかった所が崩落した。
 咄嗟の判断で、【ガラティア】が【一郎太】を抱え、真横に飛び乗ったから助かったものの、一歩間違えれば、【一郎太】は瓦礫の下敷きになる所だった。
 【ガラティア】は、
「あの男……」
 とつぶやいた。
 【一郎太】は、
「偶然……かな?」
 と言うが、【ガラティア】は、
「いいえ、旦那様。
 これはあの男の仕業です」
 と答えた。
 邪魔者を排除しようとした?
 そんな疑いの残る出来事だった。
 【ガラティア】は【一郎太】との進行方向に罠を仕掛けたと読んでいたのだった。
 その予想は当たっていた。
 【一郎太】達から見えない死角で罠が作動したところを見ていた【ミステール】は、
「ちっ……。
 くたばらなかったか。
 ……まぁ、良い。
 あの程度の奴ならば、この先、俺の邪魔になることもあるまい……
 誰かとあたってやられるのがオチだ。
 放っておくか……」
 と言った。
 一人称が【僕】から【俺】に変わっている。
 どうやら、【一郎太】達と居た時は猫を被っていたようだった。
 【ミステール】はそのまま、どこかへと消えて行ったのだった。
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