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13.三度目の③

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 「琥珀くんは、どうしたい?」
 オーナーの声が、静かに店内に響いた。

「──攻略対象と言うのがものすごく嫌なんです。散々、女の子の事で嫌な思いをして来たのに、これ聖女の願いだったら断れないんじゃないですか? 政略結婚みたいなのになったら……嫌すぎる。現代に来てたのが、結だったとしたら……セーラーの女の子じゃなくて。本物の聖女に、会わせてあげたい」

 その一言で、本から光が溢れ始めた。

「な、何これ……?」

「行っておいで、琥珀くん。結くんの可能性があるんだろ?」
 来瀬さんが笑ってる。オーナーも。もしかして、全部知ってたんだろうか? そんな気もするけど、涙を拭いて微笑んで見せた。

「来瀬さん達だけでも、俺と結のこと覚えてて……もしも、戻れなくて、万が一両親が探しに来る事があったら伝えて、今までありがとうって」

   それしか出来ないし、今は何も思いつかないけど……弟を守るのは、自分の役目だと奮い立たせる。結が忘れ去られたように、自分もこの世界から忘れられるのかも知れない。それでも俺は、光の中に包まれながら、覚悟を決めた。

神様。お願いします。

 眩い光の中、身体がずっと不安定で、バスに乗ったような感じになっていた。視界は眩しさのせいでまだ周りを見ることが叶わない。

    本の中に入るって、不思議だなとか。
そんな呑気な事を言っている場合じゃ無かった。

    気持ち悪さが増して、思わずせり上がっくるものを我慢して抑え込む。目眩も相まって体が傾いた時、誰かに支えられた事に気が付いた。

「──す、みません」

   ほっとしたのも束の間で、周りがざわざわと騒々しくなっていく。

  さっきまで、古書店の中だったのに……ようやく、眩しさが落ち着き目をゆっくりと開いた。まだぼんやりした視界が、支えてくれている人の輪郭をくっきり捉えていった。

「──金髪?」
 随分綺麗な染め方をしているなぁ、夢か? などと思いつつ、超絶美形に抱きとめられている現実に驚いた。

「えっ外国人? 」

 待て待て、エドワード王子だよね? 落ち着けって思っていたら。
    声を上ずらせた耳につく声が届いた。

「本当に召喚したのですか?」

 ──召喚?

「えっ、召喚?」
 思わず、反応をしてしまった。
 まさか、本当に異世界召喚されたのか?  

「はい。聖女様を召喚しました」
 ──聖女? 違う。これは間違いだ。大体、俺は男だし。
本の中に来たとしても、魔法陣の中に現れるべき人は自分じゃない。

 そして、カツカツと靴音を鳴らし王子に近づいて来た女性を見つめた。
 あの本に載ってた女の子だと、気がついた。 人物紹介が本当なら、の聖女様だ。
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