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しおりを挟む琴葉が室内へと入った後、少し遅れて理仁も自分の家へと入る。
玄関の鍵を閉めてから電気を付けて室内へと進み、手洗いをしてから買って来た物達を冷蔵庫へと閉まって行く。
明日と明後日は休日だ。
仕事も順調で、今日は殆ど残業にならなかったので比較的に早く家に着いた。
「明日は、映画でも見に行くかな……」
今の時期はどんな映画がやっているのだろうか、と理仁は考えて自分のスマホを取り出すと最寄り駅から少し電車に揺られた場所にある映画館のホームページを開くと、上映中の映画の種類を確認する。
すっ、すっ、とスマホの画面をスクロールして映画を確認して行く。
「アクション映画とかじゃなくて……何か落ち着いて観れる物が良いよなぁ……」
久しぶりに感動物の映画なんかでも良いかもしれない。
理仁がそう考えていると、丁度感動物の映画が一つだけ上映中らしい。
その映画の詳細を押して、あらすじを確認する。
「──へぇ。涙なくては語れない、か」
感動物のキャッチコピーでは良く使われがちなその言葉を眺めて、理仁は明日はこれでも観に行くかと考えると夕飯の準備に取り掛かる。
たしか、冷凍していた鮭があった筈だ、と冷凍庫を開けて鮭の切り身を取り出すと、クッキングシートにその鮭を軽く包んで皿に乗せると、軽く解凍させる為にレンジのボタンを押す。
レンジで鮭を解凍している間にメインの肉料理を作ってしまおう、と理仁はこれまた冷凍していた豚肉を取り出す。
既に下味を付けて冷凍していたので、後はフライパンで炒めて野菜も入れてしまえば簡単に生姜焼きが作れる。
フライパンを熱している間に鮭の解凍が終わったのだろう。
理仁はレンジから取り出すと、クッキングシートを軽く開いて中を確認する。
問題無さそうだ、と判断すると今度はクッキングシートで緩くふわりと包み込むと、両端をきゅっ、と絞って止める。
「──あ、やべぇ。チーズ乗せ忘れた……」
理仁は冷蔵庫からトースト用に売っている刻みチーズを取り出すと、鮭の上に満遍なく掛けてクッキングシートを包み直すと、再度レンジに入れて二分程温めの時間をセットしてスタートボタンを押す。
そうこうしている内に、フライパンが温まって来たので、理仁は肉を先に投入して、ある程度時間が経ってから野菜を追加投入して炒める。
下味を付けていた豚肉からじゅわり、と鼻腔を擽る良い匂いがし始めて、理仁の腹から「くう」と腹の虫がまるで存在を主張するかのように鳴いた。
深皿を取り出し、ある程度炒め終えるとコンロの火を落としてフライパンから深皿へと炒めた物を移動させる。
先程レンジで温めていた鮭も温めが終わったのだろう。
鮭の良い香りと、チーズの香りが漂って来ていて、理仁は炊飯器から茶碗に米をよそうとレンジから鮭の皿を取り出してクッキングシートを開ける。
ふわり、とチーズの香りが強くなって理仁は無意識に喉を鳴らすといそいそと出来上がった料理達をリビングのテーブルへと運び、箸を取り出すと冷蔵庫から缶ビールを取り出す。
深皿と缶ビール、それに箸を手に持って理仁はキッチンの電気を消すとリビングへと向かった。
テレビのリモコンで、動画配信サイトを選択して見たい映画を探しながら缶ビールを開けると、理仁はそのまま一口ビールを飲み込んだ。
箱根での社員旅行で飲んだビールも美味しかったが、このようにゆったりと寛げる自宅でビール片手に夕飯を取り始めたのだった。
翌日、映画館に行く為に理仁は映画を一本だけ観るに留めると、手早く夕飯の片付けを済ませて寝室へと向かった。
先程、片付けを終えた後に直ぐシャワーを浴びたので後はもう寝るだけだ。
理仁は寝室の明かりを消すと、いそいそとベッドに入り、スマホを操作する。
「──さっきは、アクション映画を観たけど……やっぱあのハリウッド俳優のアクション映画は良いよな……」
確か、先程理仁が観た映画の新作も今の時期に公開している筈だ。
アクション映画も観たい気がするが、やはり明日は感動系の映画にしておくか、と理仁は考えるとそのままスマホを消して目を閉じた。
翌朝、スマホのアラームでぱちりと目を覚ました理仁は欠伸を噛み殺しながらのそりとベッドから起き上がると、時刻を確認する。
朝一番の映画を見る為に、早めに起きた理仁はそのままベッドから足を下ろして立ち上がると、寝室のカーテンを開ける。
外は快晴で、雲一つ無い。
出掛けるには丁度良い天気だな、と理仁は気分が高揚してくるがまま、着替えて部屋を出たのだった。
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