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27:すれ違い・2
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俺は屋敷に戻ると、息を吐きだした。
殿下のせいで俺は愛する妖精との
時間がかなり減ってしまうことが
すでに決まっている。
そのことを告げると、
俺の妖精は寂しいと感じたのか
すっかり拗ねてしまったのだ。
正直、嬉しくなってしまったが、
それを隠して俺は今日一日、
妖精の機嫌を取り続けた。
膝に座らせ、菓子を食べさせる。
ぎゅーっとしがみついてくる
小さな体を抱きとめて。
散歩をしたときは
子供にするように
縦て抱っこをして、
庭を歩き回ってみた。
妖精は視点が変わったことで
気分も変わったようだったが、
それでも屋敷に戻り、
バーンズ侯爵家の領地の
勉強が始まるころには
また拗ねた様子で俺の膝に座ってくる。
執事のセバスチャンも
この妖精の様子には
驚いていたようだった。
そこで結局、今日の勉強は取りやめにして、
温室で茶会をしたり、サロンで
妖精を膝に乗せてたくさん話をした。
俺の騎士団での過ごし方や
第二殿下の話。
それから殿下のお見合いのこと。
話をしていくと、
可愛い拗ねた顔が
どんどん笑顔になっていき、
殿下が恋愛指南書を持っていると
いう話になったとき、
可愛い唇が「僕も持ってるよ」
という。
その言葉にそばに控えていた
侍女のアンナが殿下が持っていたのと
同じ本を、さっとテーブルに置いた。
そういえば、昼間、
庭のガゼボにも似たよな本が
おいてあったように思う。
だがあの時は目の端に
本があるとは思ったが、
可愛い顔を愛でることに
意識が向いて、
きちんと見ていなかったのだ。
「こ、この本はどこで?」
俺の妖精が、世俗にまみれた
恋愛小説を読んだというのか?!
「ティーナがね、貸してくれたの。
まだ全然読めてないんだけど」
「読まなくても大丈夫だ」
思わずかぶせるように言ってしまった。
「え、でも……」
「大丈夫だ。
可愛いエレはそのままでいいんだ」
首をかしげる妖精に
俺は本を取り上げて言う。
「この本は俺が読む」
「ガイが?」
「そうだ。
必要なことは俺がエレに
教えるから」
だから俺に任せてくれ。
必死でそう訴えてしまったのだが、
俺の妖精はキョトンとした
顔をしつつも、うなずいてくれた。
ふー、やれやれ。
と息を吐くと、
あきれたような侍女の視線に気が付いた。
だが、そんなものへでもないわ!
あの団長殿に成敗される恐怖に
比べたらこの屋敷での
俺の人権など、守る価値もない。
捨て身の俺の態度に、
侍女の視線に憐憫がまざる。
「ガイ、じゃあねぇ」
ソファーに座った俺の膝の上で可愛い声が言う。
「大人になったらわかること、
ガイが教えてくれる?」
……心臓が止まったかと思った。
上目使いに甘えた顔で。
一気に気分が高揚し、
鼻血が出たかと俺は思わず
鼻を抑えた方が、
それどころではなく、
可愛い体を抱き上げる。
そのタイミングで立ちあがり、
俺はくるくると
ごまかすように小さな体を
抱っこしたまま回った。
俺の妖精は突然始まった
俺の奇行に、遊びが始まったと
勘違いしたのか楽しそうに笑う。
だが俺はそれどころではなかった。
俺の下半身が驚くほど主張し、
誤魔化せない状態だったのだ。
抱っこした俺に妖精はぎゅっと
抱き着いてくる。
可愛い。
いいにおいがするし、
もう、この可愛い体を
閉じ込めて俺だけのものにしたい。
「ごほん」と咳払いがして
俺は、はっと意識を戻した。
まわる速度をゆるやかにして
俺はそっと小さな体を床におろす。
「ぼっちゃま。
今日はそろそろ終わりに致しましょう」
咳ばらいをしたセバスチャンが
扉の前で声をかけてくる。
「もうそんな時間?」
つまらない、とでも
言うように可愛い唇がとがる。
「ガイ、次はいつ来てくれるの?」
俺は言葉に詰まってしまう。
何せ今の俺のスケジュールは
第二殿下に支配されているのだ。
「すぐには無理かもしれない」
すまない、と俺は言うしかない。
「だが、必ず時間を作るし、
その、あまり得意ではないが
手紙も書く。
エレも学院で何があったか
手紙で教えてくれないか?」
俺の提案に妖精は、わかった、と
うなずいてくれた。
俺は、ほっとして、
そうだ、と腰に手を当てた。
今日は殿下の護衛をして
そのまま馬を走らせて
この屋敷まできたので、
隊服の上に着ていたマントや
長剣は置いてきたが、
身に着けていた短剣はそのままだ。
俺は短剣に着けていた
紐でできた小さな房飾りを外す。
「これを」
短剣に着けていたものなので
大きなものではないが、
俺の瞳と同じ金色の糸で
作られたものだ。
俺が第二殿下の護衛を
任されるようになったとき、
殿下から賜ったものでもある。
小さな手に握らせると、
いいの? というような
幼い顔が見えた。
俺はうなずく。
「これは第二殿下から
初めて賜ったものなんだ。
俺の目と同じ色だろう?
お守り代わりに持っていてくれ」
俺がそういうと、
妖精の表情が明るくなる。
この房飾りは特別仕様で
王族が持つ房飾りと
同じものらしい。
殿下曰く、
「これを持っていれば
たいていのことはなんとかなる」
ということだったので、
俺の妖精の身を守ることもできるだろう。
学院と屋敷の往復しかしない
俺の愛する妖精だが、
最近では、学友の屋敷に
行きたがっているという。
天下のバーンズ侯爵家の天使を
傷つける者などいないだろうが、
念のためだ。
権力を笠に着る者は
俺も嫌悪感を感じるが、
可愛い妖精を守るためだ。
権力でも王家の威光でも
なんでも使ってやる。
「セバス、アンナ、見てみて」
俺の房飾りを高く掲げて
俺の可愛い妖精が
踊るようにはしゃぐ。
その様子を見るだけで
俺も幸せな気分になる。
次はいつ会えるかわからない。
目に焼き付けておかなければ。
そう思い、俺は妖精の姿を愛でた。
侍従に馬車の準備ができたと告げられ
泣く泣くその場を立ち去るまで
俺ははしゃぐ可愛い姿を
見続けてたのだ。
そしてようやく自室に戻ってきたのだが。
もうすでに会いたい。
あの小さな体を抱きしめたい。
膝の上にちょこんと座り、
甘えた顔で笑うあの顔が見たい。
「はぁ」
ため息しか出ない。
だが、やるしかないんだ。
殿下に振り回されるのも、
これが最後だ。
そう思い、俺は頑張ろうと
心に誓ったのだが。
……その日以降、
まさか俺の可愛い妖精と
まったく会えない日が続くなど、
その時の俺は、考えもしなかった。
殿下のせいで俺は愛する妖精との
時間がかなり減ってしまうことが
すでに決まっている。
そのことを告げると、
俺の妖精は寂しいと感じたのか
すっかり拗ねてしまったのだ。
正直、嬉しくなってしまったが、
それを隠して俺は今日一日、
妖精の機嫌を取り続けた。
膝に座らせ、菓子を食べさせる。
ぎゅーっとしがみついてくる
小さな体を抱きとめて。
散歩をしたときは
子供にするように
縦て抱っこをして、
庭を歩き回ってみた。
妖精は視点が変わったことで
気分も変わったようだったが、
それでも屋敷に戻り、
バーンズ侯爵家の領地の
勉強が始まるころには
また拗ねた様子で俺の膝に座ってくる。
執事のセバスチャンも
この妖精の様子には
驚いていたようだった。
そこで結局、今日の勉強は取りやめにして、
温室で茶会をしたり、サロンで
妖精を膝に乗せてたくさん話をした。
俺の騎士団での過ごし方や
第二殿下の話。
それから殿下のお見合いのこと。
話をしていくと、
可愛い拗ねた顔が
どんどん笑顔になっていき、
殿下が恋愛指南書を持っていると
いう話になったとき、
可愛い唇が「僕も持ってるよ」
という。
その言葉にそばに控えていた
侍女のアンナが殿下が持っていたのと
同じ本を、さっとテーブルに置いた。
そういえば、昼間、
庭のガゼボにも似たよな本が
おいてあったように思う。
だがあの時は目の端に
本があるとは思ったが、
可愛い顔を愛でることに
意識が向いて、
きちんと見ていなかったのだ。
「こ、この本はどこで?」
俺の妖精が、世俗にまみれた
恋愛小説を読んだというのか?!
「ティーナがね、貸してくれたの。
まだ全然読めてないんだけど」
「読まなくても大丈夫だ」
思わずかぶせるように言ってしまった。
「え、でも……」
「大丈夫だ。
可愛いエレはそのままでいいんだ」
首をかしげる妖精に
俺は本を取り上げて言う。
「この本は俺が読む」
「ガイが?」
「そうだ。
必要なことは俺がエレに
教えるから」
だから俺に任せてくれ。
必死でそう訴えてしまったのだが、
俺の妖精はキョトンとした
顔をしつつも、うなずいてくれた。
ふー、やれやれ。
と息を吐くと、
あきれたような侍女の視線に気が付いた。
だが、そんなものへでもないわ!
あの団長殿に成敗される恐怖に
比べたらこの屋敷での
俺の人権など、守る価値もない。
捨て身の俺の態度に、
侍女の視線に憐憫がまざる。
「ガイ、じゃあねぇ」
ソファーに座った俺の膝の上で可愛い声が言う。
「大人になったらわかること、
ガイが教えてくれる?」
……心臓が止まったかと思った。
上目使いに甘えた顔で。
一気に気分が高揚し、
鼻血が出たかと俺は思わず
鼻を抑えた方が、
それどころではなく、
可愛い体を抱き上げる。
そのタイミングで立ちあがり、
俺はくるくると
ごまかすように小さな体を
抱っこしたまま回った。
俺の妖精は突然始まった
俺の奇行に、遊びが始まったと
勘違いしたのか楽しそうに笑う。
だが俺はそれどころではなかった。
俺の下半身が驚くほど主張し、
誤魔化せない状態だったのだ。
抱っこした俺に妖精はぎゅっと
抱き着いてくる。
可愛い。
いいにおいがするし、
もう、この可愛い体を
閉じ込めて俺だけのものにしたい。
「ごほん」と咳払いがして
俺は、はっと意識を戻した。
まわる速度をゆるやかにして
俺はそっと小さな体を床におろす。
「ぼっちゃま。
今日はそろそろ終わりに致しましょう」
咳ばらいをしたセバスチャンが
扉の前で声をかけてくる。
「もうそんな時間?」
つまらない、とでも
言うように可愛い唇がとがる。
「ガイ、次はいつ来てくれるの?」
俺は言葉に詰まってしまう。
何せ今の俺のスケジュールは
第二殿下に支配されているのだ。
「すぐには無理かもしれない」
すまない、と俺は言うしかない。
「だが、必ず時間を作るし、
その、あまり得意ではないが
手紙も書く。
エレも学院で何があったか
手紙で教えてくれないか?」
俺の提案に妖精は、わかった、と
うなずいてくれた。
俺は、ほっとして、
そうだ、と腰に手を当てた。
今日は殿下の護衛をして
そのまま馬を走らせて
この屋敷まできたので、
隊服の上に着ていたマントや
長剣は置いてきたが、
身に着けていた短剣はそのままだ。
俺は短剣に着けていた
紐でできた小さな房飾りを外す。
「これを」
短剣に着けていたものなので
大きなものではないが、
俺の瞳と同じ金色の糸で
作られたものだ。
俺が第二殿下の護衛を
任されるようになったとき、
殿下から賜ったものでもある。
小さな手に握らせると、
いいの? というような
幼い顔が見えた。
俺はうなずく。
「これは第二殿下から
初めて賜ったものなんだ。
俺の目と同じ色だろう?
お守り代わりに持っていてくれ」
俺がそういうと、
妖精の表情が明るくなる。
この房飾りは特別仕様で
王族が持つ房飾りと
同じものらしい。
殿下曰く、
「これを持っていれば
たいていのことはなんとかなる」
ということだったので、
俺の妖精の身を守ることもできるだろう。
学院と屋敷の往復しかしない
俺の愛する妖精だが、
最近では、学友の屋敷に
行きたがっているという。
天下のバーンズ侯爵家の天使を
傷つける者などいないだろうが、
念のためだ。
権力を笠に着る者は
俺も嫌悪感を感じるが、
可愛い妖精を守るためだ。
権力でも王家の威光でも
なんでも使ってやる。
「セバス、アンナ、見てみて」
俺の房飾りを高く掲げて
俺の可愛い妖精が
踊るようにはしゃぐ。
その様子を見るだけで
俺も幸せな気分になる。
次はいつ会えるかわからない。
目に焼き付けておかなければ。
そう思い、俺は妖精の姿を愛でた。
侍従に馬車の準備ができたと告げられ
泣く泣くその場を立ち去るまで
俺ははしゃぐ可愛い姿を
見続けてたのだ。
そしてようやく自室に戻ってきたのだが。
もうすでに会いたい。
あの小さな体を抱きしめたい。
膝の上にちょこんと座り、
甘えた顔で笑うあの顔が見たい。
「はぁ」
ため息しか出ない。
だが、やるしかないんだ。
殿下に振り回されるのも、
これが最後だ。
そう思い、俺は頑張ろうと
心に誓ったのだが。
……その日以降、
まさか俺の可愛い妖精と
まったく会えない日が続くなど、
その時の俺は、考えもしなかった。
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