エッセイ「センチメンタル・ジャーニー」

銀の虹 ワイキキ（ハワイ州・米国）

　「ハワイなんてダサ」

　それは本当のハワイを知らない人だ。

　「ねえ、きくりんは世界中行ったんでしょう？　どこが一番良かった？」
　「ハワイ」
　「へえ～、ハワイなんだ。意外」

　ガッカリされる。
　でも私はハワイが好き過ぎて、今までに4回は行った。

　初めての海外がハワイだったこともあるが、ここは日本から簡単に行ける、すばらしい楽園である。
　蛇がいない、マングースに食べられちゃったそうだ。
　Tシャツと短パン、そしてビーサンでいい。

　横浜に繋がれている帆船「日本丸」で、40日くらいかけて行った。

　途中、機関部の職員さんが海に落ちて行方不明になってしまった。
　一週間捜索したが、ご家族の方から「ご迷惑をお掛けしてすみませんでした、そのまま実習航海をお続け下さい」と言われ、太平洋で洋上葬儀をした。
　海で死ぬということはこういうことなのかと知った。


　夜、レーダーでハワイをランドフォール（陸岸の発見）し、錨を降ろした。


　朝、甲板に出ると衝撃の光景が広がっていた。
　ボートが空に浮いていたからだ。
　正確には海に浮いているのだが、海の透明度が高すぎて、船底が見えていたのだ。


　ハワイは空気がいい、焼け付く太陽と乾いた風、そして波の音。
　海から見る夜景は宝石をばら撒いたようだった。

　私はハワイで「Moonbow（月夜の虹）」を見たことがある。
　本が読めるほどの月明かりがスコールを照らす、するとそこに「銀の虹」が架かるのだ。
　感動のあまり、私は言葉を失った。


　私の夢はハワイで居酒屋をやりながら、観光船の船長をすることだった。
　そして日本からハネムーンでハワイにやって来た新婚さんたちに、「人生というものはなあ」と偉そうに説教したい。

　ハワイについてはハワイだけで本が書けてしまう。