長編版・不能の公爵令息は婚約者を愛でたい(が難しい)

たたら

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80:婚約式2

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婚約の見届け人は
当初の予定通り
第二王子殿下だ。

祭壇の前で、神様に
誓いの言葉を言い、
第二殿下の前で
婚約の書類にサインをする。

そして神官さんが
婚約が調ったと宣言をして
婚約は成立になる。

たったそれだけのことだけど。

祭壇の前に立つと、
ステンドグラスの光が
僕の頭上から差し込んでくる。

僕もガイも真っ白い
衣装を着ているから、
服にステンドグラスの
色とりどりの光が映えて
僕は光の世界に
来たみたいに思えた。

白い服に差し込む光は
僕たちの服から
まるで浮かび上がったみたいに
美しく輝いている。

そして。
祭壇の一番上にある
天窓からは、
白い光が一筋、
差し込んでいた。

それは祭壇を照らし、
伸びた光は、
僕の足元へと届いている。

夢みたいな世界だ。

きれいだと思ったのは
僕だけでなく、
教会にいるみんなも
そう思ったみたいだった。

だって、僕が
ステンドグラスの
光の下に立った時、
いろんな場所で、
息をのむような、
ため息のような声が聞こえ、
静まり返ったのだ。

神官さんでさえ、
身動きもせずに
僕たちの方を見ている。

その静かな空間を、
ガイの小さな声が破る。

「綺麗だな」

「うん」

僕がうなずいたことで、
神官さんも我に返ったように
こちらへ、と僕たちを呼ぶ。

神官さんの手元には
足の長い台と、
婚約の書類があった。

ここにサインをしたら
僕とガイの婚約は成立する。

第二殿下が台のそばにたち、
僕たちにペンを渡してくれた。

書類を見ると、
ステンドグラスの
明るい色が彩っている。

それを見て僕は
本当に天使様か妖精が、
僕とガイの婚約を
祝福してくれているように感じた。

サインが終わり、
第二殿下が見届けて、
神官さんの宣言が終わると、
来てくれている皆から
沢山の拍手をもらう。

これで婚約式は終わりだ。

サインをした書類は
神官さんが処理してくれるらしい。

「新しい門出に祝福を」

神官さんがそう言って
教会から退出すると、
一気に空気がゆるんだ。

「エレミアス、おめでとう」

僕の父が大きな声をかけてくれた。

それを合図に母が
そばに来てくれて、
それからガイの家族たちが
ガイの周囲に集まる。

「エレちゃま」

でも、その家族たちの
動きが一声で止まった。

お姫様が王家の人たちを
連れて僕のそばに来る。

国王陛下に挨拶を、と
僕は焦ったけれど、
父が陛下と僕の前に
立ってくれた。

「お前はもういいから
さっさと公務に戻れ」

あまりの父の言いように、
周囲が一瞬、凍り付く。

「おまえは相変わらず
口が悪いな。

お前の可愛い息子の
婚約をせっかく
祝おうと思ったのに」

「いらん。
国王からの言葉など、
邪魔になる」

その言い方はあんまりだと思う。

「そんなこと言うなら、
結婚式にも出席するぞ。

結婚式に出ると言えば
お前が嫌がると思って
婚約式にしておいてやったのに」

「なにがしておいてやっただ。
お前の思い付きで
振り回される身にもなれ」

あれ?
父と陛下って、
やっぱり仲良し?

だって父の冷たい態度に、
陛下、なんだか楽しそう。

「エレちゃま、おめでとう」

お姫様が僕のそばにきて、
王太子殿下を紹介してくれた。

その流れで、第二殿下も
声をかけてくれる。

でも。

「もういいでしょう。
さっさと戻ってください」

なんて厳しい声を出したのは
僕の兄だった。

父にも驚いたけれど、
兄にも驚きだ。

しかも兄の言葉に
王族である王太子殿下も
第二殿下も、しぶしぶと
言った様子でうなずいている。

お姫様もその流れで
王太子殿下に手を取られ、
あまり話もしないまま
教会から出て行った。

「お前らも行け」
と父が陛下に言い、
「なら、お前はもうちょっと付き合え」
と父は陛下に連れられて行く。

「エレミアス、すまない。
こいつに付き合わねばならん。

タウンハウスに戻ったら
一緒に夕食を食おう」

「はい、父様」

「お前も来い」と
父はガイのお父さんの腕を掴む。

その後を王妃様と母が追った。

「エレちゃん。
私たちも先にもどるわ。

王妃様たちと話があるの」

ガイのお母さんと
リリ姉様が言い、
教会を出て行くと、
最後に兄と、ガイと僕。

そしてティーナと
サイラス、ライリーが残った。

「エレ、明日からは
ブレイトン家の領地に
行くんだったな」

「はい、兄様」

「気を付けていくように。
私は見送ることはできないが」

「大丈夫です、僕はもう
婚約しましたから!」

大人ですから!
と胸を張ると、兄は笑って
僕の髪をなでる。

「ガイディス・ブレイトン。
わかっているな」

「は!」ってガイが敬礼をする。

「いいだろう。
しっかり守れ」

兄はそういうと、
ティーナたちに軽く
挨拶をして教会を出て行く。

そこでようやく、
サイラスが、あーって
しゃがみこんだ。

「サイラス?」

「こら、サイラス、
行儀悪いぞ。
すみません、エレ様。
おめでとうございます」

「だって俺、緊張して。
国王陛下の顔、
俺、初めて見た」

「それは僕もだ。
まさか国王一家の顔を
拝見できるなんて。

しかも騎士団長から
声をかけてもらえるなんて!」

「あら、陛下の肖像画は
飾ってないの?」

ティーナが言いながら
僕に笑いかける。

「おめでとうございます、
エレ様。
その衣装、素敵ですわ。
まるで妖精の国から
飛び出てきたみたい」

「うん。
僕もね、ステンドグラスの
下に立った時、
そう思ったんだ」

僕が返事をしている横で
「肖像画なんて食べられないし、
持っていても意味ないじゃん」って
サイラスが小さく呟いている。

「ガイ、僕のお友達だよ」

僕は、あ、と思って
皆にガイを紹介した。

「学院ではエレが世話に
なっているようだな。

さすがに俺では
学院には手が回らない。
これからもよろしく頼む」

ガイがそう言って、
頭を下げた。

すると、サイラスもライリーも
大慌てて、やめてください、と
手をバタバタする。

「私たちはエレ様の
友人ですから、
手を貸すのは当たり前ですわ」

ってティーナが言い、
僕は嬉しくなって
「親友だもんね」って笑った。

ガイは僕の顔を見て
なぜか「親友、羨ましい」
なんてつぶやいたけど。

その後すぐに
「さぁ、そろそろ出よう」
と言って、僕たちを外へと促す。

僕たちの後ろから
ドアのそばで控えていた
アンナとケインが付いてきて、
教会の扉が閉まった。

そうして、僕とガイは
正式に婚約者になったんだ。

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