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124:頑張る僕
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ガイの話では
この屋敷のキッチンは、
すぐには直らない状態だったらしい。
昼も夜も外食をするしかなく、
それならいっそ、
宿を取りたいところだが、
それも難しいらしい。
最初から宿が無理だから
この屋敷を借りたんだもんね。
そこで当初の予定通り、
この屋敷は3日間ほど
借りておくことにして、
一緒に来た使用人たちには
その間、休暇として
休みを与えることにしたらしい。
最低限の人間は
この屋敷に残る必要があるので、
そのあたりは交代制で
各自、この港街を
観光して遊ぶことになったそうだ。
ただ、そこに僕やガイがいたら
やはり世話係が必要になるので、
それなら思い切って
この街から出ようと
ガイは思い至ったらしい。
そこで利用しようと
考えたのが、
あの社交パーティーだ。
ティーナの父親が
招待するぐらいだから
妙なものではないだろうし、
1泊、ロチェスター伯爵の
屋敷に泊めてもらうのも
縁を繋ぐためにも
よいと判断したという。
ケインの話では、
ざっくりと聞き込みをしたところ、
数か月に1回程度の割合で
ロチェスター伯爵は
国外との文化交流のために
社交パーティーを開催しているらしい。
場所は毎回変わるけれど、
どれもロチェスター領の
素晴らしさを異国の人たちに
見せつける場所が選ばれていて、
参加した人たちからの
称賛の声が数多く聞こえてくるという。
街中でも評判の
社交パーティーのようで、
参加しているメンバーも
外国からの留学生や、
貿易商など、年齢も
職業も様々だという。
なら僕たちが参加しても
大丈夫そうだ。
そこから僕たちは
準備に追われた。
と言っても、
僕がしたのは
アンナの説得だけだけど。
社交パーティーの
会場には馬車で
移動するけれど、
旅行じゃないから
何台もの馬車を使うことはできない。
だから護衛のケインと
僕とガイの3人だけで
行くことにしたんだ。
道中の護衛は
ガイとケインがいれば
大丈夫だし、
侍女はロチェスター家の
侍女がきっといるはずだから、と。
「アンナはね、
いつも僕のために
頑張ってくれてるから、
ここでゆっくり
羽を伸ばして
旅行を楽しんでいいんだよ」
「私の楽しみは
ぼっちゃまのお側に
いることでございます」
って泣きそうな顔で言うアンナを
なだめるのは心苦しかった。
でも馬車にも定員があるし、
パーティー会場だって、
馬車を停めておける台数に
限りがあると思う。
ここはアンナには
諦めてもらうしかない。
「それにね、
僕は今日はこの街を
散策できなくなっちゃったでしょ?
だから代わりに
アンナに見てきてほしいんだ。
僕にどんな素敵なものが
あったのか、あとで教えて?
あとね。
兄様と、父様と母様に
お土産も買いたいんだけど、
どんなのが良いのかわからなくって。
高価なものじゃなくて、
この街でしか
手に入らないような物がいいんだ。
ほら、アンナが見つけてくれた
魚のペンみたいな。
アンナ、探してきてくれる?
兄様たちのことを知っていて、
僕が頼めるのは、
もうアンナしかいないんだ」
だってアンナとケイン以外は
ブレイトン公爵家の使用人たちで
僕は知らない人ばかりだし。
と思いつつ、
僕はアンナの手を握ってお願いする。
「か、かしこまりました。
ぼっちゃまがそこまで
言われるのであれば、
このアンナ、
しっかりと土産物を探して参ります」
「うん、ありがとう!」
良かった。
「そうだ。
あのね、お金は兄様が
アンナに預けているのを
使っていいからね。
もちろん、
アンナの食事代とかも。
お土産も、アンナが
良さそうと思ったら
全部、買っておいてね。
数が多くなっても、
屋敷のみんなに渡せばいいし、
セバスたちも、
きっと欲しがると思うだ」
「私の判断で
構わないのですか?」
「うん。僕はアンナを
信頼しているし、
アンナが良いと思ったものは
絶対に僕も気に入ると思うんだ」
そういうと、アンナは
嬉しそうに目元を緩めた。
「賜りました、ぼっちゃま。
必ず、ぼっちゃまが
満足するものを手に入れて参ります」
「うん。
それにアンナも楽しまないと
ダメだよ。
アンナが楽しかったことも
ちゃんと教えてね」
僕がそう言うと、
アンナは深く頷いてくれた。
良かった。
アンナがようやく
納得してくれた。
「エレ、今いいか?」
ふう、って一息つくと
ガイが部屋にやってきた。
「今日の衣装だが
俺と合わせておきたいんだ」
ケインが服を持って
僕の前に来た。
「既製品だがな、
街で買ってきた。
どうだ?」
「ぼっちゃまには
お似合いかと存じますが、
何故、金色の糸で刺繍を?」
と僕が感想を言う前に
アンナが僕の前に出る。
いいんだけど、
アンナは僕が着る服にも
厳しいんだよね。
ケインが僕に見せてくれている服は
黒いシャツと黒いズボンだったけど、
ボタンとシャツの襟部分に
金色の糸が使われていた。
ジャケットは丈が長く、
僕の腰よりも下にあり、
色は白だった。
襟も袖口も、大きくて
綺麗な金と銀の糸で
刺繍がされている。
どちらもガイの色だ。
「いいだろう、
婚約者なんだから」
ガイは律儀にアンナに
答えて、それから、と
僕に手に持っていた
ジャケットを見せてくれた。
「これが俺のだ。
お揃いになるだろう?」
ガイが着るというジャケットは
黒だったけれど
僕の衣装と同じように
襟と袖口に刺繍がしてある。
シャツとズボンは
僕とは逆に真っ白だというから
僕とガイが並んだら
対みたいに見えるんじゃないだろうか。
「ロチェスター伯爵には
参加の旨を書いた手紙を
使用人に届けさせた。
衣装を着る部屋も
貸してもらえるようなので
心配はいらないだろう」
良かった。
この服を着て何時間も
馬車に乗るのは疲れそうだと
思っていたところだった。
「アンナ、約束。
僕も楽しんできて、
どんなパーティーだったか
アンナに教えるから、
アンナも僕にちゃんと教えてね」
「はい、ぼっちゃま。
アンナの命を掛けまして」
とアンナは頭を下げるけど。
ちょっと、重くなりすぎだよ。
ケインが目を見開いて
アンナを見ているじゃないか。
「う、ん。
ほどほどにね」
と僕は思わず言い、
「アンナ、命は大事にしてね」
って。
たかがお土産を買うだけなのに、
つい、強くアンナに言ってしまった。
この屋敷のキッチンは、
すぐには直らない状態だったらしい。
昼も夜も外食をするしかなく、
それならいっそ、
宿を取りたいところだが、
それも難しいらしい。
最初から宿が無理だから
この屋敷を借りたんだもんね。
そこで当初の予定通り、
この屋敷は3日間ほど
借りておくことにして、
一緒に来た使用人たちには
その間、休暇として
休みを与えることにしたらしい。
最低限の人間は
この屋敷に残る必要があるので、
そのあたりは交代制で
各自、この港街を
観光して遊ぶことになったそうだ。
ただ、そこに僕やガイがいたら
やはり世話係が必要になるので、
それなら思い切って
この街から出ようと
ガイは思い至ったらしい。
そこで利用しようと
考えたのが、
あの社交パーティーだ。
ティーナの父親が
招待するぐらいだから
妙なものではないだろうし、
1泊、ロチェスター伯爵の
屋敷に泊めてもらうのも
縁を繋ぐためにも
よいと判断したという。
ケインの話では、
ざっくりと聞き込みをしたところ、
数か月に1回程度の割合で
ロチェスター伯爵は
国外との文化交流のために
社交パーティーを開催しているらしい。
場所は毎回変わるけれど、
どれもロチェスター領の
素晴らしさを異国の人たちに
見せつける場所が選ばれていて、
参加した人たちからの
称賛の声が数多く聞こえてくるという。
街中でも評判の
社交パーティーのようで、
参加しているメンバーも
外国からの留学生や、
貿易商など、年齢も
職業も様々だという。
なら僕たちが参加しても
大丈夫そうだ。
そこから僕たちは
準備に追われた。
と言っても、
僕がしたのは
アンナの説得だけだけど。
社交パーティーの
会場には馬車で
移動するけれど、
旅行じゃないから
何台もの馬車を使うことはできない。
だから護衛のケインと
僕とガイの3人だけで
行くことにしたんだ。
道中の護衛は
ガイとケインがいれば
大丈夫だし、
侍女はロチェスター家の
侍女がきっといるはずだから、と。
「アンナはね、
いつも僕のために
頑張ってくれてるから、
ここでゆっくり
羽を伸ばして
旅行を楽しんでいいんだよ」
「私の楽しみは
ぼっちゃまのお側に
いることでございます」
って泣きそうな顔で言うアンナを
なだめるのは心苦しかった。
でも馬車にも定員があるし、
パーティー会場だって、
馬車を停めておける台数に
限りがあると思う。
ここはアンナには
諦めてもらうしかない。
「それにね、
僕は今日はこの街を
散策できなくなっちゃったでしょ?
だから代わりに
アンナに見てきてほしいんだ。
僕にどんな素敵なものが
あったのか、あとで教えて?
あとね。
兄様と、父様と母様に
お土産も買いたいんだけど、
どんなのが良いのかわからなくって。
高価なものじゃなくて、
この街でしか
手に入らないような物がいいんだ。
ほら、アンナが見つけてくれた
魚のペンみたいな。
アンナ、探してきてくれる?
兄様たちのことを知っていて、
僕が頼めるのは、
もうアンナしかいないんだ」
だってアンナとケイン以外は
ブレイトン公爵家の使用人たちで
僕は知らない人ばかりだし。
と思いつつ、
僕はアンナの手を握ってお願いする。
「か、かしこまりました。
ぼっちゃまがそこまで
言われるのであれば、
このアンナ、
しっかりと土産物を探して参ります」
「うん、ありがとう!」
良かった。
「そうだ。
あのね、お金は兄様が
アンナに預けているのを
使っていいからね。
もちろん、
アンナの食事代とかも。
お土産も、アンナが
良さそうと思ったら
全部、買っておいてね。
数が多くなっても、
屋敷のみんなに渡せばいいし、
セバスたちも、
きっと欲しがると思うだ」
「私の判断で
構わないのですか?」
「うん。僕はアンナを
信頼しているし、
アンナが良いと思ったものは
絶対に僕も気に入ると思うんだ」
そういうと、アンナは
嬉しそうに目元を緩めた。
「賜りました、ぼっちゃま。
必ず、ぼっちゃまが
満足するものを手に入れて参ります」
「うん。
それにアンナも楽しまないと
ダメだよ。
アンナが楽しかったことも
ちゃんと教えてね」
僕がそう言うと、
アンナは深く頷いてくれた。
良かった。
アンナがようやく
納得してくれた。
「エレ、今いいか?」
ふう、って一息つくと
ガイが部屋にやってきた。
「今日の衣装だが
俺と合わせておきたいんだ」
ケインが服を持って
僕の前に来た。
「既製品だがな、
街で買ってきた。
どうだ?」
「ぼっちゃまには
お似合いかと存じますが、
何故、金色の糸で刺繍を?」
と僕が感想を言う前に
アンナが僕の前に出る。
いいんだけど、
アンナは僕が着る服にも
厳しいんだよね。
ケインが僕に見せてくれている服は
黒いシャツと黒いズボンだったけど、
ボタンとシャツの襟部分に
金色の糸が使われていた。
ジャケットは丈が長く、
僕の腰よりも下にあり、
色は白だった。
襟も袖口も、大きくて
綺麗な金と銀の糸で
刺繍がされている。
どちらもガイの色だ。
「いいだろう、
婚約者なんだから」
ガイは律儀にアンナに
答えて、それから、と
僕に手に持っていた
ジャケットを見せてくれた。
「これが俺のだ。
お揃いになるだろう?」
ガイが着るというジャケットは
黒だったけれど
僕の衣装と同じように
襟と袖口に刺繍がしてある。
シャツとズボンは
僕とは逆に真っ白だというから
僕とガイが並んだら
対みたいに見えるんじゃないだろうか。
「ロチェスター伯爵には
参加の旨を書いた手紙を
使用人に届けさせた。
衣装を着る部屋も
貸してもらえるようなので
心配はいらないだろう」
良かった。
この服を着て何時間も
馬車に乗るのは疲れそうだと
思っていたところだった。
「アンナ、約束。
僕も楽しんできて、
どんなパーティーだったか
アンナに教えるから、
アンナも僕にちゃんと教えてね」
「はい、ぼっちゃま。
アンナの命を掛けまして」
とアンナは頭を下げるけど。
ちょっと、重くなりすぎだよ。
ケインが目を見開いて
アンナを見ているじゃないか。
「う、ん。
ほどほどにね」
と僕は思わず言い、
「アンナ、命は大事にしてね」
って。
たかがお土産を買うだけなのに、
つい、強くアンナに言ってしまった。
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