長編版・不能の公爵令息は婚約者を愛でたい(が難しい)

たたら

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18:初めてのお昼休み

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 ティーナとぬいぐるみで遊んだ後、
僕たちは教室に戻った。

すでにみんなは着替えをして、
教室に戻っていた。

僕は獅子の子を大事にポケットに入れて
お弁当を持つ。

「あ、エレ様、
俺が持ちますよ」

重たい、って思った瞬間、
サイラスがひょい、って
僕の袋を持ってくれた。

「荷物持ちと体力仕事は
俺がするように、って
言われてるんで」

誰に?
誰に言われたの?

「エレ様、行きましょう」

僕が聞く前に、ライリーが
僕に声を掛ける。

「クラス全員なので、
中庭で食べることにしたんです」

ライリーはそう言い、
僕をエスコートする。

僕たちが移動するのに合わせて
ティーナたちも移動しはじめた。

中庭に行くと広場の様な場所があり、
ガゼボやベンチもある。

ライリーとサイラスは
僕とティーナをガゼボに座らせた。

その近くのベンチに座る者もいれば、
ベンチなど関係なく、
芝生や砂の上に直に座る者もいる。

いいの?って思ったけれど、
騎士志望の者たちは、
地面に座るどころか
寝転がることも良くあるので、
気にしないという。

しかもみんな声が大きいから
離れて座っていても、
話しかけられたらちゃんと声が聞こえるし、
僕の声が小さくても、
ちゃんと聞き取ってくれる。

僕のお弁当箱は、サンドイッチと
焼いたチキン、それから小さな
ケーキが入っていた。

僕は自分が食べれる分だけ
お弁当の蓋をお皿にして置き、
あとはティーナたちに勧める。

「エレ様はそれだけしか食べませんの?」

「うん、僕、あまり沢山は
食べれなくって」

「そんなことでは大きくなれませんわ」

ティーナはそう言って、
自分のお弁当の中から
焼いたエビをフォークで取ると、
僕のお皿に置いてくれた。

「香草で焼いてますの。
とっても美味しいですわよ」

せっかく言ってくれたので、
僕は思い切って食べてみる。

「凄い!美味しい!」

「ふふ、でしょう?」
と自慢げなティーナの顔が可愛い。

「ふふ、ティーナ、可愛い」

ね? って近くで僕の持って来た
チキンをかじっているサイラスと
ライリーに言うと、二人は
もぐもぐしていた動きを止めた。

「可愛い?」

「ヴァレンティーナ女史が? ありえねー」

「お二人とも、口が過ぎますわよ」

ティーナの声に二人は肩をすくめる。

その様子がおかしくて、
僕は声を出して笑った。

毎日、こんなに笑う日が来るなんて。

僕はガイに会ってから
どんどん人生が変わってきているように思える。

僕のお弁当はクラスメイト達全員に
行きわたったようで、
全員から「ごちそうさまでした!」と
大きく感謝の言葉を言って貰えた。

こんなに沢山!って思ったのに、
僕の元に戻って来たお弁当箱は
からっぽになっていた。

僕はまた嬉しくなる。

「ねぇ、エレ様。
私からお誘いするのは
本来であれば難しいことですが。

級友になれたと信じて
申し出ますわ。

次の休みの日、我が家にいらっしゃいませんこと?」

そっとティーナが僕に言う。

「あの子たちの洋服を、
じつはすでに、沢山作ってありますの」

僕は目を輝かせた。

「もちろん、あの子たち以外の子も。
もっと大きな子もいますし、
沢山、お着換えもできますわ」

物凄く魅力的に僕は思えた。

初めて友だちに誘われて、
しかも、屋敷にお呼ばれだなんて。

それに僕の部屋には
可愛いぬいぐるみはあるけれど、
着替えの服はない。

だって、ぬいぐるみを
着替えさせるなんて
考えたことがなかったもの。

「い、い、いいの?」

「ええ、もちろんですわ。
よければ正式に、うちの父から
エレ様のところに招待状を
お送りさせていただきます」

僕はティーナの手を握って、
ぶんぶん振った。

「嬉しい、楽しみ」

「ええ、私も」

ティーナも笑顔で頷く。

「え?なんだ?
何が楽しみなんだ?」

サイラスが僕たちのそばに来た。

「何でもないですわ」

ティーナがぷい、っと顔を背ける。

「どうしたんですか?」

ライリーが僕に聞く。

「お休みの日にね、
ティーナと一緒に遊べたら
いいなぁ、って」

僕が曖昧に答えると、
サイラスがそれはいい!と
大きな声を出す。

「エレ様、俺と、ライリーも連れて
一緒に遊びに行こう。

俺、貧乏子爵出だから、
街にも下町にも詳しいし。

そうだ、今度の花祭り……」

「サイラス!」とライリーが
大きな声でサイラスの声を止めた。

「エレ様の体調のこともあるし、
先走ったらダメだろう。

エレ様の兄君……
フェルナンド・バーンズ様の
了承が無いのに、俺たちが
勝手なことを言うわけにはいかない」

学院の中庭でランチを食べるのとは
わけがちがうだろう、と
ライリーは言う。

僕はサイラスの提案は
本当に嬉しかったけれど、
街に行くとかなると
兄は許可しないだろうな、って思った。

だって兄は僕が屋敷の外に
出るのを、物凄く嫌がるから。

学院に行かなかったら、
僕はずっと屋敷の中で
過ごしていたと思う。

だって僕の父も母も、
僕が外に出るのは……
屋敷の庭でさえ、嫌がったのだ。

僕の体調が心配だからと
庭に出るぐらいなら
庭が見えるサロンを作ろうと
父が言い出して、
屋敷の一角に、庭に面する
ガラス張りのサロンが
建てられたのだ。

そんな僕が学院に通うのも
両親はあまり良い顔をしなかった。

卒業資格が取れたのだから
屋敷にいればいいと言う。

その両親を説き伏せてくれたのが
兄だったのだ。

兄は僕の体調が良いときだけ
学院に行くことを許可してくれた。

同年代の友人たちと過ごす時間も
必要だろう、と言ってくれたのだ。

でも僕はずっと友達が出来なくて。

屋敷からなかなか出れなかった。

でも、今は違う。

僕には沢山のクラスメイトと、
それから友達が出来た。

それなら、今度は
屋敷と学院以外の場所に
行ってもいい?

まずはお友達の家に。
それから……街、とか。

ずっと閉鎖していた僕の人生が
どんどん開いていく。

「僕ね、兄様にお願いしてみる。
ライリーとサイラスと一緒に
遊びに行きたいって」

僕の背中を押すように、
風が、吹いた。

二人は「楽しみです」って
物凄い笑顔で、
僕に応えてくれた。






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