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45. アトル先生王座を目指す - 1
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「ラ、ラトスさん、何でここに。」
「もちろん、イル嬢ちゃんを待っていたのじゃよ。何じゃ? 疲れた顔をしておるぞ。」
「そんなことより、よくこの居住地に入れましたね。」
「いやあ、入り口に居た人が頑固でな。イル嬢ちゃんに会いに来たと言っても、頑として通してくれん。イル嬢ちゃんに念話を送っても返事が無いし、どうしようかと思っていた時に、嬢ちゃんの母上が来てくれてな。入り口の頑固おやじと話をして、儂を中に入れてくれたのじゃよ。」
いや、今日の入り口の見張りが誰だったか忘れたけど、正解だよ。すごく怪しげなおじいさんだものね。
「イルからラトスさんの名前は聞いていたからね。魔導士様に失礼があっては行けないから、天幕で待ってもらっていたの。」
母さんがそう言うのを横で聞いていたラナさんが咽る。これはラトスさんの正体を知らなかったな。
「アトルを呼びに言って来る。」
と兄さんが小声で囁いて走って行った。
「どうじゃ、茶でも飲みながら少し話を聞いてくれんかのお。」
「ここで良いんですか?」
「構わんよ、イル嬢ちゃんのご家族にも聞いてもらった方が良いじゃろう。それに天幕の中より外の方が気持ちが良いでのお。遮音の魔法を使うから、ここで話をしても誰かに聞かれる心配はないぞ。」
「分かりました。ただ、ラトスさんに会いたがっている人が居るんです。話はその人が来てからでも良いですか?」
「ああ、もちろん構わんよ。」
待つ間でもなく、向うからアトル先生が駆けて来るのが見えた。兄さんも後からやって来る。アトル先生は私達の前で立ち止まり、ラトスさんに一礼をして口を開いた。
「先王の甥、アトルです。魔導士ラトス様に是非お教え願いたいことがあります。トワール王国の内戦を鎮める方法はないでしょうか。」
「アトルか、大きくなったのお。まあ、座るが良いぞ。今日、イル嬢ちゃんに会いに来たのは、正にその話をするためじゃからのお。」
ラトスさんの言葉に従い全員がシートに座ると、ラトスさんがおもむろに話を始めた。
「まず、アトルの質問への答えじゃが、内戦を鎮めるには誰かが王に成ればよい。王になるのは誰でも構わん、今、王の座を争っている王妃でも良いし、宰相でも良い。アトル、お前でも構わん。どの様な愚王であろうと内戦は鎮まるじゃろう、少なくとも一時的にはのう。」
ちょっと、ラトスさん。アトル先生が愚王に成るって意味? 失礼だよ! アトル先生は賢くて、頑張り屋で、国民のことを考えているよ。愚王になんか成るわけない!
「イル嬢ちゃんは、アトルは愚王じゃないと言いたいかもしれんのお、じゃがな、政治というものは、10歳の子供が後ろ盾も無しに乗り切れるほど容易な物では無いのじゃ。アトルが王に成れば、必ずや失敗するじゃろう。」
「それじゃ、誰が王様に成ればいいんですか?」
と私は思わず尋ねた。アトル先生本人を前にして、言い方ってものがあると思う。
「さっきも言った様に、内戦を鎮めるだけなら誰でも良いわい、じゃがのお、トワール王国を長く平和に保つことが出来る王は、今の所ひとりしかおらん。儂じゃよ。」
ラトスさん、見損なったぞ! 結局は、自分が王様になりたいだけじゃないか! 王妃や宰相と同じだよ! 私は腹が立って、席を立とうとした。だが、ラトスさんは続けて言う。
「言っとくが、儂は王になんか成りたくないぞ。もし、王に成りたいんなら500年前にそうしておるわい。なにせ、トワール王国を建国したのは儂じゃからのう。」
ん? 今聞き捨てならないことが聞こえたような...。ラトスさんがトワール王国を建国した? 500年前に?
「ラトスさんて、お幾つなんですか?」
「それなりの歳ということじゃよ。老化を遅らせる魔法については知っておるじゃろう。イル嬢ちゃんにやった本にも書いてあったはずじゃしな。」
確かにその魔法については知っている。だが、500年以上生きることが出来るほど効果があるものとは知らなかった。
「儂とララが神様から力を授かって、神様が留守の間この世界を守る様に頼まれたのは覚えておるかのお。じゃが、いくら力を貰ったとは言え、ふたりで出来ることには限りがある。そこでララと相談して国を作ることにしたんじゃ、国と言う組織を使って、世界に平和と秩序をもたらそうとな。それがトワール王国とハルマン王国の始まりじゃ。もっとも儂は、どうしても、王様なんぞと言う堅苦しい物になる気が起きなくてのお。つい、国を興すのに協力してくれた若者を王の座に据えてしもうた。それがトワール王国の王室の始まりじゃ。もっとも、ララは予定通りハルマン王国の女王の座に就いたから、その後ずっと、無責任だとネチネチと文句を言われておる。まあ、儂としては王室と適度な距離を取って導きながら、いざと言うときは助けるつもりじゃったのじゃがな...。と言う訳で、今回のことは全面的に儂の責任じゃ。2度と同じことが起きぬよう、儂が王となると決めたのじゃ。」
「もちろん、イル嬢ちゃんを待っていたのじゃよ。何じゃ? 疲れた顔をしておるぞ。」
「そんなことより、よくこの居住地に入れましたね。」
「いやあ、入り口に居た人が頑固でな。イル嬢ちゃんに会いに来たと言っても、頑として通してくれん。イル嬢ちゃんに念話を送っても返事が無いし、どうしようかと思っていた時に、嬢ちゃんの母上が来てくれてな。入り口の頑固おやじと話をして、儂を中に入れてくれたのじゃよ。」
いや、今日の入り口の見張りが誰だったか忘れたけど、正解だよ。すごく怪しげなおじいさんだものね。
「イルからラトスさんの名前は聞いていたからね。魔導士様に失礼があっては行けないから、天幕で待ってもらっていたの。」
母さんがそう言うのを横で聞いていたラナさんが咽る。これはラトスさんの正体を知らなかったな。
「アトルを呼びに言って来る。」
と兄さんが小声で囁いて走って行った。
「どうじゃ、茶でも飲みながら少し話を聞いてくれんかのお。」
「ここで良いんですか?」
「構わんよ、イル嬢ちゃんのご家族にも聞いてもらった方が良いじゃろう。それに天幕の中より外の方が気持ちが良いでのお。遮音の魔法を使うから、ここで話をしても誰かに聞かれる心配はないぞ。」
「分かりました。ただ、ラトスさんに会いたがっている人が居るんです。話はその人が来てからでも良いですか?」
「ああ、もちろん構わんよ。」
待つ間でもなく、向うからアトル先生が駆けて来るのが見えた。兄さんも後からやって来る。アトル先生は私達の前で立ち止まり、ラトスさんに一礼をして口を開いた。
「先王の甥、アトルです。魔導士ラトス様に是非お教え願いたいことがあります。トワール王国の内戦を鎮める方法はないでしょうか。」
「アトルか、大きくなったのお。まあ、座るが良いぞ。今日、イル嬢ちゃんに会いに来たのは、正にその話をするためじゃからのお。」
ラトスさんの言葉に従い全員がシートに座ると、ラトスさんがおもむろに話を始めた。
「まず、アトルの質問への答えじゃが、内戦を鎮めるには誰かが王に成ればよい。王になるのは誰でも構わん、今、王の座を争っている王妃でも良いし、宰相でも良い。アトル、お前でも構わん。どの様な愚王であろうと内戦は鎮まるじゃろう、少なくとも一時的にはのう。」
ちょっと、ラトスさん。アトル先生が愚王に成るって意味? 失礼だよ! アトル先生は賢くて、頑張り屋で、国民のことを考えているよ。愚王になんか成るわけない!
「イル嬢ちゃんは、アトルは愚王じゃないと言いたいかもしれんのお、じゃがな、政治というものは、10歳の子供が後ろ盾も無しに乗り切れるほど容易な物では無いのじゃ。アトルが王に成れば、必ずや失敗するじゃろう。」
「それじゃ、誰が王様に成ればいいんですか?」
と私は思わず尋ねた。アトル先生本人を前にして、言い方ってものがあると思う。
「さっきも言った様に、内戦を鎮めるだけなら誰でも良いわい、じゃがのお、トワール王国を長く平和に保つことが出来る王は、今の所ひとりしかおらん。儂じゃよ。」
ラトスさん、見損なったぞ! 結局は、自分が王様になりたいだけじゃないか! 王妃や宰相と同じだよ! 私は腹が立って、席を立とうとした。だが、ラトスさんは続けて言う。
「言っとくが、儂は王になんか成りたくないぞ。もし、王に成りたいんなら500年前にそうしておるわい。なにせ、トワール王国を建国したのは儂じゃからのう。」
ん? 今聞き捨てならないことが聞こえたような...。ラトスさんがトワール王国を建国した? 500年前に?
「ラトスさんて、お幾つなんですか?」
「それなりの歳ということじゃよ。老化を遅らせる魔法については知っておるじゃろう。イル嬢ちゃんにやった本にも書いてあったはずじゃしな。」
確かにその魔法については知っている。だが、500年以上生きることが出来るほど効果があるものとは知らなかった。
「儂とララが神様から力を授かって、神様が留守の間この世界を守る様に頼まれたのは覚えておるかのお。じゃが、いくら力を貰ったとは言え、ふたりで出来ることには限りがある。そこでララと相談して国を作ることにしたんじゃ、国と言う組織を使って、世界に平和と秩序をもたらそうとな。それがトワール王国とハルマン王国の始まりじゃ。もっとも儂は、どうしても、王様なんぞと言う堅苦しい物になる気が起きなくてのお。つい、国を興すのに協力してくれた若者を王の座に据えてしもうた。それがトワール王国の王室の始まりじゃ。もっとも、ララは予定通りハルマン王国の女王の座に就いたから、その後ずっと、無責任だとネチネチと文句を言われておる。まあ、儂としては王室と適度な距離を取って導きながら、いざと言うときは助けるつもりじゃったのじゃがな...。と言う訳で、今回のことは全面的に儂の責任じゃ。2度と同じことが起きぬよう、儂が王となると決めたのじゃ。」
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