ANGEL -エンジェル-

癒-healing-

Ｐ66．止めてきます。

驚きを隠せない二人を余所に
ミスコンは参加者の紹介が始まった。
スポットライトだけだったステージが明るくなり、ステージに立っている出場者が現れる。
各クラス約一名の選出らしく、18人の候補者が並んでいた。
皆美人でかわいらしい人ばかりで、その中でもみかんは一番背が低く、すぐに見つけることができた。
せっかくの可愛らしい顔も、俯いていて顔がよく分からない…。

みかん、大丈夫かな…

紹介が終わるとすぐにクイズ大会が始まった。
学年が違うため一般常識問題や、高校に関するクイズだったが早押し問題はみかんに分が悪い…反射神経の悪いみかんは、分かってもボタンを押すのが遅すぎる…去年と同じく0点。

続いて卓球大会では相手の運動神経もいいとは言えないような感じだったが、みかんは全く得点できず…持ち前の運動音痴を発揮してここでも0点で終わった。



・・・最後は自己アピール。
基本的には自由で、所属している部活動を得意なものとしてアピールする人、手品をやる人、自分の書いた絵を持ってくる人、楽器を演奏する人…

去年の優勝者であるみかんの順番は一番最後だ。
順調に進んでいくミスコンを黙って見ていたきゅうりが私におそるおそる問いかけた。


「一位の子が70点…みかんが0点か…ねぇ…確かにみかんは得意なものは一つだけあるけど…まさか…」

「あれだけで去年は優勝しちゃったのよ」

「あのー…甘実さんの得意なものって…？」


真はまだみかんの特技を知らないようで、不安そうな顔をしていた。
誰が見たってみかんはダントツびりで、ほぼ勝機はない。
他の一年生もみかんの優勝などありえないと思っているだろう。

後ろから他の一年生が、去年の優勝者ってホント？とか、顔がいいだけでしょ？なんて言い出す人もいるくらいだ。

だが、去年のミスコンを知っている2、3年生は、みかんが優勝する可能性は十分にあると確信しているだろう。





「みかんはね、歌がうまいの」






「それ…だけ？ですか…？」

「「それだけ」」

きゅうりと言葉がかぶって、彼女はそのまま話し出した。

「かんなの歌は本当に凄いのよ…でも今回は優勝は無理かもね」

「何でですか？」

「私も少し考てた…みかん、無意識に力使っていた可能性ないかな？」

今までみかんの力はずっと制御されてこなかった。
自分の意志とは関係なく力が発動する場合があったことは確かだ。
みかんの去年の快挙が、もし…癒しの力によるものだったとしたら…

3人の間だけ静寂が流れた。




「僕…止めてきます。」