取り捨て選択の末路〜貧乏臭い妻を捨ててお金持ちの婿入をしたが、幸せとは程遠い生活を送っている〜

キノコの酒蒸し

文字の大きさ
1 / 2

くたびれた妻

しおりを挟む
結婚が人生の墓場だと言ったのは誰だったか?
家に帰れば迎えてくれる妻はすっぴんで愚痴を含めた近況報告ばかりしてくる。
こっちは仕事で疲れていると言うのに、全くそういう気遣いもできないものかと背広を渡した。

「風呂は湧いてるか?」
「入るんですか?」
「仕事でクタクタだ。少しでも翌日に疲れを残しておきたくないんだよ」
「では今から湧かしてきます」
「今からか? どれくらいかかる?」
「そうですね、30分と言った所でしょうか?」
「そうか。メシはあるか?」
「え、食べられるのですか?」

妻は心底驚いたと言わんばかりに目を丸くした。
確かに外で食べてくると事前に言っていた。
しかしそれから何時間経つ?
いい加減腹立って減るだろう。
それに今回はもしてきた。精力の付くものを食べておきたい。

「突然言われてもご用意してません。明日の朝食べようと思っていた取り置きでよろしければ温め直しますが」
「それでいい。頼むよ」

キッチンに引っ込む妻の背中は、仕事場で働く彼女と比べてあまりにも年寄り臭かった。数年前までは彼女も同じくらい輝いていたと言うのに、結婚が彼女から輝きを奪ってしまったのだ。
それもこれも貧乏が悪い。

「それとこれ、今月分の給料だ」
「あら、今回は随分と少ないのね?」

妻の咎める声。

「新人育成に力を入れてるからな。余計な出費が多いのさ」
「そうですか、わかりました。足りない部分は私の貯金から切り崩しておきますね」
「いつも悪いな。本当は俺がガンガン稼がなきゃいけないのに、君にまで負担をかけてしまって」
「何を言ってるのよ。夫婦でしょ、お互いに手を取り合うんだって決めたじゃない。はい、残りもので悪いけど」

妻の手によって温められた惣菜が目の前に運ばれてくる。
ディナーに食べたフレンチとは比べるのも烏滸がましい。
しかしせっかく自分用に出してくれたにだからと口に運ぶ。
味は田舎臭い、素朴な味つけだ。

「美味しいよ」
「お世辞でも嬉しいわ」

さすがにお世辞だとバレてしまうか。

「お風呂もちょうど湧いたみたい。お着替え出しておくわね?」
「ああ」

こちらが何かを言う前にあれこれ気が利く妻だけど、それだとまるで自分が何も出来ないのだと言われているみたいで癪に障る。
それでも口で言うと角が立つから言わないでいる。
これは俺なりの優しさなんだ。
そう心の中で誤魔化しながら丁度いい湯に浸かって疲れを癒した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに対して、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載しております。

〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····

藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」 ……これは一体、どういう事でしょう? いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。 ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した…… 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全6話で完結になります。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。

四季
恋愛
お前は要らない、ですか。 そうですか、分かりました。 では私は去りますね。

【完結】たぶん私本物の聖女じゃないと思うので王子もこの座もお任せしますね聖女様!

貝瀬汀
恋愛
ここ最近。教会に毎日のようにやってくる公爵令嬢に、いちゃもんをつけられて参っている聖女、フレイ・シャハレル。ついに彼女の我慢は限界に達し、それならばと一計を案じる……。ショートショート。※題名を少し変更いたしました。

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います

こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

処理中です...