神様の転生物語

kenzo

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1章、ブラームス王国

授護の儀(じゅごのぎ)、後

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扉のその先は先程までの贅沢な世界とは正反対の場所だった。  
その部屋の第一印象は兎に角暗い、部屋の広さもはっきり分からない程に。
部屋の中心?には人が一人入れる程の円が描かれ、その円を囲む様に4本のローソクが火を灯している。
「さぁアル、あの円の中に入りなさい」
部屋の中には父母と大司教も共に入って来ている。
ローソクの灯りを頼りに円の中にと踏み入れると膝間付き頭を垂れる。
これは事前に伝えられていた所作である。
程無くして大司教が一歩前に出るとまるで芝居を演じる様に語り出した。
「おお、全知全能にして慈悲深き我等が神よ。忠実なる下部、大司教マグダルがここに申し上げます。この者、アルフォード=エイブルに偉大なる神々の御加護を賜る事を願います」
あまりの芝居臭さにアルは思わず噴き出しそうなる。
(慈悲深いだってさ、さすが大司教、わかっいるね、セフイールにも聞かせてやりたいよ)
真面目な姿勢で下らない事を考えていると異変が始まった。
頭上から降り注ぐ白い光、それがアルを包む。
(え?)(?どうしたの?)(いや、この子)(何々?)
頭の中に流れ込声にアルが声に出さずに返す。
(どうしたんだい君達)
勿論アルには声の正体が分かっていた。
(えー!今のこの子の声?)(うそー、そんな筈無いよー)(だってだってー)
「まあまあ、落ち着きなよ」
騒がしい声に待ったを掛ける為、アルは声の元に魂を飛ばした。
「わー、人間だー」「人間が聖霊界にー」「侵略だぞー」「あーだこーだ」
流石のアルもこのノリはキツかった。

少しのカオスの後に雰囲気の違う声が参入する。
「どうした、何の騒ぎた?」
「あ、聖霊王様だ!」
「聖霊王様ー」
「よっ!聖霊王様!」
「うむ、只者ならん気配を感じて来てみたが・・・何だこの子供は!信じられん」
「やあ、聖霊王かな?初めましてだね」
「何と馴れ馴れし子供か?しかも何だこの神気は?」
「君達とは会った事無かったから俺の事分からないよね」
そこへ新たな気配が加わる。
「何事だ!」
「これは、イフリータ様!御身がお越しとは、この子供は其ほどの者ですか?」
「いや、そうでは無いが何やら懐かしい気を感じて来てみたのだが・・・」
(・・・・・・?)
「姿は違えどこの気・・・貴方様ですよね、主様」
「ピンポーン!正解!良く分かったね」
「・・・・・・えーーーーーーーー?!」
「はぁ、セフイール様から転生の事は聞いておりましたが・・・」
「あの、イフリータ様?あ、主様って・・・」
聖霊王が恐る恐るイフリータに問いかけるが答は帰らない。
「で、主様は此処で何をしているのですか?」
「授護の儀だよー、ねぇねぇ加護ちょうだい?」
「・・・はぁ?」
「だから加護だよ、加護!早く~」
「はぁ、貴方は一体何を言ってるのですか?」
イフリータのその評判(天界)の強面を呆けてさせている。
「楽しみだったんだよね実は!俺に誰が加護をくれるのかなってさ」
「はぁ、全くこの人は・・・少し待ってて下さい」
そう言うとイフリータは姿を消した。
「え?おーい、イフリーター!」
・・・・・・
「そして誰も居なくなった」
・・・・・・
「あ、あの・・・」
「ん?どうしたの?聖霊王君」
「く、くん?」
「ん?何かマズイかな?じゃあチャンかな?」
「いえ、そうじゃ無くて・・・貴方、貴方様はどなたですか?」
「ああ、俺はね「主様!」って、セフイール?」
「話はイフリータから聞きました」
「セ、セ、セ、セフイールさまーーー?」
聖霊王の顔が真っ青である。
上位神ともなれば聖霊王でも滅多に御目に掛かれない。
しかし聖霊王は気付いて居ない、その上位神よりも上の存在がさっきから側に居る事に。
「やあ、セフイール久しぶりだね」
「はい、お久しぶりです。何でも加護を貰いに来たとか」
「そうなんだよ!加護、誰でも良いから頂戴」
目をキラキラさせるアル。
顔をしかめコメカミを押さえるセフイール。
「はぁ、相変わらず貴方は」
「何々、どうしたの?」
「良くお聞き下さい主様」
「何?」
・・・少し間を起きセフイールは話し出した。
「この世界の何処に貴方に加護を与えられる者が居るのですか!」
「へ?」
「加護とはその者より上位の存在が与える助力の様な物」
「えー?」
「この世界の何処に貴方より上位の存在が居るのですか!最高位神様」
・・・・・・・・・
「えーーーーーーーー!(バタン)」
聖霊王が気を失った。
「そんなぁ、今日を楽しみにしていたのにぃ」
「知りません、諦めて下さい」
「ちぇ、ケチ!そんなんだから胸が・・・」
いつの間にかセフイールの手には伝説の聖剣(ハリセン)が、
「何かい・い・ま・し・た・か?」
「ご免なさい」
五歳児の土下座、これには流石のセフイールも多少の罪悪感を感じた。
「もう良いです。では私はこれで」
そう言うとセフイールは姿を消した。
残されたのはアルと聖霊王(失神中)、そして聖霊達。
「仕方無いか、まぁ、無くても困る物じゃ無いしね。じゃあ帰るか」
「帰る?創造神様帰る?」「また来てねー」
「うん、またねー、聖霊王ちゃんにもヨロシク」
聖霊達に見送られてアルもまた姿を消した。

自身の身体に戻ったアルは遅らせていた時間の流れを元の速さに戻すと、頭上からの光がゆっくりと薄れ次第に消えていった。
「これにて授護の儀は終了となります、私は退室しますのでまずはご家族で加護の確認を」
そう言うと頭を下げて大司教は部屋を出て行く。

「ではアル、どのような加護を授かったのか教えてくれるか?」
「・・・」(やっぱりマズイよなぁ)
「どうしたアル、さぁ、教えてくれ」
「・・・」(言わなきゃだよな)
「どうしたの?どうして黙ってるの?」
怪訝な顔の両親に仕方無いかとアルは話した。
「すみません、加護はありません」
「・・・」
「加護は貰えませんでした」
「な、何を言っている!加護を貰えない者など居るわけないだろう」
「そうよ、下手な冗談は止しなさい」
「・・・」気まずそうに頬を掻き目を反らすアル。
「そ、そんなバカな!そうだ、授護の書は」
アルは手に持つ紙をエリウスへ渡す。
円の中に有った紙、本来なら加護の内容がこの紙に浮き出る筈であった。
しかしそれは白紙であった。
「そんな・・・」

「帰るぞ」暫くの沈黙を破ったエリウスは足早に出口に向かう。
(あちゃー、これは思ったより問題かも)
アルの中でイヤな予感が膨らんで行く。
「すまない!大司教、急用が出来たのでこれで失礼する」
部屋を出た所で待ち構えていた大司教に声を掛けると用意していた金貨の詰まった袋を手渡し走るように去って行く。
フローラとアルが馬車に辿り着いた時には既にエリウスは中にいた。
「早く乗りなさい。急いで帰るぞ」
大急ぎ馬車に乗り込むフローラ、アルは一瞬躊躇した。
「どうしたアル、早く乗りなさい」
少し安心したアルは急いで馬車に乗り込む。

目を瞑り何か考え事するエリウス。
隣に座るアルを無言で抱き締めるフローラ。
重たい雰囲気のまま馬車はエイブル邸へと走った。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆
加護は基本的に全ての人類種に授けられる。
ただし、稀に加護を受けられない人がいる。
加護を受けられ無かった者は、神に嫌われた者や信心が無い者等と呼ばれ差別や蔑みの対象となる。
昔、ある国では王子が加護を持たなかった事を恥じた王が殺してしまった事もあり、その事実がまた差別を悪化させる事となった。



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