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どうして、項に触れるの?
唯華はゾクゾクとする感覚に戸惑う。先生の香りは安心する。だけど、不味いとも思う。身体が変になるからだ。
発情期なんてほとんど無くて軽かった。性欲も正直薄かった。だからアイツは僕の反応とか物足りなかったのかも……いや、元々女の子が良かったんだよね。なのに今は疼いて来るような変な感覚になる。香り……フェロモンのせいなのかな?
そんなことを唯華は考えているので黙ったままだ。
少し間が合って先生が、そのまま話を始めた。
「君の家族がね、厄介だったんだよ」
「え?」
「守られてたんだよ。悪い虫がつかないように。俺にはアルファの威嚇は効かなかったけどね。強いアルファの香りには邪魔されていた」
向きを変えられてキスが降ってきた。
唯華はそのキスが嫌じゃない事に驚いた。
「俺は君の香りを探してた。きっとどこかですれ違ってたんだと思う。雨のお陰かな?お兄さん達の威嚇が薄れるみたいなんだ。本当に厄介だよ。君の香りを隠すように強いアルファのマーキング。君の彼氏は、それが苦手だったんだろうね。高嶺の花に手を出したものの、威嚇フェロモンに怯えてしまう」
それじゃ、全部兄さん達に邪魔されてたってこと?
額がコツンと合わさる。
「違う。コンプレックス……こじらせ過ぎだよ」
「だって、いつも置いていかれてたから。一緒にいるの嫌なんだろうって」
父も兄達も恥ずかしいから、避けていると思っていた。
「ちゃんと、言ってくれないと分からないよ」
唯華は、自分の存在を疎まれてるだけだと長年思ってきたのだ。
「本当に不器用だね。邪魔されたけれど、唯華と俺が出逢うべきして出逢ったんだよ。これは運命だね」
「ま、待って。運命とか、さっきの高嶺の花とか意味が分からない」
恥ずかしいセリフを真顔で言って来る目の前の男から逃げたくなる。それに何かタラシっぽいと疑いたくなった。
「ええ?何そのゴミを見るような目。さっきちゃんと言ってって言ったくせに。本心だよ?」
美形は、真顔も笑顔も美形だ。釣り合わない。
「だから……全然高嶺の花じゃないから」
先生の指が移動して唯華の髪の毛を耳にかける。
前髪も整えられて、また唇が重なる。
「無自覚美人、天然か?唯華は」
天然すぎるのは、先生だと恥ずかしさのあまりに抱きついた。
「お兄さん達に憧れすぎだよ。その顔と似てないから、格好よくないとか色々考えてたんだろう?それにあの人達も溺愛の方向がちょっとズレてたけど。大切すぎて隠されてたんだよ」
「嫌われてなかった?」
「当たり前だよ。はは。一緒に連れて歩けば目立ってしまう。可愛い弟を隠したい。オメガとして勉強を頑張れば、アルファの多い大学に行ってしまう。心配で何かあったらと……無理するなって言ってたみたいだよ。」
そんな。全部誤解だったって事。今までの事を思い出していく。家族の態度と彼の微妙な態度。金蔓でしかない便利な世間知らずをキープしたいだけだったのかな?と唯華は腑に落ちた。そして先生の言葉を待った。
「君が、軽い反抗期で慌てたみたいになったんでしょ?相手の事、無理やり別れさせたらますます、拗れそうだった。だから番にだけは早まらせたくなくて……画策してたみたいだ」
そう言う意味かと、今なら笑えた。
優しい言葉の割にあまり性的な接触は無かった。埋まらない距離に見え隠れしだした別の人の存在。迷いはあったのにしがみついてたのは唯華の方だと気がついた。
ただ先生に触れられると嬉しい。そんな気持ちになるのは、そう言うことなのかな?もっと、触ってって思うの初めてだし。
「僕でいいの?」
色々、自信がないけれど。居心地の良いこの人の傍にいたい。
「ああ」
「だったら、触って」
嬉しくて笑うと、先生が何故か赤面した。反則だと言って抱きしめられた。ふわりと香りが溢れてきたように思う。
「これだから……無自覚は。今日は離せないんだけど?いやずっとだな」
「──はやく」
触れられたい。満たされたい。愛されたい。
それを叶えてくれる。たった一人の人。
溶かされるようなキスに、身を任せる。
先生、僕を見つけてくれてありがとう。
終
更新遅れます。すみません。
唯華はゾクゾクとする感覚に戸惑う。先生の香りは安心する。だけど、不味いとも思う。身体が変になるからだ。
発情期なんてほとんど無くて軽かった。性欲も正直薄かった。だからアイツは僕の反応とか物足りなかったのかも……いや、元々女の子が良かったんだよね。なのに今は疼いて来るような変な感覚になる。香り……フェロモンのせいなのかな?
そんなことを唯華は考えているので黙ったままだ。
少し間が合って先生が、そのまま話を始めた。
「君の家族がね、厄介だったんだよ」
「え?」
「守られてたんだよ。悪い虫がつかないように。俺にはアルファの威嚇は効かなかったけどね。強いアルファの香りには邪魔されていた」
向きを変えられてキスが降ってきた。
唯華はそのキスが嫌じゃない事に驚いた。
「俺は君の香りを探してた。きっとどこかですれ違ってたんだと思う。雨のお陰かな?お兄さん達の威嚇が薄れるみたいなんだ。本当に厄介だよ。君の香りを隠すように強いアルファのマーキング。君の彼氏は、それが苦手だったんだろうね。高嶺の花に手を出したものの、威嚇フェロモンに怯えてしまう」
それじゃ、全部兄さん達に邪魔されてたってこと?
額がコツンと合わさる。
「違う。コンプレックス……こじらせ過ぎだよ」
「だって、いつも置いていかれてたから。一緒にいるの嫌なんだろうって」
父も兄達も恥ずかしいから、避けていると思っていた。
「ちゃんと、言ってくれないと分からないよ」
唯華は、自分の存在を疎まれてるだけだと長年思ってきたのだ。
「本当に不器用だね。邪魔されたけれど、唯華と俺が出逢うべきして出逢ったんだよ。これは運命だね」
「ま、待って。運命とか、さっきの高嶺の花とか意味が分からない」
恥ずかしいセリフを真顔で言って来る目の前の男から逃げたくなる。それに何かタラシっぽいと疑いたくなった。
「ええ?何そのゴミを見るような目。さっきちゃんと言ってって言ったくせに。本心だよ?」
美形は、真顔も笑顔も美形だ。釣り合わない。
「だから……全然高嶺の花じゃないから」
先生の指が移動して唯華の髪の毛を耳にかける。
前髪も整えられて、また唇が重なる。
「無自覚美人、天然か?唯華は」
天然すぎるのは、先生だと恥ずかしさのあまりに抱きついた。
「お兄さん達に憧れすぎだよ。その顔と似てないから、格好よくないとか色々考えてたんだろう?それにあの人達も溺愛の方向がちょっとズレてたけど。大切すぎて隠されてたんだよ」
「嫌われてなかった?」
「当たり前だよ。はは。一緒に連れて歩けば目立ってしまう。可愛い弟を隠したい。オメガとして勉強を頑張れば、アルファの多い大学に行ってしまう。心配で何かあったらと……無理するなって言ってたみたいだよ。」
そんな。全部誤解だったって事。今までの事を思い出していく。家族の態度と彼の微妙な態度。金蔓でしかない便利な世間知らずをキープしたいだけだったのかな?と唯華は腑に落ちた。そして先生の言葉を待った。
「君が、軽い反抗期で慌てたみたいになったんでしょ?相手の事、無理やり別れさせたらますます、拗れそうだった。だから番にだけは早まらせたくなくて……画策してたみたいだ」
そう言う意味かと、今なら笑えた。
優しい言葉の割にあまり性的な接触は無かった。埋まらない距離に見え隠れしだした別の人の存在。迷いはあったのにしがみついてたのは唯華の方だと気がついた。
ただ先生に触れられると嬉しい。そんな気持ちになるのは、そう言うことなのかな?もっと、触ってって思うの初めてだし。
「僕でいいの?」
色々、自信がないけれど。居心地の良いこの人の傍にいたい。
「ああ」
「だったら、触って」
嬉しくて笑うと、先生が何故か赤面した。反則だと言って抱きしめられた。ふわりと香りが溢れてきたように思う。
「これだから……無自覚は。今日は離せないんだけど?いやずっとだな」
「──はやく」
触れられたい。満たされたい。愛されたい。
それを叶えてくれる。たった一人の人。
溶かされるようなキスに、身を任せる。
先生、僕を見つけてくれてありがとう。
終
更新遅れます。すみません。
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