長編版・不能の公爵令息は婚約者を愛でたい(が難しい)

たたら

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17:僕の親友

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 その日は僕は朝からそわそわしていた。
今日は学院に行くけれど、
クラスの皆とお昼ご飯を一緒に
食べる約束をしていたのだ。

セバスチャンに言って
僕はお弁当を用意してもらって
ドキドキしながら馬車に乗る。

護衛のケインが持ったお弁当の袋は
物凄く大きくて、僕はこんなに
食べれないよって思ったけれど。

セバスチャンがご学友と分け合って
お召し上がりください、って
言ってくれた。

友だちとお弁当を分け合うって、
考えただけでもわくわくしちゃう。

僕があまりにもそわそわ、
わくわくしていたからか、
兄に「また熱が出るから
少しは落ち着きなさい」
なんて言われてしまった。

それでも僕は嬉しくて、
兄の腰にぎゅーっと抱きつく。

「エレが学院に楽しく
行くようになって
兄も嬉しいが、
あまり無理をしすぎるなら
出席日数を制限するぞ」

「大丈夫、絶対大丈夫だから」

僕は慌てて兄に訴える。
今日は体調を崩さないようにしなくては。

気合を入れて。
でも、わくわくは止めれなくて
僕は兄に顔を押し付けて
ぐりぐりした。

兄は仕方がないと言うように
僕の頭を撫でて
「行っておいで」と僕を
馬車に乗せてくれたのだ。

けれど、馬車の中でも
そわそわしているので、
ケインも苦笑気味だ。

いざ、学院について
校舎まできたものの、
やはりお弁当が大きい。

授業のカバンだけでなく、
お弁当箱まで持てるだろうか、
と心配になったが、
それはすぐに杞憂に終わる。

何故なら入口のところで
ライリーとサイラスが
待っていてくれたのだ。

ケインは二人に僕のカバンと
お弁当を押し付けた。

「おはよう、二人とも。
ごめんね、持ってもらって」

ケインが問答無用で挨拶をして
鞄を押しつつけたので
僕はあわあわした。

「いいよいいよ。
俺ら、力持ちだしな」

サイラスが笑う。

「それにしても
エレ様、これはお弁当……?
たくさんですね」

「うん、みんなで分け合って
食べてくださいって、
セバス……執事が言ってくれたの」

「ということは俺、
お昼になったらバーンズ侯爵家の
シェフの料理を食べれるってことか?」

弾んだサイラスの声に、
僕もつられてしまった。

「僕、あまり食べれないから
沢山たべてね」

「おう!」
って勇ましい返事を貰って
僕は嬉しくなる。

ライリーは、図々しくてスミマセン、
なんて言うけれど、
僕は嬉しかったから
「ライリーも沢山食べてね」って
声を掛けた。


 授業は問題なく進んだ。
僕は運動系がダメなので
そういう時は救護室で
休ませてもらうことにしている。

今日の体育の授業は騎士科と合同で
自衛の方法を学ぶらしい。

さすがにティーナも見学を申し出て、
僕たちは二人で救護室で休んでいた。

これが終わると待ちに待った昼休みだ。

僕はティーナにお弁当が楽しみだって
一生懸命話した。

ティーナは僕の話を、
ガイや兄に負けず劣らす、
嬉しそうに聞いてくれる。

ティーナは僕のあげたリボンで
髪を結っていて、それはとっても似合っていた。

「ティーナ、今日も可愛いね」

「か、可愛い? 私が?」

「うん、リボンも似合ってる」

「あ、ありがとうございます。
でも私が可愛いだなんて……

綺麗、とかは言われますが、
それ以外は、可愛げがないとか
男にたてつく嫌な女、なんて
思われていますのよ」

僕は驚いた。

「え? なんで?
ティーナは可愛いし、
もちろん、綺麗だけど。

ティーナはちゃんと自分の意見が
言えて、僕は凄いって思う。

僕はなかなかそれができないから。

でもね、僕もティーナみたいになりたくて
今、頑張ってるんだ」

自分の意見をきちんと言いたい。
僕も、自分の意志で何かを選び、
自分で自分のやりたいことを決めたい。

「僕の目標はティーナなんだよ」

というと、何故かティーナは
目を涙でいっぱいにした。

「ティーナ? どうしたの?」

大丈夫?って頭を撫でてあげたら
ティーナは、本当に嬉しそうに笑った。

「わ、わたくし、絶対に、絶対に、
エレ様を守って見せますわ」

……どういう意味だろう?

「社交界には、ブレイトン家の女王と
その後継者と言われる私がいます。

えぇ。必ず守ってみせますわ。
あのくだらない見栄張りの女雀たちや
欲望を吐き出すしか知らない
ゲスな男たちから」

急にティーナの口が悪くなった。
しかも意味がよくわからない。

「ティーナ?」

「いいえ、こちらの話しですわ。
それよりもエレ様。

エレ様は可愛いものが
お好きなのですわよね?」

ティーナが確認するように言う。

「うん、大好き」

「まぁ、本当に……お可愛らしい」

ティーナは何かつぶやき、
鞄から、小さなぬいぐるみを出した。

「これ、うちの侍女が作りましたの」

「わぁ、可愛い。
……獅子?」

とても可愛い小さなぬいぐるみだけれど
獅子のように見える。

「えぇ。ブレイトン公爵家の家紋を
モチーフにしましたの。

どうぞ、貰ってくださいませ」

「いいの?」

「はい、リボンのお礼ですわ。

本来であれば、もっと可愛い
私とお揃いのモチーフのものを
お送りしたかったのですが……

あの朴念仁が煩しそうですので、
ブレイトン家の家紋ということで
落としどころを作りましたのよ」

またちょっと意味が分からない。

朴念仁って?

「どうぞ、お持ちくださいな。
お気に召したのなら、
今度、この子のお洋服も
プレゼントさせていただきますし」

「洋服?」

「ええ、この子、着せ替えが出来ますのよ」

そう言ってティーナは獅子の子の隣に
同じ大きさの猫のぬいぐるみを置いた。

「ほら、こうして」

猫のぬいぐるみは赤いベストを着ていたけれど、
ティーナはそれを脱がして
騎士のような白いシャツとマントを
猫に羽織らせる。

「凄い!可愛い、かっこいい」

騎士だ!
猫の騎士様だ!

「この子も、騎士様になれる?」

僕は獅子の子を手に取った。

「もちろんですわ」

その言葉に僕は嬉しくて
獅子の子と一緒に
ティーナの手を握った。

その僕の手をティーナも
握り返してくれる。

その瞬間、僕はティーナと
深い友情が芽生えたと感じた。

それはティーナも同じだったと思う。

だって僕たちは自然と
視線を合わせて同じような顔で
にぱ、って笑ったのだ。

ティーナのそんな淑女ではない、
ちょっと幼い笑顔を見れるなんて思わなくて。

僕は嬉しくなって、また笑った。
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