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17.違うから
しおりを挟むこの人自身には、さっきの変態みたいな、気持ち悪さは感じないけど──
それでも、
触られ撫でられた感触が思い出されて、その伸ばされた手が怖くて、後ろに逃げようとした。
思わず、叫びそうになった口を手で軽く塞がれる。
「落ち着け。嫌がる事はしない。この前と別人のようにみえるが、
俺がつけた印がそのままある。
良いか?俺達は、会ったことある。
大丈夫だ。覚えているはずだから。
とにかく、叫ぶなよ?
叫ぶなら、今度は唇で口を塞ぐ。」
ふっと笑う。
何だろう。すごく、柔らかな優しい笑顔を向けられているみたい。
「手を離す。いいか?」
落ち着け。落ち着け。と思いながら、ゆっくり頷いた。
「いい子だ。」
その手が離れる。
「大丈夫か?怖かったな。」
優しく、労わる感じに声をかけられて、ホッとするけど…
さっきの男の顔が、フラッシュバックして、恐怖が蘇る。
なんで、なんで僕ばっかりこんな目に遭うんだろう。
両親が死んで、勝手に瞳を移植されて、大学も休学しないといけなくて。知らない人に追っかけられて。
継承者なんて、なりたくない。
ボロボロと涙が溢れていく。
あの時は、ディランが抱きしめて、くれたけど。
結局、この指輪とかアシェル様とかが大切なだけ──
もう。やだ。
なんで…これ外せないだよ。
ギュッと抱きしめられた。
「あんなに強気だったのに。」
違う。それ僕じゃない。
みんな、あいつが、良いんだ。
魔術が使える、継承者のあいつが!!だったら、僕を解放してよ!!
「知らないって、言ってるだろ?それ、僕じゃないから!!
僕なんて、結局誰にも必要とされないんだ!!
父さん達だって、僕だけを置いて、死んでしまうなんて。
一緒に連れてってくれればよかったんだ!」
叫んだ。
そう。叫んだら、口を塞ぐって言われたんだった。
引き寄せられて、壁と腕の間に閉じ込められている。
本当に唇が、くっついてる。
がっちりとホールドされてて。
今──キスしている?
なんの抵抗も出来ずに、何度も
キスをされている。
文句を言うつもりで、少し口を開いた瞬間に舌が侵入してきた。
や、思わず舌で押し返したら、絡められて…
僕、男の人と?
クチュクチュと水音が、響いて。
誰かに聞かれり、見られたりしたら──ただでさえ、休学なんてしているのに。
少し唇が離れて
《防音》と
《阻害》
を使っているから、認識されない。
そう言ってまた、キスされる。
やめて欲しいのに、
すごく、求められているみたいで
、変な気分になっていく。
身体が、ポカポカしてきて心地よくなっていく。
足の力が抜けて、支えられてしまう。
さらに、深いキスのせいで、
息継ぎが出来なくなって、胸板をドンドンと叩いたら、ようやく唇が離れた。
「俺とお前って魔力の相性が、最高みたいだな。
どう?俺の魔力譲渡で、
身体が楽になったんじゃないか?」
相性──?
誰と誰の?
ゆらゆらと、揺れているみたい。
「ね。名前──教えて。」
「──ルカニア。
ルークと呼んでくれ。」
「るーく?」
「そうだ。ルークと呼べ。
今のお前は、誰だ?なんて呼べばいい?」
「───叶夢」
「かなめ、だな?」
一度頷く。
やばい、ゆらゆらして、目が回りそうになって来た。
どうしたら、良いのかな…?
そうだ。名前を呼ぶんだった。
「ノア」
ノア──助けて。
また、空間が歪んできた。
目の錯覚?
僕に向かって手が伸びてくる。
両手で抱き込まれ引き摺り込まれる。
あ、ノアだ。
「おいっ。ちょっと待て!叶夢!!」
「いや。
だって、ルークの探しているのやっぱり、僕じゃないよ。」
そう言って、僕は消えた。
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