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第105話 聖魔の騎士
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マナが泣き叫んだ。
「あああああ、そんな! 私を庇ったせいで!」
兄さんが叫ぶ。
「アキラ! 来たか、マナと一緒にメイを下げろ!」
マナがメイを後ろに下げる。
血が止まらない。
マナが回復のカードを使うが回復が間に合わない。
「血が、血が止まらないの!」
なん、だ、これは?
間に合ったと思ったのに!
何だこれは?
何なんだ、何なんだ!
ブラックハンドが笑いながら叫んだ。
「1人目! 次は誰が死ぬか!! 目を逸らさず見学ううううううううううううううう! はっはっはっは!」
「アキラああああ! 回復魔法だああああ!」
兄さんが叫んだ。
「俺は、回復魔法を使えないんだ、ライカさんや他の」
「もうみんな魔力が無い!! このままではマナが死ぬ!! アキラしかいないんだ!」
「はあ、はあ、俺は」
『アキラ、回復魔法だ』
クラック、だが、俺は!
前世から今までどんなに努力しても回復魔法を覚えられなかった。
その苦しさが、そのイメージが蘇る。
配信の声が聞こえる。
『そんな! マナを誰でもいい、助けてくれ!』
『ばかか、そんな事をしたら、今までただでさえ押されていたのにまた死ぬぞ!』
『たのむ、だれでもいい、回復魔法を使えさえすれば助かるんだ』
『今戦っている人間以外前に出ればすぐに殺される』
『アキラ! 頼む! メイを助けてくれ!』
『アキラを責めてもどうしようも出来ない。無理なんだ!』
『腹を貫かれたんだ。もう間に合わない。分るだろう!!』
『アキラに当たるな!』
「アキラあああ! 自分を信じろおおおお!」
兄さんが叫んだ。
その間も兄さんは押されている。
「俺は、ただのヒールすら使えない」
『ヒールだ! 俺と変われ! ヒールだ!』
「あ、ああ、まずは」
キュインキュイン!
「ヒール!」
黒い魔力が邪魔して発動しない。
『あきらめるな!』
キュインキュイン!
「ヒール!」
黒い魔力が邪魔して発動しない。
「ヒール!」
発動しない。
「ヒール!」
駄目だ!
何か、何かないか!
俺は、ライカさんの、あの時の言葉を思い出した。
あの時も、俺はヒールを使おうとしていた。
「ヒール!」
黒い魔力が混ざって発動しない。
「駄目か」
「アキラ、ヒールには愛が必要よ」
「そう、体に力を入れると、攻撃の魔力、黒い闇魔法に変換されてしまうわね。見ていて」
ライカさんが兄さんに杖を向けた。
「ヒール!」
兄さんが光に包まれた。
兄さんは赤くなって咳払いをした。
「そ、そうか、愛が必要、ならアキラは大丈夫だな」
「え? 全然出来ていないのに」
「いや、アキラは優しい、アキラは深い愛を持っている」
兄さんは真っすぐ俺の目を見て言った。
「そうね、優しい方が光魔法を使いやすいと思うわ」
「アキラには光魔法の適性がある。自分を信じろ」
そうだ、出来ない出来ないと思い込んで、体に力が入っていた。
俺は正座した。
大きく息を吸い込んで吐く。
優しいメイの笑顔を思い出す。
キュインキュイン!
「ヒール!」
発動した、でも、ヒールじゃ駄目だ。
前世の記憶がフラッシュバックした。
そう、そうだった、俺は前世でも、兄さんとライカさんに、同じような事を言われていたんだ。
次、何をすべきか分かっている。
キュインキュインキュインキュイン!
そう、ヒールじゃ駄目だ。
その上位、更に上の魔法を使うしかない。
魔力を使い尽くしてもいい。
後先を考えるな。
今を全力で!
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
「エクスヒール!」
メイをまばゆい光が覆った。
ああ、そうか、ただ助けたい、それだけでいいのか。
メイの傷が塞がり、呼吸が安定する。
これが、光魔法。
俺は闇魔法に邪魔されて光魔法を使えない。
そうやって闇魔法のせいにしてきた。
でも違う、俺の心の思い込みが俺を閉じ込めていた。
前世から分かっていた。
俺の適性は暗黒騎士じゃない、聖魔の騎士だった。
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!奇跡だああああ!』
『アキラが奇跡を起こした!』
『涙が止まらない』
メイが目を覚ました。
「ここ、は?」
「もう、大丈夫だから、今はゆっくり眠ってくれ」
「はい、アキラの光はとっても、温かい、です」
メイが気を失った。
『光魔法ヒールを取得しました』
『上級光魔法エクスヒールを取得しました』
『上級闇魔法ファイブマジックを取得しました』
『上級闇魔法カースウォーを取得しました』
「マナ、泣かないでくれ、もう助かった」
「ええ、ええ」
「俺が前に出て意識を集めたら、メイを連れてそっと後ろに下がっていて欲しい」
俺は立ちあがった。
六角に向かて歩く。
魔力を使いすぎた。
余裕は無い。
このままじゃ六角に押し負ける。
普通の攻撃じゃ駄目だ。
狂気のあの闇魔法、前世でよく使っていたあの攻撃が必要だ。
グレイブレイブを出現させると、4つある宝石の3つ目が輝いていた。
光魔法を強化する特殊能力が目覚めたからだろう。
「すー! はー!」
俺は六角の元に走った。
「ファイブマジック! カースウォー!」
俺の体を黒いオーラが包んだ。
「あああああ、そんな! 私を庇ったせいで!」
兄さんが叫ぶ。
「アキラ! 来たか、マナと一緒にメイを下げろ!」
マナがメイを後ろに下げる。
血が止まらない。
マナが回復のカードを使うが回復が間に合わない。
「血が、血が止まらないの!」
なん、だ、これは?
間に合ったと思ったのに!
何だこれは?
何なんだ、何なんだ!
ブラックハンドが笑いながら叫んだ。
「1人目! 次は誰が死ぬか!! 目を逸らさず見学ううううううううううううううう! はっはっはっは!」
「アキラああああ! 回復魔法だああああ!」
兄さんが叫んだ。
「俺は、回復魔法を使えないんだ、ライカさんや他の」
「もうみんな魔力が無い!! このままではマナが死ぬ!! アキラしかいないんだ!」
「はあ、はあ、俺は」
『アキラ、回復魔法だ』
クラック、だが、俺は!
前世から今までどんなに努力しても回復魔法を覚えられなかった。
その苦しさが、そのイメージが蘇る。
配信の声が聞こえる。
『そんな! マナを誰でもいい、助けてくれ!』
『ばかか、そんな事をしたら、今までただでさえ押されていたのにまた死ぬぞ!』
『たのむ、だれでもいい、回復魔法を使えさえすれば助かるんだ』
『今戦っている人間以外前に出ればすぐに殺される』
『アキラ! 頼む! メイを助けてくれ!』
『アキラを責めてもどうしようも出来ない。無理なんだ!』
『腹を貫かれたんだ。もう間に合わない。分るだろう!!』
『アキラに当たるな!』
「アキラあああ! 自分を信じろおおおお!」
兄さんが叫んだ。
その間も兄さんは押されている。
「俺は、ただのヒールすら使えない」
『ヒールだ! 俺と変われ! ヒールだ!』
「あ、ああ、まずは」
キュインキュイン!
「ヒール!」
黒い魔力が邪魔して発動しない。
『あきらめるな!』
キュインキュイン!
「ヒール!」
黒い魔力が邪魔して発動しない。
「ヒール!」
発動しない。
「ヒール!」
駄目だ!
何か、何かないか!
俺は、ライカさんの、あの時の言葉を思い出した。
あの時も、俺はヒールを使おうとしていた。
「ヒール!」
黒い魔力が混ざって発動しない。
「駄目か」
「アキラ、ヒールには愛が必要よ」
「そう、体に力を入れると、攻撃の魔力、黒い闇魔法に変換されてしまうわね。見ていて」
ライカさんが兄さんに杖を向けた。
「ヒール!」
兄さんが光に包まれた。
兄さんは赤くなって咳払いをした。
「そ、そうか、愛が必要、ならアキラは大丈夫だな」
「え? 全然出来ていないのに」
「いや、アキラは優しい、アキラは深い愛を持っている」
兄さんは真っすぐ俺の目を見て言った。
「そうね、優しい方が光魔法を使いやすいと思うわ」
「アキラには光魔法の適性がある。自分を信じろ」
そうだ、出来ない出来ないと思い込んで、体に力が入っていた。
俺は正座した。
大きく息を吸い込んで吐く。
優しいメイの笑顔を思い出す。
キュインキュイン!
「ヒール!」
発動した、でも、ヒールじゃ駄目だ。
前世の記憶がフラッシュバックした。
そう、そうだった、俺は前世でも、兄さんとライカさんに、同じような事を言われていたんだ。
次、何をすべきか分かっている。
キュインキュインキュインキュイン!
そう、ヒールじゃ駄目だ。
その上位、更に上の魔法を使うしかない。
魔力を使い尽くしてもいい。
後先を考えるな。
今を全力で!
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
「エクスヒール!」
メイをまばゆい光が覆った。
ああ、そうか、ただ助けたい、それだけでいいのか。
メイの傷が塞がり、呼吸が安定する。
これが、光魔法。
俺は闇魔法に邪魔されて光魔法を使えない。
そうやって闇魔法のせいにしてきた。
でも違う、俺の心の思い込みが俺を閉じ込めていた。
前世から分かっていた。
俺の適性は暗黒騎士じゃない、聖魔の騎士だった。
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!奇跡だああああ!』
『アキラが奇跡を起こした!』
『涙が止まらない』
メイが目を覚ました。
「ここ、は?」
「もう、大丈夫だから、今はゆっくり眠ってくれ」
「はい、アキラの光はとっても、温かい、です」
メイが気を失った。
『光魔法ヒールを取得しました』
『上級光魔法エクスヒールを取得しました』
『上級闇魔法ファイブマジックを取得しました』
『上級闇魔法カースウォーを取得しました』
「マナ、泣かないでくれ、もう助かった」
「ええ、ええ」
「俺が前に出て意識を集めたら、メイを連れてそっと後ろに下がっていて欲しい」
俺は立ちあがった。
六角に向かて歩く。
魔力を使いすぎた。
余裕は無い。
このままじゃ六角に押し負ける。
普通の攻撃じゃ駄目だ。
狂気のあの闇魔法、前世でよく使っていたあの攻撃が必要だ。
グレイブレイブを出現させると、4つある宝石の3つ目が輝いていた。
光魔法を強化する特殊能力が目覚めたからだろう。
「すー! はー!」
俺は六角の元に走った。
「ファイブマジック! カースウォー!」
俺の体を黒いオーラが包んだ。
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