100回目のピーカブー

朋藤チルヲ

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 水平線は、燦々とまぶしい朝日からこぼれ落ちた光の粒が、そこでキラキラと瞬きながら漂っているかのようだ。

 ヘルメットの後頭部に、硬いものがぶつかる軽い衝撃が走る。まるで脳の内部から響いてきたみたいな「コツン」という音に、思わず笑みが漏れた。背中にしがみついてきている同乗者が、とてもきれいだねと感動を伝えてきていることが、それだけでわかった。

 真似するようにして、こちらからも小さな衝撃のお返しをする。

 二人とも、それを初めて見るわけではない。だけど、美しいものは、いつだって同じ美しさのままだ。いつだって、変わらない大きさの感動を与えてきた。

 でも、それは、二人で見ているからこそなのかもしれない。

 砂浜の手前で申し訳程度に波打つ、コバルトブルーの海。それを右手に眺めつつ、アクセルを吹かす。

 今日はこれから、まっすぐ走った先にある、別の街に咲く桜を見にいく。

「千の波」という優美な名前を持つ湖の周りには、何十本という桜の木が植えられていて、毎年見事な桜の花を咲かせる。

 淡いピンク色の雨が、はらはらと頭の上から降り注いでくるのを見上げるのが、二人とも大好きだ。

 油断は、不意にやってくる。

 浮かれていた視界に、車道に放られていたペットボトルが入り込んできた時には、すでに遅かった。

 急ブレーキは、もう間に合わない。車体もろとも、身体はバランスを崩す。
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