長編版・不能の公爵令息は婚約者を愛でたい(が難しい)

たたら

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65:初めての招待

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 僕は両手にぬいぐるみを
抱えて一生懸命、
サロンに運んでいる。

 お庭が見えるサロンには
ソファーもあるけれど、
ふかふかのラグを敷いて、
沢山のクッション。

それから僕の部屋に
たくさんある可愛い
ぬいぐるみたちを
ラグの上に乗せるんだ。

僕の腕の中には、
うさぎ、くま、オオカミがいる。

この子たちをラグの上に乗せたら
とっても可愛いと思う。

「ぼっちゃま、
お手伝い致しましょうか」

アンナが僕の側に来たけど、
僕は首を振る。

「大丈夫。
それより今は何時?
そろそろ二人が来る時間?」

「まだ少しお早いですが、
ぼっちゃまは先に
サロンで休憩してくださいませ」

僕が朝からサロンの
状態を気にして、
何度も往復したからか、
アンナはそんなことを言う。

僕はもうずいぶんと
元気になったんだけどな。

「わかった。
じゃあ、みんなが
来るまで僕はサロンにいるね」

でも僕は皆には逆らわない。
だって僕のことを
心配して言ってくれてるから。

「かしこまりました。
では、お茶とお茶菓子の準備を
して参ります」

アンナはそう言いつつも
僕のそばを歩き、
サロンの扉を開けてくれる。

 僕はサロンのソファーに
すでに置いてあった
リスとキツネの
ぬいぐるみの隣に座った。

持っていた3匹は
アンナがラグの上に
置いてくれる

よし、って僕は手を握った。
可愛いサロンになったと思う。

今日はライリーとサイラスが
僕の屋敷に遊びに来てくれる日だ。

ティーナも誘ったんだけど、
残念ながらティーナは
婚約者のマックスさんとの
約束があるらしく、
来てもらうのは無理だった。

残念だけど仕方がないよね。

僕は騎士団の見学後も、
学院には行ってなかった。

体調を崩したとか、
そういうことではないんだけど、
兄が外出を許してくれないんだ。

たぶんだけど、
見学に行ったときに
出会った王女様が
関係してるのかな?って思う。

僕は何も聞かされてないし、
兄が動いてくれているので
僕ができることは、
兄が安心するように
じっとしているだけだ。

でも学院に行けないのは
やっぱり寂しい。

そういうと、兄は
僕の友達を屋敷に
呼んでもいいって言ってくれた。

だから僕は兄にお願いして
招待状を書いたんだ。

セバスチャンに教えてもらいながら、
初めて僕は公式の手紙を書いた。

僕の屋敷で、一緒に
ランチを食べませんか?って。

季節の挨拶の書き方とか
最後の文章の結び方とか。

本では読んでたけれど、
実際に書くのは初めてだったから
僕は何度もセバスチャンに
読んでもらって、
大丈夫か聞いてしまった。

ティーナからは
予定が入ってて来れない、って
手紙をもらったけれど、

手紙には、僕が初めて
書いた招待状だから
送った手紙は、
大切に保管しているって、
書いてあった。

ティーナが来れなかったのは
残念だけれど、
その手紙をもらっただけで
僕は胸があたたかくなる。

サロンに僕のお気に入りの
ぬいぐるみを並べたのは
ティーナに見てもらいたかったんだけど。

でも、ライリーもサイラスも
きっと可愛いって
言ってくれると思う。

……サイラスは興味ないかな?

サイラスは可愛いより
カッコイイが好きみたいだし。

そんなことを考えていたら、
セバスチャンがサロンにやってきた。

バーンズ侯爵家の馬車を出して、
ライリーとサイラスを迎えに
行ってもらったんだけど、
その馬車が戻ってきたみたい。

「セバス、ランチの後の
お菓子はね、
レモンのケーキだよ」

「はい、準備は完璧でございます」

サイラスが甘いものが
あまり好きではないから、
僕はレモンのケーキを
作ってもらうようにお願いしておいたんだ。

「失礼いたします。
ぼっちゃま。
お客様がいらっしゃいました」

アンナが扉をノックして、
セバスチャンに促され、
二人を連れて入ってくる。

「ふたりとも、いらっしゃい」

って僕がソファーから立つと
二人は、「うん」って
そろって大きくうなずいた。

「どうしたの?」

「いや、なんか」

「すごいな、侯爵家!」

「サイラス!」

ばす、ってライリーが
サイラスのお腹を叩いた。

びっくりしたけど、
二人はいつもこんな感じだ。

「二人とも座って」

僕は二人をソファーに座らせる。

二人は仲良く3人掛けの
ソファーに横並びに
座ったんだけど。

なんだかいつもより
動くが鈍い。

というか、動きが小さい。

違和感を感じたけど、
僕がそれを口にする前に
アンナがワゴンを押して入ってきた。

「あのね、
今日のランチはね、
ハーブ鳥のサンドイッチと
柑橘サラダだよ」

僕は甘めのソースが
大好きなんだけど、
今日は二人のために
大人っぽく香辛料がかかった料理だ。

サラダも、温野菜に
柑橘系のフルーツを和えて、
上からフルーツソースを
かけてある。

僕が普段食べるサラダより
さっぱりした味になっているはずだ。

手軽に沢山食べれるように、
今日は大きなお皿に、
サンドイッチを沢山乗せてもらっている。

サラダも大きなボールに
入っているし、

大きな皿には、
二人が食べるように、
ハムに卵。

あと、僕は食べないけど
ポテトに薄いお肉を
巻いて焼いた
ボリューム満点の
メニューもある。

アンナは紅茶を淹れて、
沢山の取り皿とカトラリーを
二人の前に置く。

僕の前には僕専用の
サンドイッチとサラダが置かれた。

「あのね、二人がどれぐらい
食べるかわからなかったから。
沢山作ってもらったんだ。

食べれる分だけでいいから
取って食べてね」

って僕が言うと、
二人は顔をほころばせた。

アンナが頭を下げて
ワゴンを押してサロンから出て行く。

サロンの3人だけになったからか
二人は、はーっと息を吐いた。

「緊張した」
ライリーがつぶやくように言い、
「でも、うまそう!」ってサイラスが言う。

「緊張?
大丈夫だよ、アンナは優しいよ?」

怒られると思った?
なんで?

僕の疑問にライリーは
少し笑って、なんでもありません、っていう。

「本当に食べていいのか?」

僕とライリーのやり取りを見つつ、
サイラスがすでにカトラリーに
手を伸ばしていた。

「うん。
好きなだけどうぞ」

「やった! ありがとな。

俺さ、エレ様のところで
お昼ごはんを食べれるから
朝から何も食べずに来たんだ」

うん?
それこそ、なんで?

「サイラス、いじきたないぞ」

「そういうライリーだって
あんまし食べてこなかったって
言ってたじゃん」

「それは侯爵家に行くのに
緊張してたから……」

緊張?

「僕の屋敷、緊張する?」

何が?
なんで?

僕が首をかしげると、
ライリーは、爵位がありますから、
と曖昧に言った。

「いいんだよ、
エレ様はエレ様なんだから。

俺たちの事情と
エレ様との友情は関係ないし」

僕の問いにサイラスが返事をした。

「俺たちが子爵の息子でも
エレ様は俺たちの友達でいいんだろ?」

「もちろんだよ!」

僕は大きく返事をした。

「じゃあ、解決したところで
いただきまーす!」

「あ、サイラス、ちゃんと
皿とフォークを使えよ!」

サンドイッチを両手につかみ、
口を大きく開けるサイラスに
ライリーが注意をする。

でもそんなライリーの
姿に、僕はなんだか安心した。

僕が思っている以上に、
爵位って重要なんだよね。

僕はそういうのを
全く知らずに生きてきたから。

この二人には、
貴族社会や、社交界のこと
ちゃんと教えてもらわなくっちゃ。

僕はそんなことを思いつつ、
フォークでサラダをつつく。

一口、口に入れると、
なんというか……

「しゅっぱい」

僕の言い方がおかしかったのだろう。

目の前の二人は僕の顔を見て、
声を出して笑った。

そこ声で、なんとなく
二人との間にあった壁が消えて、
学院にいるときのような空気になる。

良かった。

僕もつられて笑ったけれど、
サラダはそっと横によせた。





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