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癒-healing-
P68.貴方のことが好きです
しおりを挟む急にあたりが暗転して、みかんの歌声とともに
いろんな色の照明がシルエットを映し出した。
いつものおとなしそうなみかんはそこにはなく、その場にいた全員の目が奪われたーーー
ーーー
曲が終わった瞬間の静けさから、一気に歓声が湧き上がる。
本当に直前で曲を変えたのだろうかと思うほど完璧なステージだった。
歌もダンスもリハーサルもなしにこなしているとは思えなかった。
「すごい……みかん、こんな曲も歌えたんだ…去年とは別人みたい…」
選曲は去年のような可愛い系の曲とはまるで違い
ロックな感じのかっこいい曲調だった。
みかんのいつものイメージとはかけ離れているのに
なぜか去年よりもみかんのステージに圧倒されてしまった。
それは会場にいるみんなも同じだっただろう。
「昔みたいに柔らかい歌声じゃない…。あんな歌声、初めて聞いた…」
私と同じくきゅうりもステージを見て唖然としていた。
ステージ上のみかんは一瞬ほっとした顔をしてからステージを見渡していた。
「星先輩、九先輩、俺…行ってきます」
「「・・・え?」」
突然のことで引き留める暇もなく
真はステージに向かって人ごみをかき分けて走り出していた。
「真君?!」
ステージのみかんに向かってアンコールが響き渡っている。
アピール時間は10分間。
一曲歌っただけではあと6分近く残っていた。
みかんはステージ袖に向かって確認を取っている…
というよりは、もう一曲行きましょうと支持されているのに戸惑っているようだった。
そんな時、ステージをみてアンコールしていた生徒たちのアンコールが止み、一斉にざわつき始める。
それに気づいて振り返ったみかんが目を見開くーーー
「真君…?!」
真君はなんとステージの上に上がってみかんに近づいていく。
驚いたみかんが少し後ずさったのに気づいてか
5メートルほど離れたところで歩みを止めた。
「なんで…」
「甘実さん、僕は貴方のことが好きです」
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