ANGEL -エンジェル-

癒-healing-

Ｐ32．…しらばっくれるのも、もう無理か

屋上にはすでに二階堂優と水谷真がいた。

「…まさか、あなた達二人が一緒にいるなんて…何の用かしら。」

「お前の目的はなんだ？」

二階堂優は睨み付けるようにして言う。

「目的って…そんなの…」

「甘実さんが危うい存在になっていると気づいていたから…甘実さんの友達である星しずくさんに
協力してもらいたかった…そういうことですよね？」

今度は真君が言う。

「私にみかんの力を教えたのは、あなたもみかんを心配していたからでしょう？あなたはみかんの幼馴染なんでしょう？…みかんは忘れてしまっているみたいだけど。」

彼女は少し間をおいて、深くため息をついた。





「…しらばっくれるのも、もう無理か…」





彼女は制服のリボンを緩め、眼鏡を外しておさげ髪をほどき、前髪を書き上げた…
初めて会った時のような神々しい雰囲気。
むしろこっちの方が彼女にとっては本当の姿のように感じる。
茶色い髪が光にあたってキラキラと黄金に輝く。

「大体はそういうことよ…私はかんなの幼馴染。あなたにみかんの事を教えたのも、みかんの力の事を何とかしてくれることを期待していたからよ。」

「やっぱりお前…」

「ねぇ、ちゃんと最初から話してよ。みかんと何があったの？」

「………」

九はだまっている。
みかんの記憶がなくなるような、辛いことが二人の間にあったはず…話すのだって辛いはずだ…
少し俯いて辛そうな顔をしている。

「甘実さんのこと、大切だと思っているんでしょう？だから、こんなことをしてまで助けようとしていたんですよね？…僕たちも同じです。甘実さんを助けたい。でも、そのためにはあなた一人で僕たちを動かそうとするのは無理だ。みんなで情報を共有しない限りは、きっと解決できない。甘実さんの過去をもっと詳しく教えてください。」

真君は昨日のような悲しい顔ではなく、緊迫した表情で、必死に彼女に訴えかけている。
彼女は真君を見て…それからまた俯いてぎゅっと目をつむった。

「お願いしま」





「よく頑張ったよ」





「「え？」」

みんな二階堂優の方を一斉に見た。