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第2話
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家族がすべてだった。少しでもいい服、美味しい食べ物、家族が乗れる乗り心地の良いクルマ、広い家。そして子供たちへの最高の教育。そのためにはカネが必要だった。私は子供の日と結婚記念日しか休まずに働き、家に帰るのはいつも深夜の午前2時過ぎだった。
そんな私のために時枝は子育てや家事でクタクタなのに、起きて来て食事の支度をしてくれた。
子供たちの寝顔を見ているだけで心が癒やされ、仕事の疲れや苦労も忘れることが出来た。
「よく寝ているでしょう? 今日はね、子供たちと公園に行って遊んで来たの。もう帰るわよって言っても全然ダメ。「もっと遊びたい」って何度も何度もすべり台に乗って遊んでいたわ」
「いつもありがとうな」
「別に。この子たちといると楽しいもん」
子供がいて本当に良かったと思った。
朝、時枝は秀一と彩を起こして私を見送る。
「ほらパパに行ってらっしゃいのチュウは?」
「パパ、行ってらっしゃーい」
「パパ、また明日ね」
秀一は私が今夜も仕事で帰って来ないことがわかっているからまた明日の朝に会おうというのだった。
そして時枝とキスをして出掛けるのが毎日の俺たち家族のルーティンだった。
クリスマス・イブは私たち家族の一大イベントだった。
子供たちが欲しいプレゼントにはいつも苦労した。
妻の時枝が子供たちの望む物を子供たちになるべく悟られずに下調べをする。
「何が欲しいの?」
ではダメだ。彼らが欲しいと心に願う物をサンタクロースが届ける奇跡が大切だからだ。
彩の欲しい物は彼女を見ていればわかるが秀一は考えが現実的なので中々難しい。時枝は秀一にこう言った。
「サンタさんにお手紙を書いて窓に貼っておけばいいんじゃない?」
秀一はそれを素直に実践した。彼は「プレイステーションをお願いします」とサンタに宛てて手紙を書いて窓に貼り付けた。 サンタクロースの私に見えるように。
プレステは容易に手に入れることは出来たが問題は彩の『カードキャプターさくら』の魔法のバトンだった。
仕事に追われていた私はクリスマス・イブの当日、おもちゃ屋に出掛けたがバトンがない。
どうも人気らしく、どこのおもちゃ屋も売り切れだった。
私は焦った。娘の彩をガッカリさせるわけにはいかない。私は県内すべてのおもちゃ屋をくまなく歩いた。
そしてまるで映画のように最後の小さい街のおもちゃ屋でその魔法のバトンを見つけた時は思わず涙ぐんでしまったほどである。
時枝の作ったクリスマス料理と大きなケーキを子供と時枝は楽しんだ。
私はクリスマスも仕事だったがその日は午前零時には帰宅した。
子供たちはよく眠っていた。私はクルマのトランクからリボンを掛けたプレステと『カードキャプターさくら』の魔法のバトンを運び入れ、そっと秀一と彩の枕元に置いた。
私と時枝は顔を見合わせキスをして笑った。
「今年も間に合ったわね?」
「そうだな? 魔法のバトンにはヒヤヒヤしたけどな」
それからが私たち夫婦のクリスマスだった。私と時枝は安いスパークリングワインで乾杯をした。
翌朝、時枝が子供たちを起こすと、
「秀一、彩、早く起きなさい! ほら、サンタさんがプレゼントを届けに来てくれたみたいよ」
「サンタさん? お母さんは見たの? サンタさん」
「サンタさんは誰にも見えないのよ、神様だから」
子供たちは時枝を「お母さん」と呼び、私をパパと呼んだ。
そう時枝が教えたからだ。
確かに私には「お父さん」という威厳はない、親しみやすい「パパ」が似合っていた。
そしてプレゼントを見つけた時の子供たちの顔が堪らなかった。
驚いて飛び起きるとリボンの掛けられたラッピングを大急ぎで解き、歓喜する秀一と彩。
「プレイステーションだ!」
「魔法のバトンだよ! お兄ちゃん!」
私と時枝の最高の瞬間だった。
私は子供をもうけて本当に良かったと思った。
子供たちが中学に上がるまでこのイベントは続けた。
おそらく彼らはずっとサンタクロースを信じていたに違いない。
そんな私のために時枝は子育てや家事でクタクタなのに、起きて来て食事の支度をしてくれた。
子供たちの寝顔を見ているだけで心が癒やされ、仕事の疲れや苦労も忘れることが出来た。
「よく寝ているでしょう? 今日はね、子供たちと公園に行って遊んで来たの。もう帰るわよって言っても全然ダメ。「もっと遊びたい」って何度も何度もすべり台に乗って遊んでいたわ」
「いつもありがとうな」
「別に。この子たちといると楽しいもん」
子供がいて本当に良かったと思った。
朝、時枝は秀一と彩を起こして私を見送る。
「ほらパパに行ってらっしゃいのチュウは?」
「パパ、行ってらっしゃーい」
「パパ、また明日ね」
秀一は私が今夜も仕事で帰って来ないことがわかっているからまた明日の朝に会おうというのだった。
そして時枝とキスをして出掛けるのが毎日の俺たち家族のルーティンだった。
クリスマス・イブは私たち家族の一大イベントだった。
子供たちが欲しいプレゼントにはいつも苦労した。
妻の時枝が子供たちの望む物を子供たちになるべく悟られずに下調べをする。
「何が欲しいの?」
ではダメだ。彼らが欲しいと心に願う物をサンタクロースが届ける奇跡が大切だからだ。
彩の欲しい物は彼女を見ていればわかるが秀一は考えが現実的なので中々難しい。時枝は秀一にこう言った。
「サンタさんにお手紙を書いて窓に貼っておけばいいんじゃない?」
秀一はそれを素直に実践した。彼は「プレイステーションをお願いします」とサンタに宛てて手紙を書いて窓に貼り付けた。 サンタクロースの私に見えるように。
プレステは容易に手に入れることは出来たが問題は彩の『カードキャプターさくら』の魔法のバトンだった。
仕事に追われていた私はクリスマス・イブの当日、おもちゃ屋に出掛けたがバトンがない。
どうも人気らしく、どこのおもちゃ屋も売り切れだった。
私は焦った。娘の彩をガッカリさせるわけにはいかない。私は県内すべてのおもちゃ屋をくまなく歩いた。
そしてまるで映画のように最後の小さい街のおもちゃ屋でその魔法のバトンを見つけた時は思わず涙ぐんでしまったほどである。
時枝の作ったクリスマス料理と大きなケーキを子供と時枝は楽しんだ。
私はクリスマスも仕事だったがその日は午前零時には帰宅した。
子供たちはよく眠っていた。私はクルマのトランクからリボンを掛けたプレステと『カードキャプターさくら』の魔法のバトンを運び入れ、そっと秀一と彩の枕元に置いた。
私と時枝は顔を見合わせキスをして笑った。
「今年も間に合ったわね?」
「そうだな? 魔法のバトンにはヒヤヒヤしたけどな」
それからが私たち夫婦のクリスマスだった。私と時枝は安いスパークリングワインで乾杯をした。
翌朝、時枝が子供たちを起こすと、
「秀一、彩、早く起きなさい! ほら、サンタさんがプレゼントを届けに来てくれたみたいよ」
「サンタさん? お母さんは見たの? サンタさん」
「サンタさんは誰にも見えないのよ、神様だから」
子供たちは時枝を「お母さん」と呼び、私をパパと呼んだ。
そう時枝が教えたからだ。
確かに私には「お父さん」という威厳はない、親しみやすい「パパ」が似合っていた。
そしてプレゼントを見つけた時の子供たちの顔が堪らなかった。
驚いて飛び起きるとリボンの掛けられたラッピングを大急ぎで解き、歓喜する秀一と彩。
「プレイステーションだ!」
「魔法のバトンだよ! お兄ちゃん!」
私と時枝の最高の瞬間だった。
私は子供をもうけて本当に良かったと思った。
子供たちが中学に上がるまでこのイベントは続けた。
おそらく彼らはずっとサンタクロースを信じていたに違いない。
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