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1捨てられオメガと残りものアルファ
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前の席で盛り上がっていた透と目が合った。立ち上がりこちらに来そうだったが、誰かに腕を取られて何か話してる。
そうだ、無理してここにいる必要はないんだ。それなら、黒眼鏡と二人の方が楽しいかも知れない。
──残りもの。ふふ。楽しい。もうどうだっていいんだ。環はおかしくて笑いが止まらない。
「あはは。ねぇどこ行くの?残りもの同士上手くやる?ねぇねぇ」
真っ直ぐ歩けず、黒眼鏡に腰を支えられた。
「上の階に部屋取ってるから。そこで落ち着こう」
顔はイケてないが、声はなんか良いなと環は嬉しそうに笑った。
「黒眼鏡さん、声だけはカッコイイ」
急ぎエレベーターに押し込まれた。
「わー。もう部屋に連れていくの?手が早~い。残りものは、早く食べないと腐っちゃうもんねぇあはは」
惨めな気持ちを笑って誤魔化す度に環は泣くのを我慢した。笑わないと泣いてしまいそうで、一層おバカな振りをする。
「はいはい。分かったから部屋に来い」
「ごーいん。えっちだな?こんな残りもの食べて……がっかりしない?」
手を引かれて部屋に押し込められた環は、驚いた。
「わぁ。綺麗な部屋。スウィートみたい。あはは、スウィートは行きそびれて見てないけど」
あの日、噛んでもらうはずだった。慎重になり過ぎた気がして、自分が嫌になっていく。早く噛んでもらっておけば良かったのかな?
ソファに座らせられると、すぐさまグラスが用意された。
「水飲んで」
「やだ」
「飲むの」
「いーやー」
「明日やばいから」
「どうせ、僕は魅力がないんだから!飲まないとやってられない。それに僕みたいなハズレはシラフじゃ抱けないよね?残り物同士くっ付けって言うんだから」
もう、笑えない。半泣きになって強い口調になっても止められなかった。
黒眼鏡に抱きしめられた。
「俺は、酔っ払いを抱くクズじゃないし。それにラットにはならない。ちゃんと緊急ペンを持ってる。一流のアルファは、きちんと対策してるものだ」
一流と言う言葉を聞いて、かちんと来る。
「残りものなのに?一流?秀一さんは、クズって事?」
「ああ。残念ながらね」
違う。秀一さんは、ちゃんとしたアルファ……のはずだ。必死に秀一を庇おうとするのに、全部黒眼鏡に潰されていく。
「だって、弟のヒートに巻き込まれたんだよ?」
「そう言うハニートラップの対策をとって然るべきなんだ。大切な人を泣かせたくないなら」
その言葉が胸に刺さった。
「それじゃ、初めから全部魅力のない僕のせいですか?」
黒眼鏡の顔はよく分からない。でもアルファなんだなって思った。この人でさえ、緊急ペンを持っててΩのヒート対策をしているんだ。
「あーあ。初めから捨てられる運命なんだね。結局、秀一さんは僕と結婚なんてしたくなかったのかもね」
「いいから、水を飲んで」
「やだ。もう一口だけ、お酒ちょうだい」
「だーめ」
「じゃ、えっちしたら飲んでいい?」
「なんでそうなるんだ」
「体だけが目当てなんでしょ?」
「だから、なんでそうなるんだ」
スーツを脱ぎ始めると、黒眼鏡が慌て出した。
「貴方も僕に興味ないんだ。残りもの同士上手くやれると思ったけどだめかぁ。あはは……う、あ……ひっく。ひっく」
ボロボロと流れて行く涙。嗚咽が止まらない。
「そんなに好きだったのか?」
そうだ。大好きだったんだ。透に取られたく無かったんだ。
「あーもー。言っとくが秀一は女癖も悪いし、Ωの男も何又かかけてた。今は父親が煩くて大人しくしてたみたいだけど、見た目にだまされる奴多かったんだ」
「は?嘘」
「本当。二次会も参加したく無かったんだ。会社関係者から今回代わり行ってって頼まれただけだし。押し付けられたの俺は」
「へ?嘘」
「嘘言いませんー。騙されなくて良かったんだよ」
「え?じゃあ。弟がハズレ?」
「多分ね」
「僕達が残りもの……でしょ?」
「残りものって言うな。環は綺麗だよ」
「なーに言ってんの。ちょっと、」
壁際に追い詰められて環は、落ち着かない。
かきあげた前髪、外された黒眼鏡の素顔に息を飲んだ。
「──綺麗。なんだ貴方は、残りものじゃないね。僕だけがみっともないんだ」
貴方にとって僕がハズレなんだ。
「ごめんね」
思わず呟いた。
そうだ、無理してここにいる必要はないんだ。それなら、黒眼鏡と二人の方が楽しいかも知れない。
──残りもの。ふふ。楽しい。もうどうだっていいんだ。環はおかしくて笑いが止まらない。
「あはは。ねぇどこ行くの?残りもの同士上手くやる?ねぇねぇ」
真っ直ぐ歩けず、黒眼鏡に腰を支えられた。
「上の階に部屋取ってるから。そこで落ち着こう」
顔はイケてないが、声はなんか良いなと環は嬉しそうに笑った。
「黒眼鏡さん、声だけはカッコイイ」
急ぎエレベーターに押し込まれた。
「わー。もう部屋に連れていくの?手が早~い。残りものは、早く食べないと腐っちゃうもんねぇあはは」
惨めな気持ちを笑って誤魔化す度に環は泣くのを我慢した。笑わないと泣いてしまいそうで、一層おバカな振りをする。
「はいはい。分かったから部屋に来い」
「ごーいん。えっちだな?こんな残りもの食べて……がっかりしない?」
手を引かれて部屋に押し込められた環は、驚いた。
「わぁ。綺麗な部屋。スウィートみたい。あはは、スウィートは行きそびれて見てないけど」
あの日、噛んでもらうはずだった。慎重になり過ぎた気がして、自分が嫌になっていく。早く噛んでもらっておけば良かったのかな?
ソファに座らせられると、すぐさまグラスが用意された。
「水飲んで」
「やだ」
「飲むの」
「いーやー」
「明日やばいから」
「どうせ、僕は魅力がないんだから!飲まないとやってられない。それに僕みたいなハズレはシラフじゃ抱けないよね?残り物同士くっ付けって言うんだから」
もう、笑えない。半泣きになって強い口調になっても止められなかった。
黒眼鏡に抱きしめられた。
「俺は、酔っ払いを抱くクズじゃないし。それにラットにはならない。ちゃんと緊急ペンを持ってる。一流のアルファは、きちんと対策してるものだ」
一流と言う言葉を聞いて、かちんと来る。
「残りものなのに?一流?秀一さんは、クズって事?」
「ああ。残念ながらね」
違う。秀一さんは、ちゃんとしたアルファ……のはずだ。必死に秀一を庇おうとするのに、全部黒眼鏡に潰されていく。
「だって、弟のヒートに巻き込まれたんだよ?」
「そう言うハニートラップの対策をとって然るべきなんだ。大切な人を泣かせたくないなら」
その言葉が胸に刺さった。
「それじゃ、初めから全部魅力のない僕のせいですか?」
黒眼鏡の顔はよく分からない。でもアルファなんだなって思った。この人でさえ、緊急ペンを持っててΩのヒート対策をしているんだ。
「あーあ。初めから捨てられる運命なんだね。結局、秀一さんは僕と結婚なんてしたくなかったのかもね」
「いいから、水を飲んで」
「やだ。もう一口だけ、お酒ちょうだい」
「だーめ」
「じゃ、えっちしたら飲んでいい?」
「なんでそうなるんだ」
「体だけが目当てなんでしょ?」
「だから、なんでそうなるんだ」
スーツを脱ぎ始めると、黒眼鏡が慌て出した。
「貴方も僕に興味ないんだ。残りもの同士上手くやれると思ったけどだめかぁ。あはは……う、あ……ひっく。ひっく」
ボロボロと流れて行く涙。嗚咽が止まらない。
「そんなに好きだったのか?」
そうだ。大好きだったんだ。透に取られたく無かったんだ。
「あーもー。言っとくが秀一は女癖も悪いし、Ωの男も何又かかけてた。今は父親が煩くて大人しくしてたみたいだけど、見た目にだまされる奴多かったんだ」
「は?嘘」
「本当。二次会も参加したく無かったんだ。会社関係者から今回代わり行ってって頼まれただけだし。押し付けられたの俺は」
「へ?嘘」
「嘘言いませんー。騙されなくて良かったんだよ」
「え?じゃあ。弟がハズレ?」
「多分ね」
「僕達が残りもの……でしょ?」
「残りものって言うな。環は綺麗だよ」
「なーに言ってんの。ちょっと、」
壁際に追い詰められて環は、落ち着かない。
かきあげた前髪、外された黒眼鏡の素顔に息を飲んだ。
「──綺麗。なんだ貴方は、残りものじゃないね。僕だけがみっともないんだ」
貴方にとって僕がハズレなんだ。
「ごめんね」
思わず呟いた。
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