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1章、ブラームス王国
授護の儀(じゅごのぎ)、前
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朝食も終わり少し寛いだ後にいよいよ教会に向かう事となる。
同行するのは父母のみ、兄妹は留守番である。
プライベート用の落ち着いた色合いの馬車に乗り込むアルと父母、兄妹は窓の下。
「では、留守を頼むぞ」
「はい、父上」
「リリアナの事宜しいね」
「はい、母上」
「お母様いてらしゃい」
ベリウスに抱き上げられたリリアナが手を振る。
「ベリウス兄上、ユリウス兄上、リリの事を宜しくお願いします。リリ暫くの別れだ、辛いだろうか笑顔で見送って欲しい、クッ!」
「アル兄様いてらゃーい(ニコニコ)」
「全くお前は!・・・やってくれ」
家族の挨拶が一通り済んだ事を見て取ったエリウスが馭者に声を掛ける。
エイブル邸から教会までは馬車で15分程の道程である。
まだ幼いとも言えるアルは殆ど家を出た事が無い。
だから馬車から見える外の景色が物珍しくて釘付けであった。
「アルは緊張しないのかしら」
外を見るアルの後ろからフローラの声が聞こえる。
「凄く楽しみです」
振り返り笑顔で返したアルはまた景色に目を戻す。
「ベリウスはカチカチになっていたし、ユリウスはソワソワして居たのにアルは凄いわね」
「え、あの兄上達がですか?(プフ)」
(からかうネタが出来た!)
兄達の姿を想像して思わず笑ってしまい慌てて口を手で隠した。
ベリウスは父に似て如何にも男らしいってイメージだし、ユリウスは優しく大人しいイメージがアルの中にはある。
「アルは物怖じしない所があるからな」
「そうですね、大物になるのかしら」
「フッ、楽しみなものだ」
父母のアルに対する評価にアルは分からない様に苦笑した。
やはり前世の影響なのか、その正体の影響なのか子供らしさが無いのかも知れない。
ちなみにこの心の声をセフイールが聞いて居たなら「主様は子供らしさしか有りません」と心の中で突っ込んでいるだろう。
ともあれ、15分の旅は楽しんでいたアルにとっては瞬く間のものであった。
王家も使用するこの教会は王国一番の大きさを誇る。
荘厳の一言に尽きるその佇まいにアルは目を奪われる。
「さすがのアルも教会の立派さには驚いたようね」
楽しそうにフローラが頭を撫でる。
だがアルの心の声は父母の予想とは全く違っていた。
(デカ!何この教会!それにキラキラでゴージャスだし、天界の俺の家はもっと質素だよ。こんな所からお願いされても何か引くわ)
「エイブル公爵である。今日は息子の授護の儀に参った」
「はい、伺っております。中へどうぞ、大司教様がお待ちです」
門を抜け直ぐの受付所に声を掛けると担当のシスターが対応をしてくれる。
シスターの後に続き教会に踏み入れる、そこはアルの想像を絶する光景があった。
何百人座れるのか、その一つ一つの席は意匠を凝らしたイスが並び、壁を彩るステンドグラスが様々な色合いの日光を室内に降り注いでいる。
壁に立ち並ぶのは5mはあるであろうか遥かに見上げる高さの石像群、天井には色鮮やかな絵が一面に描かれている。
(はぁ、何だかなぁ、教会って儲かるの?)
心の中で呟きながらもシスターに続き奥へと進んで行く。
漸く到着した最奥、そこは舞台の様に2m程の高台となっておりその奥の壁には光を纏った顔形の分からない石像を中心に左に女性の石像が2体、右に男性の石像が2体並んでいる。
「大司教様、エイブル公爵様をお連れしました」
「うむ、ご苦労」
シスターは頭を下げると元の方向へと戻って行った。
「大司教、待たせた」
「いえ、公爵様お約束の時間通りにございます」
(デ、デカ!)
それがアルの大司教への第一印象であった。
一体何kgあるのか?前世で見た巨漢の相撲取り位はあるか?しかも鍛えられていない分だけ只だらしない。
満面の愛想笑いは汗にまみれている。
アルは無意識に後退る。
それを予想していた様にフローラに背中を抑えられた。
実はフローラにとって子供のこの反応は予測出来ていた。上の二人も同じだったから。
「本日はご子息様の授護の儀との事で」
「うむ、我が家の三男、アルフォードだ」
大司教の目がアルに向けられる。
アルは何故か寒気を感じた。
アルはその正体だけに見た目だけで人を差別する様な事はしない。
たけど、何故かこの大司教からは嫌悪感が沸いてくる。
「ほう、流石公爵様のご子息様、利発そうでおられる。それになんとも見目麗しい」
(なんだ、その目は、そんな目で俺を見るな)
「・・・ジュルリ」
(なんだ、今のジュルリは!舌舐めずりしただろ!俺を食うのか!食われるのか俺は?!)
下がりたいのに下がれない、背中を押すフローラの手には意外と力があった。
「公爵様と奥方様はご存知と思いますが、アルフォード様の為に簡単に説明させて頂きます」
気を取り直す様にそう言うと大司教は教会入口方向に向かい手を広げた。
「入口から此処まで真っ直ぐ続く道は天界へと伸びる道を表現します」
(へ?)
「その道を歩く者を見守る司神様方(下位神)」
壁際に並んだ石像達を示す。
(いやいや、司神は7人だぞ。何故20体も並んでるの?謎の16体、お前ら誰だ!)
「ステンドグラスからの光は神々の御威光を表しております」
(威光って、こんなカラフルな威光見たこと無いよ)
信仰と現実のギャップが楽しくなってきた。
「そして!」
(ダダン)→アル心の声
大司教が奥に向き直る。
「彼方に居られますのが創造神様を中心に管理神様(上位神)となります」
(ジャーン!!って、あの真ん中が俺?俺だけ適当過ぎない?顔無いし、全体的にボヤけた感じだし・・・てか、プププ、セフイールいつの間にそんなに胸大きくなったの?メイフイールは大人になってるし、ラファールは男らしくなってるし、ゼファールは・・・うん、そっちの方がいいよ。
まぁ、皆顔は全く違うけどね!俺は顔無いけど)
「そして、天井の絵は天地創造を表しております」
大司教が天井に向けて両手を広げる。
(えー、何?何か凄い武勇伝見たいな絵が、あれ誰?何か黒い奴と戦ってるの、もしかして俺?全く身に覚えが無いんだけど)
「へ、へぇ~・・・、凄いんですね」
(アンタのドヤ感がね)
「はい、この教会は世界に誇れると自負しております」
うんうん、頷く大司教。
汗がハンパ無い、キモ、で何気にコワッ!
「あ~、大司教、そろそろ良いか」
「は!あ、そうでございますな、ではアルフォード様こちらへ」
光悦とした表情から戻った大司教が創造神像?の足元の豪華な扉を示す。
「では、行くぞ」
そういうとエリウスは扉へ向かい、アルも後ろに続いた。
同行するのは父母のみ、兄妹は留守番である。
プライベート用の落ち着いた色合いの馬車に乗り込むアルと父母、兄妹は窓の下。
「では、留守を頼むぞ」
「はい、父上」
「リリアナの事宜しいね」
「はい、母上」
「お母様いてらしゃい」
ベリウスに抱き上げられたリリアナが手を振る。
「ベリウス兄上、ユリウス兄上、リリの事を宜しくお願いします。リリ暫くの別れだ、辛いだろうか笑顔で見送って欲しい、クッ!」
「アル兄様いてらゃーい(ニコニコ)」
「全くお前は!・・・やってくれ」
家族の挨拶が一通り済んだ事を見て取ったエリウスが馭者に声を掛ける。
エイブル邸から教会までは馬車で15分程の道程である。
まだ幼いとも言えるアルは殆ど家を出た事が無い。
だから馬車から見える外の景色が物珍しくて釘付けであった。
「アルは緊張しないのかしら」
外を見るアルの後ろからフローラの声が聞こえる。
「凄く楽しみです」
振り返り笑顔で返したアルはまた景色に目を戻す。
「ベリウスはカチカチになっていたし、ユリウスはソワソワして居たのにアルは凄いわね」
「え、あの兄上達がですか?(プフ)」
(からかうネタが出来た!)
兄達の姿を想像して思わず笑ってしまい慌てて口を手で隠した。
ベリウスは父に似て如何にも男らしいってイメージだし、ユリウスは優しく大人しいイメージがアルの中にはある。
「アルは物怖じしない所があるからな」
「そうですね、大物になるのかしら」
「フッ、楽しみなものだ」
父母のアルに対する評価にアルは分からない様に苦笑した。
やはり前世の影響なのか、その正体の影響なのか子供らしさが無いのかも知れない。
ちなみにこの心の声をセフイールが聞いて居たなら「主様は子供らしさしか有りません」と心の中で突っ込んでいるだろう。
ともあれ、15分の旅は楽しんでいたアルにとっては瞬く間のものであった。
王家も使用するこの教会は王国一番の大きさを誇る。
荘厳の一言に尽きるその佇まいにアルは目を奪われる。
「さすがのアルも教会の立派さには驚いたようね」
楽しそうにフローラが頭を撫でる。
だがアルの心の声は父母の予想とは全く違っていた。
(デカ!何この教会!それにキラキラでゴージャスだし、天界の俺の家はもっと質素だよ。こんな所からお願いされても何か引くわ)
「エイブル公爵である。今日は息子の授護の儀に参った」
「はい、伺っております。中へどうぞ、大司教様がお待ちです」
門を抜け直ぐの受付所に声を掛けると担当のシスターが対応をしてくれる。
シスターの後に続き教会に踏み入れる、そこはアルの想像を絶する光景があった。
何百人座れるのか、その一つ一つの席は意匠を凝らしたイスが並び、壁を彩るステンドグラスが様々な色合いの日光を室内に降り注いでいる。
壁に立ち並ぶのは5mはあるであろうか遥かに見上げる高さの石像群、天井には色鮮やかな絵が一面に描かれている。
(はぁ、何だかなぁ、教会って儲かるの?)
心の中で呟きながらもシスターに続き奥へと進んで行く。
漸く到着した最奥、そこは舞台の様に2m程の高台となっておりその奥の壁には光を纏った顔形の分からない石像を中心に左に女性の石像が2体、右に男性の石像が2体並んでいる。
「大司教様、エイブル公爵様をお連れしました」
「うむ、ご苦労」
シスターは頭を下げると元の方向へと戻って行った。
「大司教、待たせた」
「いえ、公爵様お約束の時間通りにございます」
(デ、デカ!)
それがアルの大司教への第一印象であった。
一体何kgあるのか?前世で見た巨漢の相撲取り位はあるか?しかも鍛えられていない分だけ只だらしない。
満面の愛想笑いは汗にまみれている。
アルは無意識に後退る。
それを予想していた様にフローラに背中を抑えられた。
実はフローラにとって子供のこの反応は予測出来ていた。上の二人も同じだったから。
「本日はご子息様の授護の儀との事で」
「うむ、我が家の三男、アルフォードだ」
大司教の目がアルに向けられる。
アルは何故か寒気を感じた。
アルはその正体だけに見た目だけで人を差別する様な事はしない。
たけど、何故かこの大司教からは嫌悪感が沸いてくる。
「ほう、流石公爵様のご子息様、利発そうでおられる。それになんとも見目麗しい」
(なんだ、その目は、そんな目で俺を見るな)
「・・・ジュルリ」
(なんだ、今のジュルリは!舌舐めずりしただろ!俺を食うのか!食われるのか俺は?!)
下がりたいのに下がれない、背中を押すフローラの手には意外と力があった。
「公爵様と奥方様はご存知と思いますが、アルフォード様の為に簡単に説明させて頂きます」
気を取り直す様にそう言うと大司教は教会入口方向に向かい手を広げた。
「入口から此処まで真っ直ぐ続く道は天界へと伸びる道を表現します」
(へ?)
「その道を歩く者を見守る司神様方(下位神)」
壁際に並んだ石像達を示す。
(いやいや、司神は7人だぞ。何故20体も並んでるの?謎の16体、お前ら誰だ!)
「ステンドグラスからの光は神々の御威光を表しております」
(威光って、こんなカラフルな威光見たこと無いよ)
信仰と現実のギャップが楽しくなってきた。
「そして!」
(ダダン)→アル心の声
大司教が奥に向き直る。
「彼方に居られますのが創造神様を中心に管理神様(上位神)となります」
(ジャーン!!って、あの真ん中が俺?俺だけ適当過ぎない?顔無いし、全体的にボヤけた感じだし・・・てか、プププ、セフイールいつの間にそんなに胸大きくなったの?メイフイールは大人になってるし、ラファールは男らしくなってるし、ゼファールは・・・うん、そっちの方がいいよ。
まぁ、皆顔は全く違うけどね!俺は顔無いけど)
「そして、天井の絵は天地創造を表しております」
大司教が天井に向けて両手を広げる。
(えー、何?何か凄い武勇伝見たいな絵が、あれ誰?何か黒い奴と戦ってるの、もしかして俺?全く身に覚えが無いんだけど)
「へ、へぇ~・・・、凄いんですね」
(アンタのドヤ感がね)
「はい、この教会は世界に誇れると自負しております」
うんうん、頷く大司教。
汗がハンパ無い、キモ、で何気にコワッ!
「あ~、大司教、そろそろ良いか」
「は!あ、そうでございますな、ではアルフォード様こちらへ」
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