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128:俺の妖精は加護が過ぎる・1
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異国文化交流パーティーの
話を聞いたときは、
正直、受ける気はなかった。
社交など面倒でしかない。
だが、エレミアスが
わくわくした顔で俺を見る。
思わず頷きたくなるのを
我慢して、俺は一旦、
交流パーティーへの参加は
保留にした。
どのようなパーティーか
詳細もわからないところに
エレミアスを連れて行くことなどできない。
それにしても、
わざわざロチェスター伯爵が
エレミアスの顔を見に来るとは。
もともと、この町は
ロチェスター領だ。
俺たちはお忍びとはいえ、
身分を隠していたわけではない。
ロチェスター伯爵に
連絡が行っていてもおかしくはない。
よほど、手紙で
ヴァレンティーナ嬢が
エレミアスのことを
褒めたたえていたのだろう。
ロチェスター伯爵は
社交界でもやり手だと有名だった。
領地を栄えさせているだけでなく
異国とのパイプが太く、
外交にも強いという。
俺の母がヴァレンティーナ嬢を
行儀見習いとして
ブレイトン公爵家に呼んだのは
ロチェスター伯爵と
懇意にしたいという
意図もあったはずだ。
そしてロチェスター伯爵も
ブレイトン公爵家と
縁づくことを望んでいたに違いない。
ヴァレンティーナ嬢を
二つ返事でブレイトン公爵家によこした。
ただ、両家当主としては
残念なことに、
俺とヴァレンティーナ嬢の
縁談話はあっというまに
立ち消えになったが。
あまり人と接することなく
生きてきたエレミアスは
ロチェスター伯爵の前でも
可愛らしく焦っていた。
ポケットから俺に似ているという
ぬいぐるみを出して
必死になっている姿には
さすがのロチェスター伯爵も
驚いたようだった。
まぁ、めったに人前に出ない、
バーンズ侯爵家の秘宝と
まで言われて隠されていた
エレミアスだ。
ヴァレンティーナ嬢の
意見はともかく、
わがままな侯爵令息だと
思われていてもおかしくはない。
幼く見える姿は
よほど意表を突いたのか、
ロチェスター伯爵は
エレミアスと視線を合わせた。
いくらエレミアスが
侯爵家の人間とはいえ、
爵位を継いだわけでもなく
今はただの子息でしかない。
だというのに、
伯爵がわざわざ身をかがめ、
エレミアスを同等に扱ったのだ。
そして手渡された封筒には
異国文化交流パーティーの
招待状だった。
最初から渡す予定であれば、
出会ったときに俺に渡したはずだ。
それをわざわざ、
エレミアスと会話をした後に
渡したということは、
エレミアスがロチェスター伯爵の
お眼鏡にかなったということになる。
また面倒なことになりそうだと
俺はため息しか出ない。
とにかくだ。
異国文化交流パーティーには
行かない方向で
エレミアスを納得させよう。
そう思っていたのだが、
借りていた屋敷に戻ると
調理場のコンロが
原因不明で使用できなくなったという。
使用人たちも
修理に呼んだ業者も
こんなことは初めてだという。
その様子を見ていた俺は、
エレミアスが言っていた
夢の話を思い出した。
例の『天使の加護』とか
言っていたブレスレットのことだ。
精霊だかなんだか知らないが、
エレミアスの願いを
ちまちま叶えているという。
偶然と言われれば
それまでだと判断できるが、
俺は実際に、あのブレスレットが
勝手に震えたり、
宝石の色が変わるのを
この目で見ている。
ただのブレスレットでは
無いことは確かだ。
エレミアスを守るために
あのブレスレットとは
関わり合いたくなかったが、
神殿に放置していても
エレミアスに接触できるとは
想定外だ。
こうなっては、
諦めてエレミアスの
望みを叶えた方が良いだろう。
エレミアスの話では
あの精霊は人間の
善悪がよくわからないらしい。
つまりエレミアスの願いを
叶えるために、
何をするかわからない。
エレミアスの願いが
小さなものだから
この程度で済んでいるが、
もしエレミアスが本当に
世界征服を望んだら
いったいどうなってしまうのか。
まぁ、そんな願いなど
持たないのがエレミアスなのだが。
それに今まで狭い世界で
生きてきたエレミアスに、
色々なことを知ってほしいと
いう気持ちもある。
もし何かあれば
俺がエレミアスを守ればいい。
そう覚悟を決めた。
……団長にバレたら、
俺が甘んじて処罰を受けよう。
そう決めて準備を進めて
いざ、会場にやってきたのだが。
さすがロチェスター家、と
言えばいいのだろうか。
山の中の建物には驚いた。
馬車道は舗装されていたので
それなりの館でも出てくるとは
思ってはいたが、
予想をはるかに超えた
立派な建物の群れがあった。
なぜこんな山奥に?
という疑問も、
部屋に案内されれば
すぐにわかる。
壁全面が窓の部屋は、
足を踏み入れただけで
ロチェスター領を一望できた。
エレミアスはおおはしゃぎだ。
部屋の中を散策する
エレミアスを横目に、
俺は数段下にある
テーブルを見た。
エレミアスはソファーに
座って満足したようだが
俺にはテーブルの上に
メッセージカードが
置いてあるのが見えたのだ。
俺は階段を下りて
カードを手に取る。
変わった部屋の造りだ。
異国ではこういうのが
流行っているのかと
俺はカードを見る。
「……な、そういうことか」
思わず声が漏れた。
カードには
『良い夜を』と書いてある。
どこにでもある、
普通に読めばたいした意味のない言葉だ。
おそらくエレミアスが
このカードを見ても
何も思わないだろう。
だが俺にはわかった。
ロチェスター伯爵という
人間を知っていて、
俺とエレミアスの関係を
鑑みれば、メッセージの
裏の意味を読み解くことができる。
『良い夜を』
エレミアスと一緒に、だ。
エレミアスが秘宝だと知って。
そんな俺がエレミアスに
恋焦がれていると理解して。
最高の夜にするための
とっておきの部屋を
用意したと言いたいのだ。
ロチェスター伯爵にとっては
ちょっとしたいたずら心と、
大きな野心からだろう。
俺がヴァレンティーナ嬢と
婚約しなかったことで、
ロチェスター家は公爵家と
縁を結ぶことができなかった。
その代わり、俺と、
バーンズ侯爵家の秘宝の
仲を取り持つことで、
両家との交流を
深めたいと考えたのだろう。
しかもエレミアスは、
未来のバーンズ侯爵家当主だ。
良い印象を与えておいて損はない。
つまり俺たちと
ロチェスター伯爵にとって
この場は異国交流パーティー
ではなく。
俺たちとロチェスター家の
仲を深める交流会だったのだ。
そのつもりで見れば、
この部屋も納得がいく。
まさか俺たちのために
部屋を作ったわけではないだろうが、
この部屋は貴族専用の
恋人、もしくは夫婦向けだろう。
この数段下がったソファーも、
この場所であれば
たとえ情事が始まっても、
周囲からは見えない。
使用人たちがいても
下がらせるだけの
時間は稼げるだろう。
不自然に部屋に
仕切りがあるのも、
おそらくは、あの奥に
ベッドがあるに違いない。
この部屋は広く、
全面窓で、風景を
楽しめるようになっているが、
あの奥だけは、
部屋のどこにいても
見えないようになっているはずだ。
そういう目で見れば、
この部屋は、情事向きの部屋、
としか言いようがない。
高位貴族が愛人と
お忍びで過ごす部屋だと
言われても俺は納得するだろう。
俺は楽し気にソファーに
座ったエレミアスの
隣に座る。
この部屋に二人っきり、
そう思うと、つい、
エレミアスに触れたくなる。
俺は適当なことを
口にしながらエレミアスの
肩を引き寄せ口づけた。
何度か唇を重ねて、
俺は我に返り、
エレミアスの体を離した。
これ以上触れたら、
歯止めが効かなくなりそうだ。
俺はわざと立ち上がり
エレミアスから距離を取る。
するとエレミアスは
先ほどの甘い空気など
なかったかのように
また部屋の散策を始めた。
エレミアスは興味津々と
言った様子で、
チェストの引き出しを
開けている。
ふと俺は、エレミアスの
話を思い出した。
願いを叶えるという
ブレスレットの妖精だ。
もしも、だ。
あの無邪気なエレミアスが、
もしこの状況を望んでいたとしたらどうだろうか。
あの露天風呂の状況も、
この交流パーティーも、
エレミアスが望み、
精霊がその望みを
叶えたんだとしたら?
エレミアスも言っていた。
露天風呂で二人っきりに
なったのは自分が望んだからだと。
ならば今、
こうして二人っきりで
甘い夜を過ごせる場にいるのは、
偶然ではなくエレミアスが望んだから。
……と考えるのは
都合が良すぎるだろうか。
俺は自分の考えを
首を振って誤魔化した。
「エレ」
名を呼ぶと、
エレミアスが俺を見る。
俺は両手を広げた。
団長が両手を広げただけで
エレミアスが団長の胸に
飛び込むのを見たことがある。
それから俺もそれを真似て
同じ仕草をするようになった。
こうすればエレミアスは
俺の胸にも飛び込んで来てくれる。
ただの条件反射かもしれない。
だが、たったこれだけで
俺はエレミアスが俺を
求めているのだと喜びを感じるのだ。
エレミアスが俺の前にきて
ぎゅっとしがみついた。
「なぁに?」
可愛く下から見上げてくる顔に、
また口づけたい衝動に駆られる。
それを我慢して
俺はわざとおどけた調子で言う。
「せっかく二人っきりなんだ。
部屋の探索もいいが、
俺を忘れないでくれ」
俺がそう言うと、
エレミアスも冗談だと
思ったのだろう。
「忘れるわけないよ」
と、言いながら笑う。
可愛いが過ぎる。
そして俺の独占欲も。
俺は「本気だぞ」と
口調は軽く、
心の中では本気で、
エレミアスに告げて、
また口付けた。
話を聞いたときは、
正直、受ける気はなかった。
社交など面倒でしかない。
だが、エレミアスが
わくわくした顔で俺を見る。
思わず頷きたくなるのを
我慢して、俺は一旦、
交流パーティーへの参加は
保留にした。
どのようなパーティーか
詳細もわからないところに
エレミアスを連れて行くことなどできない。
それにしても、
わざわざロチェスター伯爵が
エレミアスの顔を見に来るとは。
もともと、この町は
ロチェスター領だ。
俺たちはお忍びとはいえ、
身分を隠していたわけではない。
ロチェスター伯爵に
連絡が行っていてもおかしくはない。
よほど、手紙で
ヴァレンティーナ嬢が
エレミアスのことを
褒めたたえていたのだろう。
ロチェスター伯爵は
社交界でもやり手だと有名だった。
領地を栄えさせているだけでなく
異国とのパイプが太く、
外交にも強いという。
俺の母がヴァレンティーナ嬢を
行儀見習いとして
ブレイトン公爵家に呼んだのは
ロチェスター伯爵と
懇意にしたいという
意図もあったはずだ。
そしてロチェスター伯爵も
ブレイトン公爵家と
縁づくことを望んでいたに違いない。
ヴァレンティーナ嬢を
二つ返事でブレイトン公爵家によこした。
ただ、両家当主としては
残念なことに、
俺とヴァレンティーナ嬢の
縁談話はあっというまに
立ち消えになったが。
あまり人と接することなく
生きてきたエレミアスは
ロチェスター伯爵の前でも
可愛らしく焦っていた。
ポケットから俺に似ているという
ぬいぐるみを出して
必死になっている姿には
さすがのロチェスター伯爵も
驚いたようだった。
まぁ、めったに人前に出ない、
バーンズ侯爵家の秘宝と
まで言われて隠されていた
エレミアスだ。
ヴァレンティーナ嬢の
意見はともかく、
わがままな侯爵令息だと
思われていてもおかしくはない。
幼く見える姿は
よほど意表を突いたのか、
ロチェスター伯爵は
エレミアスと視線を合わせた。
いくらエレミアスが
侯爵家の人間とはいえ、
爵位を継いだわけでもなく
今はただの子息でしかない。
だというのに、
伯爵がわざわざ身をかがめ、
エレミアスを同等に扱ったのだ。
そして手渡された封筒には
異国文化交流パーティーの
招待状だった。
最初から渡す予定であれば、
出会ったときに俺に渡したはずだ。
それをわざわざ、
エレミアスと会話をした後に
渡したということは、
エレミアスがロチェスター伯爵の
お眼鏡にかなったということになる。
また面倒なことになりそうだと
俺はため息しか出ない。
とにかくだ。
異国文化交流パーティーには
行かない方向で
エレミアスを納得させよう。
そう思っていたのだが、
借りていた屋敷に戻ると
調理場のコンロが
原因不明で使用できなくなったという。
使用人たちも
修理に呼んだ業者も
こんなことは初めてだという。
その様子を見ていた俺は、
エレミアスが言っていた
夢の話を思い出した。
例の『天使の加護』とか
言っていたブレスレットのことだ。
精霊だかなんだか知らないが、
エレミアスの願いを
ちまちま叶えているという。
偶然と言われれば
それまでだと判断できるが、
俺は実際に、あのブレスレットが
勝手に震えたり、
宝石の色が変わるのを
この目で見ている。
ただのブレスレットでは
無いことは確かだ。
エレミアスを守るために
あのブレスレットとは
関わり合いたくなかったが、
神殿に放置していても
エレミアスに接触できるとは
想定外だ。
こうなっては、
諦めてエレミアスの
望みを叶えた方が良いだろう。
エレミアスの話では
あの精霊は人間の
善悪がよくわからないらしい。
つまりエレミアスの願いを
叶えるために、
何をするかわからない。
エレミアスの願いが
小さなものだから
この程度で済んでいるが、
もしエレミアスが本当に
世界征服を望んだら
いったいどうなってしまうのか。
まぁ、そんな願いなど
持たないのがエレミアスなのだが。
それに今まで狭い世界で
生きてきたエレミアスに、
色々なことを知ってほしいと
いう気持ちもある。
もし何かあれば
俺がエレミアスを守ればいい。
そう覚悟を決めた。
……団長にバレたら、
俺が甘んじて処罰を受けよう。
そう決めて準備を進めて
いざ、会場にやってきたのだが。
さすがロチェスター家、と
言えばいいのだろうか。
山の中の建物には驚いた。
馬車道は舗装されていたので
それなりの館でも出てくるとは
思ってはいたが、
予想をはるかに超えた
立派な建物の群れがあった。
なぜこんな山奥に?
という疑問も、
部屋に案内されれば
すぐにわかる。
壁全面が窓の部屋は、
足を踏み入れただけで
ロチェスター領を一望できた。
エレミアスはおおはしゃぎだ。
部屋の中を散策する
エレミアスを横目に、
俺は数段下にある
テーブルを見た。
エレミアスはソファーに
座って満足したようだが
俺にはテーブルの上に
メッセージカードが
置いてあるのが見えたのだ。
俺は階段を下りて
カードを手に取る。
変わった部屋の造りだ。
異国ではこういうのが
流行っているのかと
俺はカードを見る。
「……な、そういうことか」
思わず声が漏れた。
カードには
『良い夜を』と書いてある。
どこにでもある、
普通に読めばたいした意味のない言葉だ。
おそらくエレミアスが
このカードを見ても
何も思わないだろう。
だが俺にはわかった。
ロチェスター伯爵という
人間を知っていて、
俺とエレミアスの関係を
鑑みれば、メッセージの
裏の意味を読み解くことができる。
『良い夜を』
エレミアスと一緒に、だ。
エレミアスが秘宝だと知って。
そんな俺がエレミアスに
恋焦がれていると理解して。
最高の夜にするための
とっておきの部屋を
用意したと言いたいのだ。
ロチェスター伯爵にとっては
ちょっとしたいたずら心と、
大きな野心からだろう。
俺がヴァレンティーナ嬢と
婚約しなかったことで、
ロチェスター家は公爵家と
縁を結ぶことができなかった。
その代わり、俺と、
バーンズ侯爵家の秘宝の
仲を取り持つことで、
両家との交流を
深めたいと考えたのだろう。
しかもエレミアスは、
未来のバーンズ侯爵家当主だ。
良い印象を与えておいて損はない。
つまり俺たちと
ロチェスター伯爵にとって
この場は異国交流パーティー
ではなく。
俺たちとロチェスター家の
仲を深める交流会だったのだ。
そのつもりで見れば、
この部屋も納得がいく。
まさか俺たちのために
部屋を作ったわけではないだろうが、
この部屋は貴族専用の
恋人、もしくは夫婦向けだろう。
この数段下がったソファーも、
この場所であれば
たとえ情事が始まっても、
周囲からは見えない。
使用人たちがいても
下がらせるだけの
時間は稼げるだろう。
不自然に部屋に
仕切りがあるのも、
おそらくは、あの奥に
ベッドがあるに違いない。
この部屋は広く、
全面窓で、風景を
楽しめるようになっているが、
あの奥だけは、
部屋のどこにいても
見えないようになっているはずだ。
そういう目で見れば、
この部屋は、情事向きの部屋、
としか言いようがない。
高位貴族が愛人と
お忍びで過ごす部屋だと
言われても俺は納得するだろう。
俺は楽し気にソファーに
座ったエレミアスの
隣に座る。
この部屋に二人っきり、
そう思うと、つい、
エレミアスに触れたくなる。
俺は適当なことを
口にしながらエレミアスの
肩を引き寄せ口づけた。
何度か唇を重ねて、
俺は我に返り、
エレミアスの体を離した。
これ以上触れたら、
歯止めが効かなくなりそうだ。
俺はわざと立ち上がり
エレミアスから距離を取る。
するとエレミアスは
先ほどの甘い空気など
なかったかのように
また部屋の散策を始めた。
エレミアスは興味津々と
言った様子で、
チェストの引き出しを
開けている。
ふと俺は、エレミアスの
話を思い出した。
願いを叶えるという
ブレスレットの妖精だ。
もしも、だ。
あの無邪気なエレミアスが、
もしこの状況を望んでいたとしたらどうだろうか。
あの露天風呂の状況も、
この交流パーティーも、
エレミアスが望み、
精霊がその望みを
叶えたんだとしたら?
エレミアスも言っていた。
露天風呂で二人っきりに
なったのは自分が望んだからだと。
ならば今、
こうして二人っきりで
甘い夜を過ごせる場にいるのは、
偶然ではなくエレミアスが望んだから。
……と考えるのは
都合が良すぎるだろうか。
俺は自分の考えを
首を振って誤魔化した。
「エレ」
名を呼ぶと、
エレミアスが俺を見る。
俺は両手を広げた。
団長が両手を広げただけで
エレミアスが団長の胸に
飛び込むのを見たことがある。
それから俺もそれを真似て
同じ仕草をするようになった。
こうすればエレミアスは
俺の胸にも飛び込んで来てくれる。
ただの条件反射かもしれない。
だが、たったこれだけで
俺はエレミアスが俺を
求めているのだと喜びを感じるのだ。
エレミアスが俺の前にきて
ぎゅっとしがみついた。
「なぁに?」
可愛く下から見上げてくる顔に、
また口づけたい衝動に駆られる。
それを我慢して
俺はわざとおどけた調子で言う。
「せっかく二人っきりなんだ。
部屋の探索もいいが、
俺を忘れないでくれ」
俺がそう言うと、
エレミアスも冗談だと
思ったのだろう。
「忘れるわけないよ」
と、言いながら笑う。
可愛いが過ぎる。
そして俺の独占欲も。
俺は「本気だぞ」と
口調は軽く、
心の中では本気で、
エレミアスに告げて、
また口付けた。
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