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127:小さな友だち
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男の子はルビと名乗った。
もっと難しそうで、
長い名前だったけど
ルビしか聞き取れなかったんだ。
でも『ルビ』って呼んだら
返事をしてくれたから
それでいいと思う。
僕もルビには
「エレ」と名乗った。
お互い、長い名前を
伝えあうのは難しいと判断したんだ。
ケインがルビのために
ジュースとお菓子を
持ってきてくれたので
僕たちは並んで座って
それを食べることにした。
ケインはロチェスター伯爵に
迷子の子のことを
知らせたいと思っているようだけど
僕の護衛だから僕のそばから
離れるわけにはいかない。
ガイが戻ってくるか、
ルビの父親が気づくのを
待つしかないだろう。
『ルビ、このケーキ、美味しい』
僕がイチゴのケーキを
フォークでつつくと、
『イチゴはすっぱい。
僕はこっち』
とシュークリームにかぶりつく。
『ルビは子どもだ。
甘酸っぱいのが美味しいのに』
『エレも子どもだよ、
すっぱくて泣いてた』
それを言われると
言葉に詰まる。
さっき知らないフルーツが
あったので、それを食べたら
物凄く酸っぱかった。
僕はそれで涙目になってしまったんだ。
『でもエレは可愛い』
『ありがとう。
ルビも……』
可愛い、って言おうと
思ったけれど、
嫌がるかもしれないと
言葉を変えた。
『かっこいいよ』
『僕、かっこいい?』
『うん。一人で部屋から出て
ここまで来たんでしょ?
勇気ある』
僕だったら無理かも。
だって初めての場所で、
知らない人ばかりだもの。
『勇気!
僕、勇気ある?』
『あるよ。凄い』
というと、
ルビは嬉しそうな顔をした。
『エレ、僕のお嫁さんにしてあげる』
お嫁さん?
僕、異国語の言葉を
覚え違いしてたかな?
『ルビ、お嫁さんは
結婚相手に使う言葉だよ』
『そうだよ、だから僕、
エレと結婚する』
『……嬉しいけど無理だよ』
『なんで?』
『僕もう、結婚相手がいるもん』
『その人、可愛い?』
ガイが?
可愛い?
また笑ってしまう。
『ううん、カッコいい』
『僕もかっこいい』
『うん、カッコイイ』
なんてやり取りしてたら
「エレ」って声を掛けられた。
「ガイ、良かった」
「なにがどうなってる?」
ガイの視線がルビを見る。
ルビは一瞬、怯えるような目をした。
『ルビ、怖くないよ。
僕の結婚する人だもん』
『こいつ?
カッコイイ?
ちがう、怖い』
『そんなことないよ、
優しいもん』
ね、ってガイを見たけど、
ガイは言葉がわからないみたいで
ケインに事情を聞いている。
「エレ、ちょっと待ってろ」
ガイが僕の髪を撫でた。
ロチェスター伯爵に声を掛けに
行ってくれるらしい。
ケインは護衛だし、
身分は平民になってしまうから
ガイが行く方が良いというのだ。
「わかった、待ってる」
ガイが早足でいなくなるのを見て
ルビはほっとした顔をする。
『あいつがいいのか?』
さっきの話に続きらしい。
『ガイのこと?
うん。大好きだもん』
『僕も、エレのこと好き』
えへへ、って恥ずかしそうに
ルビが笑って言う。
出会ってそんなに
時間も経ってないのに、
嬉しいけれど不思議。
『僕と一緒にケーキを
食べてくれた人、初めて』
えー?
どういうこと?
『一緒に食べて、
美味しい、美味しくないって
言い合えるの、楽しい』
『うん、楽しいね』
でも、一緒にケーキを
食べる人がいないなんてある?
もしかしてルビは
ずっと一人ぼっちなの?
驚いている僕の耳に
ルビを呼ぶ声が聞こえた。
たぶん、そう。
早口で聞き取れなかったけれど、
ルビィって聞こえた。
『パパ』
ルビが立ち上がり、
駆け寄ってくる男の人に抱き着いた。
すぐそばにガイと
ロチェスター伯爵もいる。
「良かった、ガイ、ありがと」
「いや、ちょうど
部屋で寝ていた子どもが
いなくなったようだと
使用人が報告に来ていたところだったんだ」
ちょうどよかった、とガイは言う。
「私からも礼を言おう。
手間をかけたね。
感謝する」
とロチェスター伯爵も
僕に頭を下げた。
「いえ、一緒にケーキを
食べただけですから」
僕は何もしていない。
ルビを抱き上げた男の人も
ルビと同じで褐色の肌に、
黒髪黒目だった。
黒い瞳が僕を見つけると、
僕が座っているソファーの前に
跪くようにして、
早口で何かをまくしたてている。
お礼を言ってくれている、
とは思うのだけど、
全然、聞き取れない。
『えっと、あの、
大丈夫です。
どうか、ゆっくり』
あまり必死に迫られると、
僕は怖くなってしまう。
『ルビは目が覚めたら
一人ぼっちで
怖かったって言ってました。
あと、ケーキを誰かと
一緒に食べるのも初めてだって。
今度、一緒にたべてあげてください』
言っていいのかわからなかったけど、
ルビのためだと思って
僕はケーキの話もした。
だって、ずっと一人ぼっちなんて
可哀想だったし。
男の人は驚いた顔をして
腕の中のルビを見た。
ルビは『なんでバラすんだよ』
と僕に怒っていたけれど、
顔は嬉しそうだ。
『一人は寂しいもんね』
『僕は強いから
寂しくなんてないぞ』
『寂しくないルビはカッコイイんだ』
『そうだよ。
エレは可愛いだ』
強がるルビを褒めたら
エレは胸を張るようにして
僕を褒める。
可愛いは誉め言葉だからね。
僕たちのやりとりを
ルビの父親は目を丸くして
見ていたけれど、
今度はゆっくりと、
僕に挨拶をして、
感謝の意を示してくれた。
ただ、ここでは
名前を名乗れないので、
許してほしいと言われる。
それだけで、
何か訳ありの人だと
思ったので僕は素直にうなずいた。
ルビは父親と一緒に部屋に
戻るという。
子どもはもう寝る時間だもんね。
父親に抱っこされて、
ルビは嬉しそうな顔をしながら
僕に手を振った。
僕も手を小さく振り返す。
「あのチビ、なんだって?」
ガイが僕の隣に座った。
「僕のこと、可愛いって」
「は?」
ガイが顔をしかめた。
「僕をお嫁さんにするって」
「「はぁ?」」
今度はケインとガイの声が重なった。
僕は笑ってしまう。
「ちゃんと断ったよ。
僕にはカッコいい婚約者がいるから
ダメだよって」
「そ、そうか」
「あんな子どもに、
本気の返事をしたんですか?」
ガイは嬉しそうだけど
ケインは呆れた顔をする。
「それにしても
良く言葉がわかったな」
「うん。家庭教師に
教えてもらったのを思い出したの。
通じて良かった」
「バーンズ侯爵家の家庭教師、
すごいですね」
ってケインが言う。
でも僕は屋敷から
出れなかったから、
勉強する時間だけはあったんだ。
だからそんなに
凄いことじゃないと思う。
僕がそういうと、
ガイは僕の肩を抱き寄せて、
「それでもエレは凄い」
と言ってくれた。
僕は嬉しくなって、
にこにこしながら、
ルビと何をしていたのかを
ガイに全部、話をすることにしたんだ。
もっと難しそうで、
長い名前だったけど
ルビしか聞き取れなかったんだ。
でも『ルビ』って呼んだら
返事をしてくれたから
それでいいと思う。
僕もルビには
「エレ」と名乗った。
お互い、長い名前を
伝えあうのは難しいと判断したんだ。
ケインがルビのために
ジュースとお菓子を
持ってきてくれたので
僕たちは並んで座って
それを食べることにした。
ケインはロチェスター伯爵に
迷子の子のことを
知らせたいと思っているようだけど
僕の護衛だから僕のそばから
離れるわけにはいかない。
ガイが戻ってくるか、
ルビの父親が気づくのを
待つしかないだろう。
『ルビ、このケーキ、美味しい』
僕がイチゴのケーキを
フォークでつつくと、
『イチゴはすっぱい。
僕はこっち』
とシュークリームにかぶりつく。
『ルビは子どもだ。
甘酸っぱいのが美味しいのに』
『エレも子どもだよ、
すっぱくて泣いてた』
それを言われると
言葉に詰まる。
さっき知らないフルーツが
あったので、それを食べたら
物凄く酸っぱかった。
僕はそれで涙目になってしまったんだ。
『でもエレは可愛い』
『ありがとう。
ルビも……』
可愛い、って言おうと
思ったけれど、
嫌がるかもしれないと
言葉を変えた。
『かっこいいよ』
『僕、かっこいい?』
『うん。一人で部屋から出て
ここまで来たんでしょ?
勇気ある』
僕だったら無理かも。
だって初めての場所で、
知らない人ばかりだもの。
『勇気!
僕、勇気ある?』
『あるよ。凄い』
というと、
ルビは嬉しそうな顔をした。
『エレ、僕のお嫁さんにしてあげる』
お嫁さん?
僕、異国語の言葉を
覚え違いしてたかな?
『ルビ、お嫁さんは
結婚相手に使う言葉だよ』
『そうだよ、だから僕、
エレと結婚する』
『……嬉しいけど無理だよ』
『なんで?』
『僕もう、結婚相手がいるもん』
『その人、可愛い?』
ガイが?
可愛い?
また笑ってしまう。
『ううん、カッコいい』
『僕もかっこいい』
『うん、カッコイイ』
なんてやり取りしてたら
「エレ」って声を掛けられた。
「ガイ、良かった」
「なにがどうなってる?」
ガイの視線がルビを見る。
ルビは一瞬、怯えるような目をした。
『ルビ、怖くないよ。
僕の結婚する人だもん』
『こいつ?
カッコイイ?
ちがう、怖い』
『そんなことないよ、
優しいもん』
ね、ってガイを見たけど、
ガイは言葉がわからないみたいで
ケインに事情を聞いている。
「エレ、ちょっと待ってろ」
ガイが僕の髪を撫でた。
ロチェスター伯爵に声を掛けに
行ってくれるらしい。
ケインは護衛だし、
身分は平民になってしまうから
ガイが行く方が良いというのだ。
「わかった、待ってる」
ガイが早足でいなくなるのを見て
ルビはほっとした顔をする。
『あいつがいいのか?』
さっきの話に続きらしい。
『ガイのこと?
うん。大好きだもん』
『僕も、エレのこと好き』
えへへ、って恥ずかしそうに
ルビが笑って言う。
出会ってそんなに
時間も経ってないのに、
嬉しいけれど不思議。
『僕と一緒にケーキを
食べてくれた人、初めて』
えー?
どういうこと?
『一緒に食べて、
美味しい、美味しくないって
言い合えるの、楽しい』
『うん、楽しいね』
でも、一緒にケーキを
食べる人がいないなんてある?
もしかしてルビは
ずっと一人ぼっちなの?
驚いている僕の耳に
ルビを呼ぶ声が聞こえた。
たぶん、そう。
早口で聞き取れなかったけれど、
ルビィって聞こえた。
『パパ』
ルビが立ち上がり、
駆け寄ってくる男の人に抱き着いた。
すぐそばにガイと
ロチェスター伯爵もいる。
「良かった、ガイ、ありがと」
「いや、ちょうど
部屋で寝ていた子どもが
いなくなったようだと
使用人が報告に来ていたところだったんだ」
ちょうどよかった、とガイは言う。
「私からも礼を言おう。
手間をかけたね。
感謝する」
とロチェスター伯爵も
僕に頭を下げた。
「いえ、一緒にケーキを
食べただけですから」
僕は何もしていない。
ルビを抱き上げた男の人も
ルビと同じで褐色の肌に、
黒髪黒目だった。
黒い瞳が僕を見つけると、
僕が座っているソファーの前に
跪くようにして、
早口で何かをまくしたてている。
お礼を言ってくれている、
とは思うのだけど、
全然、聞き取れない。
『えっと、あの、
大丈夫です。
どうか、ゆっくり』
あまり必死に迫られると、
僕は怖くなってしまう。
『ルビは目が覚めたら
一人ぼっちで
怖かったって言ってました。
あと、ケーキを誰かと
一緒に食べるのも初めてだって。
今度、一緒にたべてあげてください』
言っていいのかわからなかったけど、
ルビのためだと思って
僕はケーキの話もした。
だって、ずっと一人ぼっちなんて
可哀想だったし。
男の人は驚いた顔をして
腕の中のルビを見た。
ルビは『なんでバラすんだよ』
と僕に怒っていたけれど、
顔は嬉しそうだ。
『一人は寂しいもんね』
『僕は強いから
寂しくなんてないぞ』
『寂しくないルビはカッコイイんだ』
『そうだよ。
エレは可愛いだ』
強がるルビを褒めたら
エレは胸を張るようにして
僕を褒める。
可愛いは誉め言葉だからね。
僕たちのやりとりを
ルビの父親は目を丸くして
見ていたけれど、
今度はゆっくりと、
僕に挨拶をして、
感謝の意を示してくれた。
ただ、ここでは
名前を名乗れないので、
許してほしいと言われる。
それだけで、
何か訳ありの人だと
思ったので僕は素直にうなずいた。
ルビは父親と一緒に部屋に
戻るという。
子どもはもう寝る時間だもんね。
父親に抱っこされて、
ルビは嬉しそうな顔をしながら
僕に手を振った。
僕も手を小さく振り返す。
「あのチビ、なんだって?」
ガイが僕の隣に座った。
「僕のこと、可愛いって」
「は?」
ガイが顔をしかめた。
「僕をお嫁さんにするって」
「「はぁ?」」
今度はケインとガイの声が重なった。
僕は笑ってしまう。
「ちゃんと断ったよ。
僕にはカッコいい婚約者がいるから
ダメだよって」
「そ、そうか」
「あんな子どもに、
本気の返事をしたんですか?」
ガイは嬉しそうだけど
ケインは呆れた顔をする。
「それにしても
良く言葉がわかったな」
「うん。家庭教師に
教えてもらったのを思い出したの。
通じて良かった」
「バーンズ侯爵家の家庭教師、
すごいですね」
ってケインが言う。
でも僕は屋敷から
出れなかったから、
勉強する時間だけはあったんだ。
だからそんなに
凄いことじゃないと思う。
僕がそういうと、
ガイは僕の肩を抱き寄せて、
「それでもエレは凄い」
と言ってくれた。
僕は嬉しくなって、
にこにこしながら、
ルビと何をしていたのかを
ガイに全部、話をすることにしたんだ。
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