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築根麻耶
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チャレンジ八日目。
日曜日。今日のキャプテンからの指示は簡単だ。高いところに上って写真を撮ってメールで送ること。それだけ。
ただ、何処でもいい訳じゃない。たとえば自分の家の二階、これはポイントがゼロだ。ポイントは場所が高ければ高いほど、危険なら危険なほど大きくなる。同じ高さでもマンションのベランダよりビルの屋上の方がポイントが上だ。同じビルの屋上でもフェンスの内側より外側の方がポイントが高いのだ。
ポイントの低い写真など送っても、キャプテンに馬鹿にされる。いや、無視されるかも知れない。何とかポイントの高い写真を撮らないと。
普段の行動範囲で一番高い建物はどこだろう。やっぱり学校か。でも学校の屋上なんて、たいしたポイントはない。フェンスの外に出ればポイントも上がるだろうか。
電車で二駅ほど乗れば駅ビルがある。でも駅ビルの屋上って、どうやって出ればいいのかわからない。ネットで探せば見つかるかな。なるべく人のいない、誰にも見つからない場所がいいんだけど。
◆ ◆ ◆
頭が痛い。くそっ、昨夜ビールを飲み過ぎた。インターホンのチャイムが頭に響きやがる。誰だ、こんな朝っぱらから。無視してやろうと思ったのに、何度も何度も何度も何度も押しやがって。ヨロヨロとベッドから起き上がり、インターホンのモニターまで這いずるように歩いて行く。映っていたのは、赤髪の背の高い女。俺はムカッ腹を立てながら、ぶつける勢いでドアを開けた。
「笹桑ぁ! てめえ!」
だがそこに立っていたのは、金髪の、長髪の、ボサボサの髪の、一瞬誰かわからなかったが、よくよく見ればフォックスだった。カメラの死角に隠れてやがったのか、と思う間もなく事務所に押し入って来る。
「ちょっと、おい! 何だよ!」
俺の抗議も聞かず、奥にまで入って来たフォックスは、嫌悪感をみなぎらせた顔で事務所の中を見回し、そしてホワイトボードに目を止めた。
「……おまえ、やっぱり海崎志保を強請ってたんだな」
にらみつけるフォックスに対し、思わず舌打ちが出た。だがここはシラを切るしかない。
「いったい何の」
「嫌だなあ、先輩。強請るとか人聞きが悪いっすよ」
そこに笹桑ゆかりがズカズカと入って来る。先輩とはフォックスのことだ。どういう繋がりかは知らない。興味もない。
「五味さんは仕事で海崎志保を調べてただけっすから。ね、五味さん」
と、笹桑はウインクをして見せた。フォックスに丸見えのウインクを。ああ殴りてえ。ぶん殴りてえ、こいつ。
「だいたい、せっかく助けてくれるっていう人を怒らせちゃダメっしょ」
その笹桑の言葉が、ただでさえ二日酔いの頭を困惑させた。助ける? 何のことだ。
「笹桑、やっぱり私は」
どうやら何か困っているらしいフォックスは、事務所から出て行く素振りを見せる。だがそれを笹桑が押しとどめた。
「だからダメっすよ。冷静に考えてください。いま先輩を助けられるのは、五味さんしかいないんす。他に選択肢なんてないんすから。ですよね、五味さん」
「ですよね、じゃねえよ。俺はエスパーか何かか。さっきから訳のわからんことばっかりぬかしやがって」
「ああ大丈夫っすよ。いまから説明しますから」
「ちょっと待て!」
俺は笹桑の口を止めようとした。ガキとオカルトは大嫌いなんだが、それは間違いないんだが、何やらもの凄く嫌な予感がしたのだ。
「説明なんか聞くつもりはないぞ。ないからな!」
まあ、それで止まる口なら苦労はしない訳だ。
◇ ◇ ◇
昨日のことっす。築根先輩は原樹さんと一緒に海崎志保のマンションに行ったんす。もちろん他にも部下の人はいたんすけど、みんな一階のエントランスのところで待っていて、十二階、あ、海崎志保のマンションは十二階なんすけど、知ってましたっけこれ。とにかく十二階まで上がったのは二人だった訳っす。
そこで先輩は海崎志保に任意同行を求めたんすけど、断られちゃったんすね、これが。予想以上に手強かったらしくて。で、張り込んでても仕方ないんで、そこで一旦解散したんすよ。
知ってました? 原樹さんて奥さんお腹大きくて、もう予定日近いみたいなんす。まあそんなこんなあって、みんなを先に帰してから、先輩は現場近くのコンビニで夜食を買ってたんす。そしたら。なんとまあ五味さんとバッタリ会っちゃったって言うじゃないすか。縁は異なもの味なものってヤツっすね。
でもそのとき先輩は、よせばいいのに考えちゃったんすねえ。これは単なる偶然だろうかって。恋の予感じゃないっすよ。もしかしたら、海崎志保は五味さんに強請られてるんじゃないのかって思っちゃったんす。
そう思ったらもう止まらない。先輩は直情径行一直線すから、海崎志保のマンションに取って返して、もう一度面会を求めた訳っす。そしたら海崎志保は部屋に入れてくれて、話を聞いてくれたんすよ。そのときにコーヒーを出されたんすけど、先輩は五味さんのことで頭がいっぱいだったから、疑いもせずに飲んじゃったんす。これがマズかった。
何の話をしてるときに意識を失ったのか、それすら覚えてないくらい、ストーン! て眠っちゃって。気がついたら朝っすよ。ベッドの上に寝かされていて、慌てて海崎志保を探したけど、どこにも見つからない。でも見つからないのは海崎志保だけじゃなかったんす。困ったことに、拳銃と警察手帳も見つからない。海崎志保が戻ってくるかと思ってしばらく待ってたんすけど、そんな様子もない。で、考えに考えた末、うちに連絡が来たって次第っす。
そんで、自分も考えに考えた末に、これは五味さんに助けてもらうしかないなって思ったんすよ。理解できました?
◇ ◇ ◇
ソファの上、タバコとインスタントコーヒーで寝ぼけた頭を叩き起こしながら、俺は何と言葉を出せばいいのか、しばらく考えていた。
常識的に考えて、拳銃と警察手帳を盗まれるなど、警察官としてあるまじきことだ。言語道断だ。その事実が判明した時点で、すぐ県警に連絡するのが当たり前だろう。考えるまでもない。そんなわかり切った面倒臭い話を、何故わざわざ俺のところに持ってくるのか。
笹桑ゆかりが俺の目の前で手を振る。
「もしもーし。五味さん、起きてます?」
「うるせーよ。起きたくて起きてるんじゃねえ」
「じゃあじゃあ、築根先輩はこれからどうしたらいいと思うっすか」
「そんなもん、県警に連絡しろよ。それが公僕の義務だろ」
向かい側に座るフォックスが悔しげにうつむく。そんな顔しても知るか。俺にどうにか出来る話じゃねえ。
「ダメっすよ、それじゃあ」笹桑は呆れたように言う。「そんなことしたら、先輩のキャリアに傷がついちゃうじゃないっすか」
「んなこと俺が知るか」
「いーや、知ってます。だって拳銃と手帳を盗んだ犯人は海崎志保に決まってるんすよ。海崎志保を捕まえて拳銃と手帳を取り返したら、何も問題ないんすよ。いま海崎志保を捕まえられる一番近い距離にいるのは誰っすか。五味さんでしょ。だったら五味さんが先輩に協力しないで、誰が協力するんすか。協力できるんすか」
何故か笹桑は胸を張った。意味がまったくわからない。
「キャリアはどうでもいい」
フォックスは言った。握りしめた拳が震えている。
「だが『敵』が誰かわかっているのに、みすみす捜査から外されるために本部に戻る訳には行かない」
そんな個人的な意地やプライドなんぞ、余計に俺に関係あるかよ。そう言いたかったが、口を開けるタイミングを笹桑に奪われた。
「キャリアは大事っすよ。だって築根先輩には自分の人脈になってもらうつもりなんすから。将来の警視正、いやそれどころか警視総監だって狙えるかも知れない人に、こんなところでつまづかれたんじゃ困るっす。ね、五味さん」
「ね、じゃねえよ。訳のわからん理屈ばっかりこねやがって。そもそもだ」
俺はそれを言うべきかどうか迷っていた。いまここで口にしてしまえば、警察に対するアドバンテージを失いかねない。つまり損をする。だが無理やり起こされた脳みそは、面倒臭いことを何より嫌った。ええい、もうどうでもいい。言ってしまえ。
「海崎志保は犯人じゃないかも知れんぞ」
「えっ」
これにはさしもの笹桑も、目を丸くして絶句した。
「おまえ……本当に何か知っているのか」
フォックスは心底意外そうな顔を見せた。まったく失敬な女だ。俺はタバコを一口吸い込むと、短くなったそれを灰皿でもみ消した。
「別に何か知ってる訳じゃない。可能性の話でしかない。ただ、アンタが二回目に海崎志保の部屋に行ったとき、そこにはもう一人誰かがいた可能性が高いってだけだ」
「何故そんなことがわかる」
新しいタバコを咥えて火を点ける。
「俺が行ったときにはもう一人いたからさ」
事務所の中は静まり返った。フォックスがにらんでいる。言いたいことがあるが我慢しているという顔だ。俺はもうぬるくなったコーヒーを一気に飲み干した。そして。
「条件が二つある」
その言葉に、フォックスは身構えた。
「条件?」
「俺がアンタに協力する条件だ。まさかタダで協力してもらえるとは思ってないだろ」
「金か」
「金はいい。アンタに支払える金なんぞ、たかが知れてる」
すると笹桑が目を剥いた。
「えーっ! 五味さんってば先輩の肉体目当てなんすか!」
「おまえはしばらく黙ってろ」
タバコをぶつけてやろうかと思ったがやめた。タバコがもったいない。
「まずは情報だ。アンタが持ってる海崎志保関連の情報を全部出せ。一つ残らずだ」
「……二つ目は」
「俺がやることついて、今後一切口を出すな」
フォックスは深刻な表情で考え込んだ。まるで手渡された毒の盃を前に、飲もうかどうか迷っているソクラテスのような顔だ。
「その二つの条件を呑めば、犯人の逮捕に協力してくれるのか」
「協力はするさ。ただし本当に逮捕できるかどうかはアンタの運次第だ。そこまで責任は持てないね」
もちろん俺は運など信じちゃいない。結果は常に行動に伴う。だがそんなことを説明している状況でもないしな。あくまで言葉の綾だ。
フォックスは再び考え込む。俺はタバコを灰皿にねじ込み、新しいタバコを咥えた。するとすかさず笹桑がライターで火を点ける。その満面の笑顔に、何でおまえがご機嫌なんだよ、と口にしかけたとき。
「いいだろう。条件を呑む」
人生における最大の決断を下したかの如き口調で、フォックスはそう言い切った。
「助けてくれ、頼む」
さらにそう付け加え、頭を下げた。これで俺に損はない、かも知れない。先々のことを考えるなら、得をする可能性だってある。だがそれでも、面倒に巻き込まれたという気分は消えなかった。
とは言え、未来の金づるである海崎志保が姿を消したことは、俺にとっても重大な問題だ。どのみち首を突っ込まなきゃならんヤマではある。
「そんじゃ、時間がもったいない。ボチボチ始めるか」
俺はソファから立ち上がり、キッチンに向かった。水に浸けてあった丼を洗い、冷蔵庫から取り出したパック飯を入れる。レトルトカレーを上からかけ、電子レンジを三分回す。
「……何をやってるんだ」
フォックスは不審な表情を浮かべている。そりゃまあ、そんな顔にもなるわな。
「心配すんな。必要なことをしてるだけだ」
そして奥の寝室に向かい、ドアを開ける。
「おいジロー、起きろ」
「誰かいるのか」
フォックスは立ち上がった。笹桑も立ち上がった。表情は両極端だったが。
「大丈夫っすよ先輩。ジロー君すから」
「ジロー君って誰だ」
「すんごい可愛いっすよ」
「そういう問題じゃない!」
ジローはいつもの通り、スカジャンにジーンズ姿で寝室から出て来た。そして眠そうに目を擦りながら、ソファのいつもの場所に座った。いつものように膝を抱え、誰もいない遠い場所に目の焦点を合わせる。
「あれ、もしかして寝るときもスカジャン着てるんすか。可愛いパジャマ買ったげるっすよ?」
顔をのぞき込む笹桑のそんな言葉にも、もちろんジローは反応しない。
「いらねえよ。こいつは何でも着られる訳じゃない。選べる服は限られてる。真夏以外は寝るときもずっとこのスカジャンだ」
「ええー、オシャレすればもっと可愛いのに」
そんな笹桑の文句をかき消したのは、レンジの電子音。カレーを取り出すと、スプーンを放り込み、ジローの前に置いた。ジローは飛びつき、むさぼり食う。あ然とした顔で見つめるフォックスの前で、丼が空になるのに三分とかからなかった。
丼を下げ、シンクの洗い桶の水に浸けると、俺はぬるくなったヤカンの湯でインスタントコーヒーを入れ、マグカップを持ってソファに戻った。フォックスは立ち上がったまま、不審の凝り固まったような顔でこっちを見つめている。俺は吸い殻を灰皿に放り込み、新しいタバコに火を点けた。
「五味さん、いくら何でも吸い過ぎっすよ」
呆れたように笹桑が言う。
「うるせーよ、誰のせいだと思ってやがる」
俺はジローの正面に座り直した。ジローは膝を抱えて、俺の背後、ずっと遠くに目の焦点を合わせている。
「よしジロー、仕事だ」小さく煙を吐く。「昨日の海崎志保を出せ」
するとジローはやおら立ち上がり、手を前に組んで頭を下げた。
「海崎志保と申します」
その表情、声のトーン、すべて寸分の狂いもなく完璧だった。
「失礼ですが、お名刺など頂けませんでしょうか」
そう、確かにそう言われたな。うなずきながらジローを止めた。
「ストップだ。途中はいい。ソファに座ってからの海崎志保を出せ」
少し間を置いて、ジローはソファに座った。そしてフォックスたちの方を見る。
「彼は、本当にあなたの助手なのですか」
フォックスは頭を抱えている。
「待ってくれ、この寸劇に何の意味があるんだ」
我慢が出来なくなりつつあるフォックスを、俺は手を上げて抑えた。
「まあ、しばらく見てろ」
ジローは目を伏せながら膝の上で組んだ手を見つめている。そう、まだ顔は上げない。
「いいえ、一度も」
「何が言いたいのですか」
「何のことかわかりません」
「違います」
「何が望みですか」
クサいのはこの後だ。俺は目を凝らした。そしてジローは視線を上げた。その目が笑っている。
「いいえ、高いですね」
「ストップ。いまのをもう一回」
ジローはまた目を伏せ、視線を上げた。目が笑っている。
「いいえ、高いで」
「ストップ」
ジローは時が固まったかのように動かない。俺はその目を見つめた。視線が右にずれている。
「このときか」
ジローの、すなわち海崎志保の視線は俺から外れている。振り返ってみたが窓しかない。だがおそらくあのとき、1208号室の海崎志保は、俺の後ろにあった応接室入り口のドアを見ていたに違いない。正確には少しだけ開いたドアの隙間を。そこから誰かが見ていたのだ。くそっ、ここで気付いていれば。気持ちを落ち着かせるようにタバコの煙を吸い込む。
「この時点、まあ実際には俺たちよりも先にいたんだろうが、少なくともこの時点では間違いなく1208号室に、海崎志保と俺たち以外の誰かがいた訳だ」
しかし、フォックスの顔は困惑している。
「いまのでそこまで言い切れるのか」
「言い切れるね」即答した。「ジローの記憶は完璧だ」
ジローはまだ固まっている。まばたき一つしない。
「よし、続けろ」
その一言でジローは動き出す。立ち上がり、俺の横を通り過ぎると、窓の前で足踏みをしている。うちの事務所は海崎志保の部屋より狭いからな、仕方ない。そして立ち止まると、何かを手に取った。受話器だな。
「はい……はいそうですが……わかりました、どうぞ」
そして元の場所に戻ってくると、座ってこう言った。
「県警の捜査一課の方が来られたそうです」
「あっ」
フォックスが声を上げた。
「あのときのコーヒーカップ、おまえたちだったのか」
「それだけじゃないぜ」
ジローはまたソファから立ち上がり、寝室の手前まで歩いて行くと、何かを横に動かす動作をした。
「こちらへどうぞ。嫌だと言うのなら、私は別に構いませんけど」
「ストップ。よしジロー、もういいぞ」
ジローはソファに戻り、また膝を抱えた。フォックスはしばらく呆けたような顔をしていたが、ようやく気付いたようだった。
「クローゼットか……おまえたち、あのクローゼットの中にいたのか!」
フォックスは崩れるようにソファに座り込む。俺はただ苦いだけのコーヒーを一気に飲んだ。
「こっちは手の内を見せたんだ。アンタにも見せてもらうぞ。それがフェアってもんだろ」
それに応えるかのように、フォックスは両手で頭を抱えながら、深いため息をついた。
日曜日。今日のキャプテンからの指示は簡単だ。高いところに上って写真を撮ってメールで送ること。それだけ。
ただ、何処でもいい訳じゃない。たとえば自分の家の二階、これはポイントがゼロだ。ポイントは場所が高ければ高いほど、危険なら危険なほど大きくなる。同じ高さでもマンションのベランダよりビルの屋上の方がポイントが上だ。同じビルの屋上でもフェンスの内側より外側の方がポイントが高いのだ。
ポイントの低い写真など送っても、キャプテンに馬鹿にされる。いや、無視されるかも知れない。何とかポイントの高い写真を撮らないと。
普段の行動範囲で一番高い建物はどこだろう。やっぱり学校か。でも学校の屋上なんて、たいしたポイントはない。フェンスの外に出ればポイントも上がるだろうか。
電車で二駅ほど乗れば駅ビルがある。でも駅ビルの屋上って、どうやって出ればいいのかわからない。ネットで探せば見つかるかな。なるべく人のいない、誰にも見つからない場所がいいんだけど。
◆ ◆ ◆
頭が痛い。くそっ、昨夜ビールを飲み過ぎた。インターホンのチャイムが頭に響きやがる。誰だ、こんな朝っぱらから。無視してやろうと思ったのに、何度も何度も何度も何度も押しやがって。ヨロヨロとベッドから起き上がり、インターホンのモニターまで這いずるように歩いて行く。映っていたのは、赤髪の背の高い女。俺はムカッ腹を立てながら、ぶつける勢いでドアを開けた。
「笹桑ぁ! てめえ!」
だがそこに立っていたのは、金髪の、長髪の、ボサボサの髪の、一瞬誰かわからなかったが、よくよく見ればフォックスだった。カメラの死角に隠れてやがったのか、と思う間もなく事務所に押し入って来る。
「ちょっと、おい! 何だよ!」
俺の抗議も聞かず、奥にまで入って来たフォックスは、嫌悪感をみなぎらせた顔で事務所の中を見回し、そしてホワイトボードに目を止めた。
「……おまえ、やっぱり海崎志保を強請ってたんだな」
にらみつけるフォックスに対し、思わず舌打ちが出た。だがここはシラを切るしかない。
「いったい何の」
「嫌だなあ、先輩。強請るとか人聞きが悪いっすよ」
そこに笹桑ゆかりがズカズカと入って来る。先輩とはフォックスのことだ。どういう繋がりかは知らない。興味もない。
「五味さんは仕事で海崎志保を調べてただけっすから。ね、五味さん」
と、笹桑はウインクをして見せた。フォックスに丸見えのウインクを。ああ殴りてえ。ぶん殴りてえ、こいつ。
「だいたい、せっかく助けてくれるっていう人を怒らせちゃダメっしょ」
その笹桑の言葉が、ただでさえ二日酔いの頭を困惑させた。助ける? 何のことだ。
「笹桑、やっぱり私は」
どうやら何か困っているらしいフォックスは、事務所から出て行く素振りを見せる。だがそれを笹桑が押しとどめた。
「だからダメっすよ。冷静に考えてください。いま先輩を助けられるのは、五味さんしかいないんす。他に選択肢なんてないんすから。ですよね、五味さん」
「ですよね、じゃねえよ。俺はエスパーか何かか。さっきから訳のわからんことばっかりぬかしやがって」
「ああ大丈夫っすよ。いまから説明しますから」
「ちょっと待て!」
俺は笹桑の口を止めようとした。ガキとオカルトは大嫌いなんだが、それは間違いないんだが、何やらもの凄く嫌な予感がしたのだ。
「説明なんか聞くつもりはないぞ。ないからな!」
まあ、それで止まる口なら苦労はしない訳だ。
◇ ◇ ◇
昨日のことっす。築根先輩は原樹さんと一緒に海崎志保のマンションに行ったんす。もちろん他にも部下の人はいたんすけど、みんな一階のエントランスのところで待っていて、十二階、あ、海崎志保のマンションは十二階なんすけど、知ってましたっけこれ。とにかく十二階まで上がったのは二人だった訳っす。
そこで先輩は海崎志保に任意同行を求めたんすけど、断られちゃったんすね、これが。予想以上に手強かったらしくて。で、張り込んでても仕方ないんで、そこで一旦解散したんすよ。
知ってました? 原樹さんて奥さんお腹大きくて、もう予定日近いみたいなんす。まあそんなこんなあって、みんなを先に帰してから、先輩は現場近くのコンビニで夜食を買ってたんす。そしたら。なんとまあ五味さんとバッタリ会っちゃったって言うじゃないすか。縁は異なもの味なものってヤツっすね。
でもそのとき先輩は、よせばいいのに考えちゃったんすねえ。これは単なる偶然だろうかって。恋の予感じゃないっすよ。もしかしたら、海崎志保は五味さんに強請られてるんじゃないのかって思っちゃったんす。
そう思ったらもう止まらない。先輩は直情径行一直線すから、海崎志保のマンションに取って返して、もう一度面会を求めた訳っす。そしたら海崎志保は部屋に入れてくれて、話を聞いてくれたんすよ。そのときにコーヒーを出されたんすけど、先輩は五味さんのことで頭がいっぱいだったから、疑いもせずに飲んじゃったんす。これがマズかった。
何の話をしてるときに意識を失ったのか、それすら覚えてないくらい、ストーン! て眠っちゃって。気がついたら朝っすよ。ベッドの上に寝かされていて、慌てて海崎志保を探したけど、どこにも見つからない。でも見つからないのは海崎志保だけじゃなかったんす。困ったことに、拳銃と警察手帳も見つからない。海崎志保が戻ってくるかと思ってしばらく待ってたんすけど、そんな様子もない。で、考えに考えた末、うちに連絡が来たって次第っす。
そんで、自分も考えに考えた末に、これは五味さんに助けてもらうしかないなって思ったんすよ。理解できました?
◇ ◇ ◇
ソファの上、タバコとインスタントコーヒーで寝ぼけた頭を叩き起こしながら、俺は何と言葉を出せばいいのか、しばらく考えていた。
常識的に考えて、拳銃と警察手帳を盗まれるなど、警察官としてあるまじきことだ。言語道断だ。その事実が判明した時点で、すぐ県警に連絡するのが当たり前だろう。考えるまでもない。そんなわかり切った面倒臭い話を、何故わざわざ俺のところに持ってくるのか。
笹桑ゆかりが俺の目の前で手を振る。
「もしもーし。五味さん、起きてます?」
「うるせーよ。起きたくて起きてるんじゃねえ」
「じゃあじゃあ、築根先輩はこれからどうしたらいいと思うっすか」
「そんなもん、県警に連絡しろよ。それが公僕の義務だろ」
向かい側に座るフォックスが悔しげにうつむく。そんな顔しても知るか。俺にどうにか出来る話じゃねえ。
「ダメっすよ、それじゃあ」笹桑は呆れたように言う。「そんなことしたら、先輩のキャリアに傷がついちゃうじゃないっすか」
「んなこと俺が知るか」
「いーや、知ってます。だって拳銃と手帳を盗んだ犯人は海崎志保に決まってるんすよ。海崎志保を捕まえて拳銃と手帳を取り返したら、何も問題ないんすよ。いま海崎志保を捕まえられる一番近い距離にいるのは誰っすか。五味さんでしょ。だったら五味さんが先輩に協力しないで、誰が協力するんすか。協力できるんすか」
何故か笹桑は胸を張った。意味がまったくわからない。
「キャリアはどうでもいい」
フォックスは言った。握りしめた拳が震えている。
「だが『敵』が誰かわかっているのに、みすみす捜査から外されるために本部に戻る訳には行かない」
そんな個人的な意地やプライドなんぞ、余計に俺に関係あるかよ。そう言いたかったが、口を開けるタイミングを笹桑に奪われた。
「キャリアは大事っすよ。だって築根先輩には自分の人脈になってもらうつもりなんすから。将来の警視正、いやそれどころか警視総監だって狙えるかも知れない人に、こんなところでつまづかれたんじゃ困るっす。ね、五味さん」
「ね、じゃねえよ。訳のわからん理屈ばっかりこねやがって。そもそもだ」
俺はそれを言うべきかどうか迷っていた。いまここで口にしてしまえば、警察に対するアドバンテージを失いかねない。つまり損をする。だが無理やり起こされた脳みそは、面倒臭いことを何より嫌った。ええい、もうどうでもいい。言ってしまえ。
「海崎志保は犯人じゃないかも知れんぞ」
「えっ」
これにはさしもの笹桑も、目を丸くして絶句した。
「おまえ……本当に何か知っているのか」
フォックスは心底意外そうな顔を見せた。まったく失敬な女だ。俺はタバコを一口吸い込むと、短くなったそれを灰皿でもみ消した。
「別に何か知ってる訳じゃない。可能性の話でしかない。ただ、アンタが二回目に海崎志保の部屋に行ったとき、そこにはもう一人誰かがいた可能性が高いってだけだ」
「何故そんなことがわかる」
新しいタバコを咥えて火を点ける。
「俺が行ったときにはもう一人いたからさ」
事務所の中は静まり返った。フォックスがにらんでいる。言いたいことがあるが我慢しているという顔だ。俺はもうぬるくなったコーヒーを一気に飲み干した。そして。
「条件が二つある」
その言葉に、フォックスは身構えた。
「条件?」
「俺がアンタに協力する条件だ。まさかタダで協力してもらえるとは思ってないだろ」
「金か」
「金はいい。アンタに支払える金なんぞ、たかが知れてる」
すると笹桑が目を剥いた。
「えーっ! 五味さんってば先輩の肉体目当てなんすか!」
「おまえはしばらく黙ってろ」
タバコをぶつけてやろうかと思ったがやめた。タバコがもったいない。
「まずは情報だ。アンタが持ってる海崎志保関連の情報を全部出せ。一つ残らずだ」
「……二つ目は」
「俺がやることついて、今後一切口を出すな」
フォックスは深刻な表情で考え込んだ。まるで手渡された毒の盃を前に、飲もうかどうか迷っているソクラテスのような顔だ。
「その二つの条件を呑めば、犯人の逮捕に協力してくれるのか」
「協力はするさ。ただし本当に逮捕できるかどうかはアンタの運次第だ。そこまで責任は持てないね」
もちろん俺は運など信じちゃいない。結果は常に行動に伴う。だがそんなことを説明している状況でもないしな。あくまで言葉の綾だ。
フォックスは再び考え込む。俺はタバコを灰皿にねじ込み、新しいタバコを咥えた。するとすかさず笹桑がライターで火を点ける。その満面の笑顔に、何でおまえがご機嫌なんだよ、と口にしかけたとき。
「いいだろう。条件を呑む」
人生における最大の決断を下したかの如き口調で、フォックスはそう言い切った。
「助けてくれ、頼む」
さらにそう付け加え、頭を下げた。これで俺に損はない、かも知れない。先々のことを考えるなら、得をする可能性だってある。だがそれでも、面倒に巻き込まれたという気分は消えなかった。
とは言え、未来の金づるである海崎志保が姿を消したことは、俺にとっても重大な問題だ。どのみち首を突っ込まなきゃならんヤマではある。
「そんじゃ、時間がもったいない。ボチボチ始めるか」
俺はソファから立ち上がり、キッチンに向かった。水に浸けてあった丼を洗い、冷蔵庫から取り出したパック飯を入れる。レトルトカレーを上からかけ、電子レンジを三分回す。
「……何をやってるんだ」
フォックスは不審な表情を浮かべている。そりゃまあ、そんな顔にもなるわな。
「心配すんな。必要なことをしてるだけだ」
そして奥の寝室に向かい、ドアを開ける。
「おいジロー、起きろ」
「誰かいるのか」
フォックスは立ち上がった。笹桑も立ち上がった。表情は両極端だったが。
「大丈夫っすよ先輩。ジロー君すから」
「ジロー君って誰だ」
「すんごい可愛いっすよ」
「そういう問題じゃない!」
ジローはいつもの通り、スカジャンにジーンズ姿で寝室から出て来た。そして眠そうに目を擦りながら、ソファのいつもの場所に座った。いつものように膝を抱え、誰もいない遠い場所に目の焦点を合わせる。
「あれ、もしかして寝るときもスカジャン着てるんすか。可愛いパジャマ買ったげるっすよ?」
顔をのぞき込む笹桑のそんな言葉にも、もちろんジローは反応しない。
「いらねえよ。こいつは何でも着られる訳じゃない。選べる服は限られてる。真夏以外は寝るときもずっとこのスカジャンだ」
「ええー、オシャレすればもっと可愛いのに」
そんな笹桑の文句をかき消したのは、レンジの電子音。カレーを取り出すと、スプーンを放り込み、ジローの前に置いた。ジローは飛びつき、むさぼり食う。あ然とした顔で見つめるフォックスの前で、丼が空になるのに三分とかからなかった。
丼を下げ、シンクの洗い桶の水に浸けると、俺はぬるくなったヤカンの湯でインスタントコーヒーを入れ、マグカップを持ってソファに戻った。フォックスは立ち上がったまま、不審の凝り固まったような顔でこっちを見つめている。俺は吸い殻を灰皿に放り込み、新しいタバコに火を点けた。
「五味さん、いくら何でも吸い過ぎっすよ」
呆れたように笹桑が言う。
「うるせーよ、誰のせいだと思ってやがる」
俺はジローの正面に座り直した。ジローは膝を抱えて、俺の背後、ずっと遠くに目の焦点を合わせている。
「よしジロー、仕事だ」小さく煙を吐く。「昨日の海崎志保を出せ」
するとジローはやおら立ち上がり、手を前に組んで頭を下げた。
「海崎志保と申します」
その表情、声のトーン、すべて寸分の狂いもなく完璧だった。
「失礼ですが、お名刺など頂けませんでしょうか」
そう、確かにそう言われたな。うなずきながらジローを止めた。
「ストップだ。途中はいい。ソファに座ってからの海崎志保を出せ」
少し間を置いて、ジローはソファに座った。そしてフォックスたちの方を見る。
「彼は、本当にあなたの助手なのですか」
フォックスは頭を抱えている。
「待ってくれ、この寸劇に何の意味があるんだ」
我慢が出来なくなりつつあるフォックスを、俺は手を上げて抑えた。
「まあ、しばらく見てろ」
ジローは目を伏せながら膝の上で組んだ手を見つめている。そう、まだ顔は上げない。
「いいえ、一度も」
「何が言いたいのですか」
「何のことかわかりません」
「違います」
「何が望みですか」
クサいのはこの後だ。俺は目を凝らした。そしてジローは視線を上げた。その目が笑っている。
「いいえ、高いですね」
「ストップ。いまのをもう一回」
ジローはまた目を伏せ、視線を上げた。目が笑っている。
「いいえ、高いで」
「ストップ」
ジローは時が固まったかのように動かない。俺はその目を見つめた。視線が右にずれている。
「このときか」
ジローの、すなわち海崎志保の視線は俺から外れている。振り返ってみたが窓しかない。だがおそらくあのとき、1208号室の海崎志保は、俺の後ろにあった応接室入り口のドアを見ていたに違いない。正確には少しだけ開いたドアの隙間を。そこから誰かが見ていたのだ。くそっ、ここで気付いていれば。気持ちを落ち着かせるようにタバコの煙を吸い込む。
「この時点、まあ実際には俺たちよりも先にいたんだろうが、少なくともこの時点では間違いなく1208号室に、海崎志保と俺たち以外の誰かがいた訳だ」
しかし、フォックスの顔は困惑している。
「いまのでそこまで言い切れるのか」
「言い切れるね」即答した。「ジローの記憶は完璧だ」
ジローはまだ固まっている。まばたき一つしない。
「よし、続けろ」
その一言でジローは動き出す。立ち上がり、俺の横を通り過ぎると、窓の前で足踏みをしている。うちの事務所は海崎志保の部屋より狭いからな、仕方ない。そして立ち止まると、何かを手に取った。受話器だな。
「はい……はいそうですが……わかりました、どうぞ」
そして元の場所に戻ってくると、座ってこう言った。
「県警の捜査一課の方が来られたそうです」
「あっ」
フォックスが声を上げた。
「あのときのコーヒーカップ、おまえたちだったのか」
「それだけじゃないぜ」
ジローはまたソファから立ち上がり、寝室の手前まで歩いて行くと、何かを横に動かす動作をした。
「こちらへどうぞ。嫌だと言うのなら、私は別に構いませんけど」
「ストップ。よしジロー、もういいぞ」
ジローはソファに戻り、また膝を抱えた。フォックスはしばらく呆けたような顔をしていたが、ようやく気付いたようだった。
「クローゼットか……おまえたち、あのクローゼットの中にいたのか!」
フォックスは崩れるようにソファに座り込む。俺はただ苦いだけのコーヒーを一気に飲んだ。
「こっちは手の内を見せたんだ。アンタにも見せてもらうぞ。それがフェアってもんだろ」
それに応えるかのように、フォックスは両手で頭を抱えながら、深いため息をついた。
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