18 / 18
双生の再開
しおりを挟む
二人の間に沈黙が落ちる。それは一年ぶりに会った兄妹との再会に気まずくなっているわけでも、歓喜に言葉が出ないわけでもない。険悪な沈黙だった。
咲良は掴まれた手を振り払うことも、作った笑顔を浮かべることもせずに咲斗を見つめている。咲斗もまた、掴んだ手を離すことなく、一年探し回った片割れを見つめていた。
そんな沈黙を先に破ったのは咲良の方だった。
「あらあら咲斗、どうしたんですか~。そーんなに怖いお顔をして~」
「……それを本気で言っているなら少しお灸をすえる必要がありそうだな」
「咲斗じゃ無理ですよ~。私に傷一つつけられません」
「いい加減にしろ、帰るぞ」
「嫌です。私は神楽と旅を続けます」
「ただの旅ならまだしも、お前の目的は俺の……」
「……や~っぱりわかってましたか。そうですよね、気づくって知ってました。何にも言ってないのに。こういう時の双子の直感は厄介ですね」
「誤魔化すなよ」
両者ともに一歩も引かず平行線の会話を続けていると、危機を脱した白羅が浮遊魔法で空に逃げた。
「あ、逃げられちゃいました。も~。咲斗が邪魔したせいですよ~」
「邪魔もする。お前が使おうとしたのは脳に後遺症が残る粗雑な魔法だ」
「さっすが咲斗! あの短時間で複雑な式を読み解いたんですね~」
「あの程度、見抜けないはずないだろう」
何の感慨もなく言っているが、咲斗のその能力は凄まじいものだ。普通百を超える魔法式を読み解くのに下級の『魔女』ですら一時間を要することがある。と言えばその特異性はわかるだろうか。
咲斗はさらに魔力や式の癖なども見抜き魔法の駆使者を特定することも、それを模範することもできる。魔法を解析し、それを自分の力として蓄積する。それが咲斗の二つ名〝明晰開花〟の由来だ。
咲斗は苛立ちを表すように舌打ちを一つ残すと、咲良の手を離して上空に逃げた白羅と、神楽の方を見た。
「で、あれはなんだ」
「なんだって、見たままですよ~。神楽が〝緑園の狂姫〟と遊んでいます」
「ああ、聞き方を変えてやろう。どういう状況だ」
「も~。仕方ないですね~。ヴィンズの教皇のお嫁さんと『魔女』が襲撃してきたんです。目的は不明ですが多分瑠伽が関係していますね」
「瑠伽?」
「神楽が守ってる子ですよ~」
「……ああ、闇属性の子供か。わざわざ幹部クラスが出てくるなんて、重要人物か?」
「それを調べようとしてたんですよ」
まあ、他に知りたいことがあったことが魔法を使おうとした原因ではあるが。
「にしても、教皇の妃なんぞが何故ここに」
「それも調べようとしてたんですよ!」
「消そうとしていたの間違いじゃないだろうな」
「ころころしちゃったときはやむなしと思ってましたが。そのあたりは一応調整してましたよ~」
「そもそも使うな大馬鹿娘」
「私は天才だし妹ですよ~」
「はぁ……」
咲斗は頭を抱えていたが、咲良は聞こえないふりをした。
一年会っていなくても、双子の関係性は依然と変わらない形でそこに会った。
良くも、悪くも。
咲良は掴まれた手を振り払うことも、作った笑顔を浮かべることもせずに咲斗を見つめている。咲斗もまた、掴んだ手を離すことなく、一年探し回った片割れを見つめていた。
そんな沈黙を先に破ったのは咲良の方だった。
「あらあら咲斗、どうしたんですか~。そーんなに怖いお顔をして~」
「……それを本気で言っているなら少しお灸をすえる必要がありそうだな」
「咲斗じゃ無理ですよ~。私に傷一つつけられません」
「いい加減にしろ、帰るぞ」
「嫌です。私は神楽と旅を続けます」
「ただの旅ならまだしも、お前の目的は俺の……」
「……や~っぱりわかってましたか。そうですよね、気づくって知ってました。何にも言ってないのに。こういう時の双子の直感は厄介ですね」
「誤魔化すなよ」
両者ともに一歩も引かず平行線の会話を続けていると、危機を脱した白羅が浮遊魔法で空に逃げた。
「あ、逃げられちゃいました。も~。咲斗が邪魔したせいですよ~」
「邪魔もする。お前が使おうとしたのは脳に後遺症が残る粗雑な魔法だ」
「さっすが咲斗! あの短時間で複雑な式を読み解いたんですね~」
「あの程度、見抜けないはずないだろう」
何の感慨もなく言っているが、咲斗のその能力は凄まじいものだ。普通百を超える魔法式を読み解くのに下級の『魔女』ですら一時間を要することがある。と言えばその特異性はわかるだろうか。
咲斗はさらに魔力や式の癖なども見抜き魔法の駆使者を特定することも、それを模範することもできる。魔法を解析し、それを自分の力として蓄積する。それが咲斗の二つ名〝明晰開花〟の由来だ。
咲斗は苛立ちを表すように舌打ちを一つ残すと、咲良の手を離して上空に逃げた白羅と、神楽の方を見た。
「で、あれはなんだ」
「なんだって、見たままですよ~。神楽が〝緑園の狂姫〟と遊んでいます」
「ああ、聞き方を変えてやろう。どういう状況だ」
「も~。仕方ないですね~。ヴィンズの教皇のお嫁さんと『魔女』が襲撃してきたんです。目的は不明ですが多分瑠伽が関係していますね」
「瑠伽?」
「神楽が守ってる子ですよ~」
「……ああ、闇属性の子供か。わざわざ幹部クラスが出てくるなんて、重要人物か?」
「それを調べようとしてたんですよ」
まあ、他に知りたいことがあったことが魔法を使おうとした原因ではあるが。
「にしても、教皇の妃なんぞが何故ここに」
「それも調べようとしてたんですよ!」
「消そうとしていたの間違いじゃないだろうな」
「ころころしちゃったときはやむなしと思ってましたが。そのあたりは一応調整してましたよ~」
「そもそも使うな大馬鹿娘」
「私は天才だし妹ですよ~」
「はぁ……」
咲斗は頭を抱えていたが、咲良は聞こえないふりをした。
一年会っていなくても、双子の関係性は依然と変わらない形でそこに会った。
良くも、悪くも。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
勇者の隣に住んでいただけの村人の話。
カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。
だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。
その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。
だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…?
才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
おもしろい!
お気に入りに登録しました~
ありがとうございます。これを励みに彼らの物語を紡いでいきます。