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6大嫌いなアルファ
3許せないのに
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オメガもアルファも嫌い。ベータになれなくても、それに紛れるくらいに出来たならどんなに幸せだろう。
ヒートは、薬を使ってもピーク時は辛い。如月さんと居るせいなのか、新薬を飲み過ぎたせいか身体がおかしい。
あんな気持ちになりたくない。ブサイク……って言われたんだ。アルファとは絶対に嫌だなんだ。
如月さんの部屋は、最上階なだけあって広い。
「個室があるから手は出さない。君に許して貰えるまで嫌なこととかも絶対しないから。一人で耐えさせたくないんだ」
◇◇◇
彼の両親は政略結婚だったらしい。絶対に断る事の出来ない親同士の利害関係だった。
《如月》は、母方の名を借りたそうだ。父方の名を使えば、他の生徒にも僕にもバレてしまうから。
如月さんの母親には好きな人がいた。
運命の相手だったそうだ。無理やり番にさせられた母親は、自分に愛情を注ぐことなく子供を産んでしばらくして運命と共に命を断った。
政略結婚はしたくない。愛されない子供も、愛のない結婚も必要なんてないのだから。それなのに彼の父親は、政略結婚を押付けてきた。子供心に意味が分からず反抗したのだ。
ならば、オメガにその家族に嫌われてしまえばいいのだ。そう思って出た言葉が出会いの時の一言だったんだ。
「お前みたいな頭の悪いブサイクなオメガなんか、見たくもない」
睨みつけて馬鹿にするように言い放った。嫌われる為に。
その子の顔は、見る見る真っ青になり涙を流す。彼はこんなに可愛い子を泣かせている事に胸を痛めたそうだ。でも運命に会えばいなくなるのだ。これでいいと思ったのに。その泣き顔が忘れられず、せめて謝りたかったらしい。
報告で薬を飲んでまで会う事を拒まれた事実を知る。悔やんでも悔やみきれず、こっそり様子を見に行けば、愛らしさは増し美しくなっていて心惹かれてしまう。
婚約は白紙にしない。彼の父親がそう言ったらしい。自分もこのまま白紙にしたくなかっただから、ずっと話す機会を待っていたんだと、悲しそうに笑った。
「あの時、傷付けてごめん」
僕は、写真だけで僕の番になるはずのこの人に恋をした。だから何よりも会うのを楽しみにしていた。
好きな人からの拒絶。
「今更そんなこと聞きたくない」
個室に閉じこもった。苦しい日々が始まる。こんな酷いヒートは初めてだ。記憶は曖味で、時折水と薬を飲まされた気がする。触って助けてと叫び、絶対許さないと泣いた気がした。
彼の胸の中に収まれば、愛しさで溢れていく。
でもブサイク……と言う言葉がリフレインして、突き放した。
拒絶されるのが、期待するのが怖かった。
ヒートが収まった時。横に寝ていた彼の腕は傷だらけだった。
噛み跡は僕のでは無く、彼自身のものだ。ネックガードは最新式で容易に外せない。
ずっと彼は自分の腕を噛み続けたのだ。
「今更だよ」
苦しい。馬鹿みたいだ。なのに離れ難い。彼の寝顔を見ているうちに、思わず唇を寄せてしまい目が合った。
「ちがっ」
思わず否定して、彼から離れると彼が泣きそうな顔をして笑った。
「許して貰えるように頑張るから。やり直しをさせてくれないか?」
「簡単に言わないで、オメガもアルファも嫌なんだ」
「──うん。バースなんてどうでもいい。本当にごめん。君の傍にいさせて」
傷だらけの手に触れた。
「那由を遠ざけたクセに忘れられなかった」
その手を今度は握り返される。
「架純さんを……拒んだのに、貴方のことばかり考えて苦しく……いっそ、ベータになりたかった」
ギュッと抱きしめられた。
「だから、一生謝って。ずっとずっと傍にいて謝って」
「うん」
そんな二人のやり直しの恋の話。
終
ヒートは、薬を使ってもピーク時は辛い。如月さんと居るせいなのか、新薬を飲み過ぎたせいか身体がおかしい。
あんな気持ちになりたくない。ブサイク……って言われたんだ。アルファとは絶対に嫌だなんだ。
如月さんの部屋は、最上階なだけあって広い。
「個室があるから手は出さない。君に許して貰えるまで嫌なこととかも絶対しないから。一人で耐えさせたくないんだ」
◇◇◇
彼の両親は政略結婚だったらしい。絶対に断る事の出来ない親同士の利害関係だった。
《如月》は、母方の名を借りたそうだ。父方の名を使えば、他の生徒にも僕にもバレてしまうから。
如月さんの母親には好きな人がいた。
運命の相手だったそうだ。無理やり番にさせられた母親は、自分に愛情を注ぐことなく子供を産んでしばらくして運命と共に命を断った。
政略結婚はしたくない。愛されない子供も、愛のない結婚も必要なんてないのだから。それなのに彼の父親は、政略結婚を押付けてきた。子供心に意味が分からず反抗したのだ。
ならば、オメガにその家族に嫌われてしまえばいいのだ。そう思って出た言葉が出会いの時の一言だったんだ。
「お前みたいな頭の悪いブサイクなオメガなんか、見たくもない」
睨みつけて馬鹿にするように言い放った。嫌われる為に。
その子の顔は、見る見る真っ青になり涙を流す。彼はこんなに可愛い子を泣かせている事に胸を痛めたそうだ。でも運命に会えばいなくなるのだ。これでいいと思ったのに。その泣き顔が忘れられず、せめて謝りたかったらしい。
報告で薬を飲んでまで会う事を拒まれた事実を知る。悔やんでも悔やみきれず、こっそり様子を見に行けば、愛らしさは増し美しくなっていて心惹かれてしまう。
婚約は白紙にしない。彼の父親がそう言ったらしい。自分もこのまま白紙にしたくなかっただから、ずっと話す機会を待っていたんだと、悲しそうに笑った。
「あの時、傷付けてごめん」
僕は、写真だけで僕の番になるはずのこの人に恋をした。だから何よりも会うのを楽しみにしていた。
好きな人からの拒絶。
「今更そんなこと聞きたくない」
個室に閉じこもった。苦しい日々が始まる。こんな酷いヒートは初めてだ。記憶は曖味で、時折水と薬を飲まされた気がする。触って助けてと叫び、絶対許さないと泣いた気がした。
彼の胸の中に収まれば、愛しさで溢れていく。
でもブサイク……と言う言葉がリフレインして、突き放した。
拒絶されるのが、期待するのが怖かった。
ヒートが収まった時。横に寝ていた彼の腕は傷だらけだった。
噛み跡は僕のでは無く、彼自身のものだ。ネックガードは最新式で容易に外せない。
ずっと彼は自分の腕を噛み続けたのだ。
「今更だよ」
苦しい。馬鹿みたいだ。なのに離れ難い。彼の寝顔を見ているうちに、思わず唇を寄せてしまい目が合った。
「ちがっ」
思わず否定して、彼から離れると彼が泣きそうな顔をして笑った。
「許して貰えるように頑張るから。やり直しをさせてくれないか?」
「簡単に言わないで、オメガもアルファも嫌なんだ」
「──うん。バースなんてどうでもいい。本当にごめん。君の傍にいさせて」
傷だらけの手に触れた。
「那由を遠ざけたクセに忘れられなかった」
その手を今度は握り返される。
「架純さんを……拒んだのに、貴方のことばかり考えて苦しく……いっそ、ベータになりたかった」
ギュッと抱きしめられた。
「だから、一生謝って。ずっとずっと傍にいて謝って」
「うん」
そんな二人のやり直しの恋の話。
終
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感想ありがとうございます。
どうだったでしょうか……
勢いで書いてる部分が大きいので、作者の妄想と暴走が多いです😅
短編集というよりさらに短いショートショートですので気楽に読んで楽しんでもらえたら嬉しいです。
感想ありがとうございます。
Twitter上では、ほとんどのキャラを名無しで呟きます。Ω弟とか、恋人αとか。ざっくりのシチュで書きなぐる感じです。
こちらに置くにあたって加筆して弟の性格がさらにクズになったかも(笑)
元彼酷いですよね。
残り数話です。ラスト……どうかな。楽しんでいただけると嬉しいです。