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46:親子カメの騎士・1
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俺は腹の上で眠ってしまった
可愛いエレミアスの背中に
腕を回したまま固まっていた。
これ、どういう状況だ?
あれだ。
ほら、親子カメってやつだ。
はは。
凄いな、俺は騎士だけじゃなく
カメにもなれたぞ。
などと現実逃避をしてみても
小さな寝息が俺の胸の上で
聞こえる現実は消えたりしない。
しかも俺の沸騰した脳に
小さな声が、愛してる、って
囁いたんだ。
咄嗟に「俺も」って言ったが、
これは空耳だよな?
俺の脳みそが沸いてるだけだよな。
もう、脳みその許容範囲を
大幅に超えていて、
何も考えられない。
指一本も動かせない。
だが、このままでいいのか?
不自然な姿勢だし、
ベットに下ろした方が……。
いやいや。
俺が少しでも動いたら
エレミアスが目を覚ましてしまうかもしれない。
どうすればいいんだ?
焦れば焦るほど
身体が動かなくなってくる。
トントン、とそこに
ノックの音がした。
「お茶の準備をして参りました」
と侍女の声がする。
だが、待て。
待ってくれ。
こんな姿を見られるわけには……
「失礼致します」
と扉が開き、
いつもエレミアスの
そばにいるアンナとか言う
侍女が部屋に入って来た。
「いや、あの、これは」
「……何をなさっておいでですか?」
と、無表情の上に、
物凄く冷たい声で聞かれた。
「その、親子……カメ、かな」
はは、と笑って見せるが。
「さようですか」
とアンナは言って、
すっと頭を下げた。
「失礼致します」
いや、え?
今、ここは笑うところで
冗談……。
パタン、と扉が閉まり、
アンナは出て行ってしまう。
俺は焦る。
だが俺の脳は
ぐるぐるしているしてるだけで
解決策は浮かばない。
「失礼致します」と
今度はノックも無しに
扉が開いた。
アンナが先ほどと同じように
無表情で立っている。
だがその背に、
執事のセバスチャンがいる。
どうやら呼んできたようだ。
「ガイディス様、何故そのようなことに?」
セバスチャンが顔をしかめるが、
無理に俺をベットから
出そうとはしなかった。
「いや、なんだ?
エレが安心するらしくて」
俺はしどろもどろになる。
「そうでしたか」
セバスチャンは頷くと、
アンナに扉付近に準備
されていたお茶のワゴンを
片付けるよう指示する。
アンナがワゴンを押して部屋を出ると
セバスチャンはベットに1歩近づいた。
そして「今から私は独り言を
言いますが、あくまでも独り言。
お返事は結構です」という。
なんだ?と思っていると、
セバスチャンは小さな声を出した。
「エレミアスぼっちゃまが
お生まれになるまで、
いえ、奥様がこの屋敷に
来られる前まで、
このバーンズ侯爵家は
氷のような屋敷でした」
セバスチャンはいきなり
昔話を語りだす。
驚いたが口を挟める雰囲気ではない。
「旦那様はご自身にも
長男であるフェルナンド様にも、
もちろん、我々使用人に対しても
いつも厳しく接しておられ、
この屋敷に笑い声が
聞こえたことなど私が
お仕えしてから、
一度も無かったように思われます」
淡々と告げるセバスチャンは
もう初老に入る年齢だ。
今のバーンズ侯爵家当主が
先妻と結婚する前から
この家に仕えていると
以前、団長から聞いたことがある。
おそらく、エレの父親と
母親が出会った時も。
そしてエレミアスが
生まれたときも、そばで
その様子を見続けてきたのだろう。
「旦那様が若い女性を当家に
迎え入れると言ったとき、
誰も反対は致しませんでした。
それは殺伐とした屋敷内が
少しでも華やぐのではないか。
旦那様の御心が、
少しでもやわらぐのでは
無いかと我々は思ったからです。
旦那様は今ではすっかり
奥様に骨抜きで尻に……
いえ、愛妻家として
名が通っておりますが」
今、骨抜きで尻にしかれてる
っていいかけたよな?
「若かりし頃の旦那様は、
それはそれは冷酷で、
無慈悲な、貴族らしい方でした」
セバスチャンが語ったのは、
まさに、さすが団長殿の父親!
と唸りたくなるような
エピソードばかりだ。
ただし、高位貴族の当主は
俺の父のように情に
流されやすい人間は不適格だ。
そんな人間では家門を
繁栄させることも
領地を栄えさせることもできない。
俺の父は、社交界を牛耳る母と
王家の血筋、つまり公爵という
身分があるから、
なんとかやっていけてるだけだ。
「ですが、
旦那様は奥様と出会い、
それはそれは、甘く、
とろけてしまわれました。
えぇ、まさかご令嬢に
叱られて、喜ぶなど……
いえ、それ以前に、
旦那様を叱りつけるような
ご令嬢がいたことも、
驚きでしたが」
だろうな。
俺に言わせれば、
団長を𠮟りつける令嬢ってことだろ?
怖いもの知らずにもほどがある。
「旦那様は奥様と出会い、
初めて誰かと心を通わせ、
互いに想いあうということを
知ったのだと思われます。
それはもちろん、
ご長男のフェルナンド様、
兄君様にも言えることでした。
この屋敷はずっと
殺伐とした空気が漂い、
使用人たちも、私語など
口にすることもなく、
ただ黙々と仕事をするだけ。
そんな屋敷に奥様が来て、
屋敷は一気に変わりました。
まるで封鎖されていた屋敷に
春風が吹いたかのように。
呼吸がしやすくなり、
使用人が笑顔になり、
旦那様も、兄君様にも、
表情が生まれました」
そこまで聞いたとき、
エレが寝返りを打ちたかったのか
やや動いたので、
俺は慌ててエレの背に
まわしていた手に力を入れる。
今はもう少し話を聞きたいし、
エレをベットの上とはいえ
落とすわけにはいかない。
セバスチャンはちらり、と
俺とエレを見たが、
話を続けた。
「奥様がご懐妊になり、
屋敷は一気に変わりました。
家具や調度品、カーテン、
カトラリーに至るまで
すべて新調し、
屋敷中でエレミアス様の
誕生を待ちわびるほどでした。
これはわたくしの勝手な
考えれはありますが。
旦那様は、新しい奥様、
新しく生まれる命を得て
家族をやりなおそうと
思われたのかと。
兄君様が生まれたときは
あまり関心が無かった
お子様の誕生という儀式に、
旦那様は初めて【家族】と
いうものを考えたのだと思われます。
我が子の誕生を奥様と一緒に語り、喜ぶ。
その中で旦那様は、愛情と
言われるものを知ったのでしょう。
旦那様は奥様よりも高齢でしたし、
もしお子が授かるとすれば、
エレミアス様が最後かもしれない。
そう思うと、
我々使用人たちも
エレミアス様の誕生を
待ちわびるとともに、
どうか無事に、と
そればかり祈っておりました。
出産日が近づくにつれ、
奥様は食事も細くなり、
おなかのお子様の命も
奥様自身も危ないのではないか、
と、医者から危惧されていたのです」
今では奥様はとても
お元気ですが、
あの頃は奥様だけでなく
旦那様も心配のあまり
おやつれになり、
大変でございました、と
セバスチャンはつぶやくように言う。
「ようやく出産が終わり、
屋敷は活気に満ち溢れました。
ただ、エレミアス様は
奥様がうまく食事をとることが
できなかったからか、
とても小さくお生まれになったのです」
そこからまた
この屋敷は変わりました。
とセバスチャンは言葉を続けた。
「この屋敷は体の弱い
エレミアス様を守る要塞に
なったのです。
窓から見える庭を整え、
庭が見えるサロンを作り、
常に室温を保つための
魔道具が買い揃えられました。
その様子を見た兄君様……
フェルナンド様がどう思われたのか
私は存じ上げません。
ご自分の時にはなかった
父親の子どもへの愛情や
溺愛を目の当たりにして、
何も感じないわけがないと
私は思うのです」
確かに、と俺は思った。
俺はあの団長しか
知らないので、
何も思わなかったが。
確かに弟ばかり愛する
両親を見て子供が
傷つかないわけがない。
俺はあの強く、
常に氷対応をする団長の
心の中を少しだが、
垣間見たような気がした。
可愛いエレミアスの背中に
腕を回したまま固まっていた。
これ、どういう状況だ?
あれだ。
ほら、親子カメってやつだ。
はは。
凄いな、俺は騎士だけじゃなく
カメにもなれたぞ。
などと現実逃避をしてみても
小さな寝息が俺の胸の上で
聞こえる現実は消えたりしない。
しかも俺の沸騰した脳に
小さな声が、愛してる、って
囁いたんだ。
咄嗟に「俺も」って言ったが、
これは空耳だよな?
俺の脳みそが沸いてるだけだよな。
もう、脳みその許容範囲を
大幅に超えていて、
何も考えられない。
指一本も動かせない。
だが、このままでいいのか?
不自然な姿勢だし、
ベットに下ろした方が……。
いやいや。
俺が少しでも動いたら
エレミアスが目を覚ましてしまうかもしれない。
どうすればいいんだ?
焦れば焦るほど
身体が動かなくなってくる。
トントン、とそこに
ノックの音がした。
「お茶の準備をして参りました」
と侍女の声がする。
だが、待て。
待ってくれ。
こんな姿を見られるわけには……
「失礼致します」
と扉が開き、
いつもエレミアスの
そばにいるアンナとか言う
侍女が部屋に入って来た。
「いや、あの、これは」
「……何をなさっておいでですか?」
と、無表情の上に、
物凄く冷たい声で聞かれた。
「その、親子……カメ、かな」
はは、と笑って見せるが。
「さようですか」
とアンナは言って、
すっと頭を下げた。
「失礼致します」
いや、え?
今、ここは笑うところで
冗談……。
パタン、と扉が閉まり、
アンナは出て行ってしまう。
俺は焦る。
だが俺の脳は
ぐるぐるしているしてるだけで
解決策は浮かばない。
「失礼致します」と
今度はノックも無しに
扉が開いた。
アンナが先ほどと同じように
無表情で立っている。
だがその背に、
執事のセバスチャンがいる。
どうやら呼んできたようだ。
「ガイディス様、何故そのようなことに?」
セバスチャンが顔をしかめるが、
無理に俺をベットから
出そうとはしなかった。
「いや、なんだ?
エレが安心するらしくて」
俺はしどろもどろになる。
「そうでしたか」
セバスチャンは頷くと、
アンナに扉付近に準備
されていたお茶のワゴンを
片付けるよう指示する。
アンナがワゴンを押して部屋を出ると
セバスチャンはベットに1歩近づいた。
そして「今から私は独り言を
言いますが、あくまでも独り言。
お返事は結構です」という。
なんだ?と思っていると、
セバスチャンは小さな声を出した。
「エレミアスぼっちゃまが
お生まれになるまで、
いえ、奥様がこの屋敷に
来られる前まで、
このバーンズ侯爵家は
氷のような屋敷でした」
セバスチャンはいきなり
昔話を語りだす。
驚いたが口を挟める雰囲気ではない。
「旦那様はご自身にも
長男であるフェルナンド様にも、
もちろん、我々使用人に対しても
いつも厳しく接しておられ、
この屋敷に笑い声が
聞こえたことなど私が
お仕えしてから、
一度も無かったように思われます」
淡々と告げるセバスチャンは
もう初老に入る年齢だ。
今のバーンズ侯爵家当主が
先妻と結婚する前から
この家に仕えていると
以前、団長から聞いたことがある。
おそらく、エレの父親と
母親が出会った時も。
そしてエレミアスが
生まれたときも、そばで
その様子を見続けてきたのだろう。
「旦那様が若い女性を当家に
迎え入れると言ったとき、
誰も反対は致しませんでした。
それは殺伐とした屋敷内が
少しでも華やぐのではないか。
旦那様の御心が、
少しでもやわらぐのでは
無いかと我々は思ったからです。
旦那様は今ではすっかり
奥様に骨抜きで尻に……
いえ、愛妻家として
名が通っておりますが」
今、骨抜きで尻にしかれてる
っていいかけたよな?
「若かりし頃の旦那様は、
それはそれは冷酷で、
無慈悲な、貴族らしい方でした」
セバスチャンが語ったのは、
まさに、さすが団長殿の父親!
と唸りたくなるような
エピソードばかりだ。
ただし、高位貴族の当主は
俺の父のように情に
流されやすい人間は不適格だ。
そんな人間では家門を
繁栄させることも
領地を栄えさせることもできない。
俺の父は、社交界を牛耳る母と
王家の血筋、つまり公爵という
身分があるから、
なんとかやっていけてるだけだ。
「ですが、
旦那様は奥様と出会い、
それはそれは、甘く、
とろけてしまわれました。
えぇ、まさかご令嬢に
叱られて、喜ぶなど……
いえ、それ以前に、
旦那様を叱りつけるような
ご令嬢がいたことも、
驚きでしたが」
だろうな。
俺に言わせれば、
団長を𠮟りつける令嬢ってことだろ?
怖いもの知らずにもほどがある。
「旦那様は奥様と出会い、
初めて誰かと心を通わせ、
互いに想いあうということを
知ったのだと思われます。
それはもちろん、
ご長男のフェルナンド様、
兄君様にも言えることでした。
この屋敷はずっと
殺伐とした空気が漂い、
使用人たちも、私語など
口にすることもなく、
ただ黙々と仕事をするだけ。
そんな屋敷に奥様が来て、
屋敷は一気に変わりました。
まるで封鎖されていた屋敷に
春風が吹いたかのように。
呼吸がしやすくなり、
使用人が笑顔になり、
旦那様も、兄君様にも、
表情が生まれました」
そこまで聞いたとき、
エレが寝返りを打ちたかったのか
やや動いたので、
俺は慌ててエレの背に
まわしていた手に力を入れる。
今はもう少し話を聞きたいし、
エレをベットの上とはいえ
落とすわけにはいかない。
セバスチャンはちらり、と
俺とエレを見たが、
話を続けた。
「奥様がご懐妊になり、
屋敷は一気に変わりました。
家具や調度品、カーテン、
カトラリーに至るまで
すべて新調し、
屋敷中でエレミアス様の
誕生を待ちわびるほどでした。
これはわたくしの勝手な
考えれはありますが。
旦那様は、新しい奥様、
新しく生まれる命を得て
家族をやりなおそうと
思われたのかと。
兄君様が生まれたときは
あまり関心が無かった
お子様の誕生という儀式に、
旦那様は初めて【家族】と
いうものを考えたのだと思われます。
我が子の誕生を奥様と一緒に語り、喜ぶ。
その中で旦那様は、愛情と
言われるものを知ったのでしょう。
旦那様は奥様よりも高齢でしたし、
もしお子が授かるとすれば、
エレミアス様が最後かもしれない。
そう思うと、
我々使用人たちも
エレミアス様の誕生を
待ちわびるとともに、
どうか無事に、と
そればかり祈っておりました。
出産日が近づくにつれ、
奥様は食事も細くなり、
おなかのお子様の命も
奥様自身も危ないのではないか、
と、医者から危惧されていたのです」
今では奥様はとても
お元気ですが、
あの頃は奥様だけでなく
旦那様も心配のあまり
おやつれになり、
大変でございました、と
セバスチャンはつぶやくように言う。
「ようやく出産が終わり、
屋敷は活気に満ち溢れました。
ただ、エレミアス様は
奥様がうまく食事をとることが
できなかったからか、
とても小さくお生まれになったのです」
そこからまた
この屋敷は変わりました。
とセバスチャンは言葉を続けた。
「この屋敷は体の弱い
エレミアス様を守る要塞に
なったのです。
窓から見える庭を整え、
庭が見えるサロンを作り、
常に室温を保つための
魔道具が買い揃えられました。
その様子を見た兄君様……
フェルナンド様がどう思われたのか
私は存じ上げません。
ご自分の時にはなかった
父親の子どもへの愛情や
溺愛を目の当たりにして、
何も感じないわけがないと
私は思うのです」
確かに、と俺は思った。
俺はあの団長しか
知らないので、
何も思わなかったが。
確かに弟ばかり愛する
両親を見て子供が
傷つかないわけがない。
俺はあの強く、
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心の中を少しだが、
垣間見たような気がした。
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