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くたびれた妻
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結婚が人生の墓場だと言ったのは誰だったか?
家に帰れば迎えてくれる妻はすっぴんで愚痴を含めた近況報告ばかりしてくる。
こっちは仕事で疲れていると言うのに、全くそういう気遣いもできないものかと背広を渡した。
「風呂は湧いてるか?」
「入るんですか?」
「仕事でクタクタだ。少しでも翌日に疲れを残しておきたくないんだよ」
「では今から湧かしてきます」
「今からか? どれくらいかかる?」
「そうですね、30分と言った所でしょうか?」
「そうか。メシはあるか?」
「え、食べられるのですか?」
妻は心底驚いたと言わんばかりに目を丸くした。
確かに外で食べてくると事前に言っていた。
しかしそれから何時間経つ?
いい加減腹立って減るだろう。
それに今回は運動もしてきた。精力の付くものを食べておきたい。
「突然言われてもご用意してません。明日の朝食べようと思っていた取り置きでよろしければ温め直しますが」
「それでいい。頼むよ」
キッチンに引っ込む妻の背中は、仕事場で働く彼女と比べてあまりにも年寄り臭かった。数年前までは彼女も同じくらい輝いていたと言うのに、結婚が彼女から輝きを奪ってしまったのだ。
それもこれも貧乏が悪い。
「それとこれ、今月分の給料だ」
「あら、今回は随分と少ないのね?」
妻の咎める声。
「新人育成に力を入れてるからな。余計な出費が多いのさ」
「そうですか、わかりました。足りない部分は私の貯金から切り崩しておきますね」
「いつも悪いな。本当は俺がガンガン稼がなきゃいけないのに、君にまで負担をかけてしまって」
「何を言ってるのよ。夫婦でしょ、お互いに手を取り合うんだって決めたじゃない。はい、残りもので悪いけど」
妻の手によって温められた惣菜が目の前に運ばれてくる。
ディナーに食べたフレンチとは比べるのも烏滸がましい。
しかしせっかく自分用に出してくれたにだからと口に運ぶ。
味は田舎臭い、素朴な味つけだ。
「美味しいよ」
「お世辞でも嬉しいわ」
さすがにお世辞だとバレてしまうか。
「お風呂もちょうど湧いたみたい。お着替え出しておくわね?」
「ああ」
こちらが何かを言う前にあれこれ気が利く妻だけど、それだとまるで自分が何も出来ないのだと言われているみたいで癪に障る。
それでも口で言うと角が立つから言わないでいる。
これは俺なりの優しさなんだ。
そう心の中で誤魔化しながら丁度いい湯に浸かって疲れを癒した。
家に帰れば迎えてくれる妻はすっぴんで愚痴を含めた近況報告ばかりしてくる。
こっちは仕事で疲れていると言うのに、全くそういう気遣いもできないものかと背広を渡した。
「風呂は湧いてるか?」
「入るんですか?」
「仕事でクタクタだ。少しでも翌日に疲れを残しておきたくないんだよ」
「では今から湧かしてきます」
「今からか? どれくらいかかる?」
「そうですね、30分と言った所でしょうか?」
「そうか。メシはあるか?」
「え、食べられるのですか?」
妻は心底驚いたと言わんばかりに目を丸くした。
確かに外で食べてくると事前に言っていた。
しかしそれから何時間経つ?
いい加減腹立って減るだろう。
それに今回は運動もしてきた。精力の付くものを食べておきたい。
「突然言われてもご用意してません。明日の朝食べようと思っていた取り置きでよろしければ温め直しますが」
「それでいい。頼むよ」
キッチンに引っ込む妻の背中は、仕事場で働く彼女と比べてあまりにも年寄り臭かった。数年前までは彼女も同じくらい輝いていたと言うのに、結婚が彼女から輝きを奪ってしまったのだ。
それもこれも貧乏が悪い。
「それとこれ、今月分の給料だ」
「あら、今回は随分と少ないのね?」
妻の咎める声。
「新人育成に力を入れてるからな。余計な出費が多いのさ」
「そうですか、わかりました。足りない部分は私の貯金から切り崩しておきますね」
「いつも悪いな。本当は俺がガンガン稼がなきゃいけないのに、君にまで負担をかけてしまって」
「何を言ってるのよ。夫婦でしょ、お互いに手を取り合うんだって決めたじゃない。はい、残りもので悪いけど」
妻の手によって温められた惣菜が目の前に運ばれてくる。
ディナーに食べたフレンチとは比べるのも烏滸がましい。
しかしせっかく自分用に出してくれたにだからと口に運ぶ。
味は田舎臭い、素朴な味つけだ。
「美味しいよ」
「お世辞でも嬉しいわ」
さすがにお世辞だとバレてしまうか。
「お風呂もちょうど湧いたみたい。お着替え出しておくわね?」
「ああ」
こちらが何かを言う前にあれこれ気が利く妻だけど、それだとまるで自分が何も出来ないのだと言われているみたいで癪に障る。
それでも口で言うと角が立つから言わないでいる。
これは俺なりの優しさなんだ。
そう心の中で誤魔化しながら丁度いい湯に浸かって疲れを癒した。
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