ANGEL -エンジェル-

観-see-

S１．上条忍

ある日、目を凝らすと

両親のじいちゃんの頭の上に数字が見えた。


よく見ると…

ばあちゃんにもあった。


何の数字だかわからないけど

みんなにあった。


鏡を見ると、自分にも。




この数字の意味は

その後、割とすぐに理解した。





















高校一年生　春――…


「上条君！頑張ってーー！！」

「忍かっこいい！！！」


沢山の女の子の声が聞こえる。
神聖な道場の周りには
沢山の人だかりができていて、
俺に声援を送っている。

今日は剣道部の大将を決める部内試合。
トーナメント方式になっており、
これからその決勝戦が始まろうとしていた。


「おい！集中できないだろ?!静かにしなさい！」


先生が一喝するが…
あまり効果はなさそうだ。

声援を受けている俺は悪い気はしないが、
決勝相手の先輩は明らかにギャラリーの五月蠅さにイラついているようだった。
このギャラリーがほぼ俺の応援で
先輩への声援が全くないもんだから無理もない。

それに、この試合は一年の俺とは違って
三年の先輩にとっては最後の公式戦の
大将を決める大事な試合だ。


「まぁまぁ、先生いいじゃないですか！剣道部に興味を持った女子がマネージャーになってくれるかもよ？」

「よくない！もう何人マネージャーがいると思ってるんだ！」


俺がその場を和ませようと先生に話しかけると、
慌てたように大声で否定してくる。
俺が剣道部に入ってから0人だったマネージャーが
あっと言う間に入部希望者が殺到したのだからしかたがない。


「華やかでいいじゃないですか～」

「先生はマネージャーじゃなく選手が欲しいんだよ…」


うちの剣道部は決して強くはない。
運動部より文化部が栄えるうちの高校では部員は集まりずらいし、
そもそもうちの部の女子選手は0人だ。
暑い、臭い、痛い、そういう印象から
なかなか始めようとする人はいないのだろう…

がっくりと肩を落としている顧問は
気を取り直して大きな声で指示を出す。


「さぁ、もう始めるぞ！上条も早く面つけろ！」


そう言われて、準備運動もそこそこに
着座し面をつけ始める。

仕方ない、そろそろ集中し始めないとな…と
気持ちを切り替えていた時、
またあたりが騒がしくなる。

ざわざわとみんなが口々に、
何でここに？とか、かわいい！とか、
言っているのが聞こえる。

せっかく集中し始めたところで
自分以外に向けられた歓声に少し気持ちがもやつく…

面をつけて立ち上がり、
声が上がっている方を見るとそこには…


（あれは…確か…）


そこにいたのは学校一の美少女
甘実かんなだった。