★【完結】歌姫(後編)作品230824

菊池昭仁

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第三楽章

第4話 東京湾クルーズ

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  マリア・カラスを愛したギリシャの海運王、オナシスもまた数々の名言を残している。


        「私には友人も敵もいない 
        みんなライバルだと思っている」


 彼は孤独だった。バイ・セクシャルでもあったオナシスは、マリア・カラスに夢中になった。彼は人の癒しが欲しかったのだ。
 オナシスは自分の所有する大型客船で、マリア・カラスを地中海クルーズに招待し、当時35歳だったマリア・カラスを口説き落とした。
 マリア・カラスの名声が不動のものとなり、マリアの母、エヴァンゲリオンは娘のマリアにカネの無心をするが、マリアがその願いを拒絶すると、「恩知らずな娘だ!」と彼女を酷く非難し、マリア・カラスは世間の誹謗中傷に晒され、心身が疲弊していた。
 弱り切っていたマリア・カラスは、エネルギッシュなオナシスに頼ってしまう。

 ふたりとも既婚者だったが、マリア・カラスとオナシスは当初、お互いに離婚して再婚することを真剣に考えていたらしい。
 ギリシャとアルゼンチンの国籍を持つオナシスの離婚は容易だったが、イタリア国籍のマリア・カラスの夫、メネギンとの離婚は困難を極めた。


   「あなたのためなら歌うことを辞めても構わない」

 
 9年間にも及ぶ蜜月の果て、オナシスは突然ジョン・F・ケネディの未亡人、ジャクリーン・ケネディと再婚してしまう。
 ダラスでケネディが暗殺された時、オープンカーの後部に飛び散ったケネディの脳味噌と頭蓋骨の破片を必死に拾い集めている姿からは想像出来ないが、マリリン・モンローと不倫関係にあった夫、ケネディに不満があったのは確かだ。
 モンローはケネディとのピロートークで聞いた、国家機密などをポエム形式で手帳やルーズリーフに記していた。
 世に言う『マリリン・モンローの赤い手帳』である。
 それを読むと、いかにマリリン・モンローが孤独であったかが窺える。


    「Alone! 私は独りぼっち いつだって独りぼっち
    どうしようもなく」


 ジャクリーンは大統領の妻として、苦悩を抱えていた。
 マリア・カラスはショックのあまり、自殺未遂を起こしてしまう。
 ジャクリーンの連れ子たちとは良好な関係だったオナシスも、ジャクリーンとの夫婦関係は冷めていたようだ。
 そして2年後、彼女は病死してしまい、オナシスもジャクリーンの死後から5年、筋無力症が元で亡くなってしまう。
 かつてオナシスが電話交換手をしていた時に得た会話情報を基に株の売買を行い、その潤沢な資金により船舶を買い漁り、前妻の実家が海運業をしていたこともあり、オナシスは瞬く間に富豪への階段を駆け上がって行く。
 だからこそ、お互いどん底から這い上がって来た者同士、マリア・カラスとも理解し合えたのかもしれない。
 ふたりはお互いに孤独だったのだ。
 マリア・カラスはこう言っている。

   
    「女の使命は男を幸福にすること」

 
 それは使命ではなく、マリア・カラスにとってオナシスは、彼女の生甲斐だったのかもしれない。


 


 その日、私は母の夢を見ていた。
 観客のいない大きなコンサートホールで、母はベートーヴェンでもショパンでもなく、ラヴェルを弾いていた。

    『亡き王女のためのパヴァーヌ』

 とてもやさしく、悲しい母のピアノに私は泣いていた。
 パヴァーヌとはレクイエムの類いではなく、フランス語で言うところの舞踏曲であり、当時、ルーブル美術館に飾られていた、17世紀のスペインの宮廷画家、ベラスケスの描いた幼い王女、マルガリータの肖像画にインスピレーションを得て作曲したピアノ曲だと言われている。
 ト長調の四分の四拍子。パトロンであったポリニャック公爵夫人のために作曲したピアノ曲だが、周囲からはあまり評価はされず、そして自分自身も「好きではなかった」と言っている。
 ラヴェルが晩年、失語症になって脳が衰えた時、この曲を聴いた彼は、「なんて美しい曲だ。これを作曲したのは誰だね?」と訊ねたという逸話が残されている。
 

 私は目を覚ました。錬三郎はまだ眠っている。
 子供のようにあどけない寝顔の錬三郎に、私はキスをした。
 大好きな人が傍にいてくれる安心感。ママと悟さんも、天国できっとしあわせに暮らしているはずだ。
 
 時計を見るとまだ朝の4時だった。5時半からのジョギングにはまだ時間があったので、錬三郎に寄り添い、私は微睡まどろんでいた。
 すると、錬三郎も目を覚ました。

 「んっ、んーん。今何時?」
 「ごめんなさい、起こしちゃったわね? まだ4時よ」
 「ジョギングの時間にはまだ早いね?」
 「うん」

 私は錬三郎の胸に顔を載せた。

 「錬三郎の心臓の音が聴こえる。ドクン、ドクンって」
 
 錬三郎は私の髪をやさしく撫でてくれた。

 「僕は長生きしなきゃいけない。琴子を守るために。僕は君より絶対先には死なないよ」
 「私も長生きして錬三郎を守ってあげる」
 「じゃあ一緒に長生きしよう、120才まで」
 「うん、長生きしよう。
 さっきママの夢を見ていたの。大きなホールで『亡き王女のためのパヴァーヌ』を弾いていたわ」
 「ラヴェルの?」
 「そう、とてもやさしく弾いていた。ママがラヴェルを弾いているのを初めて見たわ」
 「僕も好きだよ、あの曲は。切なさの中に美しさがあって」
 「私も好き。錬三郎のことも大好き」

 私は錬三郎にキスをし、彼の下腹部に触れた。

 「ここ、硬くなってるよ?」
 「朝立ちだね?」
 「おしゃぶりしてあげようか?」
 「僕が舐めてあげようか? 琴子のアソコ」
 「じゃあ舐めあいっこしようよ、ジョギングに行くまで」
 
 彼は私のパジャマとショーツを一緒に脱がし、私も錬三郎の勃起したペニスを取り出すため、パジャマごとパンツを脱がせ、私は彼のペニスを口に咥えると、錬三郎の顔に跨り、私自身を彼に委ねた。
 彼はその感触に満足すると、ピチャピチャと音を立てて私のそこを舐め始めた。
 私たちはシックスナインの体位を取った。
 朝方の寝室に響き渡る淫らな音とお互いの切ない声。
 私は錬三郎の絶妙な舌使いに翻弄され、思わず口から彼の物を外してしまった。

 「あん、ちょっと、反則、だよ。集中、出来なくて、あん、うっ、出来なくなって、お口から、出しちゃった、じゃないのおー。はうっ・・・」

 すると彼はより丁寧にクンニリングスを始めた。

 (欲しい・・・)

 「お願い、入れて」

 彼は無言で私の股を広げると、ゆっくりと硬くなったペニスを私の中に挿入して来た。
 彼の大きくなったそれが、メリメリと私の中へと進入し、律動を開始した。
 突き抜けてゆく激しい快感。

 「あ、あ、あっ、いい、すごく・・・」

 彼の腰の動きに合わせるように、私は喘いだ。
 彼の物が私の中に出し入れされて約5分が経過した頃、遂に私は絶頂を迎えそうになった。

 「いきそう! いくっ! くっ、くうーっ、はっ、ダメ!」

 すると錬三郎の動きがさらに加速され、

 「いっしょにね?」

 そう言って私たちはほぼ同時に果てた。
 私の中は収縮を繰り返し、ドクンドクンと彼の精液が私の中に送り込まれて行った。


 ようやくそれが収まって、彼はティッシュで私のアソコを丹念に拭き取ってくれた。私は彼のペニスを口に含んで綺麗に舐めてあげた。

 「ジョギングする前に運動しちゃったね?」
 「ばか・・・」

 本当のセックスとは愛の延長線上にあるものだ。輝信とのセックスはただの義務であり、無理矢理の拷問だった。そこに女としての歓喜はない。
 東の空が少しずつ明るくなって来た。
 



 週末の日曜日、錬三郎の所有するクルーザーで、葵さんとレイさん、そしてレイさんの藝大時代の後輩の5人で、東京湾をクルージングすることになった。
 レイさんが彼を紹介してくれた。

 「この子ね、私の藝大の後輩の鹿田ちゃん。イケメンでしょう? ダメよみんな、手を出しちゃ。私のカワイイ彼なんだからあ」
 「それ、みんなにっておかしいわよ。だって私は男に興味がないもの。危ないのは琴子と錬三郎よ。ふたりともわかった?  
 ダメだってよ、
 「僕は琴子に夢中だから大丈夫」
 「私も錬三郎がだーい好きだもん」
 「あらあら、いいわよここでしても。みんなで見ててあげるから。あはははは」
 
 鹿田君は笑ってはいたが、どうやら本当にレイさんの彼氏さんのようだった。

 「初めまして鹿田悠斗しかだゆうとです。どうぞよろしく」
 「この子ね、プロのサックス・プレイヤーなの。サックスよ琴子, Sex playerじゃないからね? あはははは。ボストンのバークリーに留学して専門はJAZZ。今、注目のジャズ・サックス奏者なのよ」
 「大丈夫、私は錬三郎で十分満足しているから」
 「あら、そっちの方なら私の方が錬三郎よりも上手よ。試してみる?」

 葵さんは私を熱く見て笑った。

 「遠慮しておきます。私、浮気はしないので」
 「馬鹿ねえ? 恋愛に浮気も本気もないでしょう? みんな本気よ、命懸けなんだからあ」

 (そうだ、恋愛は遊びではない。命懸けでするものだ)

 「いいお天気で良かったわねー。水着持って来れば良かった」

 と、葵さんが言った。

 「来月もまた来ましょうよ、今度は千葉の館山とかいいんじゃなあい?」
 「あそこは海も綺麗だし、魚も釣れるしね?」
 「よし、出港だ。「Leavinng Port , All station!  Stand by Single  Up!(総員、出港用意!)」
 「Yes,Sir. Stand by,Single Up 、Sir!(船首のロープだけにすること)」

 船尾の舫綱もやいづなを外し、クルーザーは離岸した。

 「Dead Slow Ahead(微速前進)」

 錬三郎はスロットルレバーを倒し、船はゆっくりとマリーナを後にした。海風がとても気持ちがいい。

 「Full Ahead(全速前進)」

 船は次第に速力を上げ、私は船を真剣に操縦している錬三郎の横顔に見惚れていた。

 「琴子、船酔いは大丈夫?」
 「お船には初めて乗ったけど平気みたい。錬三郎はお船も運転出来るんだね?」
 「父親が好きだったんだ。だから僕も自分の船を所有することにしたんだよ」
 「お船の免許って取るの難しいの?」
 「大型船の海技試験は論文形式だけど、小型船舶は簡単だよ。琴子も取ればいい。すごく気持ちがいいよ、クルマの運転と違って。少し操縦してみるかい?」
 「えっ、いいの?」
 
 そう言って錬三郎は私に操舵輪を持たせてくれた。

 「船はね、右をStarBoard、左をPortというんだ。
 このコンパスが155°になるように操縦してご覧」

 私はそのまま何もせずにしていると、船がどんどん右に流され始めた。

 「舵をそのままにしているのに船が真っすぐ走らないよ。錬三郎、早く代わって頂戴!」
 「船はね? そのまま真っすぐには走れないんだよ。プロペラが時計回りに回転しているから、その水流が舵の下の部分に当たって抵抗になり、船が右に回ってしまうんだ。
 だからこうして「当て舵」と言って、少しどちらかに舵を取る必要がある。こんな風に」

 すると船が真っすぐに走り出した。

 「そして船は風や潮流の影響を受ける。それをLee WayとTide Wayという。ほら、おいで琴子」

 錬三郎は私に再びWheel(操舵輪)を握らせると私の後ろに立ち、私に手を添え舵輪を巧みに操作して船を直進させた。
 
 「凄い凄い! お船が真っすぐ走ってる!」

 それをみんなも見ていた。

 「琴子、中々いいカンジよ、Steady(そのまま直進せよの号令)!」
 「お船の操縦って楽しいですね?」
 「1級小型船舶操縦士の資格を持っていないのは琴子と悠斗だけよ。私と錬三郎、葵もみんな持っているわ。葵の家はこれより大きなクルーザーも持っているしね? 琴子と悠斗も一緒に免許を取りに行って来なさいよ。1級免許。おバカな芸能人でも取れるんだから、アンタたちなら朝飯前よ。あはははは」

 悠斗が言った。

 「僕も欲しいなあ、船舶免許。琴子さん、一緒に取りに行きませんか?」
 「え? 私はいいかなあー、錬三郎が持っていればそれで。どうせ乗せてもらえるし」
 「行っておいでよ、琴子も免許を取れば安心だから。
 万が一、僕が操船出来なくなっても帰って来られるから。
 海上保安庁のお世話になるのも悪いしね?
 飛行機のパイロットだって2人いるだろう? 安全のために」
 
 私は錬三郎の勧めに従い、鹿田君と1級小型船舶の免許を取りに行くことになった。
 


 船はレインボーブリッジを越えて品川埠頭とお台場の間を進み、大井のコンテナターミナルを右手に見て、羽田沖に出た。
 飛行機の爆音と地上すれすれを飛ぶ飛行機。

 海から見る景色もいい物だと私は思った。
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