ANGEL -エンジェル-

癒-healing-

Ｐ67．歌わせてあげようよ

「僕…止めてきます。」

「え？」

「もし、そうなら…甘実さんは思う様に歌えないかもしれない。止めないと！」

「や、まだそうと決まったわけじゃ…」


きゅうりが真をたしなめようとするが
真君はすごい剣幕で言い返した



「もう傷ついてからじゃ遅いんですよ！！！」




この賑わいの中でもはっきり分かるくらい大きな声だったが、
周りはそれ以上に騒がしく、
ステージでは着々とミスコンが進行している。


「甘実さんが苦しむところ…見たくないんです。ステージに1人で、歌えなくて…そんなことになったら…！」





「大丈夫だよ！」





「え？」

「大丈夫だよ、真君。みかんは歌い切るよ、絶対。だって今回は歌い曲を歌うって言ってた。」

「…どういう事ですか？」

「曲はね…何でもいいって前回のミスコンの時は言ってたの。今回だってそう…今流行ってる曲とか教えてもらえればそれを歌うからって。みかんはあんまりこだわりとかなくて…ミスコンは嫌だけど、皆に歌を聞いてもらえるのは嬉しからでるって…去年そう言ってたの。」


みかんは優勝したいとかそういうのじゃなくて、単純に好きなものを楽しみたかっただけ。みんなに楽しんでもらいたいだけ。
もともとそういうところがみかんらしいなって思ってたけど…


「でも、今回はね。ミスコンが始まる直前、曲を変えたいって言い出したの。」

「え…？」

「今回はこういう誰かが選んだ流行っている曲とか、可愛い曲じゃなく、自分の気持ちに沿った曲を歌いたいって言ってたの。
そうじゃないと歌いたくない、出たくないって…今まで周りの人が困るようなことは言ったことがない子だったのに。
だから今回は…力も発動しないけど、みかんは自分のために歌うんだと思う。
みかんが歌いたいなら、歌わせてあげようよ？」



その瞬間、ひときわ大きな歓声が上がった




『最後はこの人！去年の優勝者、甘実かんなさんです！』