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20:恋の悩み
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ティーナは新しい紅茶を侍女に入れさせて
ぬいぐるみたちも片付けた。
それから侍女たちを下がらせて
人払いをする。
ただし、一人だけ侍女が部屋に残った。
ティーナが言うには、
未婚の男女が部屋で二人っきりは
良くないことらしく、
すべての侍女を下がらせるわけには
いかないのだという。
僕はそういう知識も疎いので、
今後はティーナに色々教えて貰おうと
心に誓った。
「あの者は、私の専属侍女で、
私が幼い頃から一緒にいるの。
だから信頼できますし、
ここでの話を漏らすことは
一切ありませんわ」
ティーナはそう言って、
僕の隣に座った。
「エレ様。
私個人としては、
エレ様は天使のままで
いて欲しいと思います」
……天使?
「ですが、今のままでは
社交界にデビューした途端、
エレ様が傷付くのは目に見えております。
どんなにあの朴念仁が
エレ様を守ろうとしても
限度がありますわ」
ティーナはそう言うと、
扉の近くに控えていた侍女に
何やら本を持ってくるように言う。
「エレ様、私の恋愛指南書を
お貸しいたしますわ。
それから恋というものは
口では説明できないものですの」
「そう、なの?」
「はい。
恋をすると兄弟よりも、
親友よりも、その人と
共にいたい、近くに寄りたいと
希うものですわ」
僕はガイのことを考えた。
一緒にいたいと思うけれど、
それは兄とは違うものなのだろうか。
「ふふ、エレ様はまだ
よくわかってないかもしれません。
エレ様は私とこうして
自然に手を繋いでくださるでしょう?」
「うん。だってティーナは
親友だもの」
「ええ、嬉しいですわ。
でも恋をすると、手を繋ぐことが
できなくなってしまいますの」
「え?! どうして?」
「恥ずかしくなってしまったり、
そうですわね。
嬉しいけれど、恥ずかしすぎて
できない、といった感じですわ」
それは嫌だな、って僕は思った。
「僕、ガイと手も繋ぐし、
お膝にも座るし、ぎゅーって
しがみついてるけど。
恋をしたらそれもダメなの?」
「え! え?
お膝?
ぎゅー?
ど、ど、どういうことですの?!」
慌てるティーナに僕は
兄に普段していることを
そのままガイにしていると伝えた。
「……そうですのね。
そもそもの問題がそこですのね」
僕にはその問題がさっぱりわからない。
「お嬢様、失礼致します」
困惑する僕のところに、
先ほどの侍女が本を数冊持って来た。
「エレ様、まずは恋を学ぶところからですわ。
それ以外のことは……
あの朴念仁から恨まれますから
そのままでも構いません。
とにかく、好き、を意識していきましょう」
いいですわね、と言われて
僕は頷く。
よくわからないけど
ティーナについていったら
恋愛マスターになれる気がする。
「ティーナ師匠!」って言ったら
ティーナはやっぱり顔を赤くして
「ただのティーナですわ」と言った。
そこから僕はティーナに
勧められた本を借りて、
少しだけティーナの婚約者の話を聞いた。
ティーナの婚約者は文官候補ではなく
すでに文官として働き出しているという。
同じ伯爵家の次男なので、
婚約者がティーナの家に
婿入りする予定なんだとか。
彼は頭がいいし、
領地経営も一緒にしてくれるから
頼りにしていますの。
というティーナは確かに
恋する乙女みたいだった。
結婚はティーナが卒業してからになるので
結婚式には来て欲しいと言われたから
僕は、喜んで、と返事をする。
ティーナの顔を見て
僕もガイの前でこんな顔に
なる日がくるのかな、って思った。
「そうそう、エレ様。
言っておきますが、
兄弟と友達と婚約者では
役割も求めるものも、
もちろん、互いの距離も
変ってきますわよ」
その言葉には、びっくりだ。
それから僕はティーナに
兄との距離はともかく、
同じ様に友だちに接しては
ダメだと何度も言われた。
友だちというのは
一緒に住まないだけでなく、
どんなに心の距離が近くて
仲良くなれたとしても
接触はあまりしないらしい。
つまり、今日みたいに
ティーナと手を繋いだりするのは
あまりしない方が良いという。
「私は構いませんのよ。
エレ様のことは、可愛い物が
好きな同士として親友と
認めてますもの」と強気にティーナは言う。
でも顔は真っ赤だ。
「でも、私以外に同じことを
されると勘違いされますわ」
「勘違い?」
「ええ、エレ様が恋愛的な意味で
自分のことを好きなんだという
勘違いですわ」
「僕にはガイがいるのに?」
「えぇ。婚約者がいたとしてもですわ」
「それは……ダメ、だよね」
「えぇ、ダメですわ」
僕はシュン、としてしまう。
僕は他人との距離なんて考えたこと無かった。
だって屋敷の皆とはいつだって一緒で、
なんだって話せたし。
そりゃ、兄に抱きつくみたいには
セバスチャンに抱きつくことはないけれど。
「それから、婚約者との距離も
いきなり縮まるのは問題ですわ」
「それもダメなの?」
「もちろんです。
これも勘違いされますわ。
特にエレ様は可愛らしいですから、
あの朴念仁の理性がどうなるか
不安でしかありませんもの」
「ガイも勘違いするの?」
「ええ。
エレ様がその……閨事を望んでいると
勘違いさせてしまう可能性がありますわ」
ティーナは顔を赤くしたまま
早口で言う。
「ねやごと?」
「そうですわ。
エレ様は政略が絡んだ同性婚ですのよね?
無理に閨を共にする必要はありませんわ。
ですがあの朴念仁はきっと
エレ様に好かれていると勘違いして
暴走するに違いないですの」
強い口調でティーナは言う。
「ねぇ、ティーナ」
「なんですの?」
「ねやごとってなに?」
僕の言葉に、ティーナは動きを止めた。
ついでに言うと、
壁に控えていた侍女までも
目を見開いて固まっている。
あれ?
これって言ったらダメだった?
沈黙が部屋に流れて、
僕は焦ってしまい、
冷めたお茶をクピリと飲んだ。
ぬいぐるみたちも片付けた。
それから侍女たちを下がらせて
人払いをする。
ただし、一人だけ侍女が部屋に残った。
ティーナが言うには、
未婚の男女が部屋で二人っきりは
良くないことらしく、
すべての侍女を下がらせるわけには
いかないのだという。
僕はそういう知識も疎いので、
今後はティーナに色々教えて貰おうと
心に誓った。
「あの者は、私の専属侍女で、
私が幼い頃から一緒にいるの。
だから信頼できますし、
ここでの話を漏らすことは
一切ありませんわ」
ティーナはそう言って、
僕の隣に座った。
「エレ様。
私個人としては、
エレ様は天使のままで
いて欲しいと思います」
……天使?
「ですが、今のままでは
社交界にデビューした途端、
エレ様が傷付くのは目に見えております。
どんなにあの朴念仁が
エレ様を守ろうとしても
限度がありますわ」
ティーナはそう言うと、
扉の近くに控えていた侍女に
何やら本を持ってくるように言う。
「エレ様、私の恋愛指南書を
お貸しいたしますわ。
それから恋というものは
口では説明できないものですの」
「そう、なの?」
「はい。
恋をすると兄弟よりも、
親友よりも、その人と
共にいたい、近くに寄りたいと
希うものですわ」
僕はガイのことを考えた。
一緒にいたいと思うけれど、
それは兄とは違うものなのだろうか。
「ふふ、エレ様はまだ
よくわかってないかもしれません。
エレ様は私とこうして
自然に手を繋いでくださるでしょう?」
「うん。だってティーナは
親友だもの」
「ええ、嬉しいですわ。
でも恋をすると、手を繋ぐことが
できなくなってしまいますの」
「え?! どうして?」
「恥ずかしくなってしまったり、
そうですわね。
嬉しいけれど、恥ずかしすぎて
できない、といった感じですわ」
それは嫌だな、って僕は思った。
「僕、ガイと手も繋ぐし、
お膝にも座るし、ぎゅーって
しがみついてるけど。
恋をしたらそれもダメなの?」
「え! え?
お膝?
ぎゅー?
ど、ど、どういうことですの?!」
慌てるティーナに僕は
兄に普段していることを
そのままガイにしていると伝えた。
「……そうですのね。
そもそもの問題がそこですのね」
僕にはその問題がさっぱりわからない。
「お嬢様、失礼致します」
困惑する僕のところに、
先ほどの侍女が本を数冊持って来た。
「エレ様、まずは恋を学ぶところからですわ。
それ以外のことは……
あの朴念仁から恨まれますから
そのままでも構いません。
とにかく、好き、を意識していきましょう」
いいですわね、と言われて
僕は頷く。
よくわからないけど
ティーナについていったら
恋愛マスターになれる気がする。
「ティーナ師匠!」って言ったら
ティーナはやっぱり顔を赤くして
「ただのティーナですわ」と言った。
そこから僕はティーナに
勧められた本を借りて、
少しだけティーナの婚約者の話を聞いた。
ティーナの婚約者は文官候補ではなく
すでに文官として働き出しているという。
同じ伯爵家の次男なので、
婚約者がティーナの家に
婿入りする予定なんだとか。
彼は頭がいいし、
領地経営も一緒にしてくれるから
頼りにしていますの。
というティーナは確かに
恋する乙女みたいだった。
結婚はティーナが卒業してからになるので
結婚式には来て欲しいと言われたから
僕は、喜んで、と返事をする。
ティーナの顔を見て
僕もガイの前でこんな顔に
なる日がくるのかな、って思った。
「そうそう、エレ様。
言っておきますが、
兄弟と友達と婚約者では
役割も求めるものも、
もちろん、互いの距離も
変ってきますわよ」
その言葉には、びっくりだ。
それから僕はティーナに
兄との距離はともかく、
同じ様に友だちに接しては
ダメだと何度も言われた。
友だちというのは
一緒に住まないだけでなく、
どんなに心の距離が近くて
仲良くなれたとしても
接触はあまりしないらしい。
つまり、今日みたいに
ティーナと手を繋いだりするのは
あまりしない方が良いという。
「私は構いませんのよ。
エレ様のことは、可愛い物が
好きな同士として親友と
認めてますもの」と強気にティーナは言う。
でも顔は真っ赤だ。
「でも、私以外に同じことを
されると勘違いされますわ」
「勘違い?」
「ええ、エレ様が恋愛的な意味で
自分のことを好きなんだという
勘違いですわ」
「僕にはガイがいるのに?」
「えぇ。婚約者がいたとしてもですわ」
「それは……ダメ、だよね」
「えぇ、ダメですわ」
僕はシュン、としてしまう。
僕は他人との距離なんて考えたこと無かった。
だって屋敷の皆とはいつだって一緒で、
なんだって話せたし。
そりゃ、兄に抱きつくみたいには
セバスチャンに抱きつくことはないけれど。
「それから、婚約者との距離も
いきなり縮まるのは問題ですわ」
「それもダメなの?」
「もちろんです。
これも勘違いされますわ。
特にエレ様は可愛らしいですから、
あの朴念仁の理性がどうなるか
不安でしかありませんもの」
「ガイも勘違いするの?」
「ええ。
エレ様がその……閨事を望んでいると
勘違いさせてしまう可能性がありますわ」
ティーナは顔を赤くしたまま
早口で言う。
「ねやごと?」
「そうですわ。
エレ様は政略が絡んだ同性婚ですのよね?
無理に閨を共にする必要はありませんわ。
ですがあの朴念仁はきっと
エレ様に好かれていると勘違いして
暴走するに違いないですの」
強い口調でティーナは言う。
「ねぇ、ティーナ」
「なんですの?」
「ねやごとってなに?」
僕の言葉に、ティーナは動きを止めた。
ついでに言うと、
壁に控えていた侍女までも
目を見開いて固まっている。
あれ?
これって言ったらダメだった?
沈黙が部屋に流れて、
僕は焦ってしまい、
冷めたお茶をクピリと飲んだ。
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