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29:妖精ご乱心・3
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僕はマックスのことが気になったけれど。
ティーナの婚約者だし、
それにティーナが大丈夫っていうから。
僕はウサギたちをぎゅう、と
抱っこしまたまま、
僕の胸の中のことを話してしまった。
兄とガイが第二殿下のお見合いのために
忙しくしていること。
ずっと会えていないこと。
それから……
「僕ね、悪い子になっちゃったんだ。
ガイがね、たくさんの女の子たちと
お話しするのが嫌だって思ったの。
お仕事なのに、僕に会いに来れないなら
ガイなんて病気になっちゃえって。
お熱が出たら、仕事にいななくてもいいでしょ?
だからね。そうなればいいって」
べしょー、ってまた涙が出てくる。
「僕ね、ちゃんと良い子でいようって
思ってたんだよ。
でも兄様もそばにいてくれないし、
今日は学院もないし。
僕、どんどん嫌な子になってるみたいで
苦しくなったんだ。
だからね、ティーナと話をしたくなったの。
ティーナはいろんなことを
たくさん知ってるでしょ?
僕が良い子に戻れる方法とか、
あとね、ガイのこと……とかも、
何か知ってるかと思って」
最後の方は小声になってしまった。
だって僕はものすごく
今、自分勝手にふるまってるから。
僕はティーナの都合なんて
考えもしなかった。
僕はいつだってみんなに
受け入れてもらっていたから、
ティーナだってそうだと
勝手に思い込んでいた。
でも違ったんだ。
だってティーナは今、
好きなひとと一緒にいる時間だったのに。
なのに僕がガイと会えないからって
その時間を潰してしまった。
僕はものすごく反省したけれど
ティーナは僕が
べしょべしょしているのに、
なぜか「まぁ、まぁ、エレ様」と
なんだか声を弾ませている。
「エレ様、それが恋ですわ」
「こ……い?」
僕がわからないと言っていた?
「恋をしたら、
好きな相手のことになったら
良い子にも悪い子にも
なってしまうんですの。
それが恋!
恋ですのよ!」
うっとりしたように言われて、
僕は涙を止めて、まばたきをした。
「僕がガイを好きな気持ちは
恋? 恋ってこと?」
「そうですわ、エレ様。
指南書にも書いてありましたもの。
会えない時間が恋をはぐくむのですわ。
エレ様、私がお貸しした恋愛指南書は
もう読まれました?」
あ、って僕は思った。
「ご、ごめんね、ティーナ。
あの恋愛指南書は僕の手元にはないんだ」
「はぁ?」
急にティーナがまた怖くなる。
「ガイがね、持って行ってしまったの。
学ぶべきことは俺が学び、
教えるから、僕は何もしなくていいって」
「なんですって!?
あの朴念仁、何をエレ様に教え込むつもりなのかしら。
油断も隙もないわ。
待って、まさか、エレ様!」
ティーナが立ち上がり、
ずい、っとテーブルをはさんで
僕の方に顔を寄せた。
「まさかと思いますが、
あの朴念仁に
【聞いてはならないこと】を
聞いたとか、言わないですわよね」
【聞いてはならないこと】
つまり、ねやごと、のことだ。
僕は言葉に詰まった。
だってセバスチャンには聞いてしまったもの。
「まぁ、やっぱり!
エレ様、あれほど言いましたのに。
私の天使がこのままでは
穢されてしまいますわ」
興奮しはじめたティーナに
僕はオロオロするしかない。
「ヴァレ、落ち着いて」
そんなティーナの手を引き、
マックスはティーナを座らせた。
「だって!だって!
私のエレ様が!
天使様が!」
悔しそうにティーナが言い、
マックスの胸をバシバシたたいている。
そんな二人を僕は羨ましく思ってしまった。
「彼女がこんな調子なので、
私が話をしてもいいだろうか。
エレミアス殿」
そう言われ、僕はうなずいた。
「私は今、この話を聞いたばかりで
仔細はわからないのだが。
エレミアス殿は彼女に
恋愛相談をしていたのかい?」
「そう……なのでしょうか。
僕もどう言っていいかわからなくて」
結局僕はマックスにも
僕が屋敷内から1歩も出ずに
過ごしてきたことや、
そのことで他人との距離が
よくわからないこと。
ガイと婚約者になったけれど
兄とどう違うのかわからなくて
ティーナに相談したこと。
ティーナに兄と婚約者と
友達は同じ距離で付き合っては
ダメだと注意されたけれど、
ティーナは親友だから、
頼ってしまったこと。
それから恋愛指南書を借りたのに
それをガイが持って行ってしまったこと。
そして……
ガイと会えない日が続いて、
僕は悪い子になってしまったこと。
マックスは聞き上手で、
僕はどんどん話をしてしまう。
「僕はいつも良い子で、
兄様に、可愛いって、
良い子だね、って言ってもらわないと
ダメだったのに。
僕はどんどん良い子じゃ
なくなってるんです」
今日だって、屋敷の外に出ては
いけないと言われていたのに、
ティーナに会いに来てしまった。
僕の懺悔を聞いていたマックスは
「素晴らしいことだと思うけど」と
僕を見ながら言う。
僕はびっくりした。
そんなことを言われるとは
思ってもみなかった。
「エレミアス殿は今、
外の世界を知って、
成長しているんだと思いますよ」
「せい、ちょう?」
僕は思わず復唱する。
「本来であれば、
貴族の子どもたちは
エレミアス殿と同じ経験を
10歳までに体験します」
「10さい?」
「はい。
そうやって子どもは
自分で考え、行動し、
親の手から離れて自立するもの。
ですがエレミアス殿は
とても大事にされてきたので
その機会が今まで来なかったのでしょう」
自立、という言葉に
僕は、そうだ、って思えた。
僕はいつだって兄が喜ぶように、
そのことばかり考えていた。
だって僕は公爵家の役立たずだったから。
でも僕は元気になってきて、
学院で友達もできた。
自分で考えて、
自分がやりたいことを
やってみたいって、
新しいことを沢山、
経験したいって思うようになったんだ。
「今回の件も、
その成長の一環でしょう。
悪い子になったのではなく、
エレミアス殿がただ、
婚約者と会えなくて寂しく思う。
自分以外の者と親しく話を
するのが嫌だと嫉妬しただけのこと。
そのようにご自分を卑下することも、
責める必要もないですよ」
「しっと……僕が、嫉妬?」
僕はその言葉にどんどん顔が熱くなる。
そうなんだ。
僕、嫉妬してたんだ。
そんな感情も今まで持ったことはなかった。
だって、屋敷にいたらいつだって
誰だってみんな、僕を見てくれたから。
僕に合わせて動いてくれて、
僕の声を聞いて、僕を見て。
僕のために声をかけてくれていた。
だから、嫉妬なんて感情、
持つ必要もなかったんだ。
ど、どうしよう。
僕、ものすごく恥ずかしくなってきた。
顔が熱いし、
きっと僕の顔、真っ赤になってるよね?
僕はまたまた涙目になってしまった。
ティーナの婚約者だし、
それにティーナが大丈夫っていうから。
僕はウサギたちをぎゅう、と
抱っこしまたまま、
僕の胸の中のことを話してしまった。
兄とガイが第二殿下のお見合いのために
忙しくしていること。
ずっと会えていないこと。
それから……
「僕ね、悪い子になっちゃったんだ。
ガイがね、たくさんの女の子たちと
お話しするのが嫌だって思ったの。
お仕事なのに、僕に会いに来れないなら
ガイなんて病気になっちゃえって。
お熱が出たら、仕事にいななくてもいいでしょ?
だからね。そうなればいいって」
べしょー、ってまた涙が出てくる。
「僕ね、ちゃんと良い子でいようって
思ってたんだよ。
でも兄様もそばにいてくれないし、
今日は学院もないし。
僕、どんどん嫌な子になってるみたいで
苦しくなったんだ。
だからね、ティーナと話をしたくなったの。
ティーナはいろんなことを
たくさん知ってるでしょ?
僕が良い子に戻れる方法とか、
あとね、ガイのこと……とかも、
何か知ってるかと思って」
最後の方は小声になってしまった。
だって僕はものすごく
今、自分勝手にふるまってるから。
僕はティーナの都合なんて
考えもしなかった。
僕はいつだってみんなに
受け入れてもらっていたから、
ティーナだってそうだと
勝手に思い込んでいた。
でも違ったんだ。
だってティーナは今、
好きなひとと一緒にいる時間だったのに。
なのに僕がガイと会えないからって
その時間を潰してしまった。
僕はものすごく反省したけれど
ティーナは僕が
べしょべしょしているのに、
なぜか「まぁ、まぁ、エレ様」と
なんだか声を弾ませている。
「エレ様、それが恋ですわ」
「こ……い?」
僕がわからないと言っていた?
「恋をしたら、
好きな相手のことになったら
良い子にも悪い子にも
なってしまうんですの。
それが恋!
恋ですのよ!」
うっとりしたように言われて、
僕は涙を止めて、まばたきをした。
「僕がガイを好きな気持ちは
恋? 恋ってこと?」
「そうですわ、エレ様。
指南書にも書いてありましたもの。
会えない時間が恋をはぐくむのですわ。
エレ様、私がお貸しした恋愛指南書は
もう読まれました?」
あ、って僕は思った。
「ご、ごめんね、ティーナ。
あの恋愛指南書は僕の手元にはないんだ」
「はぁ?」
急にティーナがまた怖くなる。
「ガイがね、持って行ってしまったの。
学ぶべきことは俺が学び、
教えるから、僕は何もしなくていいって」
「なんですって!?
あの朴念仁、何をエレ様に教え込むつもりなのかしら。
油断も隙もないわ。
待って、まさか、エレ様!」
ティーナが立ち上がり、
ずい、っとテーブルをはさんで
僕の方に顔を寄せた。
「まさかと思いますが、
あの朴念仁に
【聞いてはならないこと】を
聞いたとか、言わないですわよね」
【聞いてはならないこと】
つまり、ねやごと、のことだ。
僕は言葉に詰まった。
だってセバスチャンには聞いてしまったもの。
「まぁ、やっぱり!
エレ様、あれほど言いましたのに。
私の天使がこのままでは
穢されてしまいますわ」
興奮しはじめたティーナに
僕はオロオロするしかない。
「ヴァレ、落ち着いて」
そんなティーナの手を引き、
マックスはティーナを座らせた。
「だって!だって!
私のエレ様が!
天使様が!」
悔しそうにティーナが言い、
マックスの胸をバシバシたたいている。
そんな二人を僕は羨ましく思ってしまった。
「彼女がこんな調子なので、
私が話をしてもいいだろうか。
エレミアス殿」
そう言われ、僕はうなずいた。
「私は今、この話を聞いたばかりで
仔細はわからないのだが。
エレミアス殿は彼女に
恋愛相談をしていたのかい?」
「そう……なのでしょうか。
僕もどう言っていいかわからなくて」
結局僕はマックスにも
僕が屋敷内から1歩も出ずに
過ごしてきたことや、
そのことで他人との距離が
よくわからないこと。
ガイと婚約者になったけれど
兄とどう違うのかわからなくて
ティーナに相談したこと。
ティーナに兄と婚約者と
友達は同じ距離で付き合っては
ダメだと注意されたけれど、
ティーナは親友だから、
頼ってしまったこと。
それから恋愛指南書を借りたのに
それをガイが持って行ってしまったこと。
そして……
ガイと会えない日が続いて、
僕は悪い子になってしまったこと。
マックスは聞き上手で、
僕はどんどん話をしてしまう。
「僕はいつも良い子で、
兄様に、可愛いって、
良い子だね、って言ってもらわないと
ダメだったのに。
僕はどんどん良い子じゃ
なくなってるんです」
今日だって、屋敷の外に出ては
いけないと言われていたのに、
ティーナに会いに来てしまった。
僕の懺悔を聞いていたマックスは
「素晴らしいことだと思うけど」と
僕を見ながら言う。
僕はびっくりした。
そんなことを言われるとは
思ってもみなかった。
「エレミアス殿は今、
外の世界を知って、
成長しているんだと思いますよ」
「せい、ちょう?」
僕は思わず復唱する。
「本来であれば、
貴族の子どもたちは
エレミアス殿と同じ経験を
10歳までに体験します」
「10さい?」
「はい。
そうやって子どもは
自分で考え、行動し、
親の手から離れて自立するもの。
ですがエレミアス殿は
とても大事にされてきたので
その機会が今まで来なかったのでしょう」
自立、という言葉に
僕は、そうだ、って思えた。
僕はいつだって兄が喜ぶように、
そのことばかり考えていた。
だって僕は公爵家の役立たずだったから。
でも僕は元気になってきて、
学院で友達もできた。
自分で考えて、
自分がやりたいことを
やってみたいって、
新しいことを沢山、
経験したいって思うようになったんだ。
「今回の件も、
その成長の一環でしょう。
悪い子になったのではなく、
エレミアス殿がただ、
婚約者と会えなくて寂しく思う。
自分以外の者と親しく話を
するのが嫌だと嫉妬しただけのこと。
そのようにご自分を卑下することも、
責める必要もないですよ」
「しっと……僕が、嫉妬?」
僕はその言葉にどんどん顔が熱くなる。
そうなんだ。
僕、嫉妬してたんだ。
そんな感情も今まで持ったことはなかった。
だって、屋敷にいたらいつだって
誰だってみんな、僕を見てくれたから。
僕に合わせて動いてくれて、
僕の声を聞いて、僕を見て。
僕のために声をかけてくれていた。
だから、嫉妬なんて感情、
持つ必要もなかったんだ。
ど、どうしよう。
僕、ものすごく恥ずかしくなってきた。
顔が熱いし、
きっと僕の顔、真っ赤になってるよね?
僕はまたまた涙目になってしまった。
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