ゲーム序盤で死ぬモブ炎使いに転生したので、主人公に先回りしてイベントをクリアしたらヒロインが俺について来た

ぐうのすけ

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第82話

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【ルンバ視点】

 話は少し前にさかのぼる。

 ルンバが始まりの村でゲットに寄生しようとし、金が無い事が分かるとノースシティに向かったところから始まる。

 ノースシティに冒険者が増え過ぎた。
 奴らは需要と供給の関係すら分からないのか!
 馬鹿か!
 冒険者が増えれば報酬が低くなっていくんだ!

 仕方がない。
 馬鹿に説明する時間が無駄だ。

 王都を目指そう。

 後ろからゴールデンオークの声が聞こえる。

「食わせろ!食わせろ!食わせろ!食わせろ!食わせろ!食わせろ!食わせろ!食わせろ!食わせろ!食わせろ!」

 うるさい、気分が悪くなる。
 早くこいつに金を食わせないと私は殺される。

 私は王都に向けて旅立った。



 くそ!なんで私がゴールデンオークが食べる魚まで取らないといけないんだ!
 テイマーは魔物を使役するが、これではこっちが世話をしているのと変わらない。
 私を楽にするためのテイムのはずが、余計に魚を取って来る必要がある。

「私だけじゃなく、あなたも食べ物を取ってきたらどうですか?」

 ゴールデンオークはよだれを垂らしながら私を睨み、焼けた魚を食べていく。

「ああ!それは私の魚です!」

 ぐううううううう!
 私のお腹が鳴る。

 こいつのせいで宿にも泊れない。
 私が倒した魔物の金はすべて食べられる。
 まるで貧乏神だ。

 今日もボロボロのテントで野営をする。

 王都に進むと、8体のリザードマンが現れた。
 ゴールデンオークが7体のリザードマンを倒し、私は1体倒した。

 ゴールデンオークは自分が倒したお金を口に入れた。
 私は自分で倒したリザードマンのお金をすぐに回収する。

「食わせろ!食わせろ!食わせろ!食わせろ!食わせろ!食わせろ!」
「く、これは、旅の大事な費用です」

 ゴールデンオークは私からお金を奪い取ってすべて食べてしまった。
 強引に金を奪われた事で、右腕をひねる。
 くそ、金をすべて食べられて、言う事も聞かない。

 でも、王都には王の息子がいる。
 確かな名前はシャドウジャイアと言うらしい。
 重要なのはそこではなく、お金を貯めこんでいるらしい。
 30日で10億ゴールド、それで雇うなら雇われてやってもいい。
 私はシャドウジャイアの元へと向かった。



「帰るのだ!お前に払う金は無い!」

 門前払いで追い出されただと!

 私は最強のゴールデンオークを使役し、裏ダンジョンをクリアした!
 100億で雇われても良いのに10億ゴールドだけで雇われてあげようとした!
 それでも断られるとは!
 しかも他を当たってもすべて断られた。

 仕方がない。
 帝国に行こう。



 帝国に来てから私はうまくいきはじめた。

 この国は戦争と魔王との戦いで多くの兵を失っている。
 労働者が減り、頑張っても中々豊かになれない状況がある。
 だが魔物狩りの報酬は戦う者が不足して釣り上がっていた。

 この状況は都合がいい。
 皆が何かにすがりたくなり、扇動に乗りやすい状況が生まれている。
 どの国でも良くやる事。

 国がうまくいかなくなり批判が集まった為政者は必ずと言っていいほどやる単純で皆が信じやすい手口。

『分かりやすい敵を作り、扇動する』
 


 まず教会の内部に入り込み、ライバルを殺し、脅して思い通りに動く者だけを残し、地位を上げた。
 人手不足の今の状況は私にとって都合がいい。
 私はスピーチやプレゼンテーションが得意だ。

 私の自信に満ちたスピーチは転生前から評判が良かった。

 その後は金を手に入れ、ゴールデンオークに食べさせる事で私の言う事を聞くようになった。
 そして邪魔者はすべて殺し、富と権力を奪い、教会トップを殺して私がトップに昇りつめた。

 次は力を持った6将の力を奪った。
 教会の力を使い、噂を流した。

『6将は自分の利益を得る為戦争を起こして富を奪い取っている』

『6将がいるせいで帝国は豊かにならない』

 戦争と魔王の誕生で疲弊していたこの国は、敵を作る事で簡単に誘導できた。
 転生前に独裁者の動画もよく見ていた。
 その演説がとても役に立ったようだ。

 残った6将、竜化のリリスと黒騎士のダイヤはここにいられないだろう。
 後はライバルを殺し、反対する者も殺す。
 
 やっと私は本来の地位につくことが出来た。

 私は、皇帝になった!




【竜化のリリス視点】

 私は6将の地位を追われて黒騎士のダイア、そして部下の兵士とその家族を連れて南の島を目指した。

「ダイヤ、受け入れてもらえるかな?」
「500の兵士とその家族を合わせて約1500名、我が受け入れる立場だとしたら手に余ると躊躇するだろう。だが安心して欲しい。我の命を捧げてでも受け入れて貰う」

 私達は命をかけて戦争をして、魔王を倒し、そして、帝国の人間から石を投げられて追い出された。
 頼れるのはゲットのいる南の島だけ。

 大陸の南海岸にたどり着くと、斥候の女性、エマが出迎えた。
 海には大小さまざまな大きさと形の船がスタンバイされていた。
 多くが漁船で、無理をして船を用意してくれてる。


「港が無い。だから、小舟で皆を船に運ぶ」

 そう言ってエマの指示で小舟にみんなが乗せられていく。
 小舟から大型の船に皆が乗り込むと、パンと水、そして果物が全員に配られた。

 おなかが空いていた私は飲み込むようにすべてを胃袋に入れた。

「ダイヤ、また、殺し合いに、ならないといい」
「うむ、我が全力で争いを止めよう」

 大人は皆緊張しながら南の島を目指した。
 子供もただならない様子を察してかおとなしかった。

 南の島に近づくと、港が整備されていた。

 更に近づくと、『ようこそ。南の島へ』と書かれた看板が目に飛び込んできた。
 そして島のみんなが手を振って笑顔で出迎える。
 緊張の解けた兵士の家族はうれし涙を流した。

 そして、元6将のエムルがゲットにおんぶされて満面の笑顔で私達に手を振り、100のスケルトンも手を振る。
 この事でみんなは更に安心した。
 エムルが元気にしているという事は帝国の者でも受け入れてもらえる分かりやすいアピールとなる。

 私とダイヤがエムルとゲットの元に近づくと2人が揉めていた。

「おい!離れろ!」
「ええ!君は不安を抱えてここに来た帝国のみんなを安心させてあげないのかい!?僕と君が仲良くする事でみんな安心できるんだよ」

「だから俺とライターが今謝ろうとしているんだろ!離れろ!」

「何?なんなの?」

 私の言葉にタンクの男とゲットが頭を下げた。
 そして大声で言う。

「「すいませんでした!」」

「意味が分からない。我らは謝られるようなひどい目に合わされていないのだ」

 私も同じことを思った。
 







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