取り捨て選択の末路〜貧乏臭い妻を捨ててお金持ちの婿入をしたが、幸せとは程遠い生活を送っている〜

キノコの酒蒸し

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目を掛けてる新人

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翌朝目を覚ますと朝食ができている。
独身時代からしたらありがらい物だが、やはり質は幾ばくか劣る。

──贅沢は敵だ

貧乏暮らしの頃からの口癖だが、たまには贅沢しても許されるだろう。
頑なに妻は「いつどこで何があるか分かりませんから」と財布の紐を固く閉める。
よく良く考えればただでさえ少ない給料。
生活していくのもやっとだと顔を合わせる度に言っていた。
朝食が出てくるだけマシかと思い直し、口に運ぶ。

「ごめんなさいね、こんなものしかなくて」
「昨日無理を言ったのは俺だからな。むしろ君の分まで食べてしまった」

妻の分の食事はなかった。
既に食べたと言うが、きゅうとお腹がなるのを聞いている。

「私はあなたほど体力を使わないもの。だからこれくらい平気よ。あなたは体力が資本なんだから。せめてあるものだけでも食べてって」
「済まない。本当だったらもっと多くの給料を持って帰りたいのに」

どの口が言うのか。口をついてでる言葉は本心ではない。
今はまだ妻を騙せているが、いずれ言う時が来るだろう。

「切り詰めてるのは本当のことだから。むしろ自分で使う訳でもないのに、他の人にお金をかけてるあなたの方が大変だもの」

人付き合いでの出費は本当だ。
ただしそのほとんどが自分磨きへ投資されてる。
自分を磨くことでと釣り合う自分へと到れるのだ。
背伸びしてる自覚はあるが、あと一歩で手が届くところまで来ている。
もう少しの辛抱だった。

「大事な商談を抱えていてね。今はそっちを優先したいんだ。いつも帰る時間が遅くなってごめん。君には苦労をかけていると自覚しているよ」
「そうね、毎日遅くまでご苦労さま。これからはなるべく夜食の分も作り置きするようにするわ」
「ありがとう」

そんなやり取りを経て会社へ。
ターナー商事は貧乏商会から功績を立てて大会社へと変貌を遂げた。
今では俺はその大会社のエリートサラリーマン。
我社の製品は誰もが認めるブランド物として多くの出資者から賞賛を集めている。

だと言うのになぜ給料が安いのか?
それはひとえに俺が本来の給料から必要な分を引き抜いて渡しているからに過ぎない。

その給料の使い先は全て自己投資。
最終的に昇給するんだからいいだろうと妻には言い訳をしていた。
そして自分を磨いた果てに得たものは、妻よりも輝いて見える彼女。

「はぁい、フレッド」
「ナタリー!」

彼女はナタリー。今一番俺が時間をかけて育てている女性だ。
女の魅力も妻とは比べるべくもない。
先日も激しくやり合った。
何がとは言わないが、相性の良さはお互いに意識している事だろう。

しかし彼女は俺が既婚者である事を不安がっている。
会う度にいつも妻との離縁を迫ってくるのだ。
独占欲が強いのだろう。
それもそのはず、彼女はターナー商事の一人娘。
今まで欲しいものは全て手に入れてきた。
宝石もドレスも、男だって。

そのうちの一人に選ばれたのはとても光栄だった。

「それで、奥さんには伝えてくれた?」
「昨日は遅くまでやり合って居たろ? 彼女は寝てたし、ああ出てくる時も会話もなく会社に来たから」

嘘だ。俺が他所で女を作ってることを正直に言う勇気がなくてこうして言い訳を引き延ばしている。
それを知らずに彼女は俺を信じて家で待っててくれているんだ。

だがナタリーからの誘いを蹴れば俺がこれ以上昇進するこちはなくなってしまう。
長年支えてきてもらった妻か、若く未来の明るいナタリーか。
俺が判断したのは……
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