雑魚で貧乏な俺にゲームの悪役貴族が憑依した結果、ゲームヒロインのモデルとパーティーを組むことになった

ぐうのすけ

文字の大きさ
80 / 116

第80話 新ルート奥へ

しおりを挟む
 放課後、4人でショップに来た。
 ショップに入るとリツカとメイはウインドウショッピングを楽しむが、マナが魔法弾の前で唸っていた。

「買ったらいいだろ?」
「迷うわね、弾は欲しいけど、自分で作ったほうが安いのよ」
「まだゲートの奥に行くまで3日ある。今決めなくてもいいぞ」

 マナは自分で魔法弾を安く作れる、でも数を確保するには時間がかかる。

「う~ん、やめておくわ、家に帰って作る」
「分かった」

 あと3日、錬金術師の生徒から魔石と魔法弾を交換してもらおう。
 この方法なら安く調達できる。

「用は終わった。帰ろう」
「待ってください! アキラ、これを着てみませんか?」
「これは、クラックが逃亡時に着ていた外套と似ている、商品名はクラックコートか」
「父さんの会社が作ったシリーズだよ!」

 女性の店員さんがにこにこしながら言った。

「ぜひ着てみてください。写真をネットにアップしてもいいでしょうか?」
「は、ははは、いえ、今度にしますね」

 がし!

「いえいえ、ぜひ着てみましょう!」
「いえいえいえ、結構です」
「いえいえいえいえ、今なら魔法弾を1000発プレゼントしますのでどうぞどうぞ!」

「面白そうなので着てみましょう☆」
「配信をしてもいい?」
「どうぞどうぞ! いい宣伝になります。ショップの名前を言っていただければぜひ配信をお願いします」

 俺は結局クラックコートを試着して配信し、写真のモデルとなった。

「アキラ、お疲れ様、はい、コーヒー」
「マナ、ありがとう。はい、魔法弾1000発」
「いいわよ」
「メインで銃を使うのはマナだ。リツカはたくさん魔法弾を持っている」

「それは悪いわ」
「俺が危なくなった時にマナの銃撃が必要になるかもしれない」
「……分かったわ。大切に使うわね」

「性格イケメンですね☆」
「まだ配信中だったのか」
「ばっちりだよ」

『性格イケメンか、俺もそう呼ばれたいわ』
『マナからはいコーヒーされたいわ』
『羨ましすぎる』
『アキラはあのコートを買っても良かったと思うの』

 こうして、皆のコメントが聞こえつつ配信は終わった。


 皆ゲート奥に向かう準備を整えた。

【新ルート探索当日】

 4人でゲートの前に向かう。
 朝早かったのでメイはリツカがおんぶしている。

「兄さんとライカさんはもう来てる」
「アキラ、また立派になったな」
「皆、よろしくお願いするわね」

 ライカさんが優しい。
 兄さんと結ばれたからか?

「このまま配信を続けてもいいかな?」
「いいわよ」
「行こう」

 俺達は自己紹介や説明をしつつ先を目指した。
 ライカさんと兄さんは俺達を見守るように後ろからついてくる。


「まだ奥の探索は終わってないのか?」
「調査班はまだ調べていないみたいだよ?」
「穴場だから他の冒険者が群がったりしないのか?」

「無いわ、険しい道を超えて6日かかるのよ? 未知のルートは事故も多いわ。それに最後のモンスターの群れがあったあの場所、あの群れに囲まれれれば並みの冒険者は命を落とすわね」
「いい場所だと思うんだけどな」
「きゅう♪」

「きゅうもお気に入りか」
「きゅう♪」
「並の冒険者なら危ないです、でもここにはアキラとキドウとライカさん、3人のソウルランクBがいます☆」

『リツカとメイもソウルランクCだ。このパーティーは強いぞ』
『あんまり言うな、Dランクのマナがいるんだから』
『マナは錬金術があるから気にしないで!』

 マナの顔が少し曇った気がしたが、気づかないふりをした。
 何か言っても逆効果だろう。

『普通の冒険者なら奥には行かないだろう。調査隊も他の仕事があるから後回しになっている』
『モンスターがうじゃうじゃいる長いルートが穴場と言えるアキラはもう強者なんだと思う』
『みんなが思う険しい道はアキラにとって普通の道か』

 俺達はモンスターを倒しながら進むが、兄さんとライカさんは明らかに変わっていた。

 俺達がモンスターを倒している時に、兄さんが前に出てこない。
 ライカさんの影響で落ち着いたのかもしれない。
 そしてライカさんがかなり優しくなっている。

「皆汗を掻いているわね。タオルで拭きましょう」

 ライカさんが笑顔で皆にタオルを渡して兄さんの体を拭く。

「ありがとう」
「こうしているのが幸せなのよ」

 メイが2人を見て驚く。

「キドウとライカさんは変わりましたね」
「うむ、色々あった」
「私もキドウの影響を受けているのかもしれないわね」

『きあああああいまだあ?』
『きああああああいを聞きに来た俺はどうすればいいんだ?』
『気合侍が出てくるのはまだ早い』
『いつ出るんだ?』
『それは来るべき時だ』

『来るべき時とは?』
『ふ、それを言っちゃあおしまいよ』

 みんなは間延びしているせいかネタ発言が始まった。

「洞窟まで足を速めよう!」

 俺はマナをおんぶした。

「あう、自分で走れるわ」
「マナは温存したいからね。このまま行こう!」
「行きましょう! 走りますよ☆」

 みんなで走って洞窟に向かった。
 前回6日かかった道のりを、俺達は4日で駆け抜けた。


【カドマツ視点】

 私は皆を尾行する。
 

 途中から変化があった。
 みんなが走り出したのだ。
 今度は走って池に潜って急な斜面を上り下りする罰ゲームですか!

「カドマツ、追うぞ」
「……分かりました」

 私は皆を追った。
 尾行しているみんなは楽しそうなのに、私はあまり話さないヤナギと一緒。
 池に飛び込んでブラが擦れた。
 
 体調が悪い。
 なんで、尾行しているんだろう?
 3人がBランクで、しかも私より強そうな魔法使いがいる。
 私1人が助けに行って助かる事があるのだろうか?

 そして、陰から尾行をする意味はあるのだろうか?
 そろそろリツカちゃんは私を超えて強くなるだろう。
 この尾行、無駄では?
 
「ヤナギ、私達が尾行する意味ってあるんですか?」
「思う所があればオウセイに言ってくれ」
「分かりました。もしもし、実はですね……」

 私はリツカパパに現状と想いを伝えた。

『話は分かった。ヤナギと変わってくれ』
「分かりました」

 ヤナギとリツカパパが話をする。

「分かった。カドマツは帰らせよう。調子が悪そうに見える。いや、そこまでではないが、調子が悪くなるとネガティブにもなるだろう。いや、俺から伝える」

 ヤナギがスマホを返しながら言った。

「今回、尾行は俺1人でやる。気をつけて帰ってくれ」
「……いいんですか?」
「いい、それと、尾行する方針も見直す。皆が急速に強くなりすぎた。尾行もバレている。今の体制を見直すために俺が帰ってから3人で話をする事になった」

「やっぱり、途中から、この尾行、意味ないなーって思ってました」
「分かる」

「疲れました」
「調子が悪いんだろ?」
「少しだけ」
「ゆっくり帰ってくれ」

「はい、頑張ってください」
「ああ、気をつけてな」
「お疲れ様です」

 私はその日、ゆっくり眠って、ゆっくりとお家に帰った。


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生?したら男女逆転世界

美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。 ※カクヨム様にも掲載しております

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2025.11.25)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

処理中です...