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56.溢れる想い①※

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 ジェイドが作った防音結界は、俺たちの音を遮断する。でも何か外で起きた時は、音を拾えるようになっている。

 ギシリ、とベッドが軋んだ。
 いつもと雰囲気が違う。
 優しく、何度も軽いキスをされる。遊ぶかのような、優しいキス。
 深いキスに慣れてきたせいか、物足りない。
 ゆっくりと押し倒されると、こんどは深いキスが始まった。口内をジェイドの舌が動く。逃げても、直ぐに掴まってしまう。
 長くて、苦しくて……それでも止まらない。
 いつの間にかシャツを脱がされて、大きな手が胸に触れてきた。親指でこするようになぞられてる。
 時々強く摘まれると、思わず声が漏れた。

 外には漏れ聞こえないはずなのに、思わず口に手をあてると、ジェイドが笑う。

「気持ちいいなら、声をだして。名前を呼んでもいいよ」
 そう言って、手を繋がれた。絡んでる指のせいで口は塞げない。
 もう一度深くキスされた時、魔力の温かさを感じる。

 温かくて、優しくて。溶けてしまいそうになる。
 緊張の解けた体は、微熱があるかのようにふわふわとしていた。首筋を甘噛みするかのようにかぷ、かぷと食まれる。
 突然、ジュッと吸われると軽い痛みが走った。

「ん……」
 それが、所有印になるとは思わなかった。鎖骨の窪みを舐められ、そのまま舌が胸の突起を探し当てる。押し潰したりしていたのにいきなり吸われた。

「あ、ん」
 変な声がでて、手で口を塞ぎたいのに手は恋人繋ぎのままだった。

「あ、ちょっと待って」
 恥ずかしい、思わず唇を噛み締める。

「唇を噛んだら駄目。怪我するから、大丈夫。俺しか聞こえない。啼かしたいっていったよね?兄さんの声聞きたい」

 兄さんの声?
 思わず、ジェイドの顔を見る。
 結の、イタズラしそうな表情が浮かんでる。
 可愛い弟。
 嫌な思いばっかりしてた弟をずっと、守るって決めていた。変な女にはやりたくないって。

 俺は結を──誰にもやりたくないって、思ってたんだ。

「俺は、誰にも結を取られたくなかったんだ。だから、ここまで来た」

「取られたくないなら、もし聖女が俺を選んだらどうする?」

 聖女の攻略対象の……一人だ。
 この世界にある身分制度が、ジェイドを縛ってしまう。

「王命だったら……」
 聖女様が浄化の力を得たのなら、何より聖女様の言葉は最優先のはずだ。
「ジェイドと──引き離されてしまう?」
「俺は、拒絶するけど……」
 繋いでいた両手が離れて、ジェイドが服を脱ぎ始めた。上半身裸の姿なんて見てきたのに。

 こちらの世界で、肌を見せる事を怒られていた。ジェイドの体を久しぶりに見たのだ。引き締まった筋肉がやたらと綺麗でドキドキしてしまう。

「琥珀、ぜんぶ脱がすよ」
「あ、自分で……やる」
 ジェイドが一瞬目を見開いた後に、柔らかく笑った。

「そっか、覚悟してくれたんだ。だったら尚更、俺にさせて」

 (恥ずかしい)
 思わず顔を手で隠していると、一気に下着まで脱がされた。










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