【完結】パパはエイリアン(作品250621)

菊池昭仁

文字の大きさ
9 / 10

第9話

しおりを挟む
 その夜、パン・ドラミは麻莉亜の部屋で麻莉亜と一緒に寝た。

 「ねえ、パン・ドラミ、本当に地球はなくなっちゃうの?」
 「そうだよ、なくなるね」
 「なんとかならないの?」
 「ならないね」
 「どうしても?」
 「麻莉亜は死ぬのがそんなに怖い?」
 「怖いけど、もっと怖いのは大好きなママやパパも親友の沢尻エレナに中森彩菜、それに百恵ちゃんも死んじゃうなんてイヤだよ。エヴァンゲリオンのレイちゃんやアスカ、シンジ君やペンギンのペンちゃん、ミサトさんやリツコ博士とかが何とかしてくれないかしら?」
 「それならエヴァのエンディングに流れる『Fly me to the Moon』でも歌えばいいよ。

     Fly me to the moon
                      And let me play among the Stars
                     Let me see what Spring is like
                     On Jupiter and Mars

 なんてね?  ところで死ぬってどうゆうことなの?」
 「そんなの死んだことないからわかんないよ」
 「痛いのかな?」
 「苦しいんじゃない?」
 「悲しいのかなあ?」
 「怖いよね?」
 「アタシとアダムは死なないからそれがわかんないのよ。つぶ餡どら焼き星ではみんな機械人間だから」
 「ふ~ん、そうなんだあ」
 「昔は命に限りがあったそうよ、でも今は誰も死なないわ。麻莉亜も機械の体にすればいいよ」
 「やだよそんなの痛そうだし」
 「大丈夫だよ、脳味噌だけ機械の体にセットするだけだからチャチャッとすぐだよ」
 「うわ~、リアル~」
 「今、ペコポンでは人工頭脳が脳を超えるって言っているけど、本当はね、それ嘘だよ。
 人間の脳だけは機械で置き換えることは出来ないの。
 なぜなら脳には神が宿っているから」
 「神様が?」
 「そうだよ。どんなに文明が、科学技術が進歩しても神様を超えることは絶対に出来ない。
 だって人間は神様がお創りになったものだから。
 そしてペコポンと同じ星は宇宙にはないの。それなのにおろかな人間たちはそんな素晴らしい奇跡の星を穢し続けているわ。だから滅亡した方がいいのよ、地球は」 
 「どうしてこんな地球になっちゃったんだろう?」
 「それは「自分さえ良ければいい」という思い上がりがあるからよ。
 自分より弱い者を虐めてバカにして、強い者には尻尾を振る。
 自分よりもしあわせな人を見るとねたみ、嫉妬して不幸になればいいと思う。
 人間の価値はどれだけ相手の立場で考えることが出来るかでしょう?
 「隣人への愛」それに気づかない限り、この世界から争いが消えることはないわ」
 「パン・ドラミはどら焼き星に帰っちゃうの? パパといっしょに?」
 「・・・、麻莉亜、もう疲れちゃった。おやすみ」
 「ごめん、おやすみなさい」

 だがふたりとも中々眠ることが出来なかった。
 

 
 アダムはベッドで考えていた。

 (私に出来ることは一体なんだろう?)

 絵葉がそんなアダムにキスをした。

 「何を考えていたの? 眉間にシワなんか寄せちゃって?」
 「どうしたら君と麻莉亜が住む、このペコポンを救えるだろうかと考えていた
 「地球があと一週間でなくなるなんてイヤ。でもあなたと麻莉亜が一緒ならそれでもいい」
 「なあ絵葉、ボクと一緒につぶ餡どら焼き星で暮らさないか? 麻莉亜と一緒に」
 「ありがとうアダム。でもそれはいいかなあ?」
 「なぜだ? そして機械人間になればいいじゃないか? そうすれば死なずに僕たちの愛は永遠になる」
 「死なないなんてイヤよ。だってずっと悲しみや苦しみ、怒りや憎しみの過ちがずっと付き纏うことになるんでしょう? そんなの耐えられないわ」
 「それなら心配はいらないよ、君が言う通り、過去の辛い記憶が蓄積されて行くのは辛い。だから過去の記憶はすべて消去されるんだ」
 「それはいい思い出も消えるってことでしょう?」
 「でもそれは仕方が無いよ、素敵な思い出はまた作ればいいじゃないか?」
 「それじゃイヤなの、アダムや麻莉亜との楽しい思い出、しあわせなこの時を失いたくはないもの」
 「絵葉・・・」
 「アダム、愛しているわ」
 「ボクもだよ、絵葉」
 「抱いて。強く抱いて」
 「こうかい?」
 「もっと強く」
 「こう?」
 「今日はお口の中にカルピスを原液でちょうだいね?」
 「カルピス・ウォーターじゃなく、トロリとした原液でか?」
 「そう」

 アダムは冷蔵庫に行き、カルピスの原液をアソコのユニットの中にセットした。
 
 「それじゃあいくよ」
 「うん、もうアソコはぐちょ濡れだからそのまま入れていいわよ。でも出る時はお口にお願いね?」
 
 アダムはエッチモード全開になった。

 「う~ん、VRのAVよりはるかにいいよ」
 「あたりまえでしょう? 私が愛してあげる」

 カプッ

 (絵葉と麻莉亜を守りたい)

 アダムは早漏モードを解除し、なるべくカルピスを出さないようにと『フェルマーの最終定理』の証明を始めて気を紛らすことにした。

 (たとえ全宇宙を敵にまわしても、私は絵葉と麻莉亜を必ず守ってみせる!)

 アダムはそう心に誓った。
 アダムは心を持った最新鋭のヒューマノイドであった。


 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

別れし夫婦の御定書(おさだめがき)

佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★ 嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。 離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。 月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。 おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。 されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて—— ※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

Zinnia‘s Miracle 〜25年目の奇跡

弘生
現代文学
なんだか優しいお話が書きたくなって、連載始めました。 保護猫「ジン」が、時間と空間を超えて見守り語り続けた「柊家」の人々。 「ジン」が天に昇ってから何度も季節は巡り、やがて25年目に奇跡が起こる。けれど、これは奇跡というよりも、「ジン」へのご褒美かもしれない。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...