亡者とリンクする

三日目(1)

9.
【三日目】
　今日は特にガイダンスもなく、菜穂から買い物に誘われたけれど……私はずっと引きこもって原稿を書いていた。
　この物語は、きっと、メッセージ。
　白山さんが、みんなに一番に伝えたかったメッセージ。

──Don't forget!!

　忘れてはいけない。
　今も、この世界のどこかでは、誰かが血を流している。
　死んでいく。

　少年が落としたのは、「弾丸」──
　白山駅は、多分……血と死がひしめき合うカオスの世界。
　少女は、それを目の当たりにする。
　少年との交流、彼を取り巻く人々との交流で、それを知っていく。
　それでも、少女は、戻らなくてはいけない。

「……そうだ。だって、彼女の行く先は、隣の白金駅だったのだから」
　だから、だから、白山さんも……戻ってくるつもりだったのだろう。
　カオスになってしまった自分の心を整理して、再び、笑顔を描ける自分に、戻るつもりだったのだろう。
　泣いていた。
　涙が、ぽたり、と原稿用紙に落ちた。
　インクが滲む。
「白山さん……」
　けれど……彼は戻れなかった。
　もしかしたら、半分は「死にたい」と思っていたのかもしれない。
　それは、もう、誰にも分からない事だけど……。
「どうして、死んじゃったんですか？」
　最後まで、彼には分からなかった事が一つだけある。
　残された者の、痛み──